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第十二章

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「今日はクイーズちゃんとエクサリーさんの馴れ初めの話が聞けるって言われて、おばさん、すっとんで来ちゃった」

 なぜかそこに満面のユーオリ様が。
 この人もフットワーク軽いなあ。
 お姫様じゃね? しかも一人娘。

 というか、なぜそんな話に?

「母さんもね、こんな機会にしかクイーズちゃんのお話が聞けないと思ったのよ」

 なんでも子供の頃から親父さんに、お前は悪い影響を与えるに決まっているからできるだけオレに近づくな、なんて事を言われていたらしい。
 しかもずっと籠の鳥状態で、オレが失踪したのを知ったのも数年後だとか。
 ゼラトース家に復帰後もこっちに戻ってくる事は無く、こちらから会いに行く事も出来ない。

 もう今日を逃せば話すことも出来ないと思い、できるだけの人を集めて、オレのこれまでの話が聞きたいと。

「フフフ、随分甘酸っぱいお話が聞けるってユーオリ様に言われて楽しみにしてたんです」
「そりゃもう紆余曲折のあった二人、とんでもない話が聞けるに違いない!」
「い、いやでもほら、これから他にも挨拶回りとかなんとか……」

 えっ、挨拶が必要な人物は全部ここに集めている?
 なんか随分手際がよろしいようで……
 おい、弟、お前まで座り込むんじゃない。

 そりゃもう姦しい奥様方、その時はどう思っていたの? とか、エクサリーさんの表情はどうだったの? とか、そりゃもう根掘り葉掘り聞かれる訳ですわ。

 なんかエクサリーが照れるのがかわいくて、オレも調子に乗って、色々ありもしない事を付け足したりして。
 そしたら茹蛸の様になって、目がグルグルしている模様。
 うん、緊張して怖い雰囲気をだしているより、こっちの方がよっぽどマシかも知れない。

 そんなかわいいエクサリーさん、最後は盛り上がってブチューとか。

 うん、帰ったらしこたま怒られました。

「兄上の奥方は、ほんと怖いくらい美人で羨ましいです」
「その美人の部分を省かないでやってくれ、本人、とっても気にしているんだから」

◇◆◇◆◇◆◇◆

「お前達はいったい何をしていたのだ!?」

 とあるお店の一角、臨時閉店と札を貼られた店の中、エルメラダス姫様以下、数名の女性達が集っていた。

「あ、あの~、爆発物とかあるのであまり暴れないでくださいね?」

 そこはサヤラが営む銃器店、その内の一部屋である。

「まあまあ、押さえて姉上」
「カシュア、なんでもお前が、余計な事をした所為だと言う話ではないか」

 えっ、誰がそんな事を……はっ、ラピス君だね!
 ちっ、違うんだよ! アレはそんなつもりで言った訳じゃなくてね!
 ほほう、お前の所為だというのは真実であるわけか。

 ヒィイイ、と言って壁際まで追い詰められるカシュア。絶体絶命のピンチである。

「…………こうなる事は最初から分かっていた。だから私は妾枠に掛ける」
「くっ、妾か……こうなったらそれしか道はないのか……?」
「何言ってるんスか、姫様は次期女王、婿を取るしか選択肢はないっしょ」

 王族同士なら、第二夫人という場合もあろうが、相手が平民ともなれば、それより下となる事になり、それこそ前例を作られたくない貴族の全てから反対されると。
 ま、待てカイザー、エクサリーは聖皇国の貴族位があっただろう。
 名ばかりのでしょ。周りは平民としかみてくれませんよ。

 と、隣の虹色の髪のメイドと揉めている。

 アポロ達はアポロ達で、アポロが妾ってことは、私達もついでに貰ってくれないかな。などと言うサヤラ。
 えっ、うちもっすか? いやクイーズさんに不満があるって訳じゃないんスけどね……あの状態のクイーズさんが妾を取るとは思えないんスが。と答えるティニー。
 ……諦めたらそこで終了ですよって偉い人も言ってた。と握りこぶしを固めるアポロ。

 そんな、もめてる連中を尻目にガゥ……と大きなため息をつくロゥリ。

「そういえばロゥリ君は、クイーズ君のプロポーズの場面を目撃したんだったね」
「ガウガウ」
「ほうほう、ロゥリ君がうらやましがるなんてよっぽどだね!」

 夕日をバックに竜の背に揺られて、君の為にドラゴンロードを倒した素材で作った指輪だ。なんて真っ赤なダイアモンドを差し出される。
 その気が無くてもその気になってしまいそうなぐらい。
 あんなのを背中でやられた身としてはほんと居たたまれない。

 などというロゥリ。

「ほんとボクも見たかったね! って、うわっ!」

 何時の間にか、女性陣がロゥリとカシュアを囲んで聞き入っている。

「くっ、今からでも遅くない! 私も竜王を倒して、クイーズに指輪を送るぞ」
「えっ、姫様が贈るほうなんですか?」

 そう言ったエルメラダス姫様は、隣に居る虹色の髪のメイドを連れて店を出て行く。

「うわぁ、憧れるよねぇ。あれ、どうしたのアポロ?」
「……最近、冒険に連れて行って貰ってない、もしかして私って、要らない子?」
「古代王国跡地、ヤマト大国と二回続けて置いてけぼりッスからねえ」

 ちょっと! というサヤラの突っ込みにしまったって顔をするティニー。
 アポロさん、今にも泣き出しそうな顔に。

「ちょっとカシュアさん、責任とってくださいよ」
「えっ、ボクの所為なの?」
「責任とって、今後は置いていかないように言ってください」

 う~ん、と腕を組んで考えるカシュア。

「ボクと同じようにクイーズ君のモンスターにしてもらえれば、うわっ、コワッ!」
「おい! どうしたらなれる!」

 アポロが凄い形相でカシュアに詰め寄る。

「いやっ、冗談だよ? モンスターになるには一回、人間辞めないと駄目だからね?」
「そうか……その手がありましたか……」
「クイーズさんのモンスター……一考あるかも知れないッスね」

 サヤラとティニーまで乗り気になっている。
 そんな三人娘を必死でカシュアがなだめる。
 その時だった、突如カシュアの体が光に包まれる。

 そのまま弾け飛ぶように消える。

「あれ、クイーズさんに呼び出されたのでしょうか?」
「……うらやましい。いつもカシュアばかり」
「なんとかクイーズさんのモンスターにしてもらえないッスかねえ」

 そしてカシュアが呼び出された場所、そこでは、ラピス以下、モンスターカードの中の人が勢ぞろいしていた。
 なにやらラピスの顔が強張っている。
 そんなラピスが口を開く。

「緊急事態です。お坊ちゃまの反応が、この世界から喪失しました」
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