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第3章
うつる 6月17日
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あいりから、【こおりくんのお家にいきたいです】と連絡が来たのは6月17日の金曜日の昼だった。メッセージを見た瞬間、ガッツポーズを取ってしまい、周りがビックリする程こおりは嬉しかった。
【1人で移動は心配だし、荷物もあるだろうから仕事終わりに迎えに行く。荷物は俺が手伝うから無理して準備しなくていいから。一緒に帰ろう】と返すと、OKと可愛いネコが動くスタンプが返ってきた。その日の仕事はかなり集中して取り組み、何とか定時に帰ることができた。
気が急いで、必要ないのに少し走った。あいりの家の鍵を開けて入ると、あいりが「こおりくん、おかえりなさい」と出迎えてくれた。
おかえりなさいの一言が堪らなく嬉しくて、思わず彼女を抱き締めたかったが、何とか笑顔になるだけで身体は動かさなかった。
あいりは既に荷物をまとめてくれていた。そんなに物は無かった。足りないものは買えばいいし、実は前から既に彼女が来てくれることを期待して色々用意してあった。
水道の蛇口や戸締まりを2人で確認して、家を出る。彼女の荷物を持って歩けることが幸せだった。タクシーを呼ぼうとしたが、あいりが大丈夫だよ、歩きたいなと行ったので、駅までの道を2人で歩いた。電車は隣の席に座ったけれど、付き合っていた頃は空いていなかった2人の間に、こおりが隙間を少し空けた。
家に着いて、あいりを座らせて温かいお茶を入れる。手伝おうとする彼女の膝にブランケットを掛け、いいから座っててと声をかけた。
「久々に外に出たから疲れただろ?」
ソファーに身を委ねる彼女は、少しぐったりとしていた。
「大丈夫だよ、こおりくん。ありがとう」
彼女は目を開けて、こおりの方を見て答えてくれた。美味しいとゆっくりお茶を飲む彼女が愛しかった。
あいりが来た時の為に、元々置いてあったあいりの歯ブラシはピンクの新しいものに替えておいた。
シャンプーやボディソープも会社の女性社員に聞いて、気に入りそうなものを用意しておいた。部屋着は数着買ってあるし、布団も新しいものに変えた。
あいりが食べやすい飲料や食品も冷蔵庫や冷凍庫の中に詰まっている。
仕事の休み時間と、寝る前や移動時間等にネットを駆使し、こおりはあいりがいつ来ても良いように準備していた。
「用意はしておいたけど、好みに合うかわかんないから、この週末、足りないものは買いに行こう。外出るのが無理なら、ネットか俺が買ってくるから」
優しく声をかけると、あいりは微笑んでくれた。
「平日は仕事で家空けるけど、テレビはネット契約してるから好きなの見てていいし、あるもの食べていいから。仕事終わらせたらすぐ帰ってきて、ご飯作るよ。料理少しはするようになったんだ」
「そんなにしてくれなくても大丈夫だよ。ありがとう。ごめんね」
申し訳なさそうに謝るあいりにこおりはしまったと思った。
「謝るのは俺の方だよ。ごめんな。
好きな人のために色々したいのは当たり前だし、今幸せなんだ。色々させてもらえるのが。
前は俺、自分の見栄ばっかりで、ほんと馬鹿だったけど、前からずっと俺はあいりのことが大好きだよ。あいりに言ったネガティブなこと、全部他のやつにあいりをとられたくなくて言った嘘だから。
あいりと俺の価値観が違うのなんて、俺が最低だから、当たり前なんだ。そんな俺と付き合ってくれてありがとう。
あいりは俺のことは気にせずに、他に好きな人作って、幸せになってほしい」
あいりの目がこおりをじっと見つめていた。
「こおりくん、すごく変わったね」
「うん、俺最近すごい幸せなんだ。ありがとう」
その後は、2人でご飯を食べた。あいりはまだあまり食べられなかったけれど、美味しいと少しだけ口にした。
あいりの部屋にあった布団やカーテンと同じ色の、真新しい空色の布団と大きなネコの抱き枕を見て、あいりは笑ってくれた。
「一緒に寝ないの?」
と聞かれたときは、心がざわめいたけれど、
「大好きな子と一緒の布団にいて、触れずにいられる程、俺は心大きくないよ。ほら
水川さんもミジンコって呼んでただろ?」
と断った。
この週末は結局外に出ることはなかった。
2人の肌が触れあうのは、この翌日のことになる。
【1人で移動は心配だし、荷物もあるだろうから仕事終わりに迎えに行く。荷物は俺が手伝うから無理して準備しなくていいから。一緒に帰ろう】と返すと、OKと可愛いネコが動くスタンプが返ってきた。その日の仕事はかなり集中して取り組み、何とか定時に帰ることができた。
気が急いで、必要ないのに少し走った。あいりの家の鍵を開けて入ると、あいりが「こおりくん、おかえりなさい」と出迎えてくれた。
おかえりなさいの一言が堪らなく嬉しくて、思わず彼女を抱き締めたかったが、何とか笑顔になるだけで身体は動かさなかった。
あいりは既に荷物をまとめてくれていた。そんなに物は無かった。足りないものは買えばいいし、実は前から既に彼女が来てくれることを期待して色々用意してあった。
水道の蛇口や戸締まりを2人で確認して、家を出る。彼女の荷物を持って歩けることが幸せだった。タクシーを呼ぼうとしたが、あいりが大丈夫だよ、歩きたいなと行ったので、駅までの道を2人で歩いた。電車は隣の席に座ったけれど、付き合っていた頃は空いていなかった2人の間に、こおりが隙間を少し空けた。
家に着いて、あいりを座らせて温かいお茶を入れる。手伝おうとする彼女の膝にブランケットを掛け、いいから座っててと声をかけた。
「久々に外に出たから疲れただろ?」
ソファーに身を委ねる彼女は、少しぐったりとしていた。
「大丈夫だよ、こおりくん。ありがとう」
彼女は目を開けて、こおりの方を見て答えてくれた。美味しいとゆっくりお茶を飲む彼女が愛しかった。
あいりが来た時の為に、元々置いてあったあいりの歯ブラシはピンクの新しいものに替えておいた。
シャンプーやボディソープも会社の女性社員に聞いて、気に入りそうなものを用意しておいた。部屋着は数着買ってあるし、布団も新しいものに変えた。
あいりが食べやすい飲料や食品も冷蔵庫や冷凍庫の中に詰まっている。
仕事の休み時間と、寝る前や移動時間等にネットを駆使し、こおりはあいりがいつ来ても良いように準備していた。
「用意はしておいたけど、好みに合うかわかんないから、この週末、足りないものは買いに行こう。外出るのが無理なら、ネットか俺が買ってくるから」
優しく声をかけると、あいりは微笑んでくれた。
「平日は仕事で家空けるけど、テレビはネット契約してるから好きなの見てていいし、あるもの食べていいから。仕事終わらせたらすぐ帰ってきて、ご飯作るよ。料理少しはするようになったんだ」
「そんなにしてくれなくても大丈夫だよ。ありがとう。ごめんね」
申し訳なさそうに謝るあいりにこおりはしまったと思った。
「謝るのは俺の方だよ。ごめんな。
好きな人のために色々したいのは当たり前だし、今幸せなんだ。色々させてもらえるのが。
前は俺、自分の見栄ばっかりで、ほんと馬鹿だったけど、前からずっと俺はあいりのことが大好きだよ。あいりに言ったネガティブなこと、全部他のやつにあいりをとられたくなくて言った嘘だから。
あいりと俺の価値観が違うのなんて、俺が最低だから、当たり前なんだ。そんな俺と付き合ってくれてありがとう。
あいりは俺のことは気にせずに、他に好きな人作って、幸せになってほしい」
あいりの目がこおりをじっと見つめていた。
「こおりくん、すごく変わったね」
「うん、俺最近すごい幸せなんだ。ありがとう」
その後は、2人でご飯を食べた。あいりはまだあまり食べられなかったけれど、美味しいと少しだけ口にした。
あいりの部屋にあった布団やカーテンと同じ色の、真新しい空色の布団と大きなネコの抱き枕を見て、あいりは笑ってくれた。
「一緒に寝ないの?」
と聞かれたときは、心がざわめいたけれど、
「大好きな子と一緒の布団にいて、触れずにいられる程、俺は心大きくないよ。ほら
水川さんもミジンコって呼んでただろ?」
と断った。
この週末は結局外に出ることはなかった。
2人の肌が触れあうのは、この翌日のことになる。
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