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第十二章

レベル191 ☆

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 聖皇都の楽器店に戻ったオレは、これまでの状況をラピスに説明する。

「と、いう事は、お坊ちゃまはずっと、その、音の世界なる場所に居たと?」
「ああ、このギターに連れて行かれてたらしいな」
「どちらにしろ帰ってきてくれて良かった……ラピスがあんな事言うから……」

 ん? ラピスがどんな事言ったんだ?

「……あっ、そうだお坊ちゃま、その間、エクサリーが何をしてたか知りたくありませんか!」

 なにやら慌てたようにそう言うラピス。えっ、そりゃ知りたい、知りたい!

 自分には何の力も無い。
 クイーズを探し出そうにも何一つ出来そうな事が無い。
 捜索しようにも、カユサル様やエルメラダス姫様以上の事ができるとは思えない。

 万が一、どこかと戦うことになっても、私では足手まといにしかならない。

 私が出来る事は……そうだ、歌を歌おう。
 私が唯一、人より優れているものは、ハウリングボイスというスキルだけ。
 そしてこのスキルならば、もしかしたら、どこかに居るクイーズの元へ歌が届くのではないだろうか。

 そう考えたエクサリーは一人、ステージに立って歌い始める。

 伴奏も何も無い、唯、人の声だけの歌。独奏。
 観客は誰一人として居ない。
 偶に誰かが足を止めエクサリーの声に耳を傾ける。

 そんな足を止める人が、一人、二人と増えていく。

 一日の大半をステージに立って歌うエクサリー。
 徐々に増えていく観客達。
 その声を、歌を録音しようと、蓄音機の魔道具を持ち出す人も増えてきた。

 一週間を超える頃には、まるで街中の人々が集っているかのように増えていく。

 ふと、その歌に乗せて、ピアノの伴奏が流れ始める。
 カユサルが独自で調査に入る事によって、手が空いたグランドピアノのセレナーデさん。
 そして、なにやら良い事を思いついたような顔をしているラピス。

 その伴奏がエクサリーの声に花を添える。

「もし、お坊ちゃまがどこかの国に捕らえられているとしても、エクサリーの声が聞こえれば、ジッとしていないと思ったのです」

 ラピスはそんなエクサリーを様々な国へ連れ出す事にした。
 毎日どこかでライブを行い、人々やお偉いさん連中の反応を調べていたとか。
 それは友好国に留まらず、南の敵国まで赴いて。

「なんて危険な事させているのお前!」
「大丈夫ですよ、エクサリーには竜王ホウオウが付いています、それに、捕らえられているとしたら敵国の可能性が高い、ならば行かない訳にはならないでしょ」
「ほんとに大丈夫だったのか……?」

 ついと視線を逸らすラピス。
 おい、何があった? 詳しく話せ。
 えっ、エクサリーの身には何も起きなかったから問題ない。だって?

 ……そうか、お前が色々やらかしたわけだな。

「最初の頃はね、ほとんどお客さんも居なかったのよ」

 しかし、エクサリーの声は天使の歌声。お客を集めない訳が無い。
 2日経ち、3日経ち、お客の入りが倍々に増えていく。
 やがて、ユーオリ様が居たときぐらいに膨れ上がっていく。

「そうすると、別の都市でもどうかって話があがってきてね」

 そんな話でどんどん有名になっていって、それは南の敵対国にまで広がっていく。
 カユサルが急に音楽活動を停止した事もあり、貴族連中からもひっぱりだこだったとか。
 町でも演奏させてもらうことを約束に、貴族の屋敷でも歌を披露していった。

 一日に、貴族の屋敷と下町で二回歌うこともざらだったとか。

「いろんな場所で歌うことが目的でしたからね」
「それが私の糧になったんだと思う。だから私の声はクイーズに届くぐらいまで昇華されたんだ」

 でも、クイーズはもっと頑張ってたんだね。と言ってくる。
 ホワイ?
 えっ、とんでもなく上達してた?

「私、クイーズの歌を聞いて鳥肌が立った」
「そうですね、お坊ちゃまの演奏、とっても素晴らしかったですよ」
「まるで、キミ自信が音と一体になった、そんな感じがしてたね!」

 えっ、いやまあ、その……努力した、と言ってもいいものだろうか?
 まあ、三ヶ月ぶっ通して、一睡もせずギターを掻き鳴らし続けたっては事実だが。
 半ば無意識状態みたいな感じだったしなあ……

 えっ、もう一度オレの歌が聞きたい?

 一度と言わず何度でも!
 エクサリーの為なら、3ヶ月だろうが1年だろうが歌い続けてやるさ!
 オレはそっとギターを手に取り歌い始める。

 そのうち、ゾロゾロと人が集ってくる。

 最初にやってきたのは、息せき切らしたアポロ達三人娘。
 アポロ達三人は、アスカさんの脳筋パーティと連携して、皆のレベル上げを手伝ってくれていたらしい。
 おかげで以下の五人のレベルが大幅に上がっている。

『メタルスライム・スラミィ』所持者・アスカ
 ☆2・レベル31
 スキル:擬態・極
 備考:モンスターカード+1

『ウィンディーネ亜種・アクア』所持者・アポロ
 ☆7・レベル31
 スキル:混合魔法、科学知識
 備考:水系統倍化、火系統倍化、モンスターカード+1

『ライオンハート・ハーモア』
 ☆5・レベル18
 スキル:獣人化

『ダークエルフ・サウ』
 ☆2・レベル17
 スキル:幻惑

『エルフ・レリン』
 ☆2・レベル15

 スラミィとアクアは仲良くレベル30越え。
 スラミィは擬態が+から極みへ、アクアは科学知識などという怪しげなスキルが追加されている。
 ハーモア達三人幼女も、4レベル以上のレベルアップを成し遂げている。

 ハーモアに至っては、もうすぐ20レベルになれそうだ。

 なお、アスカさん達はアポロ達と別れた後、おやっさんの店の護衛に戻ったそうだ。
 オレが戻った事で何が起こるか分からないとの事で。
 うん、鍛冶屋の親父さんも、いいパーティを紹介してくれたものだ。

 ちなみに、その五人以外のカードはこのようになっている。

『スーパースター・ラピス』
 ☆12・レベル46
 スキル:超繁殖→聖母、カード統率+2、命名(使用不可)、テンカウント
 備考:モンスターカード+2、モンスターCカード+1

『ドラゴンナイト・ロゥリ』
 ☆10・レベル38
 スキル:重量軽減→重量操作、擬態+
 備考:竜種特効、モンスターカード+1

『聖王ホーリークラウン・カシュア』
 ☆7・レベル42
 スキル:未来予見・極、聖剣の担い手(召喚可能)→聖王
 備考:天敵・オーク、アンデッド特効、モンスターカード+2、モンスターCカード+1、ホーリーノヴァ

『マンドラゴラ・ギター』
 ☆7・レベル22
 スキル:オート演奏、擬態
 備考:モンスターカード+1、音の世界

『骸骨王・ダンディ』2枚使用
 ☆8・レベル10
 スキル:天啓(使用不可)

『お料理セット』
 ☆4・レベル19
 スキル:オート料理

『鉱石M』
 ☆1・レベル29
 スキル:擬態+
 備考:モンスターカード+1

『グランドピアノ・セレナーデ』所持者・カユサル
 ☆9・レベル25
 スキル:擬態+、英雄の旋律
 備考:一子出産、モンスターカード+1

『ソーサー』所持者・カユサル
 ☆1・レベル1

『グリフォン・アイリスブラッド・カイザー』所持者・エルメラダス
 ☆8・レベル18
 スキル:風圧無効、超加速、擬態+

『竜王・ニース』
 ☆10・レベル6
 スキル:聖剣の担い手、竜化、輪廻転生(使用不可)
 備考:全属性特効(小)

『パワードスーツ』
 ☆6・レベル22
 スキル:全パラメーター+
 備考:モンスターカード+1、魔法無効(エリア・調整可能)、リミットブレイク

『スカウター』所持者・ラピス
 ☆9・レベル1
 スキル:叡智

『ミュージックプレイヤー』所持者・カシュア
 ☆11・レベル1
 スキル:聴覚探知・極、鷹の目

『エンゲージリング』所持者・エクサリー
 ☆10・レベル7
 スキル:精霊化

 合計レベル399。
 通常カードは、初期3枚+レベル20が9枚+レベル40が2枚+合計レベルで増えた8枚の合計22枚
 Cカードが、合計200レベル・ラピス・カシュアの3枚。

 モンスターカードの合計では25枚といったところだ。

 それに対し、カードでゲットしたモンスターはソーサーを除く19体。
 ダンディが2枚使用と、1枚はゲット失敗、1枚はラピスのクラスチェンジで使用しているので、総使用枚数は22枚。
 Cカード3枚は全て使いきっているので、手元に残っているのは通常カード3枚のみ。

 ざっと、増えたカードとゲットしたモンスターの対比表を表せば以下のようになっている。

初期3枚
 ラピス
 ロゥリ
 スラミィ

20レベル追加9枚
 ラピス    :カシュア
 ロゥリ    :グリフォン
 スラミィ   :鉱石M
 カシュア   :ダンディ
 ギター    :未使用
 鉱石M    :スカウター
 セレナーデ  :ミュージックプレイヤー
 アクア    :レリン
 パワードスーツ:未使用

40レベル追加2枚
 ラピス    :失敗
 カシュア   :未使用

合計レベル8枚
 40     :ギター
 60     :ダンディ
 80     :お料理セット
 100    :グランドピアノ
 120    :ニース
 140    :アクア
 160    :ハーモア
 180    :サウ

Cカード3枚
 200    :パワードスーツ
 ラピス    :ラピスクラスチェンジ
 カシュア   :エンゲージリング

 思えば遠くへきたもんだ。って訳じゃないが、当初の3枚からはかなりの数が増えている。
 ラピスと二人、ヒィヒィ言ってた頃が懐かしい。
 最初の頃は、近場の草原のモンスターに一日中追い回されて死にそうになった事もあったっけか。

 ラピスが文字通り虎の尾を踏んでさ。

 あの頃はまだ、オレの方がラピスより強かったので必死で戦ったさ。
 それが今やすっかり守られるだけになってしまった。
 こうやってここで歌って居られるのもラピスのおかげかもしれない。

「いい歌だな、まるで心が洗われるようだ」
「これは学の無い私でも、いい曲だってわかりますねぇ」
「少し聞かない間に、師匠はまた、遥か高みへ昇られたのだろう」

 気が付けば、エルメラダス姫様とカユサルも店の中に居た。

「よし、クイーズよ! 我等が戦勝を願って、激しい奴を一発頼む!」

 ん、またどっかと戦争でも始めるの?

「師匠を手に掛けようとしたその報い、受けさせてやりますよ」

 んっ、んんん?
 ふと見ると、ラピスが裏口からこっそり出て行こうとしている。
 おいラピス、おめえ、ほんとに何やった?
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