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2章 放たれた魔銃と幸運の石

34 残滓の力で慚死しそうになっている魔族がいたなあ

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 テイラン先輩とブラニカさんはデキている、二人の挙動を観察していると何となく察した。
 僕は他人の挙動に気がつかない鈍感系主人公じゃ無い・・・ハズ。

 ブラニカさんは研究所に必要資材の発注を頻繁に受けに来る。
 その時に先輩とのやりとりがあるのだけれど、会話が素っ気ないのだ。
 他の所員や僕には日常会話や最近の話などを織り込んでくるんだけど、先輩には無い。
 しかし僕との会話の中で先輩が何をしているのか等、知り得ないはずの情報を既に知っているのだ。
 外で会っているのだと確信した。

「ブラニカさんは、今の仕事はどのぐらいになるんですか?」

 僕が日常会話の中で聞くとこう答えた。

「ある人のお世話で今の店で働いて、もう二年になるわね。
 私の母が病気で、診られるお医者がいるこの街に田舎から出てきたの。
 父は私が物心が付く前からいなくて。」

 そう言いながら、青いペンダントをいじっていた。
 何かあるとペンダントをいじるのが彼女の癖のようだ。
 立ち入ったことを聞いてしまったと少し後悔した。

 ここに来てから三ヶ月経過している。
 魔法の勉強もそこそこ進み、ようやく炎等のエネルギー変換だけで無く、動作を加えることが出来るようになった。
 精神系の魔法なら遠隔で対象者に力を届けることが出来る。
 しかし通常魔法の方は、今までその場で発生させるだけに止まっていた。
 これを目標に向かって飛ばす事が出来るようになったのだ。
 ハエより遅いけど、動くようになっただけでも行幸だ。
 一応言っておくけど、アクションステージまで構築するのは無茶苦茶難しいんだよ。

 所長の研究の方は魔銃の試作が出来上がったところだ。
 魔晶石に魔力を貯めておける構造なので、事前にチャージしておけば魔力を使わずに使用することが出来る。
 ただ魔晶石が高価なのと、疑似魔術回路の小型化とその定着に時間がかかるので、やはり量産には問題がある。
 
 世界情勢が不安定化している。
 そのため国の方からそういう研究に力を入れるように指示が出ているようなのだ。
 一応この研究所の別のセクションでは、魔杖などの魔術師をサポートするアイテムも研究されている。
 賢者の杖レベルのモノはさすがに無いけれど。
 しかしそれではあまり意味が無いのだ。

 いざ戦争が始まると、魔術師はそれほど役には立たない。
 個別の戦闘力を考えるのであれば、魔術師が混ざっていた方が圧倒的に有利だ。
 しかし育成コストが高すぎる。
 魔術師が死んでしまったら、戦術的に勝ったとしても大損害なのだ。
 資質のある人間を見つけ出し、戦いに使えるまで育成する時間とコスト。
 それならば弓兵(きゅうへい)を百人揃えた方がいい。
 そういう理由から、魔術的武器の開発が行われるようになった。
 一般の兵士を魔術師の戦闘力に近づける為だ。
 
 魔法を使えない人間の中に、時たま高い戦闘力を持つ者がいる。
 生命力や精神力をエネルギーに変えて、人間を超えた動きをしたり、高い破壊力出したり、魔法を弾き返すような異能者がいるのだ。
 教会が秘匿している技術を使った武器と組み合わせると、場合によっては魔法を凌ぐという。
 
 その光景を見たことがある。
 正確には見ることすら出来なかった人もいる。
 洋裁担当の人は完全に人外だ。
 教会ではその力を「神の残滓(ざんし)」と呼んでいる。
 
 神の残滓のアイテム研究は教会に独占権が与えられているので、うちの研究所では扱えない。
 あれを極限まで極めるとどうなるかは、先の事件で思い知っている。
 当然のごとく、神の残滓は極めるのには魔法を扱うのと同様に素質がいる。
 しかし魔法よりは対象者の範囲が広いようで、一般人でも訓練次第で多少扱えるようになるらしい。
 扱えるのは多少でも、訓練は地獄だということだ。




 魔王の息子だけど神の残滓で無双できないかなあ。
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