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第十五章
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紛らわしい言い方すんな。ってパーティメンバーの男性を小突いているアスカさん。
「えっ、お姫様なの?」
「違う違う、コイツが勝手に言ってるだけよ」
「だっておめえ、お嬢様とか言われてたじゃねえかよ」
小突かれていた男性が、からかうような口調でそう言っている。
「もしかしてどっかの、いいとこのお嬢さんだったとか?」
「違うって。パパがね、昔の戦争でそこそこの地位にいたらしくて、元部下の人にそう呼ばれているだけよ」
突き出した両手を、高速で左右に振りながらそんな事を言うアスカさん。
その手、危ないんでちょっと止めてもらえません?
ほら、風圧でスラミィの子供さんが飛ばされそうですよ?
さすが格闘家のスキル持ち、素手での攻撃はプラスアルファ。
「別に攻撃じゃないわよ」
なんでもアスカさんのパパさんは、その昔、一部隊の隊長をされていたそうな。
結構な武功も挙げられ、幾つかの賞状もあるとか。
しかし今は神秘の滝付近の、辺境の村で畑を耕しているそうな。
「あそこの国は血統主義だからな、いくら武功を挙げても、古代王国の末裔じゃなきゃ貴族にはなれないらしいし」
「そうだな、アスカの親父さんがファンハートじゃなきゃ、きっと今ごろアスカもお貴族様だったに違いない」
「ちょっと止めてよ、私が貴族なんかになれると思う?」
「「「思わない」」」
アスカさん以外の全員の声がハモった。
おまえらぁ、とちょっと怒りぎみだ。
先ほどの話でも出たが、ファンハートの国は血統主義。
古代王国の末裔は1等国民、それ以外は2等国民と言われている。
1等国民でなければ貴族にはなれないし、古代王国の末裔以外は下級国民とみなされ差別されているそうな。
その末裔とやらはどうやって判断しているの、と聞いてみると、なにやら血統書なるものがあるらしい。犬かな?
先祖代々受け継がれている魔法的な処置を施した血統書なるものがあり、それを持っていなければ大きな街での滞在も制限があるし、武器、防具、魔道具などの所持も決まりがある。
結婚だって、1等国民が2等国民と結婚される場合、その子は2等国民とみなされるので、大きな壁になっているそうだ。
「古代王国の末裔ねえ……」
エフィールさんの話では滅んだって事だけどなあ。
今、南の諸国の人々は、聖皇国を打ち立てた先代、聖剣の導き手の部下だった人達らしい。
まあ、戦禍を逃れてどこかに隠れ住んでいた人が居ないともいいきれないけど。
「血統書の魔法的な処置っていっても、そんな大層な魔法じゃないからね。神殿にお金を握らせて偽造をしようと思えばできる程度」
「アスカんちもやってもらえば良かったのに。それだけ活躍したなら金は持ってたんだろ?」
「全部、土地や畑でぶんどられたわよ。倍以上の値段でね」
どのみちパパは一等国民に嫌気がさしてたから、辺境でのんびりできる今が最高だって言ってるわよ。などと言う。
差別がある所じゃ暮らすのも大変そうだしなあ。
される方だけじゃなくする方も、したくなくてもしなくちゃならない。
なにより子供の教育に良くない。
差別をしてもいいと教えると、それは1等、2等の差別だけじゃなく、様々なものに普及する。
子供はそれを区別できないからだ。
そしてそんな子供達が大人になると、全てに差別する事が普通の世の中になる。
まあそんな国だからこそ、あんな無茶なことを平気で言いだすのだろうが。
「ただ、そういう国は、パワーバランスさえ崩してしまえば脆いんだよなあ……」
「ちょっと恐ろしい事考えないでよ、なんかラピスちゃんの影響うけてきてない?」
ええっ!? そんなはずは……ないと思いたい! ないよね?
◇◆◇◆◇◆◇◆
暫く実家にも帰ってないという事で、里帰りがてら神秘の滝に案内してもらえる事になった。
よくよく考えたら、ファンハートと敵対しているのは聖皇国を中心とした派閥。
ピクサスレーンはそことつい最近まで戦争していたので、別段、ファンハートと仲が悪い訳じゃない。
ファンハートの国籍を持っているアスカさんの付き添いで、ピクサスレーンから旅行というのなら特に問題がある行動じゃなかった。
で、準備が整うまでおやっさんの店に泊まり込む事になった訳だが。
「よう、ちょっと相談があるんだが」
なにやらアスカさんのパーティメンバーの1人が手招きしている。
「えっ、カード化してもらいたいモンスターが居る」
「ああそうだ、まあ、できればでいいんだが……」
その人に連れられて街の外まで出る。
暫く森を進むと月夜に照らされた美しい泉にたどり着く。
そこでは1匹のモンスターが裸で水浴びをしていた。
それは美しい人型の少女。
その少女はオレの隣の男性を見ると走り寄って飛びつく。
「おっ、おい、服着ろ、服!」
男性は慌てて少女を木陰に連れて行く。
うむ、いいものが見れた。
というかあのモンスター、もしかして、かの有名な……
「サキュバスのフフって言うんだ、こないだ森で拾った」
「そういやお兄さん、最近色艶がいいですね、さては……」
「いやいや! さすがにまだ子供だから! 手を出して無いから!」
というか最近ってキミ、あんまりこっちに顔出していないよね? って言う。
うん、カマかけてみました。
すんません。
でもいつかは手を出すんでしょ?
「えっ、お姫様なの?」
「違う違う、コイツが勝手に言ってるだけよ」
「だっておめえ、お嬢様とか言われてたじゃねえかよ」
小突かれていた男性が、からかうような口調でそう言っている。
「もしかしてどっかの、いいとこのお嬢さんだったとか?」
「違うって。パパがね、昔の戦争でそこそこの地位にいたらしくて、元部下の人にそう呼ばれているだけよ」
突き出した両手を、高速で左右に振りながらそんな事を言うアスカさん。
その手、危ないんでちょっと止めてもらえません?
ほら、風圧でスラミィの子供さんが飛ばされそうですよ?
さすが格闘家のスキル持ち、素手での攻撃はプラスアルファ。
「別に攻撃じゃないわよ」
なんでもアスカさんのパパさんは、その昔、一部隊の隊長をされていたそうな。
結構な武功も挙げられ、幾つかの賞状もあるとか。
しかし今は神秘の滝付近の、辺境の村で畑を耕しているそうな。
「あそこの国は血統主義だからな、いくら武功を挙げても、古代王国の末裔じゃなきゃ貴族にはなれないらしいし」
「そうだな、アスカの親父さんがファンハートじゃなきゃ、きっと今ごろアスカもお貴族様だったに違いない」
「ちょっと止めてよ、私が貴族なんかになれると思う?」
「「「思わない」」」
アスカさん以外の全員の声がハモった。
おまえらぁ、とちょっと怒りぎみだ。
先ほどの話でも出たが、ファンハートの国は血統主義。
古代王国の末裔は1等国民、それ以外は2等国民と言われている。
1等国民でなければ貴族にはなれないし、古代王国の末裔以外は下級国民とみなされ差別されているそうな。
その末裔とやらはどうやって判断しているの、と聞いてみると、なにやら血統書なるものがあるらしい。犬かな?
先祖代々受け継がれている魔法的な処置を施した血統書なるものがあり、それを持っていなければ大きな街での滞在も制限があるし、武器、防具、魔道具などの所持も決まりがある。
結婚だって、1等国民が2等国民と結婚される場合、その子は2等国民とみなされるので、大きな壁になっているそうだ。
「古代王国の末裔ねえ……」
エフィールさんの話では滅んだって事だけどなあ。
今、南の諸国の人々は、聖皇国を打ち立てた先代、聖剣の導き手の部下だった人達らしい。
まあ、戦禍を逃れてどこかに隠れ住んでいた人が居ないともいいきれないけど。
「血統書の魔法的な処置っていっても、そんな大層な魔法じゃないからね。神殿にお金を握らせて偽造をしようと思えばできる程度」
「アスカんちもやってもらえば良かったのに。それだけ活躍したなら金は持ってたんだろ?」
「全部、土地や畑でぶんどられたわよ。倍以上の値段でね」
どのみちパパは一等国民に嫌気がさしてたから、辺境でのんびりできる今が最高だって言ってるわよ。などと言う。
差別がある所じゃ暮らすのも大変そうだしなあ。
される方だけじゃなくする方も、したくなくてもしなくちゃならない。
なにより子供の教育に良くない。
差別をしてもいいと教えると、それは1等、2等の差別だけじゃなく、様々なものに普及する。
子供はそれを区別できないからだ。
そしてそんな子供達が大人になると、全てに差別する事が普通の世の中になる。
まあそんな国だからこそ、あんな無茶なことを平気で言いだすのだろうが。
「ただ、そういう国は、パワーバランスさえ崩してしまえば脆いんだよなあ……」
「ちょっと恐ろしい事考えないでよ、なんかラピスちゃんの影響うけてきてない?」
ええっ!? そんなはずは……ないと思いたい! ないよね?
◇◆◇◆◇◆◇◆
暫く実家にも帰ってないという事で、里帰りがてら神秘の滝に案内してもらえる事になった。
よくよく考えたら、ファンハートと敵対しているのは聖皇国を中心とした派閥。
ピクサスレーンはそことつい最近まで戦争していたので、別段、ファンハートと仲が悪い訳じゃない。
ファンハートの国籍を持っているアスカさんの付き添いで、ピクサスレーンから旅行というのなら特に問題がある行動じゃなかった。
で、準備が整うまでおやっさんの店に泊まり込む事になった訳だが。
「よう、ちょっと相談があるんだが」
なにやらアスカさんのパーティメンバーの1人が手招きしている。
「えっ、カード化してもらいたいモンスターが居る」
「ああそうだ、まあ、できればでいいんだが……」
その人に連れられて街の外まで出る。
暫く森を進むと月夜に照らされた美しい泉にたどり着く。
そこでは1匹のモンスターが裸で水浴びをしていた。
それは美しい人型の少女。
その少女はオレの隣の男性を見ると走り寄って飛びつく。
「おっ、おい、服着ろ、服!」
男性は慌てて少女を木陰に連れて行く。
うむ、いいものが見れた。
というかあのモンスター、もしかして、かの有名な……
「サキュバスのフフって言うんだ、こないだ森で拾った」
「そういやお兄さん、最近色艶がいいですね、さては……」
「いやいや! さすがにまだ子供だから! 手を出して無いから!」
というか最近ってキミ、あんまりこっちに顔出していないよね? って言う。
うん、カマかけてみました。
すんません。
でもいつかは手を出すんでしょ?
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