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第十三章

レベル208

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『ライオンハート・ハーモア』
 ☆5・レベル21
 スキル:獣人化
 備考:モンスターカード+1

『ダークエルフ・サウ』
 ☆2・レベル20
 スキル:幻惑+
 備考:モンスターカード+1

『エルフ・レリン』
 ☆2・レベル20
 スキル:器用貧乏
 備考:モンスターカード+1

 ハーモアは20レベルになっても特にスキルに変化はなし。
 その分ボーナスポイントは大量にあった。

 サウは幻惑に+がついた。
 作れる幻影の大きさが倍ぐらいに広がり『触れる』事が可能になった。

 とはいえ、実際に物質があるわけじゃなくて、そこにある、と思わせているだけのようだ。
 目を瞑って手を突き出せば普通に突き抜ける。
 触覚も人によって違う、自分がこう思う、といった感覚になるみたい。

 そして問題のレリンちゃん。
 器用貧乏のスキルが追加。
 器用貧乏ってあれだよな、どれもこれも卒なくこなす事が出来るが、一芸に秀でるのは難しいと言う。

 別に器用なこと自体は悪くはない。
 オールマイティーにどんな対応もこなせるならば、パーティメンバーとしてこれほど頼もしい存在はいない。
 一家に一台レリンちゃんって言っても良いぐらいだ。

 ただ、貧乏が付くってことは、その器用さを特化させることは難しいということだ。

「何か一つやりたい事が見つかっても、それに集中するには向いてないってことかな?」
「スキルはあくまでスキルだ。補助具でしかない、そこからどうするかは本人次第だ」
「無スキルで剣聖まで昇りつめたお前が言うと重たいなぁ」

 なお、ハーモアとサウは外見上の変化はなかったが、レリンは少し成長していた。
 小学校低学年から高学年ぐらい?
 服装も、質素な麻の服からシルクのような滑らかな材質に変わっている。

 ますますエルフっぽさに磨きが掛かっている。

「さて、本当にやるつもりなのか?」

 オレのその言葉に神妙な顔をして頷く、アポロ、サヤラ、ティニーの三人。

「あんな小さな子達がうち等の為に頑張ってくれたんスよ、もう後には引けないッス!」
「…………コクコク」
「クイーズさん、お願いします。私達をあなたのカードにしてください」

 そうか…………分かった! ラピス、頼む。

「ん、私ですか?」
「ああ、オレがやって万が一、人間以外になったら目も当てられない」

 というか確実に人間以外になる。
 カシュアレベルならまだましだが、下手すりゃ無機物になりかねない。
 鉱石Mやスラミィだって見た目はそのものだったが、中身は大きく違った。

 ラピスならば、その姿、能力をそのままカード化できる。

「……待って、それでも私はクイーズがいい」

 たとえどんな姿になっても、私と言う意思が消えたとしても、クイーズの傍にずっと居る事が出来るのなら、それでも構わない。みたいな事を言うアポロ。

「しかし……」
「アポロはね、きっとクイーズさんの特別になりたいんだと思うの。一番特別な席はなくなちゃったけど、だからこそ少しでもそんなところへ近づきたいんだ。だよね、アポロ」
「……サヤラ」

 そっとアポロの手をとって、頑張ってと励ますサヤラ。
 サヤラはいいの? と小さな声でアポロが呟く。
 いいんだよ。と言って微笑みを返すサヤラ。

「リーダー! まずはうちをカードにして欲しいッス。とりあえず、人間をカード化できるかどうか、それを試してみないことには始まらないッス!」

 ティニーがそんな二人を見て、決意を込めた瞳でラピスへ迫る。
 するとラピスは何かを諦めたように、一つ大きなため息をつく。

「そんなに肩肘張らなくても大丈夫ですよ。失敗したら解放すればいいだけですから」
「「「えっ!?」」」

 解放ってなに?
 えっ、カード統率のスキルには、ゲットしたモンスターをカードから切り離す機能が搭載されている?
 初耳よ?

 おめえ……いったいどんだけ隠し事してるのよ? ちょっと多過ぎじゃね?

「さすがにこれで全部ですよ?」
「ほんとかよ?」

 まあいい、解放出来るって言うのなら気軽に試すことも出来る。

「カードは消滅してしまうので、気軽には試さないで下さいね」
「分かってるって」
「それではまず、私がティニーをゲットしてみます」

 ラピスがティニーに向かってカードを掲げる、が、カードはなんの反応も示さない。
 やはり人間をゲットするのは無理なのだろうか?
 ティニーがちょっとだけホッとした表情を見せている。

「う~ん、やはり無理ですか……まあ、これが出来たらこのカード、無敵ですけど」
「そうか、駄目なものはしかたがない、せっかく子供達が頑張ってくれたが、これはコレで別の何かに使うしか」
「ちょっと待ってください、そういえばアレですよね! ほら、弱ってないと駄目だとか。ちょっとティニー、リーダーと戦って弱って」

「えっ!? 無茶言わないでくださいッス。ちょっ、サヤラ、押さないで欲しいッス!」

 まあまあと、そんな興奮しているサヤラをなだめるラピス。

「カードがまったく光らないという事はヒットポイントは関係ありませんよ」

 確かに。

 弱ってなくてもカードは光る。
 ただ弱って無ければ失敗になるだけだ。
 これでアポロも諦めがつくだろう。

 と、何気なくアポロに向かってカードを掲げた瞬間だった。

 カードから照らされた光がアポロの全身を包みこむ!
 ウォッ! ヤベッ!
 えっ、ゲット出来ないんじゃないの!?

「そのまま! そのままお願いっ!」

 オレがカードをしまおうとした時、アポロがいつになく大きな声で懇願してくる。
 そんなめったに聞かないアポロの大声に思わず手が止まってしまう。

「大丈夫、何になっても恨まない。どんなことになっても私は……ずっと傍に居たい」
「アポロ……」
「お坊ちゃま、良いんじゃないですか。どうしても駄目なら私が解放いたします」

 …………分かった!
 アポロ、お前をゲットさせてもらう!
 オレはモンスターカードを高々と掲げる。

「アポロ、本当に後悔しないんだな?」

 力強く頷くアポロ。

 ならば、来い、オレの元へ!

「モンスターカードよ! アポロをオレの元へ、導いてくれ!!」
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