365日のこまり。

19日目 投げないボールは当たらない

こまりは丁寧に文字を書いていた。

紙に文字を書くのは久しぶりだ。

字が斜めにならないように淡いオレンジのラインペンで線をひく。その上に文字ひとつひとつをちょこんちょこんと乗せていく。

書いている紙は淡い黄色。春をイメージして選んでみた。

セロテープで券を真っ直ぐに貼る。右下に「よろしくお願いします」と吹き出しをつけたハリネズミを描く。

読みやすい字、ちょっと頑張りました感を出したハガキ、

「こんなもんでしょう」

こまりは懸賞ハガキを描いていた。

思えば最後に懸賞に応募したのはいつのことだろうか？

毎日食べる食パン、納豆や豆腐、ソーセージ、色々なものに応募券はついている。

実際に集めたりもしていたが、いつの間にか応募期限が過ぎていたり、集まりきらなかったりして、ここ数年応募するのに至っていなかった。

ネットで応募するものもたくさんあるが、迷惑メールと混ざりそうで、こまりは応募したことはなかった。

色とりどりのハガキサイズの紙、
可愛くてつい集めてしまった切手達、
無理なく食パンを食べて貯まった応募券、
有り余る時間、

今回は応募しない選択肢はなかった。


投函するついでに買い物も行ける。
スーパーの目の前のポストにすっとハガキを差し込む。
かたんっ静かに落ちていった。

投げないボールは当たらない。
当たらなくても困らない。
忘れた頃に当たった音がしたら嬉しい。

よろしくお願いしまーす！

こまりは心の中で呟いて、スーパーへ入っていった。


【今日できたこと】
・手持ち資源の有効活用