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第七章
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えっ、矛盾しているって? ところがそうではないんだよ。
滅亡寸前の国を蘇らせたのは確かにスキルの力だった。
だが、その蘇らせた国を世界一の国として発展させたのはスキルの力ではない。
「それはスキルが無くても、成し遂げる事は可能であるという事だ」
「スキルが無くても、なんでも……出来る……?」
ただし、
「一つだけ大きな違いはあるがな」
一芸に秀でるものはすべてにおいて自信を持つ。という傾向があると聞いた覚えが有る。
どんなにクソいスキルであろうとも、スキルが有る。というだけで自信に繋がり、それはスキルの無い人間との差となる。
「なあレンカイア、スキルの無い人々の希望になってみる気はないか?」
スキルの無いお前が、並み居るオーガを打ち倒し、奴隷から貴族へ駆け上がる。
それはきっと、スキルの無い人々に灯りともす、一筋の光源となる。
スキルが無くても這い上がれる。そんな希望をスキルを持たない人々に与える。
「で、でも、それは兄貴が用意した力で、別に僕の力じゃないし……」
「力もスキルも、問題はどう使うかだ。正しく使ってこそ始めて価値が出来る」
オレはポンとレンカイアの肩を叩く。
スキルが無いなら、スキルが有る奴を使える存在に成れ。
自分に出来ないことは誰かにしてもらえばいい。その分、お前にしか出来ない事が必ずあるはずだ。
拳は脳みそが無ければ殴る事は出来ない。だが、バカな脳みそでは殴る場所を間違う。
オレは、有能な頭脳が欲しいんだよ。
「兄貴……」
「その気があるなら付いて来い。コレからお前に、秘密兵器を見せてやる」
レンカイアは暫く俯いて考え込んでいたが、ふと顔を上げてオレの方へ駆けだして来る。
オレはレンカイアをアポロ達に引き合わせ、水蒸気爆発について説明する。
驚くそぶりは見せるが真剣に話を聞いてくる。真面目なところは以前と変わって居ない。コイツならたぶん大丈夫だろう。
大まかな打ち合わせをした後、本陣へ戻る。
「いいかレンカイア、力の使いどころを見誤るなよ。アレは一歩間違えれば味方をも巻き込む」
「はいっ!」
つうかコイツ、風呂に突っ込んで、ちゃんとした服装着せたらかなりの美形じゃ……
ショタ好きなお姉さんには堪らなさそうな感じがする。
あの奴隷商人も売り先を間違えているよなあ。
いよいよ、この国の王様の号令の下、オーガ退治が始まる。
「ロゥリ、アポロ達を頼むぞ!」
「ガウガウ、マカシトケ!」
アポロ達は背後に回って後ろから攻撃する事になっている。
いざとなった時の為に竜王のカードを持たせた。
今回は公式の場なので、竜王が出たら大騒ぎになるから、出来る限り使う場面が無い事を祈りたい。
ところで、サウとハーモアも連れて行くのか?
えっ、ハーモアはここらの地理に詳しい? そういや出身地だったな。
「しかし、カシュアの奴が随分張り切って先頭を歩いているが、どういう風の吹き回しだ?」
「少しでもダンディから離れたいらしいですよ」
なるほど。
「あんまり張り切るなって言っとけよ。初戦は負ける役なんだからな」
今回の戦闘、初戦はワザと負ける予定だ。
ゴブリンなどの小鬼なら兎も角、オーガは普通の兵士では歯が立たない。
ショベルカーに竹やりで挑むようなものだ。
まずはゴブリン達取り巻きを倒す。その後、オーガ本隊が出てきたらひと当てして逃げる。
魔法使いが居ればオーガも倒せるんだが、この北国にはほとんど魔法使いはいない。
希少な魔術師役、どこでもひっぱりだこなのに、態々こんな住みにくいとこに寄り付く奴がいないそうだ。
そこで、魔法使いの多い聖皇国へ援護依頼を出していたという。
しかしながら今回の援軍、オレの部隊には魔法使いは居ない。
まともに戦えるのは聖剣を持ったカシュアか、ドラスレを借りているラピスぐらい。
なので、対オーガ戦のキモはアポロ達の水蒸気爆発に掛かっている。
水蒸気爆発には水・熱・風と、オーガの弱点属性が勢ぞろい。
オレ達がやられたフリをして油断を誘い、集った所へズドンと。そういうシナリオ。
しかしまあ、世の中話を聞かない奴ってのは一定数居る訳で……
やめろよって言ってるのに、突っ込んで被害を拡大させているバカな貴族も居る。
おかげで初戦、負けたフリが本当に負けたような状態に。
「なんか文句言って来てますがどうしますか?」
「ほっとけ」
明日になったらおとなしくなるから。
そして翌日、早朝からドッカン、バッカンと大きな音がしている。
どうやらアポロ達が例の奴を始めた模様。
凄い勢いでアクアのレベルが上がっている。
20レベルになるとオレの手元にカードが戻ってくるので、アクアのカードは置いていってもらってる。
「よし! こっちも進軍開始だ!」
今から行けばちょうどいいぐらいに付くだろう。
あの水蒸気爆発のデメリットは、味方が居ると使えないって事だな。
と、アクアのカードが目の前に浮かび上がる。
あっという間に20レベルか……
そのカードに光の奔流が集る。暫くした後、光が弾け飛び、バージョンアップしたアクアのカードが浮かび上がる。
オレはしばし、そのカードに見入る。
…………なんだこれ?
えっ、亜種? どういう意味? そこに描かれていた種族名が変わっていた――――ウィンディーネ亜種だとよ。
カードに描かれているウィンディーネ本体の色も、マリンブルーからルビー色に変わっている。
亜種ってあれだろ? 属性が通常のと違う……水の精霊の癖に火の属性になったのか? なんだそりゃ。温泉でも出せるようになったのだろうか?
次の瞬間! 視界が白く塗りつぶされる!
少し後れて、凄まじい音と共に突風が吹き荒れる!
「お坊ちゃま!」
「うぉっ! なんだこれ!?」
その突風に吹き飛ばされるオレ。なんか地面が揺れているような気がする。
しばらくして面を上げたそこに見えたのは――――山間のオーガの砦からたち昇る、巨大なキノコ雲であった。
滅亡寸前の国を蘇らせたのは確かにスキルの力だった。
だが、その蘇らせた国を世界一の国として発展させたのはスキルの力ではない。
「それはスキルが無くても、成し遂げる事は可能であるという事だ」
「スキルが無くても、なんでも……出来る……?」
ただし、
「一つだけ大きな違いはあるがな」
一芸に秀でるものはすべてにおいて自信を持つ。という傾向があると聞いた覚えが有る。
どんなにクソいスキルであろうとも、スキルが有る。というだけで自信に繋がり、それはスキルの無い人間との差となる。
「なあレンカイア、スキルの無い人々の希望になってみる気はないか?」
スキルの無いお前が、並み居るオーガを打ち倒し、奴隷から貴族へ駆け上がる。
それはきっと、スキルの無い人々に灯りともす、一筋の光源となる。
スキルが無くても這い上がれる。そんな希望をスキルを持たない人々に与える。
「で、でも、それは兄貴が用意した力で、別に僕の力じゃないし……」
「力もスキルも、問題はどう使うかだ。正しく使ってこそ始めて価値が出来る」
オレはポンとレンカイアの肩を叩く。
スキルが無いなら、スキルが有る奴を使える存在に成れ。
自分に出来ないことは誰かにしてもらえばいい。その分、お前にしか出来ない事が必ずあるはずだ。
拳は脳みそが無ければ殴る事は出来ない。だが、バカな脳みそでは殴る場所を間違う。
オレは、有能な頭脳が欲しいんだよ。
「兄貴……」
「その気があるなら付いて来い。コレからお前に、秘密兵器を見せてやる」
レンカイアは暫く俯いて考え込んでいたが、ふと顔を上げてオレの方へ駆けだして来る。
オレはレンカイアをアポロ達に引き合わせ、水蒸気爆発について説明する。
驚くそぶりは見せるが真剣に話を聞いてくる。真面目なところは以前と変わって居ない。コイツならたぶん大丈夫だろう。
大まかな打ち合わせをした後、本陣へ戻る。
「いいかレンカイア、力の使いどころを見誤るなよ。アレは一歩間違えれば味方をも巻き込む」
「はいっ!」
つうかコイツ、風呂に突っ込んで、ちゃんとした服装着せたらかなりの美形じゃ……
ショタ好きなお姉さんには堪らなさそうな感じがする。
あの奴隷商人も売り先を間違えているよなあ。
いよいよ、この国の王様の号令の下、オーガ退治が始まる。
「ロゥリ、アポロ達を頼むぞ!」
「ガウガウ、マカシトケ!」
アポロ達は背後に回って後ろから攻撃する事になっている。
いざとなった時の為に竜王のカードを持たせた。
今回は公式の場なので、竜王が出たら大騒ぎになるから、出来る限り使う場面が無い事を祈りたい。
ところで、サウとハーモアも連れて行くのか?
えっ、ハーモアはここらの地理に詳しい? そういや出身地だったな。
「しかし、カシュアの奴が随分張り切って先頭を歩いているが、どういう風の吹き回しだ?」
「少しでもダンディから離れたいらしいですよ」
なるほど。
「あんまり張り切るなって言っとけよ。初戦は負ける役なんだからな」
今回の戦闘、初戦はワザと負ける予定だ。
ゴブリンなどの小鬼なら兎も角、オーガは普通の兵士では歯が立たない。
ショベルカーに竹やりで挑むようなものだ。
まずはゴブリン達取り巻きを倒す。その後、オーガ本隊が出てきたらひと当てして逃げる。
魔法使いが居ればオーガも倒せるんだが、この北国にはほとんど魔法使いはいない。
希少な魔術師役、どこでもひっぱりだこなのに、態々こんな住みにくいとこに寄り付く奴がいないそうだ。
そこで、魔法使いの多い聖皇国へ援護依頼を出していたという。
しかしながら今回の援軍、オレの部隊には魔法使いは居ない。
まともに戦えるのは聖剣を持ったカシュアか、ドラスレを借りているラピスぐらい。
なので、対オーガ戦のキモはアポロ達の水蒸気爆発に掛かっている。
水蒸気爆発には水・熱・風と、オーガの弱点属性が勢ぞろい。
オレ達がやられたフリをして油断を誘い、集った所へズドンと。そういうシナリオ。
しかしまあ、世の中話を聞かない奴ってのは一定数居る訳で……
やめろよって言ってるのに、突っ込んで被害を拡大させているバカな貴族も居る。
おかげで初戦、負けたフリが本当に負けたような状態に。
「なんか文句言って来てますがどうしますか?」
「ほっとけ」
明日になったらおとなしくなるから。
そして翌日、早朝からドッカン、バッカンと大きな音がしている。
どうやらアポロ達が例の奴を始めた模様。
凄い勢いでアクアのレベルが上がっている。
20レベルになるとオレの手元にカードが戻ってくるので、アクアのカードは置いていってもらってる。
「よし! こっちも進軍開始だ!」
今から行けばちょうどいいぐらいに付くだろう。
あの水蒸気爆発のデメリットは、味方が居ると使えないって事だな。
と、アクアのカードが目の前に浮かび上がる。
あっという間に20レベルか……
そのカードに光の奔流が集る。暫くした後、光が弾け飛び、バージョンアップしたアクアのカードが浮かび上がる。
オレはしばし、そのカードに見入る。
…………なんだこれ?
えっ、亜種? どういう意味? そこに描かれていた種族名が変わっていた――――ウィンディーネ亜種だとよ。
カードに描かれているウィンディーネ本体の色も、マリンブルーからルビー色に変わっている。
亜種ってあれだろ? 属性が通常のと違う……水の精霊の癖に火の属性になったのか? なんだそりゃ。温泉でも出せるようになったのだろうか?
次の瞬間! 視界が白く塗りつぶされる!
少し後れて、凄まじい音と共に突風が吹き荒れる!
「お坊ちゃま!」
「うぉっ! なんだこれ!?」
その突風に吹き飛ばされるオレ。なんか地面が揺れているような気がする。
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