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第八章

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「………………」

 何か言いたそうな目つきでオレを見てくるアポロ。
 そんなアポロを、心配そうな目つきで見つめるサヤラとティニー。

「…………アクアはもう私の家族」

 暫くしてポツリと呟く。

「少しの間だけだ、我慢してくれないか?」

 下手をすればアポロだけではなく、サヤラとティニーまで狙われかねない。
 三人とも後ろ盾がオレだけでは、正直心もとない。
 骸骨に任せっきりで、政治的な影響力は皆無だからなあ。

 それでも中々ウンと言わないアポロ。
 その手にはしっかりとアクアを抱いている。

「クイーズさん、なんとかアポロとアクアを引き離さないですむ方法はないんですか?」
「そうっすよ。もうこの二人、師弟とか親友とか、もしかしたら親子の絆まであるように見えるっすよ」

 そうは言われてもなあ。
 危険なんだよ、アクアの性能は。
 それこそ世界を変えかねないほどに。
 その力を手にしようと、何をしてくるか分かったものじゃない。

「お待ちくださいお坊ちゃま、問題はアポロ達を守る力があればいいのでしょう?」

 ラピスがオレにそう言ってくる。
 アクアにアポロ達を守らす気か?
 いや、無理だろ。
 水蒸気爆発にしろ、水爆にしろ、近場で撃てるものじゃない。
 下手したら仲間も巻き込む。

「フッフッフ、お忘れですかお坊ちゃま、私とアクアがガソリンの精製に挑戦していたことを!」
「えっ、出来たのか!?」
「ガソリン、は出来ませんでしたが……」

 ラピスがなにやら竜王に指示をだしている。

「フムフム、コレを切れば良いのじゃだな」

 その竜王ニースが、なにやらアクアが出した水の固まりを聖剣で切りつける。
 その瞬間だった!
 ドゴン! と言う音と共に吹き飛ばされるニース。

「な、なんじゃ!?」
「ガソリン、は出来ませんでしたが、衝撃を与えると爆発する水なら作り出すことが出来ました」

 えっ……!? おまっ、それっ、……ニトロ?

「そうともいう」

 ええっ、マジか!? ニトロって……
 フワフワとアクアを中心として水の球が浮き上がりアポロを包みこむように守る。
 コワッ! それ触れると爆発するんだろ? 中の人間もヤバいんじゃね?

「爆発には志向性を与える事も可能です」

 水の成分を調整して、外側をニトロ、内側を重たい成分で爆発を外側のみに向ける。などと説明している。
 そんな事出来るのか?
 ニースが何やら剣でつついて試して見ているが、確かに爆発は外側にのみ発生しているようだ。

「ふうむ……しかも、爆撃の衝撃で跳ね返す形をとっておる為、剣であろうと槍であろうと、はたまたどんな切れ味のいい……聖剣であろうと斬る事が適わずか……有る意味、最強の盾じゃのう」

 今度は、竜王ニースの周りに水の球が集り始める。
 外側に志向性を与えられるという事は、当然内側にも与える事が可能という事で……
 ニースの頬に一筋の冷や汗が流れる。

「まさかこれ、全部爆発する水じゃないじゃろうな?」

 そのまさかですってよ。
 それ投げても普通に攻撃になるし、このように動きを封じる事にも使える。
 すごいぞアクア! 唯の水をゲットしただけなのに!
 スラミィといい、アクアといい、レアリティが低いからといってバカに出来ないもんだな。
 パワードスーツもレベルを上げれば使えるようになるだろうか? さっさと20レベルにしないとな!

 凄い、凄いとアポロ達三人娘に褒められているアクア。
 なんだかピノキオのように鼻を伸ばしている。
 あいつも碌な知識を仕入れてないなあ……

「でも、三人がいつも一緒に居るとは限らないでしょ? バラバラで行動している時はどうするんだ」

 なんだかアクアがチッチッチって指を振っている。
 ちょっと知能上げ過ぎたのだろうか? ラピスみたいにならなければいいが。
 と、プルンと振動したかと思うと三つに分裂した。

 えっ、分裂出来るの!?

 いや、元が水だし、出来て当然と言えば当然かも知れないが。
 ただ、三つに分裂した分、大きさも3分の1近くにはなっている。
 えっ、小さくても威力は問題ない?

 ニトロにしろ、水爆にしろ、攻撃の要は化学反応なので、作成にかかる魔力はたいして使わないんだと。
 これもまたエコだと言えるのだろうか?

「それで、エンテッカルの件はどうするの?」

 ユーオリ様がふとそう聞いてくる。
 うん、すっかり忘れていた。
 もうこのまま、忘れたままにして置けないだろうか?

「まあ、うちはとしては、クイーズちゃんがさっさと片付けてくれるなら言う事ありませんけど」

 ニッコリ笑ってそう答えるユーオリ様。
 その片付けると言うのはエンテッカルの国をですか?
 えっ、ちょっと行って王様ぶっとばせばオッケーですって? イヤイヤイヤ、そんな無茶な……いや、意外にいけるのか?

 向こうは実力至上主義の世界。
 ならば、その頂点に居る王様をぶっとばして、オレが今日からこの国の王様だ! なんて言えば……イヤイヤイヤ、王様になったら駄目ジャン!
 それこそ全世界から狙われちゃうヨ!
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