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第九章

レベル137 『モンスターカード!』で、ゲットしてみたらスカウターになりました。

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「えっ……そっちは……」

 モンスターカードによって照らされる、部屋の中央にあった、呪われた祭壇に飾られた一冊の本。
 オレは掲げたモンスターカードを、その祭壇へ向ける。
 そう、オレがゲットするものは、パセアラに勧めれらた蒼神の瞳ではない。

 呪われた一冊の本。

 スカウターは欲しいけれど、それよりもアレを始末するのが先決だ。

「クイーズ、あなた……」
「別にそっちは急ぐ必要は無いだろ? だが、あれはダメだ」

 万が一、パセアラが触れでもしたら取り返しが付かない。
 今ここに出入りしているのは実質パセアラのみ。
 掃除だって、整理だって、パセアラが行わなければならない。

「私はそんなにドジじゃないわ」
「ハハッ、ドジな奴は皆そんなふうに言うんだぜ」

 パセアラが不満そうに口を尖らせる。
 だが、その目はどこか優しそうな光を湛えてオレを見てくる。

「どちらにしろ、あんな危険なブツは無いにこしたことはない! 大丈夫だ、オレに任せろ!」
「フフッ、その大丈夫はフリかしらね? 何せ貴方、私よりドジじゃない」

 禁書か……まあ、本が人間化なんてよく有る話だろ。インデックスさんとか出ないかな? もうこれ以上幼女増やしても仕方ないか。
 光に照らされた古書が徐々に透き通っていく。
 完全に姿が消えたとたん、オレの目の前に光の奔流が集まり始めた。

「すごいわね……まるで大道芸みたい」
「おいおい、オレのモンスターカードを大道芸と一緒にするなよ?」

 そして光が弾け飛ぶ!
 その後には、黒い紋様が一面にびっしりと描かれた、古ぼけた一枚のカードが浮かんでいるのだった。
 オレはそのカードを手に取る。

 ん、んんっ?
 えっ!? なんで?
 いやいやいや、なんで?

 そのカードのタイトルは――――スカウター。
 ええっ!?
 なんでこっちがスカウターなの?

 ……とりあえず、出して見るか。

「出でよ! スカウター!」

 カードのイラストは唯の本、なのに名前はスカウター。
 意味が分からない。

 オレの目の前に一冊の本が浮きあがる。
 やっぱ本じゃねえか。どうしてスカウターなの。
 と、首を傾げていると、それは勝手にパラパラパラとページが捲られていき、空気に溶けて消えてしまう。

 ふむ、なるほど、なるほど。こう言うカラクリか。

「ふむふむ、ほうほう、88・60・84と安産型だな……ゲボァ!」
「ちょっと! なんで私のスリーサイズ知っているのよ!?」

 いやなにね? パセアラの方を見てみたらね、そんな数字がね、目の前に浮かんだんですよ。

「ふむ、黒、か」
「なんの色……!?」

 バッと手でスカートを押さえるパセアラ。
 いやっ、ちがっ! オレが見たのはブラジャーの色です。アベシッ!

 これはアレだ、調べたい物の情報が目の前に浮かび上がってくる。
 なんていうか、ほら、良く有る、チート鑑定魔法。みたいな?
 ウホッ! こりゃすげえ物をゲットしたぜ!

「まったく貴方は……そんな凄い物を手に入れておきながら、最初に調べるものがスリーサイズと下着の色? バッカじゃないの」

 ごもっともです。

 これ発動させておくと、チラッとでも知りたいと思ったら、その回答が表示されてしまう。
 えっ、いつもそんな事考えているのかって?
 いやいやいや、そんな事ありませんよ? たまたまですよ? ええ、たまたまなんです。信じてください!

 とりあえず持って帰ってラピスに見せてみようと、転移の間に向っているのだが、道中、パセアラさんのお小言がやみません。

 いやでも、隣にいい女がいたらまっさきに調べるよな? な!?
 ハァ……と大きなため息をつくパセアラ。
 すっかり呆れ返っている模様。

「ほんと、ちょっと見直したかと思ったらコレなんだから」

 そう呟くパセアラ。

 そして、ふとオレの両頬に手を添えてくる。
 子供の頃は同じぐらいの背丈だったが、今ではオレが随分パセアラより大きくなっている。
 そんなオレを見上げるようにして顔を近づける。

「あたなは随分変わってしまった。まるで別人の様。だけど……変わってない部分も有った」

 昔のオレのいい所は、バカ正直なところと……さりげない優しさだった。そう告げてくる。

「バカ正直なところは影を潜めたけど、優しいところは変わらないのね」
「パセアラ……」
「もし、私があなたを信じきる事が出来ていたのなら……貴方は今も、私を好きでいてくれたのかしらね?」

 そう言って寂しげに微笑んで離れていくパセアラ。
 オレは思わず手を伸ばそうとして、

「ダメよ」

 オレの胸に両手を当てて身体を遠ざけるパセアラ。

「貴方はもうここに居るべき人じゃない。貴方には、貴方を待つ場所があるのでしょ?」

 そう言って人差し指と中指でオレの唇に触れてくる。
 そしてそれを自分の唇に当てた。

「私はこれで満足しておくから、さあ、早く行って」

 俯いてオレの胸を押す。
 オレは押されるまま、背後の魔法陣に吸い込まれていく。
 最後に見たパセアラの顔は、とても綺麗で、どこか儚げに見えた。

「そんなに未練があるのなら、なぜ、つき離すような事をするのだね」

 オレが魔法陣から消えた後、何時までも魔法陣の前に佇むパセアラに、柱の影から現れたダンディが問いかけてくる。

「これは報いなのよ。彼を信じる事が出来なかった私自身の自業自得」
「されど、主が居なくなった時、泣きながら探し回ったのはそなただけであると聞いたが」
「チッ、誰がそんな事言ったのよ。根も葉もない出鱈目よ」

 別に泣いてなんてないし。と呟く。

「探し回ったという事は事実で有るか」
「一応、婚約者候補であった訳だからね」
「ならば、自業自得とまではいかんだろう、ほんの些細なすれ違い、我輩はそう思うがな」

 それでも、と言うパセアラ。

「私達の絆は切れてしまった。もう私達は……別々の道を歩んでいるのよ」

 って、何を言わせるのよ。別にクイーズの事なんてなんとも思って無いから! そう言って早足で去っていくパセアラ。
 ダンディはその背中を見て、ほんと意地っ張りなお姫様ね。と、そっとため息を吐くのであった。
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