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第十五章

レベル234 ファンハート帝国ボンジュール地方

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「久しぶりねアスカ」
「えっ、ベル姉じゃない!」

 どうしてここに居るの!? と驚いた表情を見せるアスカさん。

 今回の遠征はサヤラとティニーがついてくる事になった。
 それならということでアポロも現在、人の姿をとっている。
 カシュアの奴も、戦闘状態でもないのに剣の姿になっている必要もあるまい。

 おかげで今のオレは丸腰だがな。

 神秘の滝に行くメンバーは、アポロ、サヤラ、ティニー。
 それにオレとカシュア、状況を見てアスカさんも入ってくれるそうだ。
 ラピスの奴は、なんかいつの間にかピクサスレーンに来ていたのだが、なにやら犬の躾けで忙しいらしく、今回はお留守番をするとのこと。

 犬ってなに?
 どこで拾ってきたの?
 なんだか嫌な予感がするなあ。

 まあとにかく、問題は神秘の泉。
 メタル鉱石がいっぱいあるなら、鉱石Mも新たにゲットしたいなあ。
 今手元にあるのはノーマルカードが2枚、クリスタルカードが1枚。

 1枚ぐらい使っても大丈夫だよね?

 で、まずはダンジョンに行く前にアスカさんの実家に寄ったのだが、扉を叩くと一人の女性が飛び出して来てアスカさんを抱き締める。
 どうやらアスカさんの幼馴染のご様子。

「紹介するわね、こちらベルスティア。小さい頃からの友人なの」
「どうもベルスティアですわ。幼い頃にアスカのお父上に命を救われて以来、こうしてお付き合いをさせて頂いていますの」

 それにつられてオレ達も自己紹介をする。
 するとなにやら熊のような人物が奥から現れる。
 えっ、あれがアスカさんのパパさんなの?

 うわあ、親子そろってムキムキなんですね。イダダダ、すいません、そうッスよね! ムキムキなのはパパさんだけですよね!

「君はアスカと一体どういう関係なのかな?」

 そのパパさん、アスカさんに羽交い絞めにされているオレに、恐ろしげな風貌を近づけてくる。

「えっ、もしかしてそういう関係なの!? やるわねアスカ……」
「ほう……」
「違う! 違うッス!」

 オレには他に愛する妻と子が。
 えっ、どれが妻だって?
 いや妻はここには居ませんが?

「ほほう、愛する妻をほっといて、こんなハーレムパーティを……」

 なにやら一段と迫力を増すパパ様。
 いや違う、違うッス、少なくともコイツは男ですよ!
 そう言ってカシュアを指差す。

 こんなおっぱいでけえ男が居るかっ! って一蹴されました。そりゃそうですよね。

 でもそんな事、言ったらアスカさんだって逆ハーレムのパーティじゃない?

「あいつらが私をそんな目で見てると思う?」
「いや、そんな気配はないですけど」

 ひとりは明らかにサキュバスさんに熱をあげてたし。

「はい注目~、クイーズ君の事いいなあと思っているひと~」

 ビシッとアポロが手を挙げる。
 カシュアなんて楽しそうに両手を挙げている。
 サヤラはちょっと恥ずかしそうに、ちょこんと手を立てる。

 それを見てティニーが慌てて手を挙げた。

「おいティニー!」
「いや、ここはそういう流れなのかと思ったッス」

 などという一悶着があった後、アスカさんとパパさんは家族のお話があるそうなので奥の部屋に引きこんで行く。
 なお、ママさんは戦争で亡くしているそうな。

「さてと」

 なにやらベルスティアさんが居住まいを正してこちらへ向く。
 深くお辞儀をしてオレに話しかけてくる。

「我が国ファンハートへようこそおいでくださいました、クイーズ卿」

 ふむ……実は先ほどから、このお方の護衛と思われる人物が数名ほど姿を隠して家の外で待機している。
 人は誰しも固有の振動というものを持っている。
 音の世界に行って以来、なぜかそれを感じられる様になった。

 なので、誰がどこに居るかはよく分かる。そのだいたいの力量も含めて。

 実はオレの方にも、一人手練れの元アサシンさんが見えない所から護衛をしてくれている。
 で、どうやらこのお方についてる人達もそれと同じぐらいの手練れに思えた。
 アンダーハイトのトップレベル並みの護衛がついているんだ、それなりの地位の御仁であろう。とは思っていたのだが。

「先ほどの自己紹介、アレはアスカにだけしているものです、なのでアスカには内緒にしておいてもらいたいのですが」

 そう言って口に一本指を立ててウィンクする。
 結構お茶目な人だな。

「私の本名はベルスティア・グラス・ファンハート。この国ファンハートの第三王女でございます」

 なんと! 本物のお姫様の登場でござった。
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