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第十三章
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「反則ッスよねえ……」
「そうだよね、あのエクサリーさんの歌の後に、こんな凄い歌が続くなんて……えっ、どうしたのアポロ!? なんで泣いてるの?」
「…………二人とも、お似合い過ぎて、見てるのが辛い」
でも目が離せない。と呟いてポロポロと涙を零すアポロ。
涙で潤んだその瞳が、目の前で歌っているクイーズを捕らえて離さない。
あの声は、音は、私じゃない誰かに向けられている。
そう思うと無性に悲しくなってくる。
だけど、その音楽から離れられない。
心を締めつけられるけど、続きが聞きたくて堪らない。
ずっと、ずっと傍で、永遠にクイーズの歌を聞き続けていたい。
「…………羨ましい……エクサリーが羨ましすぎる」
思わすそう零れてしまう。
あそこに一緒に立っているのが自分だったらと思う。
自分が得たスキルが、魔法系統じゃなくて音楽系統だったら良かったと思う。
それか、クイーズに音楽の才能がなければ良かったのに、とも思ってしまう。
そしてそう思う自分に気づき、また涙が溢れてくる。
「アポロ……」
「……切ないッスね」
ウィンディーネのアクアが、そんなアポロの周りを飛び回りながらオロオロしている。
「アクア、なんとかならいッスか?」
ティニーにそう言われて困ったような顔をするアクア。
科学知識を持ってしても、人の心を動かすことは出来やしない。
う~ん、う~ん、と考えるも良い知恵は浮かばない。
「ねえアポロ、やっぱりクイーズさんの事は諦められない?」
コクリ、と頷くアポロ。
それを見てサヤラがなにやら決心したような顔をする。
「ティニー、あとで話があるんだけどちょっとかまわない?」
「なんとなく想像がつくッスけど、少しだけ考えさせて欲しいッス」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「えっ、オレのモンスターカードの一員に入れて欲しい?」
演奏が終わった後、護衛役としてついて来てもらっていたアポロ達が神妙な顔で話があるという。
とりあえず三人をオレの部屋に連れていき事情を聞いたところ、自分達もカシュアと同じようにモンスターカードの一員にしてもらえないだろうかと言う。
もしかしてカシュアの奴、またいらんでいい事を吹き込んだんじゃないだろうな?
というか、人間、取り込めるのだろうか?
鉱石や植物がいけるんだから大丈夫な気もしない事も無いが。
そう思うと、ミュージックプレイヤーの時はヤバかったな。
観客ゲットしていたら目もあてられないところだった。
「…………きっと役に立つ、ううん、必ず役に立って見せる。だから、お願い」
そう言われてもなあ、カードも使いきってしまっているし、さすがに道徳的にどうかと思う。
カシュアの場合は色々事故が重なった結果であって、偶々うまくいったという可能性が高い。
今度もうまくいくとはかぎらない。
というかアポロだけじゃなくて、サヤラやティニーまで?
「うちは迷ったんスけどね。二人が望むならやっぱ一緒がいいッス」
「私は、ほんとの事言うと、一人でも頼み込むつもりでした」
「ハイ、ちょっと待った」
なにやらギターちゃんが現れて待ったをかける。
「そっちのあんたはいいけど、そっちの二人はダメ」
なんでアポロだけ?
ギターちゃんがとある一点を見つめる。
「おい、今何で判断した!?」
まあまあ、おさえてアポロさん。
「ティニーには負けてないだろっ」
「いやうち、実は少し膨らんで……」
「な、なんだってぇええ」
愕然とした表情で膝をつくアポロ。
いや、成長期だし、アポロだって……
増えてない、増えてないんだよ、ワトソン君!
ワトソン君って誰ッスか?
そんなやりとりをしている二人を見やりながら考え込む。
どうやった諦めさせられるかな?
ギターちゃんの言うように、胸がないとダメとかにするか。
おっと逆か。
アポロ一人だけって言ったら、いつも一緒の三人の事、きっと諦めがつくのではないだろうか?
「アポロだけでも構いません、どうか、お願いします!」
「たとえアポロがモンスターになっても、うちらの友情に変わりはないッス」
ダメですか?
とはいえ、ついこないだまではちょうど三枚あった訳だが、全部使いきってしまった。
近々増えそうなのは、
『グリフォン・アイリスブラッド・カイザー』
☆8・レベル19
『ライオンハート・ハーモア』
☆5・レベル18
『ビックフット・アイリスブラッド・レーサー』
☆7・レベル18
この辺りか。
とはいえ、グリフォンのカイザーの分は、姫様が予約を入れている。
それに、元々レベルが高かったビックフットの20レベルで増えるかどうかは怪しい。
となると、次点は、
『ダークエルフ・サウ』
☆2・レベル17
スキル:幻惑
『エルフ・レリン』
☆2・レベル15
になる訳だが。
えっ、自分が40になれば2枚増える?
そうは言うがアクア、お前まだ31レベルだろ。
えっ、任せて欲しい? ちょっとそこらの集落をドッカンさせればすぐ。だって?
……いくら相手がモンスターでも大虐殺は止めてあげてください。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「なるほどなぁ、それでハー達にレベルを上げて欲しいと」
コクコクと頷くアクア。
「エエ話やないケ」
「うん、それなら協力しないとね!」
「でもどうする、ロゥリに手伝ってもらうのはリスクがでかいし、クイーズには、言わないほうがいいんだろ?」
考える余裕を持たせず、カードが出来たといって、なし崩し的に攻め込んだほうがいい。
結構その場の空気に流されやすい我等が主の事、急な話で持ちあげればなんとかなる可能性が高い。
皆、クイーズの事を良く知っているようだ。
「あっ、それなら、ちょっと心当たりがあるかも?」
「ほんとかレリン」
「うん、任しといて!」
「そうだよね、あのエクサリーさんの歌の後に、こんな凄い歌が続くなんて……えっ、どうしたのアポロ!? なんで泣いてるの?」
「…………二人とも、お似合い過ぎて、見てるのが辛い」
でも目が離せない。と呟いてポロポロと涙を零すアポロ。
涙で潤んだその瞳が、目の前で歌っているクイーズを捕らえて離さない。
あの声は、音は、私じゃない誰かに向けられている。
そう思うと無性に悲しくなってくる。
だけど、その音楽から離れられない。
心を締めつけられるけど、続きが聞きたくて堪らない。
ずっと、ずっと傍で、永遠にクイーズの歌を聞き続けていたい。
「…………羨ましい……エクサリーが羨ましすぎる」
思わすそう零れてしまう。
あそこに一緒に立っているのが自分だったらと思う。
自分が得たスキルが、魔法系統じゃなくて音楽系統だったら良かったと思う。
それか、クイーズに音楽の才能がなければ良かったのに、とも思ってしまう。
そしてそう思う自分に気づき、また涙が溢れてくる。
「アポロ……」
「……切ないッスね」
ウィンディーネのアクアが、そんなアポロの周りを飛び回りながらオロオロしている。
「アクア、なんとかならいッスか?」
ティニーにそう言われて困ったような顔をするアクア。
科学知識を持ってしても、人の心を動かすことは出来やしない。
う~ん、う~ん、と考えるも良い知恵は浮かばない。
「ねえアポロ、やっぱりクイーズさんの事は諦められない?」
コクリ、と頷くアポロ。
それを見てサヤラがなにやら決心したような顔をする。
「ティニー、あとで話があるんだけどちょっとかまわない?」
「なんとなく想像がつくッスけど、少しだけ考えさせて欲しいッス」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「えっ、オレのモンスターカードの一員に入れて欲しい?」
演奏が終わった後、護衛役としてついて来てもらっていたアポロ達が神妙な顔で話があるという。
とりあえず三人をオレの部屋に連れていき事情を聞いたところ、自分達もカシュアと同じようにモンスターカードの一員にしてもらえないだろうかと言う。
もしかしてカシュアの奴、またいらんでいい事を吹き込んだんじゃないだろうな?
というか、人間、取り込めるのだろうか?
鉱石や植物がいけるんだから大丈夫な気もしない事も無いが。
そう思うと、ミュージックプレイヤーの時はヤバかったな。
観客ゲットしていたら目もあてられないところだった。
「…………きっと役に立つ、ううん、必ず役に立って見せる。だから、お願い」
そう言われてもなあ、カードも使いきってしまっているし、さすがに道徳的にどうかと思う。
カシュアの場合は色々事故が重なった結果であって、偶々うまくいったという可能性が高い。
今度もうまくいくとはかぎらない。
というかアポロだけじゃなくて、サヤラやティニーまで?
「うちは迷ったんスけどね。二人が望むならやっぱ一緒がいいッス」
「私は、ほんとの事言うと、一人でも頼み込むつもりでした」
「ハイ、ちょっと待った」
なにやらギターちゃんが現れて待ったをかける。
「そっちのあんたはいいけど、そっちの二人はダメ」
なんでアポロだけ?
ギターちゃんがとある一点を見つめる。
「おい、今何で判断した!?」
まあまあ、おさえてアポロさん。
「ティニーには負けてないだろっ」
「いやうち、実は少し膨らんで……」
「な、なんだってぇええ」
愕然とした表情で膝をつくアポロ。
いや、成長期だし、アポロだって……
増えてない、増えてないんだよ、ワトソン君!
ワトソン君って誰ッスか?
そんなやりとりをしている二人を見やりながら考え込む。
どうやった諦めさせられるかな?
ギターちゃんの言うように、胸がないとダメとかにするか。
おっと逆か。
アポロ一人だけって言ったら、いつも一緒の三人の事、きっと諦めがつくのではないだろうか?
「アポロだけでも構いません、どうか、お願いします!」
「たとえアポロがモンスターになっても、うちらの友情に変わりはないッス」
ダメですか?
とはいえ、ついこないだまではちょうど三枚あった訳だが、全部使いきってしまった。
近々増えそうなのは、
『グリフォン・アイリスブラッド・カイザー』
☆8・レベル19
『ライオンハート・ハーモア』
☆5・レベル18
『ビックフット・アイリスブラッド・レーサー』
☆7・レベル18
この辺りか。
とはいえ、グリフォンのカイザーの分は、姫様が予約を入れている。
それに、元々レベルが高かったビックフットの20レベルで増えるかどうかは怪しい。
となると、次点は、
『ダークエルフ・サウ』
☆2・レベル17
スキル:幻惑
『エルフ・レリン』
☆2・レベル15
になる訳だが。
えっ、自分が40になれば2枚増える?
そうは言うがアクア、お前まだ31レベルだろ。
えっ、任せて欲しい? ちょっとそこらの集落をドッカンさせればすぐ。だって?
……いくら相手がモンスターでも大虐殺は止めてあげてください。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「なるほどなぁ、それでハー達にレベルを上げて欲しいと」
コクコクと頷くアクア。
「エエ話やないケ」
「うん、それなら協力しないとね!」
「でもどうする、ロゥリに手伝ってもらうのはリスクがでかいし、クイーズには、言わないほうがいいんだろ?」
考える余裕を持たせず、カードが出来たといって、なし崩し的に攻め込んだほうがいい。
結構その場の空気に流されやすい我等が主の事、急な話で持ちあげればなんとかなる可能性が高い。
皆、クイーズの事を良く知っているようだ。
「あっ、それなら、ちょっと心当たりがあるかも?」
「ほんとかレリン」
「うん、任しといて!」
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