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第十三章

レベル205 試練の洞窟

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「という事で、二人にも協力してもらいたいんだけど、どうかな?」

 二人の少年に、少し控えめの上目遣いで問いかけるレリンちゃん。
 少年達は、そんなレリンちゃんに見つめられて少し顔を赤くしている。

「なんだソイツラ、役に立つノカ?」

 サウがレリンに問いかける。
 片方の少年がダイギリ、現剣聖の息子で、剣の腕だけならロゥリ部隊の中でも一番の実力。
 もう片方は、最近仲間入りした烏天狗のムハク。

 レベルが1になった事により、能力はグリフォンドールの時より下がってはいるが、その知識、技術は健在で、モンスターが相手ならかなりの戦力になりそうだ。
 それに、クイーズがラピスに作らせた、錫杖という武器を用いればダイギリにさえ引けは取らない。
 しかし本人は、刀に固執しているので模擬戦ではいつも負けてばかりだが。

 レリンは自身の可能性を伸ばす為に、ロゥリ軍団や二人に混じって剣術の練習まで始めた。
 そのおかげかスキル候補に剣術も現れるように。
 それを見て益々精力的に練習に励むレリンちゃん。

 軍団の中でも数少ない女の子、頑張り屋で気が利く。

 エクサリーと一緒にお弁当の用意をしたり、疲れた皆にタオルを配って歩く。
 そんなレリンちゃんにニコッと笑いかけられて、コロッといく子が続出。
 それはこの二人も決して例外ではない。

「ああ、まあ、別にいいけどよ……なんだそのカード? それになれば良い事があるのか?」
「そりゃ良い事がありまくりだ! こんな風に望んだ姿になれるし、努力さえすれば確実に力は上がっていく!」
「……私も努力しているんだけど、あんまり上がってないのは、まだまだ足りてないのかな?」

 あっ、いやっ、レリンはきっと大器晩成なんだ。とシドロモドロに答えるムハク。
 みんなそう言って励ましてくれるけど、目線が明後日なんだよね。と落ち込むレリン。

「心配するなレリン、たとえ力がなくとも、この俺の傍に居れば傷一つ付けさせはしないぜ」
「お、俺だってお前一人ぐらい守って見せる!」
「ありがとう二人とも、そう言ってもらえると嬉しいよ」

 首を傾けて二人に微笑を返すレリン。
 さらに顔を赤くしていく二人の少年。

「ケッ、スっかり悪女が板にツイテルナ」
「天然は怖いな。まあいいんじゃねえか、戦力は増えそうだし」

 二人とも聞こえてるよ。と呟いた後、少年達に問いかける。

「問題はレベルを上げる場所なんだけど……」
「それなら任しとけ! 良い場所があるんだ」

 ムハクが言うには、アンダーハイトの山奥に高レベルのモンスターが居るダンジョンがあるらしい。
 そしてそこは常に封鎖されていて、アンダーハイトの山岳に登ってくる人間もいない。
 すなわち、少々暴れても誰にとがめられる事もないという訳だ。

「おい大丈夫なのか、そんな危険な所へ連れて行って?」

 ダイギリがムハクにそう耳打ちする。

「なんだ、自信がねえのか? だったら留守番してていいんだぜ」
「ムッ、そんな訳無いだろう。言っとくがこの中で一番強いのは俺だぞ」
「剣の腕がいいからってダンジョンでも役に立つとは限らねえぜ」

「ほらほら、もう喧嘩しないの。明後日から学校も連休だし、その時にでも行ってみようか?」

 ああ、任しとけ。といい返事を返す男の子達。
 しかして三日後、5人プラス、ミニアクアはムハクの里帰りに付いて行くと言う名目でアンダーハイトの山奥に到達するのであった。

「おい、いいのかほっといて?」
「可愛い子には旅をさせろとも言うだろう。説教は帰ってからでも出来る」
「相変わらずのスパルタな」

 しかして、そのメンバーの後を付けるオレとペンテグラム、アポロ達三人娘。

 アポロが、ちょっと小さくなって挙動不審なアクアを問い詰めたところ、子供達だけでダンジョンに向かうと言う。
 急いでオレに知らせにきてくれたのはいいが、止めさせようとしたオレに待ったをかけるペンテグラム。
 自分達の実力を知る良い機会になるだろう、いつまでも大人が引率していたのでは子供達の為にならん。などと言って。

 うちの子達は最悪何かあってもカードに戻るだけだが、ダイギリはそうはいかないだろう。
 他所様から預かった子を傷物にも出来まい。と言ったら、ならばこっそり後をつけて、危険そうなら手を貸すことにしようとなった。
 しかし、あの構成でまともに戦えるのか?

 戦力として数えられるのはダイギリとハーモアぐらいだろう。
 ムハクもレベルがまだまだ低く、グリフォンドールだった頃より力も落ちている。
 何より、人の体になってまだ日も浅い。

 刀と言う未知の武器を使う事もあり、戦力に数えるには心もとない。

 一応、うちのリーサルウェポンであるアクアの分身体がついているとはいえ、戦うのはレベルアップが必要な子供達である。
 しかも何やら怪しそうなダンジョンに潜って行く。
 ラピスから借りているスカウターで見たところ、難易度はAマイナスと表示される。

 Bがおそよ20レベル、Aが30レベル台。その間だから20後半ぐらいの敵だろう。

 せめてハーモアが、20超えていれば可能性はあるだろうが……
 やはり、今からでも止めたほうがいいのでは?

「やられてもカードに戻るだけなのだろう。なに、ダイギリは俺が見ておく」
「いやしかし」
「まったく、お前は少々過保護なところがある。自分の限界を試すには自分以上の敵にあたらねばならん」

 確かにペンテグラムの言う事にも一理ある。
 よし、カシュアを呼び出して、いつでもリミブレ使えるように……

「だからそれが過保護だと言うておるのだ」

「そうですよクイーズさん、もっと子供達を信じて上げましょう」
「…………大丈夫、いざとなれば私が魔法で援護する」
「うちの銃もあるッスよ」

 だったらオレは何をすればいいの?
 えっ、黙って見てろって?
 そんな殺生な。
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