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第7章
嫌な予感
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くそっくそっくそっ! なんで止めなかった?!
あれから一度も会おうとしないあいつに『嫌な予感』はずっと続いていたのに。
彼女自身でさえ前から「なんか嫌な予感がするの」と言っていたではないか。
彼女に多少嫌われたとしても、恨まれたとしても1人で行くのを止めるべきだった。
少なからずあいつのことは信じていた。根は悪いやつではないし、改心したと思っていたから、感情を圧し殺して送り出した。
いつ帰ってきてもいいように、予定をいれずに一日中家でずっと待っていた。
時間が過ぎるのが遅過ぎて発狂しそうで、噛み締めた唇からは鉄の味がした。2人で何をしているのかなんて想像したくもない。
彼女があいつを嫌いじゃないのは知っている。彼女自身がとても情に流されやすいことも。今日起こっていることは、8月のあの日目の前で起きたあれよりもきっともっと酷い。
送り出したときとほぼ同時刻に送った牽制メッセージには、何時間か後に既読はついたが返事は来ない。
日が落ちて暗くなっても、彼女から連絡はなくて、送ったメッセージにも既読がつかない。
「大丈夫だよ」そう笑顔で言っていたのに。
いてもたってもいられずに、あいつの家の近くまで行った。10月の夜、風で体温は奪われていったが、寒さなんて感じなかった。
目の前を通りすぎていく車も、楽しそうに笑う人々も、今彼女の身に何が起こっているかなんて知らないしどうでもいいだろう。テレビで流れる悲しいニュースが自分の涙を誘わないのと同じように。
マンションの前をうろつく自分の姿は不審者にも見えたかもしれない。何度も何度もスマホを確認する。気になって仕方がなくて、あいつの部屋辺りを見上げるが、どの部屋かわからない。本当は殴り込みたい。
でもそんなことをしたら「心配ないからお家で待っててね」といった彼女の顔を潰すことになる。
それは、もう流石に遅すぎるから帰りは朝になるかもしれないと諦め、少し気がゆるんだときだった。待ちに待った連絡が来た。
ただその内容は『嫌な予感』を通り越して、真っ黒な『恐怖』でしかなかった。
書いてあった通りにマンションのセキュリティを抜け、あいつの部屋にひた走る。
苦しい。息をするのを忘れてしまったかのような焦燥感。尋常じゃない様子に通りがかりの住民が驚いて後ずさる。
【最高な日は最上なままで全て終わりにする。発見者は貴方がいい。見たくないだろうが、身体が腐らないうちに来てくれ】
鍵はかかっていなかった。靴を脱ぐのも忘れて部屋に上がる。リビングは暗いまま。微かに光が漏れているのは寝室だ。
水川優一が乱暴に寝室のドアを開けたとき、目に飛び込んできたのはあいりの首に手をかけるこおりそうたの姿だった。
あれから一度も会おうとしないあいつに『嫌な予感』はずっと続いていたのに。
彼女自身でさえ前から「なんか嫌な予感がするの」と言っていたではないか。
彼女に多少嫌われたとしても、恨まれたとしても1人で行くのを止めるべきだった。
少なからずあいつのことは信じていた。根は悪いやつではないし、改心したと思っていたから、感情を圧し殺して送り出した。
いつ帰ってきてもいいように、予定をいれずに一日中家でずっと待っていた。
時間が過ぎるのが遅過ぎて発狂しそうで、噛み締めた唇からは鉄の味がした。2人で何をしているのかなんて想像したくもない。
彼女があいつを嫌いじゃないのは知っている。彼女自身がとても情に流されやすいことも。今日起こっていることは、8月のあの日目の前で起きたあれよりもきっともっと酷い。
送り出したときとほぼ同時刻に送った牽制メッセージには、何時間か後に既読はついたが返事は来ない。
日が落ちて暗くなっても、彼女から連絡はなくて、送ったメッセージにも既読がつかない。
「大丈夫だよ」そう笑顔で言っていたのに。
いてもたってもいられずに、あいつの家の近くまで行った。10月の夜、風で体温は奪われていったが、寒さなんて感じなかった。
目の前を通りすぎていく車も、楽しそうに笑う人々も、今彼女の身に何が起こっているかなんて知らないしどうでもいいだろう。テレビで流れる悲しいニュースが自分の涙を誘わないのと同じように。
マンションの前をうろつく自分の姿は不審者にも見えたかもしれない。何度も何度もスマホを確認する。気になって仕方がなくて、あいつの部屋辺りを見上げるが、どの部屋かわからない。本当は殴り込みたい。
でもそんなことをしたら「心配ないからお家で待っててね」といった彼女の顔を潰すことになる。
それは、もう流石に遅すぎるから帰りは朝になるかもしれないと諦め、少し気がゆるんだときだった。待ちに待った連絡が来た。
ただその内容は『嫌な予感』を通り越して、真っ黒な『恐怖』でしかなかった。
書いてあった通りにマンションのセキュリティを抜け、あいつの部屋にひた走る。
苦しい。息をするのを忘れてしまったかのような焦燥感。尋常じゃない様子に通りがかりの住民が驚いて後ずさる。
【最高な日は最上なままで全て終わりにする。発見者は貴方がいい。見たくないだろうが、身体が腐らないうちに来てくれ】
鍵はかかっていなかった。靴を脱ぐのも忘れて部屋に上がる。リビングは暗いまま。微かに光が漏れているのは寝室だ。
水川優一が乱暴に寝室のドアを開けたとき、目に飛び込んできたのはあいりの首に手をかけるこおりそうたの姿だった。
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