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第十二章

レベル199 『モンスターカード!』で、ゲットしてみたら今回はヒントが盛りだくさん!

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 そいつは膝を付いてオレの目の前で頭を垂れる。

「あんな踊るような戦いを見たのは始めてた! 俺に、ぜひあの剣術を教えて欲しい!」

 などと言ってくる。
 いやおめえ、その手で刀を握れるの?
 肉球付いてるよね?

「だったら配下にして欲しい! なんでもやる! なにせあんたは命の恩人でもあるんだからな!」

 あの砦での事を言っているのかな?

「バカを言うな、それはワシの仕事じゃ、お前はワシに代わって里を治めるのじゃ」
「今のまんまじゃ俺には役不足もいいところだ! たかが人間に簡単に捕まってしまうぐらいなんだからな……」
「何? お前、人間になぞ捕まったというのか?」

 どうやらこの二人、親子らしい。
 なにやらどっちがオレの配下になるか揉めている。
 どっちもいらないんだけどなあ……

『別にいいんじゃない、貰っとけば?』
「じゃあお前、ちゃんと面倒みるんだな?」
『そろそろ夕飯の準備の時間だね! 早く帰らなきゃ!』

 変わり身が早いな。
 ああ、それとたかが人間と言っているけど、千年以上生きてる上にそちらの生態も熟知している奴だから、別に恥になんてならないからね。
 しかしこの二人、オレがそう言っても聞こうとはしない。

 ならば尚の事、お前は里に引っ込んでおれ!
 もう俺は決めたんだ! 力をつける為に外の世界に行く! だからもう親父の言う事はきかねえ!
 お前のような半人前を外に出す訳にはいかんっ!

 こいつらもしかして……ただ外の世界に出たいだけなんじゃ?

「分かった、分かった。ただそっちの狸親父、あんたは駄目だ」

 分かっているのか? あんた、今回の処罰を免れたとして、裏で手を引いていたことは事実。
 そんな奴を連れ帰って見ろ、今度はオレが疑われるわ。
 山に戻って今後一切、人との交わりを禁じる。

 まあ、おとなしくしていればその内考えないこともない。

「ならば俺を、俺を配下にしてくれるんだな!」

 まあいいか、じゃあちょっとジッとしてろよ。

『モンスターカード!』

◇◆◇◆◇◆◇◆

「それではこれより、奴隷契約の術式を始める。クイーズ卿、前へ」

 ん? なんでオレが呼ばれるのかな?

 あれからエフィール姫様の時空魔法により、聖皇国に連れて来られたアンダーハイト王家一族。
 フロワースが持ってきた、エンテッカルにあったという特殊な魔道具を用い、不可視の奴隷契約を行うことになった。

「聖皇国、ピクサスレーン、ヘルクヘンセンを代表して、クイーズ卿、そなたがこの者達を従える事を命じる」

 へ?

「この契約はクイーズ卿、及びアンダーハイト王家、現王位継承権を持つもののみが行い、二世に渡り、クイーズ卿を通し三国の命令を遵守する事」

 それ以降については独立を認める。と言う。
 ちょっ、ちょっと待って! えっ、そこでなんでオレなの?
 普通、皇帝陛下がそれにあたるんじゃない?

「この契約は引継ぎが出来ない。また新たに一からとなれば別だろうが、高価な魔道具も消費する。ならばまだ若いクイーズ卿が担うが一番であろう」

 それに聖皇国のみ、となれば他の二国からも不満が出る。
 クイーズ卿ならば各国に籍があり、代表して中継を行う事も可能。という結果になったとか。
 初耳よ?

 オレはバッとラピスの方を見やる。
 するとそのラピス、視線をダンディの方へ向ける。
 そのダンディ、なにやらニヤニヤと薄笑いを浮かべている。

 そうか、あの骸骨の入れ知恵か……最近おとなしかったら油断していた。

 ラピスを押さえても、うちにはまだまだ腹黒が存在していたんだったな……
 きっとオレが以前、貴族位を放棄しようとした事に対して手を打ってきたのだろう。
 三国の代表として、しかも取替えの効かない役をおおせつかった訳だ。

 もう逃げられないよね?

 くっそあの骸骨! あとで覚えてろよ!

「おいダンディ、なんて事してくれたんだ!」

 術式が終わった後、オレは骸骨に詰め寄る。

「良かったではありませんか? 忍びの者を配下に加える事が出来るようになって」

 忍びの者ってお前……
 なにやらラピスが、ジャーンって言いながらとある衣服を見せてくる。

「どうです、旨く出来てるでしょう、忍装束」
「おまっ……」

 おい、クノイチはどうなってるんだ!
 えっ、ある?
 ちょっとみせてくれ!

 おっ、エロそうだな! これ一着もらえないかな? ちょっとエクサリーに着て貰って、ゲヘ、ゲヘヘヘ……

「いやだ、お坊ちゃまがキモイ」

 キモイ言うなや!

◇◆◇◆◇◆◇◆

「なんだそのヘナチョコな武器は、そんな物で戦える訳がないだろう」
「何を言う、これは師匠直伝の刀という武器なんだぞ」

 何やら二人の子供が揉めている。

「ハッ、師匠が師匠なら弟子も弟子だな。悪い事は言わん、あんな奴の弟子など辞めて、俺と同じペンテグラム師に教えを請うといい」

 片方は現剣聖の息子さん。
 名前をダイギリという。
 そしてもう片方は……

「フッ、確かにあの男も強かろう、だがっ! 師匠の剣舞を見て、俺はアレこそが至高の剣術だと悟ったのだ!」

『烏天狗・ムハク』
 ☆5・レベル1
 スキル:変化、風魔法

 オレがゲットした新しいモンスター。
 なんと! 和風妖怪が来ました!
 あれかな? 色が浅黒くて、なんかカラスに似てるなあと思ってた所為かな?

 外見はほぼ人と同じで、背中に漆黒の翼を背負っている。
 腰には和風刀を装備して、鳥のお面が頭に付いている。
 そのお面で顔を覆えば、面識のある者に化けられるそうだ。

「あんな卑怯者なら、俺でも打ち倒す事が出来る!」
「言ったな! ならばやってもらおうか! 俺の師匠は決してお前の師匠にだって負けていない!」

 おい止めろ、オレを巻き込むんじゃない。
 あと、お前まで師匠って言うなっての。
 刀の剣術なんてそんなに詳しく知らないぞ?

 という空しい抵抗も他所に剣聖の息子さんが襲いかかってくる。

 ふむ……自身満々な割には大した事無いな?
 これならまだロゥリの方が危険なぐらいだ。
 なにやらキラキラした目で見つめてくるカラス天狗のムハク。

 ……よし! ならばその期待に応えて進ぜよう!

 オレは居合いの構えを取る。
 さあ、どこからでも掛かってきなボーイ。
 オレがジッと構えに入った所為で様子をみているダイギリ。

 そんなダイギリが剣を振り上げた瞬間、オレの一閃が胴を薙ぎ払う!

 ――チンッ

 鞘に刀を納めた瞬間、ドゥと倒れるダイギリ。
 フッ、またつまらぬものを斬ってしまったでござる。
 ってヤバイ! 他所様の子を思いっきりブン殴っちまった!

 おい大丈夫か!

「い、今のは一体……剣がまったく見えなかった」
「大丈夫そうだな。ああ、あれは『居合い』っていう剣術の一つだ」
「居合い……凄い! ぜひ、それをお教えください!」

 まあ、今度な? 見よう見真似なのでオレも良く知らない。ラピスに聞いてみるか。

「うむ、お前の剣は変わった形と動きをしている……先ほどの剣、なかなかのものだった。俺にも詳しく教えてもらおうか」

 なにやらペンテグラムまで出てきた。
 子供二人はキラキラした瞳でオレの方を見てくる。
 いかん、剣術バカのハートに火をつけてしまった!

 あんな物、見せるんじゃなかったなあ……
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