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第6話ー5
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ここ数日同様限界まで魔力を使い切る過酷な修行は月子が見ている中行われた。しかし今日の修行は更に過酷なものであった、全開の武具生成を行い倒れるまで続けた後霊薬での回復を何度も続けさせられていた。羌先生の態度は前日と打って変わり非情ともいえる厳しさだった。何度も倒れる勇吾に目もくれずただ立ち上がるのを持っている。そして体内魔力が枯渇するまでひたすら武具を生成し続ける事1時間、全身から吹き出る汗と魔力の枯渇で起きるブラックアウトが再び勇吾を襲う。白目を剥き倒れそうになる勇吾をすん出で抱き留める月子。
「先生、これ以上は無理です!勇吾君の体が持ちません。」
「いや、まだだ。勇吾まだ出来るだろ、立ち上がれ!」
「先生!」
勇吾を庇う様に抱きしめる月子に向けて羌先生は普段聞いた事のないような恐ろしい声で恫喝する。
「そこを退きなさい。退かぬならたとえ君でも容赦せぬぞ。」
今まで生きてきた中でこれほどの恐怖を感じた事のない殺意にも似た圧を受け体が無意識に強張る月子だったがそれでも勇吾を強く抱きしめ彼から離れず羌先生と対峙する。すると朦朧としていたはずの勇吾の目に僅かばかり光が戻る。
「何言ってくれてんだ…月子を傷つけるなら師匠でも…容赦しない…」
「なら立ち上がれ。でなければ…『断谷戈』」
数万の戈が二人の周りに降り注ぎ地形を変えていく。
「その娘を殺すぞ。」
師の放った信じられない言葉に唖然とする勇吾。
「師匠、笑えないぜ。似合わない冗談は止せよ。」
しかし勇吾の言葉を遮るかのように二本の槍が勇吾の頬と月子の腕を掠めて行く。頬に鋭い痛みを感じ触れると自身の血で指が濡れた、恐る恐る抱き付いている月子を見るとその腕からは消して浅くない傷そして大量の血で月子の制服を汚していた。
「月子!」
「…大丈夫、大丈夫だから。」
傷つき震える彼女を見て勇吾の中で少しずつ何かが剥がれ落ちていき彼の魔力の質が禍々しいものに変化していく。それに呼応するかのように羌が姿を変える。金色の長い髪を靡かせ額には雄雄しい角、紅に染め抜かれた荘厳な鎧を纏った彼の本来の姿で月子を抱きしめる勇吾の前に現れた。
「お前にこの姿を見せるのは初めてだな。俺がこの姿に成ったと言う事はお前の中で覚醒が始まった証拠だ。」
先ほど斬られた頬の傷は既に癒え空になったはずの魔力は急速に回復し始めている。しかしその魔力の質が普段の勇吾のモノではないと察した月子が勇吾を見上げる。その怒りに満ちた恐ろしい形相に傷ついたままの腕で勇吾の体を強く抱く。なぜだか分からないがとても嫌な予感を感じたからだ。
「勇吾君!駄目だよ、うちを見て!」
「つ・き・こ?」
「そんな怖い顔、勇吾君らしくないよ。」
月子の言葉は勇吾に届き怒りに満ちた形相が和らぎ始める。
「ふむ、霊核の暴走は最小限に留まったが魔力は不安定に揺らいでいるな。後一押し!勇吾!これを砕けぬなら二人諸共死ぬるぞ!!」
羌が構えるとその手に5mを越える巨大な槍が現れる。その穂先の狙いは勇吾と月子に定められている。
「見事必死を超えてみよ!」
二人に向けて放たれた槍が風を切り裂く轟音と迫り来る。
勇吾は月子を抱いたまま片手を槍に向けると魔力をその手に集中させると自分の魔力以外の何かが交じり合っている感覚に一瞬と惑うがその何かが決して嫌なモノでは無いと感じた。
頭は冴え渡り目前に迫っている師から放たれた槍に対してそれを防ぎきる術式が編まれていた。
『百壁盾!』
高密度の魔力で生み出された巨大な盾は幾重にも重なり合いまるで城壁のように二人を守り槍を遮る。
しかし羌の生み出した槍の威力はそれを上回り容易く貫いていく轟音を立てながら盾を貫いていく槍を迎え撃つ為、勇吾はなけなしの魔力でもう一つの武具を完成させる。それは体の内から零れ出る自分以外の魔力がもたらした神代の一撃必滅の剣。
「破山剣!!」
槍が最後の盾を貫くと同時に勇吾の手によって放たれた斬撃は
槍を切り裂きその余波で地面を斬り裂き羌の手前までその余波を届かせた。そこで勇吾の意識は完全に途切れる、薄れ行く意識の中勇吾が見たのは慌てて駆け寄る師の姿だった。
「先生、これ以上は無理です!勇吾君の体が持ちません。」
「いや、まだだ。勇吾まだ出来るだろ、立ち上がれ!」
「先生!」
勇吾を庇う様に抱きしめる月子に向けて羌先生は普段聞いた事のないような恐ろしい声で恫喝する。
「そこを退きなさい。退かぬならたとえ君でも容赦せぬぞ。」
今まで生きてきた中でこれほどの恐怖を感じた事のない殺意にも似た圧を受け体が無意識に強張る月子だったがそれでも勇吾を強く抱きしめ彼から離れず羌先生と対峙する。すると朦朧としていたはずの勇吾の目に僅かばかり光が戻る。
「何言ってくれてんだ…月子を傷つけるなら師匠でも…容赦しない…」
「なら立ち上がれ。でなければ…『断谷戈』」
数万の戈が二人の周りに降り注ぎ地形を変えていく。
「その娘を殺すぞ。」
師の放った信じられない言葉に唖然とする勇吾。
「師匠、笑えないぜ。似合わない冗談は止せよ。」
しかし勇吾の言葉を遮るかのように二本の槍が勇吾の頬と月子の腕を掠めて行く。頬に鋭い痛みを感じ触れると自身の血で指が濡れた、恐る恐る抱き付いている月子を見るとその腕からは消して浅くない傷そして大量の血で月子の制服を汚していた。
「月子!」
「…大丈夫、大丈夫だから。」
傷つき震える彼女を見て勇吾の中で少しずつ何かが剥がれ落ちていき彼の魔力の質が禍々しいものに変化していく。それに呼応するかのように羌が姿を変える。金色の長い髪を靡かせ額には雄雄しい角、紅に染め抜かれた荘厳な鎧を纏った彼の本来の姿で月子を抱きしめる勇吾の前に現れた。
「お前にこの姿を見せるのは初めてだな。俺がこの姿に成ったと言う事はお前の中で覚醒が始まった証拠だ。」
先ほど斬られた頬の傷は既に癒え空になったはずの魔力は急速に回復し始めている。しかしその魔力の質が普段の勇吾のモノではないと察した月子が勇吾を見上げる。その怒りに満ちた恐ろしい形相に傷ついたままの腕で勇吾の体を強く抱く。なぜだか分からないがとても嫌な予感を感じたからだ。
「勇吾君!駄目だよ、うちを見て!」
「つ・き・こ?」
「そんな怖い顔、勇吾君らしくないよ。」
月子の言葉は勇吾に届き怒りに満ちた形相が和らぎ始める。
「ふむ、霊核の暴走は最小限に留まったが魔力は不安定に揺らいでいるな。後一押し!勇吾!これを砕けぬなら二人諸共死ぬるぞ!!」
羌が構えるとその手に5mを越える巨大な槍が現れる。その穂先の狙いは勇吾と月子に定められている。
「見事必死を超えてみよ!」
二人に向けて放たれた槍が風を切り裂く轟音と迫り来る。
勇吾は月子を抱いたまま片手を槍に向けると魔力をその手に集中させると自分の魔力以外の何かが交じり合っている感覚に一瞬と惑うがその何かが決して嫌なモノでは無いと感じた。
頭は冴え渡り目前に迫っている師から放たれた槍に対してそれを防ぎきる術式が編まれていた。
『百壁盾!』
高密度の魔力で生み出された巨大な盾は幾重にも重なり合いまるで城壁のように二人を守り槍を遮る。
しかし羌の生み出した槍の威力はそれを上回り容易く貫いていく轟音を立てながら盾を貫いていく槍を迎え撃つ為、勇吾はなけなしの魔力でもう一つの武具を完成させる。それは体の内から零れ出る自分以外の魔力がもたらした神代の一撃必滅の剣。
「破山剣!!」
槍が最後の盾を貫くと同時に勇吾の手によって放たれた斬撃は
槍を切り裂きその余波で地面を斬り裂き羌の手前までその余波を届かせた。そこで勇吾の意識は完全に途切れる、薄れ行く意識の中勇吾が見たのは慌てて駆け寄る師の姿だった。
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