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第三章
レベル52 進軍開始、魔都サンムーンへ
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「ごめんなさい……貴方の事を責める資格なんて私にはないのに」
出発の日、エクサリーがアポロを呼び止め、二人して遠くで話を始めた。
また喧嘩にならなければいいが……
「…………謝る事は無い、事実は事実。それに少しは嬉しかった、やっと私を見てくれた気がした」
「え……?」
「私はこれからもクイーズの為に全力を尽くす。いつかは貴方から、奪ってみせる」
なんだか驚いた表情をしているエクサリー。
「もっと危機感を持ったほうがいい。クイーズは国のお姫様が婚約してもいいと思えるほど魅力がある存在、失ってから気づくのでは全てが手遅れ」
「……そう、そうよね。どうしてクイーズが私を選んでくれたのかは分からない。だけど、唯それに胡坐をかいているだけじゃダメなんだよね」
エクサリーがゆっくりと微笑む。それは何かを決意した、または戦いに赴く戦巫女のような、強力な迫力をかもし出している。
思わずウッと後ずさりするアポロ。
オレも、そんな始めて見るエクサリーの表情に思わず腰が引ける。
まだあんな裏の顔を残していたとは……ほんとに誰も殺ってないよね?
「それじゃあそろそろ出発するかね? ウワッ、コワッ! ちょっとエクサリー君! いくらアポロ君が憎いって言っても殺しちゃ駄目だよ!」
「えっ?」
「エクサリーさんすいません! アポロ、命あってのモノだねだよ!」
「そうッス! どうかお許しください!」
あ、なんだかエクサリーがしょんぼりした顔になっている。
誰も殺さないのに……なんて呟きながら、しきりに頬を指で持ち上げている。
「…………皆勘違い、私達は唯、認め合っただけ」
そう言ってアポロがエクサリーの目の前に立つ。
「私もいつか、そんな怖い顔を会得してみせる!」
イヤイヤイヤ、そんなアポロさん、無茶苦茶ッスよ?
そんな事、握りこぶしまで作って決意するような事じゃないと思います。
「…………こんな感じ?」
「プッ!」
ちょっとアポロさん、それは怖い顔じゃなくて唯の変顔。
おもわず吹き出しているエクサリー。
周りの皆も耐え切れず笑い出してしまう。カシュアなんてお腹を抱えて爆笑している。
それを見たアポロが、拗ねたような表情でそっぽを向く。
オレはそんなアポロに近寄り頭をグリグリと撫でる。
「ありがとうなアポロ。エクサリー、行ってくるよ」
オレがそう言うとエクサリーは、
「はい、行ってらっしゃい」
と微笑んだ。いつかのオレの心を射止めた微笑で。
「…………エクサリーはずるい」
「ブッ、ちょっとやめてよアポロ、それ全然怖くないどころか、面白いから」
「………………」
アポロが落ち込んでいる。
道中、ずっと怖い顔の練習をしているアポロだった。
「しかし最後のアレは反則ッスよね~」
「そうよね。普段怖いエクサリーさんが突然あんな優しそうな笑顔を浮かべるんだもんね」
「あっ、アポロだって負けてないッスよ! ほらほら、アポロは普通に可愛いッスから。それに、エクサリーさんにはないアドバンテージも持ってるし……」
アドバンテージって何? って聞かれて、それはまだ秘密ッスって答えている。
ヒヤヒヤが止まらない。
もういっそのこと打ち明けてくれ。
そんなこんなでやって来ました。三度目の魔都サンムーン!
今回は大量に食料を持ち込んで、カシュアが20レベルになるまでブートキャンプの予定だ。
「さあ、今回は最初からとばして行きますよ!」
「……生きてここから出られるかなあ」
「大丈夫ですよ、あなた、死ぬ事ないですから」
「………………」
カシュアが絶望の表情でラピスを見つめている。
街の外周から、徐々にゾンビ共を昇天させながら中心へ向かう。
中心にある王城へ近づけば近づくほどゾンビ達は増えていく。
しかしながら、
「なんだか出が悪くなってきましたね」
そんなお前、パチンコの出玉みたいに……
何日かそれを繰り返していた所、随分ゾンビが減ってきたような気がする。
「たぶんアレじゃないか?」
オレはゾンビを倒しているカシュアを指差す。
カシュアに斬られたゾンビ、なんか光の粒子になって天高く舞い上がっていく。
どうみても昇天してござる。
ラピスが倒したゾンビは地面に溶け込むようにして消えているのにな。
「ゾンビとなる魂が減ってきている、という事ですかね」
「そういう事なら、ボクがやっている事は誇れる事なのかもしれないね!」
カシュアの祖先が作り出した死者の都。
今尚、その地に居た魂は大地に縛り付けられて、もがいて居る。
それを子孫であるカシュアが解放していく。
「ボクには、この都に住む、すべての魂を開放する義務がある!」
「今回は随分と真面目モードだな」
「ボクはいつだって真面目だよ!?」
嘘つけよ。
お前、普段は食っちゃね、食っちゃねしているじゃね?
それこそ数日で体重が倍になるぐらい。
「真面目に食っちゃねしているんだよ?」
モノは言いようだな。
「はあ、仕方ありませんね、私のレベル上げは後回しにして、カシュアに全部回して行くとしましょうか」
「えっ!?」
だから言ったろ? 口は災いの元だって。
そんな泣きそうな顔してコッチを見てもどうしようもない。
ほら行くぞ、オレもちゃんと手伝ってやるから。
出発の日、エクサリーがアポロを呼び止め、二人して遠くで話を始めた。
また喧嘩にならなければいいが……
「…………謝る事は無い、事実は事実。それに少しは嬉しかった、やっと私を見てくれた気がした」
「え……?」
「私はこれからもクイーズの為に全力を尽くす。いつかは貴方から、奪ってみせる」
なんだか驚いた表情をしているエクサリー。
「もっと危機感を持ったほうがいい。クイーズは国のお姫様が婚約してもいいと思えるほど魅力がある存在、失ってから気づくのでは全てが手遅れ」
「……そう、そうよね。どうしてクイーズが私を選んでくれたのかは分からない。だけど、唯それに胡坐をかいているだけじゃダメなんだよね」
エクサリーがゆっくりと微笑む。それは何かを決意した、または戦いに赴く戦巫女のような、強力な迫力をかもし出している。
思わずウッと後ずさりするアポロ。
オレも、そんな始めて見るエクサリーの表情に思わず腰が引ける。
まだあんな裏の顔を残していたとは……ほんとに誰も殺ってないよね?
「それじゃあそろそろ出発するかね? ウワッ、コワッ! ちょっとエクサリー君! いくらアポロ君が憎いって言っても殺しちゃ駄目だよ!」
「えっ?」
「エクサリーさんすいません! アポロ、命あってのモノだねだよ!」
「そうッス! どうかお許しください!」
あ、なんだかエクサリーがしょんぼりした顔になっている。
誰も殺さないのに……なんて呟きながら、しきりに頬を指で持ち上げている。
「…………皆勘違い、私達は唯、認め合っただけ」
そう言ってアポロがエクサリーの目の前に立つ。
「私もいつか、そんな怖い顔を会得してみせる!」
イヤイヤイヤ、そんなアポロさん、無茶苦茶ッスよ?
そんな事、握りこぶしまで作って決意するような事じゃないと思います。
「…………こんな感じ?」
「プッ!」
ちょっとアポロさん、それは怖い顔じゃなくて唯の変顔。
おもわず吹き出しているエクサリー。
周りの皆も耐え切れず笑い出してしまう。カシュアなんてお腹を抱えて爆笑している。
それを見たアポロが、拗ねたような表情でそっぽを向く。
オレはそんなアポロに近寄り頭をグリグリと撫でる。
「ありがとうなアポロ。エクサリー、行ってくるよ」
オレがそう言うとエクサリーは、
「はい、行ってらっしゃい」
と微笑んだ。いつかのオレの心を射止めた微笑で。
「…………エクサリーはずるい」
「ブッ、ちょっとやめてよアポロ、それ全然怖くないどころか、面白いから」
「………………」
アポロが落ち込んでいる。
道中、ずっと怖い顔の練習をしているアポロだった。
「しかし最後のアレは反則ッスよね~」
「そうよね。普段怖いエクサリーさんが突然あんな優しそうな笑顔を浮かべるんだもんね」
「あっ、アポロだって負けてないッスよ! ほらほら、アポロは普通に可愛いッスから。それに、エクサリーさんにはないアドバンテージも持ってるし……」
アドバンテージって何? って聞かれて、それはまだ秘密ッスって答えている。
ヒヤヒヤが止まらない。
もういっそのこと打ち明けてくれ。
そんなこんなでやって来ました。三度目の魔都サンムーン!
今回は大量に食料を持ち込んで、カシュアが20レベルになるまでブートキャンプの予定だ。
「さあ、今回は最初からとばして行きますよ!」
「……生きてここから出られるかなあ」
「大丈夫ですよ、あなた、死ぬ事ないですから」
「………………」
カシュアが絶望の表情でラピスを見つめている。
街の外周から、徐々にゾンビ共を昇天させながら中心へ向かう。
中心にある王城へ近づけば近づくほどゾンビ達は増えていく。
しかしながら、
「なんだか出が悪くなってきましたね」
そんなお前、パチンコの出玉みたいに……
何日かそれを繰り返していた所、随分ゾンビが減ってきたような気がする。
「たぶんアレじゃないか?」
オレはゾンビを倒しているカシュアを指差す。
カシュアに斬られたゾンビ、なんか光の粒子になって天高く舞い上がっていく。
どうみても昇天してござる。
ラピスが倒したゾンビは地面に溶け込むようにして消えているのにな。
「ゾンビとなる魂が減ってきている、という事ですかね」
「そういう事なら、ボクがやっている事は誇れる事なのかもしれないね!」
カシュアの祖先が作り出した死者の都。
今尚、その地に居た魂は大地に縛り付けられて、もがいて居る。
それを子孫であるカシュアが解放していく。
「ボクには、この都に住む、すべての魂を開放する義務がある!」
「今回は随分と真面目モードだな」
「ボクはいつだって真面目だよ!?」
嘘つけよ。
お前、普段は食っちゃね、食っちゃねしているじゃね?
それこそ数日で体重が倍になるぐらい。
「真面目に食っちゃねしているんだよ?」
モノは言いようだな。
「はあ、仕方ありませんね、私のレベル上げは後回しにして、カシュアに全部回して行くとしましょうか」
「えっ!?」
だから言ったろ? 口は災いの元だって。
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