17 / 262
1章 幼き魂と賢者の杖
17 矢が飛んできたらヤだな
しおりを挟む
辺りは薄暗くなっていた。
木々や草が鬱蒼と茂っていて、魔領ほどでは無いけれど、瘴気が立ちこめている。
僕は慣れたものだけど、二人はこの気配に完全に飲まれていた。
「来た道を戻るのはやめた方がいい。迷うのは覚悟で、行けるところへ行こう。」
追われるリスクを考えると、とにかく小屋から離れなければならない。
ただし来た道を戻ろうとすると、発見されるリスクが高まる。
探す側の立場になって考えた場合、もうすぐ夜になろうという時間に、こんな場所で本気で隠れられたら見つけるのは困難だろう。
足跡などの痕跡に注意し移動した。
そして茂みの中に身を隠して、完全に暗くなるまでやり過ごすことにした。
時が経ち、薄暗い時間から夜になった。
僕は魔王種、魔族だ。
そして魔族は夜目が利く種族が多い。
僕もある程度の暗視能力がある。
そのおかげで、空が曇り月明かりすらほとんど無い状況ながら、多少の視界は確保されていた。
この闇に紛れて迂回しつつ町まで戻りたいところだ。
本当はそのつもりだった。
しかし曇っているのは誤算だった。
僕はともかく、他の二人を暗闇の中を歩かせるのは不可能と言っていい。
そして問題はそれだけでは無い。
曇っているせいで星が見えないのだ。
この世界にも北極星に相当する星があるのだけれど、それが見えないので方向がさっぱり分からない。
どうやら朝までじっとしているしか無いようだ。
「二人とも、今のうちに寝ておくといい。何かあったら起こすから。」
二人は恐怖による疲労でボロボロだ。
今のうちに体力を回復してもらわないと、この後が大変だ。
「オキス君は大丈夫なの?」
「見ての通り僕は平気だよ。心配しなくて大丈夫。」
ジキルが申し訳なさそうにしている。
しかし二人ともいざ横になると、あっという間に寝入ってしまった。
「まあ、こんな状況じゃ無理も無いか。」
二人ともまだ幼い。
今までずっと気を張っていたのだ。
ここまでよく頑張ったと思う。
僕は辺りの気配を伺いながら朝日が出るのを待った。
体感的にかなりの長い時間が経ち、ついに空が明るくなり始めた。
そろそろかと思った瞬間、緊張が走る。
遠くでかすかに茂みをかき分ける音が聞こえたのだ。
僕は音を立てないように二人を起こした。
茂みに身を隠したまま、音のした方向を伺う。
二人もすぐに僕が見ている方向に目をやった。
音が近づいてくる。
そしてその正体を捉えた。
町で見かけた冒険者4人パーティーだ。
彼らに保護してもらえれば、僕らを誘拐した男達は手出しできないだろう。
しかし僕は動けずにいた。
誘拐犯とグルである可能性があるからだ。
彼らに助けを求めて保護してもらうか、スルーして自力で町に戻るか、難しい判断だ。
そもそもこんな時間、こんな所で彼らは何をしているのだろう?
まだ距離は十分にある。
彼らの動きを観察しようと、再び目をやった瞬間あることに気がついた。
一人いなくなっている。
気配を後ろから感じた。
嫌な予感しかしない。
覚悟を決めて振り向く。
そこには冒険者の女いた。
弓を引き絞り、鏃を僕に向けている姿だった。
主人公属性があれば、死亡フラグ回避無双だよね。
木々や草が鬱蒼と茂っていて、魔領ほどでは無いけれど、瘴気が立ちこめている。
僕は慣れたものだけど、二人はこの気配に完全に飲まれていた。
「来た道を戻るのはやめた方がいい。迷うのは覚悟で、行けるところへ行こう。」
追われるリスクを考えると、とにかく小屋から離れなければならない。
ただし来た道を戻ろうとすると、発見されるリスクが高まる。
探す側の立場になって考えた場合、もうすぐ夜になろうという時間に、こんな場所で本気で隠れられたら見つけるのは困難だろう。
足跡などの痕跡に注意し移動した。
そして茂みの中に身を隠して、完全に暗くなるまでやり過ごすことにした。
時が経ち、薄暗い時間から夜になった。
僕は魔王種、魔族だ。
そして魔族は夜目が利く種族が多い。
僕もある程度の暗視能力がある。
そのおかげで、空が曇り月明かりすらほとんど無い状況ながら、多少の視界は確保されていた。
この闇に紛れて迂回しつつ町まで戻りたいところだ。
本当はそのつもりだった。
しかし曇っているのは誤算だった。
僕はともかく、他の二人を暗闇の中を歩かせるのは不可能と言っていい。
そして問題はそれだけでは無い。
曇っているせいで星が見えないのだ。
この世界にも北極星に相当する星があるのだけれど、それが見えないので方向がさっぱり分からない。
どうやら朝までじっとしているしか無いようだ。
「二人とも、今のうちに寝ておくといい。何かあったら起こすから。」
二人は恐怖による疲労でボロボロだ。
今のうちに体力を回復してもらわないと、この後が大変だ。
「オキス君は大丈夫なの?」
「見ての通り僕は平気だよ。心配しなくて大丈夫。」
ジキルが申し訳なさそうにしている。
しかし二人ともいざ横になると、あっという間に寝入ってしまった。
「まあ、こんな状況じゃ無理も無いか。」
二人ともまだ幼い。
今までずっと気を張っていたのだ。
ここまでよく頑張ったと思う。
僕は辺りの気配を伺いながら朝日が出るのを待った。
体感的にかなりの長い時間が経ち、ついに空が明るくなり始めた。
そろそろかと思った瞬間、緊張が走る。
遠くでかすかに茂みをかき分ける音が聞こえたのだ。
僕は音を立てないように二人を起こした。
茂みに身を隠したまま、音のした方向を伺う。
二人もすぐに僕が見ている方向に目をやった。
音が近づいてくる。
そしてその正体を捉えた。
町で見かけた冒険者4人パーティーだ。
彼らに保護してもらえれば、僕らを誘拐した男達は手出しできないだろう。
しかし僕は動けずにいた。
誘拐犯とグルである可能性があるからだ。
彼らに助けを求めて保護してもらうか、スルーして自力で町に戻るか、難しい判断だ。
そもそもこんな時間、こんな所で彼らは何をしているのだろう?
まだ距離は十分にある。
彼らの動きを観察しようと、再び目をやった瞬間あることに気がついた。
一人いなくなっている。
気配を後ろから感じた。
嫌な予感しかしない。
覚悟を決めて振り向く。
そこには冒険者の女いた。
弓を引き絞り、鏃を僕に向けている姿だった。
主人公属性があれば、死亡フラグ回避無双だよね。
0
お気に入りに追加
622
あなたにおすすめの小説
黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》
Siranui
ファンタジー
そこは現代であり、剣や魔法が存在する――歪みきった世界。
遥か昔、恋人のエレイナ諸共神々が住む天界を焼き尽くし、厄災竜と呼ばれたヤマタノオロチは死後天罰として記憶を持ったまま現代の人間に転生した。そこで英雄と称えられるものの、ある日突如現れた少女二人によってその命の灯火を消された。
二度の死と英雄としての屈辱を味わい、宿命に弄ばれている事の絶望を悟ったオロチは、死後の世界で謎の少女アカネとの出会いをきっかけに再び人間として生まれ変わる事を決意する。
しかしそこは本来存在しないはずの未来……英雄と呼ばれた時代に誰もオロチに殺されていない世界線、即ち『歪みきった世界』であった。
そんな嘘偽りの世界で、オロチは今度こそエレイナを……大切な存在が生き続ける未来を取り戻すため、『死の宿命』との戦いに足を踏み入れる。
全ては過去の現実を変えるために――
一輪の廃墟好き 第一部
流川おるたな
ミステリー
僕の名前は荒木咲一輪(あらきざきいちりん)。
単に好きなのか因縁か、僕には廃墟探索という変わった趣味がある。
年齢25歳と社会的には完全な若造であるけれど、希少な探偵家業を生業としている歴とした個人事業者だ。
こんな風変わりな僕が廃墟を探索したり事件を追ったりするわけだが、何を隠そう犯人の特定率は今のところ百発百中100%なのである。
年齢からして担当した事件の数こそ少ないものの、特定率100%という素晴らしい実績を残せた秘密は僕の持つ特別な能力にあった...
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
職業選択の自由~ネクロマンサーを選択した男~
新米少尉
ファンタジー
「私は私の評価を他人に委ねるつもりはありません」
多くの者達が英雄を目指す中、彼はそんなことは望んでいなかった。
ただ一つ、自ら選択した道を黙々と歩むだけを目指した。
その道が他者からは忌み嫌われるものであろうとも彼には誇りと信念があった。
彼が自ら選んだのはネクロマンサーとしての生き方。
これは職業「死霊術師」を自ら選んだ男の物語。
~他のサイトで投稿していた小説の転載です。完結済の作品ですが、若干の修正をしながらきりのよい部分で一括投稿していきますので試しに覗いていただけると嬉しく思います~
揚げ物、お好きですか?リメイク版
ツ~
ファンタジー
揚げ物処「大和」の店主ヤマトは、ひょんな事から、エルフの国『エルヘルム』へと連れて来られ、そこで店をひらけと女王に命令される。
お金の無いヤマトは、仲間に助けられ、ダンジョンに潜って、お金や食材を調達したり、依頼されたクエストをこなしたり、お客さんとのふれ合いだったり……と大忙し?
果たして、ヤマトの異世界生活はどうなるのか?!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
転生賢者の異世界無双〜勇者じゃないと追放されましたが、世界最強の賢者でした〜
平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人は異世界へと召喚される。勇者としてこの国を救ってほしいと頼まれるが、直人の職業は賢者であったため、一方的に追放されてしまう。
だが、王は知らなかった。賢者は勇者をも超える世界最強の職業であることを、自分の力に気づいた直人はその力を使って自由気ままに生きるのであった。
一方、王は直人が最強だと知って、戻ってくるように土下座して懇願するが、全ては手遅れであった。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる