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第六章

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「な、なんだこの人間は!? 我の鱗がこうも容易く切り裂かれるはずがない!」
「人ではない、そ奴もまた竜、ただ人の姿をとっているに過ぎない」

 そう言うと人間の姿に戻る、竜王ニース。
 その手にはしっかりと聖剣が握られている。

「な、なんだと……?」
「古来より、悪い竜を退治するのは、人の仕事であろう?」
「敵わぬと知って気でも狂ったか?」

 エロドラゴンになっているロゥリが隣に並ぶ。

「アイツ、ヤッテイイノカ?」
「ふうむ、今のお主ではちと厳しいかのぉ?」
「バカニスルナ!」

 ロゥリが駆け出す。
 竜王ハイフレムから数々の魔法が放たれる。
 だが、それらは竜王ニースが手を上げた瞬間に掻き消える。

「なにっ!? 老いたお前にこんな芸当が出来るはずが……」
「余所見をしている暇は無いぞ」

 ハイフレムに辿り着いたロゥリが、ドラスレを高く掲げ斬りかかっていく。
 同時にニースも動き出す。

 ロゥリが持つドラゴンスレイヤー。
 それは、生物の中でもっとも硬い鱗を持つ竜を、容易く切り裂いていく。
 ニースが持つ初代聖剣。
 竜に対してはドラスレほどの切れ味はないが、それでも鱗を切り裂く程度の切れ味は持つ。

 そんな我等の最凶コンビにズタズタに切り裂かれていく、竜王ハイフレム。
 爪で切り裂こうとも、的の小さい人間サイズ、しかも動きは達人並み。捉える事はままならない。
 魔法で攻撃しようとも、より上位の能力を持つニースによって全て掻き消されてしまう。

「我輩が加勢するまでもないであるな」
「ああ、ダンディ達は周りの雑魚共を頼む」
「承知した」

 そしてオレはカシュアを連れて白銀の獅子王の元へ向かう。

「カシュア、回復魔法を頼む!」
「任せてくれたまえ!」

 カシュアの回復魔法を受けて僅かに目を見開く白銀の王。

「わ、我の妻と子は……」

 オレは首を振る。
 残念ながら、あの二匹は既に息をしていなかった。

「ここにモンスターカードが一枚ある。コレを使う。いいな?」
「待ってくれ、そのカードを使えばどんなに弱っていても蘇る事が出来るのであろう!?」

 生きてさえ、いればな。
 命の尽きたものには、使えない。

「ならば、この子を頼みます」

 ふと背中から声がかかる。
 そこにはズルズルと這い寄ってくる子供を抱えたライオンのメスが居た。

「まだ生きていたのか!?」
「私達は9つの命があると言われるほどしぶといのです。たとえ心臓が止まろうとも、暫くは……持ちこたえる事ができます」

 だからまだ、この子にも可能性があると。そう呟く。
 奥さんは息を吹き返していたとしても、子供の方は、ピクリとも動かない。

「……カードは今、一枚しかないが、もうすぐもう一枚増える予定だ」

 助かるかどうか分からない子供に使うよりかは、この夫婦に使ったほうがいいのではないか?
 オレはライオンの夫婦を見渡す。

「ならば、妻と子を頼む」
「あなた!?」
「我は寿命が尽きるほどの時を生きた。我が今以上の時間を欲したのも全てお前達が居たからだ。どちらか片方でも失うと言うのならば、それでは意味の無い事なのだ」

 どうする? どうしたらいい? 時間はあまり残されていない。
 カードが二枚になるのならこの夫婦に、一枚だけならば……
 今の合計レベルは170、この数なら……180に届くはず。

 だが、無情にもカードは増えなかった。
 竜王ハイフレムが断末魔の悲鳴を上げて沈む。
 辺りに居たモンスター共も全て消えうせた…………合計レベルは178で止まってしまった。

「我が子を頼む!」
「その子をお願いします!」

 それを告げたオレに間髪をいれず答える白銀の獅子王夫婦。

「いいのか? もしかしたら全員助からないかも……」
「構わぬ」
「構いません」

 濡れた瞳で我が子を見やる二匹の獣。

「分かった……」

『モンスターカード!』

◇◆◇◆◇◆◇◆

 オレの手の中には、スヤスヤと眠る一人の少女が居る。
 その少女の種族名は『ライオンハート』猛々しきライオンの心を持つ少女。
 モンスターカードでゲットした、最新のモンスター。
 あの子ライオンは一命を取りとめたのだった。だが、

「この子の名前を教えてくれないか?」

 目の前には虫の息のライオンが二頭。

「人間よ感謝する。そこ子の名はハーモア」
「私達はハーと呼んでいました」

 その夫婦ライオンの前にニース達が集まってくる。

「駄目なのですかカシュア」
「……今のボクじゃどうしようもないみたいだ」
「竜王ハイフレムはどうした?」
「ヤツナラシンダ」

 ロゥリが答える。
 いや死んでおらんよ。とニースは答える。

「竜王はそう簡単には死なぬ。四肢を切断してなお、各部位は生き続ける。後で奴の体をバラバラにし、各地で封印を行う」

 封印? ……封印!?

「その封印とは、時間を止めれたりするのか!?」

 ならばこの白銀の獅子王も、カードが増えるまで封印しておけないか?
 しかしニースは首を振る。
 そんなに便利な物は無い。時を止める存在など、どこにもない。そう答える。封印したからといって零れる命を止める術は無い。

「だめ……なのか?」
「時を、止める方法は……いや、一つだけ方法が無い事も無いか?」

 出来るのか!

「時を止める事は出来ぬ。だが、時を進める事は出来る。いや、言い方がおかしいか……同じ魂で新たな時を刻むことが出来る」

 そう、私のスキル、輪廻転生によって。
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