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第5章
(番外編) 初心者
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水川が早朝バイトから家に帰るとあいりがいなかった。
「あいりー?帰ったよ」
狭い家の中を見渡してもいない。とりあえず買ってきたアイスを冷凍庫にいれる。
スマホを見ても、水川が帰るときに送ったメッセージに既読がついていなかった。
きれいなベット、畳まれたパジャマ。
起きたことは確かなようだ。
水川はあいりに電話をかけてみたが、出なかった。
もしかして、やっぱり俺のことが嫌になって、自分の家かこおりさん家に戻った?
何かしたっけ?
キスし過ぎて息が出来ないって怒られたし、
困った顔が見たくて、意地悪し過ぎて怒られたし、
料理してるのに、抱きついて怒られたし、
好き好き言い過ぎて、引かれたのかもしれない。
何か俺、全然ダメじゃない?
良かれと思ってしたことを彼女は本当に喜んでいたか。
嬉しすぎて最近調子に乗っていなかったか。
元々自分は1人の時間が好きな人間なのに、彼女にはちゃんと自由を与えていたか。
思えば、付き合った彼女に振られ続けてきたのは自分で、ちゃんと好きになって、まともに付き合ったこともない。
25歳にして、俺はかなり恋愛初心者だ。やばい。あいりには絶対振られたくないのに。
どうしよう。人の恋愛話ちゃんと聞いておけば良かった。あいり、どこ行ったんだ?
最終手段でこおりさんに電話してみようかとスマホを見たとき、玄関でドアの開く音がした。
「わー、優くんごめんね。遅くなっちゃったから優くんの帰りに間に合わなかったー」
部屋に入ってきたあいりは汗だくで、手に持った紙袋からは香ばしい良い匂いがした。
「あいり」
俺は泣きそうだった。あんなに泣いたことなかったのに。
「バイトかわってくれたから、美味しい朝御飯用意しようと思って、パン屋さんに行ってきたの。開店が8時半だったから、帰ってくるのに間に合わなかったね、ごめん」
まだ朝とはいえ、真夏に走って帰ってきたらしく、彼女の息は弾んでいた。
「あいり、俺連絡」
「あー、連絡くれてたの?スマホ家に忘れちゃってごめんね」
そこまで言うと、あいりはパンを置いて俺を抱き締めた。
「心配かけてごめんね。優くん、おかえりなさい。バイトありがとう」
あいりは俺に頬にキスをして、アイスティーをコップに注ぎ、パンを机に並べた。
「優くん、食べよ?どうしたの?お腹空いてなかった?」
浮かない顔の俺に彼女はきいた。浮かんだ疑問は解消したくて俺は話し始めた。
「あいり、俺、今までまともに付き合ってきたことなくて、ちゃんと『良い彼氏』出来てたかな?嫌な思いさせてないかな?」
俺の質問に、彼女はすごく不思議そうな顔をした。
「私、優くんに嫌な思いになったことなんて、1度もないよ?
もしもそういうことあったら、ちゃんと言うから、優くんも私に不満があったら言って欲しいな」
彼女はにっこり微笑んだ。
「あいりはたまに寝てるとき、俺の上に足が乗っかってる。その暴れん坊な感じが、起きてるときとのギャップ萌えで俺は夜中に起きちゃうことがある」
あいりは少し驚いて申し訳なさそうにした。こおりさんには乗っかってなかったのだろうか?
「それは、ごめんね。気を付けるね」
「可愛すぎてずっと離していたくなくて辛い。あと好きすぎて」
まだ話そうとする俺の声を彼女は遮った。
「ふふっ、優くん、焼きたてメロンパン冷めちゃうから食べよ?」
彼女が差し出したメロンパンは見た目にもカリカリで甘い匂いがした。
そして、彼女は俺に嬉しい褒め言葉をくれた。
「心配しなくても私は優くんの彼女で最高に幸せだよ。むしろ私が頑張らなきゃだから。これからもよろしくお願いします」
俺はとても元気になって、彼女と一緒に朝御飯を食べた。
あいりはいつも俺の欲しい言葉と幸せな時間をくれる。この子は俺よりもきっと恋愛上級者だ。
少女漫画でも読んで勉強するかな?出水が持ってるかも。
俺は今日も彼女の研究をする。
地道に、観察して、時間を使って。
だって俺は恋愛初心者だから。でも誰よりもこの子を理解して幸せにしたいから。
「あいりー?帰ったよ」
狭い家の中を見渡してもいない。とりあえず買ってきたアイスを冷凍庫にいれる。
スマホを見ても、水川が帰るときに送ったメッセージに既読がついていなかった。
きれいなベット、畳まれたパジャマ。
起きたことは確かなようだ。
水川はあいりに電話をかけてみたが、出なかった。
もしかして、やっぱり俺のことが嫌になって、自分の家かこおりさん家に戻った?
何かしたっけ?
キスし過ぎて息が出来ないって怒られたし、
困った顔が見たくて、意地悪し過ぎて怒られたし、
料理してるのに、抱きついて怒られたし、
好き好き言い過ぎて、引かれたのかもしれない。
何か俺、全然ダメじゃない?
良かれと思ってしたことを彼女は本当に喜んでいたか。
嬉しすぎて最近調子に乗っていなかったか。
元々自分は1人の時間が好きな人間なのに、彼女にはちゃんと自由を与えていたか。
思えば、付き合った彼女に振られ続けてきたのは自分で、ちゃんと好きになって、まともに付き合ったこともない。
25歳にして、俺はかなり恋愛初心者だ。やばい。あいりには絶対振られたくないのに。
どうしよう。人の恋愛話ちゃんと聞いておけば良かった。あいり、どこ行ったんだ?
最終手段でこおりさんに電話してみようかとスマホを見たとき、玄関でドアの開く音がした。
「わー、優くんごめんね。遅くなっちゃったから優くんの帰りに間に合わなかったー」
部屋に入ってきたあいりは汗だくで、手に持った紙袋からは香ばしい良い匂いがした。
「あいり」
俺は泣きそうだった。あんなに泣いたことなかったのに。
「バイトかわってくれたから、美味しい朝御飯用意しようと思って、パン屋さんに行ってきたの。開店が8時半だったから、帰ってくるのに間に合わなかったね、ごめん」
まだ朝とはいえ、真夏に走って帰ってきたらしく、彼女の息は弾んでいた。
「あいり、俺連絡」
「あー、連絡くれてたの?スマホ家に忘れちゃってごめんね」
そこまで言うと、あいりはパンを置いて俺を抱き締めた。
「心配かけてごめんね。優くん、おかえりなさい。バイトありがとう」
あいりは俺に頬にキスをして、アイスティーをコップに注ぎ、パンを机に並べた。
「優くん、食べよ?どうしたの?お腹空いてなかった?」
浮かない顔の俺に彼女はきいた。浮かんだ疑問は解消したくて俺は話し始めた。
「あいり、俺、今までまともに付き合ってきたことなくて、ちゃんと『良い彼氏』出来てたかな?嫌な思いさせてないかな?」
俺の質問に、彼女はすごく不思議そうな顔をした。
「私、優くんに嫌な思いになったことなんて、1度もないよ?
もしもそういうことあったら、ちゃんと言うから、優くんも私に不満があったら言って欲しいな」
彼女はにっこり微笑んだ。
「あいりはたまに寝てるとき、俺の上に足が乗っかってる。その暴れん坊な感じが、起きてるときとのギャップ萌えで俺は夜中に起きちゃうことがある」
あいりは少し驚いて申し訳なさそうにした。こおりさんには乗っかってなかったのだろうか?
「それは、ごめんね。気を付けるね」
「可愛すぎてずっと離していたくなくて辛い。あと好きすぎて」
まだ話そうとする俺の声を彼女は遮った。
「ふふっ、優くん、焼きたてメロンパン冷めちゃうから食べよ?」
彼女が差し出したメロンパンは見た目にもカリカリで甘い匂いがした。
そして、彼女は俺に嬉しい褒め言葉をくれた。
「心配しなくても私は優くんの彼女で最高に幸せだよ。むしろ私が頑張らなきゃだから。これからもよろしくお願いします」
俺はとても元気になって、彼女と一緒に朝御飯を食べた。
あいりはいつも俺の欲しい言葉と幸せな時間をくれる。この子は俺よりもきっと恋愛上級者だ。
少女漫画でも読んで勉強するかな?出水が持ってるかも。
俺は今日も彼女の研究をする。
地道に、観察して、時間を使って。
だって俺は恋愛初心者だから。でも誰よりもこの子を理解して幸せにしたいから。
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