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第四章

レベル64

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 このお料理セット、他のモンスターカードと裏面の表示が違った。
 まず、ゲージの初期値が全部0。
 その代わり、ボーナスポイントが大量にある。
 どうやら、全部自分で振り分けることが出来るらしい。

 そしてそのゲージの種類。

 力やスピード、防御などではなく、火力や冷凍、発酵などの名目になっている。
 試しに振り分けたところ、その効果が強くなった。
 火力を上げると、焼きあがるまでの時間が短縮される。
 通常5分かかるのが1分とかに。

 これ、火力上げたら結構な武器にならないか? 食えるモンスター限定だけど。

 あと、オート料理のレパートリーなんだが、どうやら食べた事があるものなら再現できるようだ。
 なので前世で食べた事のある、ケーキやらアイスクリーム、うどんにラーメン、様々な料理を作って提供差し上げた。

「この料理の調理法なら、ソレがなくても作れそうね」

 エクサリーがそんなオレの料理風景を見て、お料理セットがなくてもコッチの世界の機材で同じ料理を作る方法を編み出していく。
 さすがエクサリーさん! 料理の腕前に関してはプロ以上でございます。
 そしてなぜか、オレがお料理セットで作ったものよりうまいの。

 最高の機材、ベストな調理方法を持ってしても、愛情というスパイスには敵わないわけだ。

「単にお坊ちゃまが使いこなせていないだけは?」

 うるさいよっ!

 オレがあまりに褒めた所為か、ライブハウスで食事を提供し始めたエクサリー。
 ライブハウス、せっかくおやっさんに作ってもらったんだけど人が来ないの。
 世の人々は、音楽なんて聞いてどうするの? それでお腹が膨れるの? なんて言ってだれも聞きに来ようとはしない。

 しかし、エクサリーが料理を提供し始めた瞬間、一躍大人気に!

 見たこともないような素晴らしい料理を、軽快な音が溢れた空間で食べる。
 そうして音楽を知った人達は、音楽だけを目当てにやって来るようにもなる。
 まあ、ライブでお金は取れないから直接お店の貢献にはなってないけど、人が集るって事は経済も集るって事だ。
 間接的にはお店を利用する人が多くなっている。
 料理の売り上げもそこそこの収入になる。

 ただ、料理を作る為にはその為の食材も必要になる訳で……

「トッテキタ! コレツカエ!」

 そんな食材はロリドラゴンが頑張っている。
 毎日、あっちこっちから食えそうなモンスターや、謎の野菜を取ってくる。
 こっちの世界で普通にある食材では、オレの前世の料理はなかなか再現できない。
 見た目は似ていても、味はまったく違ったりするからな。

 そこで機動力のあるロリドラゴンが食材ハンターとして活躍している訳だ。
 ただ気になるのは……これ、盗んできてないよね?

「大丈夫ですよ、その辺りはちゃんと手は打っていますから」

 だが、そんなラピスの大丈夫はやはり当てにならなかった。

「ちょっ! 大変スよクイーズさん! ロゥリが人間の男の子狩ってきました!」
「えっ、………………」

 おおおお、おおい! ちょっとラピスたん! これヤベエよ!
 オレは急いで医務室に駆け込む。
 そこではラピスとカシュアが男の子の治療に当たっていた。

 おおお、おまっ、なんて事を!

「まあまあ、落ち着いてください」
「落ち着ける訳ないだろ!」

 えっ、違う?
 ロゥリは唯、倒れてた子供を運んで来ただけ?
 よくよく話を聞くと、ロゥリが獲物を探している所に人間の男の子が倒れていたらしい。
 そこでラピスに、これどうするか問い合わせした所、すぐに連れて来いって事になったようだ。

「えっ、ちょっと待って? どうやって問い合わせしたの?」

 なんでもラピスのスキル、30レベルになって他のモンスターとテレパシーのようなやり取りが可能になったんだと。それを使って毎回獲ってきていいか確認していたそうな。
 そういや、カード統率に+が生えてたな。
 あと、超繁殖も名前が変わっていた。『聖母』だってよ。

 次代の勇者はラピスが生む事になるかもしれない。

「良くやったロリドラゴン! お前はヒーローだな!」

 オレはロリドラゴンを抱えて天高く持ち上げる。
 ロゥリもまんざらではなさそうに胸を張っている。
 ん? なんでこいつ軽いんだ?

「ドラゴンはそもそも重力を軽減する力を身に付けているからね。じゃないとあの重量は持ち上がらないよ」

 羽はただ方向転換をしたり、加速をする時に使うそうな。
 まあそれはいい! 今日は秘蔵の料理を食わしてやろう!

 どうやらその男の子は近所の宿屋さんの子供で、冒険者に憧れて少々ワンパク過ぎたらしい。
 これに懲りて、ちょっとはおとなしくなってくれればいいのだが。
 そしてその宿屋さん、大層感謝されて、ロリドラゴンの為にと言って希少な食材を大量にプレゼントしてくれた。
 さっそくオレはその食材を使って新たな料理を作り出す。

「ウマッ! ウマウマッ! イイコトシタアトハ、リョウリガウマイ!」
「ロゥリは今日、頑張ったものね、いっぱ~い食べてね」

 エクサリーとロゥリが中良さそうに食事をしている。
 まるで自分の子供のように口元を拭いてやったり、こぼれた物を掃除している。
 なんだか親子のようで微笑ましい光景だ。
 オレとエクサリーの子供が出来たらあんな感じになるのだろうか。

「クイーズさん……顔がキモイっすよ」
「つ~かお前、マジで心臓が止まるかと思っただろ? ほんと人騒がせな」
「だってあのロゥリが人助けなんてすると思わなかったッス」

 まあその気持ちは分からない事もないが。
 しかしそのドラゴン、味をしめたのか、翌日から人助けに精を出すことになる。
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