残365日のこおり。

tonari0407

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第6章

恋人同士みたいに 8月2日⑦

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 ついばむような軽いキス。息をする間はあっても悲しむ間なんて与えない。手は彼女の身体を労るように撫でる。

「あいり、好きだよ」
 2人しかいない部屋に、静かに唇の触れあう音が響く。

「ほんとはこおりさんにあいりを触られたくない。嫉妬で苦しい」
 そう言って、今は水川の前だけにいるあいりの唇に舌を差し込んで、口の中を舐める。

 こおりと一緒にあいりに触ったのは、本当に嫌だった。あいりの前だから、素直な自分をさらけ出せるのに、何故そこにこおりがいなくてはならないのか。

 あいりの息が苦しくなる前に唇を離す。
「嫉妬なんてしたことなかったのに、ごめんな」
 水川はそう言うと、キスを1つあいりの頬に落とした。

「優くん、ごめんなさい。私が『いや』って言わなかったから、嫌なことさせて」
 悲しそうな彼女の顔を見ると、自分の嫌な感情よりも、彼女が悲しい思いをするのが嫌だと思う。でも、それでも自分の感情も伝えずにはいられない自分は、まだ未熟なのだろう。

「嫌じゃなかったから、言わなかっただけだろ?あいりが望んでるなら、俺がそれに慣れればいいだけだよ」

 そう、慣れればいいのだ。こおりがいることに。

「ごめんなさい。私、わかんなくて。びっくりして。こおりくん、あんな風に私に触ったり絶対しなかったのに、いきなりしてきたから」
「あんな風?」

「あんな……えっちな感じで触ること別れてから初めてで。身体拭いてもらったりはあったけど、その、あの……。恋人同士みたいに触るのは全然してなくて」

 つまり、こおりに久しぶりに恋人同士みたいに触れて貰えるのが嬉しくて『いや』と言えなかった。ということだろうか。

 水川の中にどす黒い感情がわきあがる。
 結局、自分はただの邪魔者か恋のスパイスか何かなだけ。何度も何度も嫌な思いをして、離れたいのに離れられない。1人で自由に生きた方がどれだけ楽だろう。

「俺はじゃあ、いらないね」
 この欲張りで弱い彼女の答えなんてもう分かっているのに、毎回聞くのを止められない。自分自身もその都度確認しないと耐えられない。

「やだ、違うの。優くん、見捨てないで。もう、こおりくんに流されたりしないから。もう、コントロールされないから」

 見捨てたりはしない。これは自分自身に課した幼き日の過ちからの信念。
 そして、何より自分自身、彼女に見捨てられたくはない。

「見捨てないよ。あいりは俺の彼女だから。さっきのもいいんだ、あいりがそれで喜ぶなら」
「3人で何て……ダメだよ」

 彼女の言葉がどこまで本心かは分からなかったが、水川はあいりのキスに応えた。
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