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第三章
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「擬態……していたというのか……黒竜が岩竜に……」
ブラックドラゴン、それは竜種の中でも最悪と言われる部類に入る存在だ。
ブレスや魔法攻撃などの攻撃手段を持たない替わりに、非常に硬く、そして、賢い。
基本、自分から動こうとせずに罠をしかけ獲物を待つ。
そして、罠に掛かった獲物は決して逃しはしない。
ドラゴンが尻尾に巻き付けていた岩を飛ばしてくる。
それは広場の入り口を塞いでしまう。
どうやら一人も逃がす気はないようだ。
「今回の件で言えば、罠は岩竜で獲物は……人間か」
「バカな! たかがモンスターにそんな高度な知能が!」
「脳みその大きさだけなら人間の数倍はありますからね。人より知能が高くても驚きませんよ……実際にやられていますしね」
大丈夫だろうかリーヴィ。穴はそんなに深くはなさそうだが……
「くっ、パイルバンカーの用意をしろ!」
「ハッ!」
攻城兵器が並べられ、先ほどと同じように一斉に射出される。
しかし、その全てを打ち尽くしても悠然と構えるドラゴン。
硬い、硬すぎるその鱗には、傷一つ付いていない。
「剣を用意しろ!」
「ハッ!」
ガラガラッと台車が運ばれ、そこには無数の剣が乗っている。
地面から現れた無数の黒い手がそれを握って行く。
「くらえっ!」
『シャドウスキル・武影総刃』
その無数の剣がドラゴンに斬りかかる。
だが、その剣はどれ一本としてダメージになっていない。
「バカな……これでも、ダメなのか」
まあ、先ほどのパイルバンカーより威力は落ちているんじゃないでしょうか?
ドラゴンは相変わらず悠然と浮かんでいる。
その口はまるで笑っているかのようだ。
「…………撤退だ! 入り口の岩を壊すぞ!」
あっ、それはまずい。
そう思った瞬間だった。
それまで、悠然と浮かんでいたドラゴンが入り口付近の人間達に向かって急襲する。
「私がドラゴンを抑える! その間に・」
無数に伸びる影の手。
だが、ドラゴンに絡まる傍から引き千切られていく。
先ほど影に捕らわれていたのも演技だったようだ。
次々とドラゴンの口に運ばれていく兵士達。
どうする? どうしたらいい!?
ふと、ドラゴンが手を止める。
こっちを振り返り、口の端がニヤァっと持ち上がる。
そしてこれ見よがしに口の中へ……
「オノレェッ!」
「危ない!」
腰の剣を抜き、駆けだそうとする姫様を必死に止める。
だが、姫様はともかく逆上した側近の兵士達は駆けだしてしまう。
ドラゴンに向かって剣で斬りつける兵士達。
剣じゃダメージにならないのはさっきので見ているだろ! というかお前ら姫様護る役だろが!
そいつらは、尻尾の一撃で吹き飛ばされて壁にぶち当たり身悶えしている。
おいおい、国軍がこのレベルかよ? まだ冒険者の方が冷静に対応出来るぞ。
「くっ、離せ! 離せというとろうに!」
「奴の策略に乗ってはダメです! 正面から行っても勝ち目はないでしょう! 逃げる方法をなんとか考えてください!」
「逃げる、だと!? この状況でどこに逃げろというのだ!」
オレは辺りを見渡す。逃げれる場所があるとすれば……あの穴か?
いや、落ちた兵士達は食後のデザートだろう。逃がす理由が無い。
すると、やはりあの入り口の岩を砕くしか。
「少しでも時間を稼いで冒険者達が来るのを待ちましょう」
「いやだ! 奴は私の手で殺してやるのだ!」
子供ですかあんたは。
「………………」
オレは大きくため息をつく。
「姫様、最初に言った、オレの手は借りないっていうの、撤回するつもりはありますか?」
「なに……? お前ならば、あの竜をなんとか出来るというのか!?」
やりたくないんですけどね。怖いし。
でも、そうは言ってられないんでしょう。
「ドラゴンスレイヤーは命がけだ、重いし、扱いづらいし」
「……そうか、私が甘かったのだな。ドラゴンスレイヤーを軽く見ていた……頼む! あのクソドラゴンを倒して欲しい!」
女性の涙にはほんと勝てませんよね。
オレはトントンと地面を叩く。
「それじゃあ、オレを運んでくれませんかね? あのクソ生意気なドラゴンのてっぺんまで」
ああ、オレもいいかげん頭にキてんだよ!
あんのクソドラゴン、目に物見せてやる!
オレは姫様が作り出した影に乗ってドラゴンの頭の上に到着する。
おうおう余裕だな、頭の上に乗られても平気ですってか。
ああん、その余裕がいったいどこまで続くか見せてもらおうじゃねえか。
『出でよ! ドラゴンスレイヤー!』
オレは現れたドラスレに、全体重を乗せて頭にブッ刺してやる。
ストンと、まるで冗談かのように根元まで突き刺さるドラゴンスレイヤー。
一瞬、ドラゴンの動きが止まる。
「アッギャッギャーー、アンギャーー!」
次の瞬間、悲鳴を上げながらのた打ち回る。
「おっとっと、と、ドンドンいくゼ! ドラゴンスレイヤー!」
次々と脳天に向かってドラスレを突き立てるオレ。
いやあ、面白いように刺さりますわぁ。
おやどうしたのドラゴン君、さっきまでの余裕は何処行ったんでしょうかね?
手でオレを叩き落そうとするがそうはさせない。
逆に迫ってきた手にドラスレを突き立ててやる。
ハッ、普段からちゃんと運動しねえから、そんなにトロくせえんだよ!
逆上したドラゴンが頭を壁に打ち付ける。
ヤバイッ! ちょっと調子に乗り過ぎたか!?
その衝撃で宙に放り出されるオレの体。くっ、姫様の影はっ、間に合わないか!
ブラックドラゴン、それは竜種の中でも最悪と言われる部類に入る存在だ。
ブレスや魔法攻撃などの攻撃手段を持たない替わりに、非常に硬く、そして、賢い。
基本、自分から動こうとせずに罠をしかけ獲物を待つ。
そして、罠に掛かった獲物は決して逃しはしない。
ドラゴンが尻尾に巻き付けていた岩を飛ばしてくる。
それは広場の入り口を塞いでしまう。
どうやら一人も逃がす気はないようだ。
「今回の件で言えば、罠は岩竜で獲物は……人間か」
「バカな! たかがモンスターにそんな高度な知能が!」
「脳みその大きさだけなら人間の数倍はありますからね。人より知能が高くても驚きませんよ……実際にやられていますしね」
大丈夫だろうかリーヴィ。穴はそんなに深くはなさそうだが……
「くっ、パイルバンカーの用意をしろ!」
「ハッ!」
攻城兵器が並べられ、先ほどと同じように一斉に射出される。
しかし、その全てを打ち尽くしても悠然と構えるドラゴン。
硬い、硬すぎるその鱗には、傷一つ付いていない。
「剣を用意しろ!」
「ハッ!」
ガラガラッと台車が運ばれ、そこには無数の剣が乗っている。
地面から現れた無数の黒い手がそれを握って行く。
「くらえっ!」
『シャドウスキル・武影総刃』
その無数の剣がドラゴンに斬りかかる。
だが、その剣はどれ一本としてダメージになっていない。
「バカな……これでも、ダメなのか」
まあ、先ほどのパイルバンカーより威力は落ちているんじゃないでしょうか?
ドラゴンは相変わらず悠然と浮かんでいる。
その口はまるで笑っているかのようだ。
「…………撤退だ! 入り口の岩を壊すぞ!」
あっ、それはまずい。
そう思った瞬間だった。
それまで、悠然と浮かんでいたドラゴンが入り口付近の人間達に向かって急襲する。
「私がドラゴンを抑える! その間に・」
無数に伸びる影の手。
だが、ドラゴンに絡まる傍から引き千切られていく。
先ほど影に捕らわれていたのも演技だったようだ。
次々とドラゴンの口に運ばれていく兵士達。
どうする? どうしたらいい!?
ふと、ドラゴンが手を止める。
こっちを振り返り、口の端がニヤァっと持ち上がる。
そしてこれ見よがしに口の中へ……
「オノレェッ!」
「危ない!」
腰の剣を抜き、駆けだそうとする姫様を必死に止める。
だが、姫様はともかく逆上した側近の兵士達は駆けだしてしまう。
ドラゴンに向かって剣で斬りつける兵士達。
剣じゃダメージにならないのはさっきので見ているだろ! というかお前ら姫様護る役だろが!
そいつらは、尻尾の一撃で吹き飛ばされて壁にぶち当たり身悶えしている。
おいおい、国軍がこのレベルかよ? まだ冒険者の方が冷静に対応出来るぞ。
「くっ、離せ! 離せというとろうに!」
「奴の策略に乗ってはダメです! 正面から行っても勝ち目はないでしょう! 逃げる方法をなんとか考えてください!」
「逃げる、だと!? この状況でどこに逃げろというのだ!」
オレは辺りを見渡す。逃げれる場所があるとすれば……あの穴か?
いや、落ちた兵士達は食後のデザートだろう。逃がす理由が無い。
すると、やはりあの入り口の岩を砕くしか。
「少しでも時間を稼いで冒険者達が来るのを待ちましょう」
「いやだ! 奴は私の手で殺してやるのだ!」
子供ですかあんたは。
「………………」
オレは大きくため息をつく。
「姫様、最初に言った、オレの手は借りないっていうの、撤回するつもりはありますか?」
「なに……? お前ならば、あの竜をなんとか出来るというのか!?」
やりたくないんですけどね。怖いし。
でも、そうは言ってられないんでしょう。
「ドラゴンスレイヤーは命がけだ、重いし、扱いづらいし」
「……そうか、私が甘かったのだな。ドラゴンスレイヤーを軽く見ていた……頼む! あのクソドラゴンを倒して欲しい!」
女性の涙にはほんと勝てませんよね。
オレはトントンと地面を叩く。
「それじゃあ、オレを運んでくれませんかね? あのクソ生意気なドラゴンのてっぺんまで」
ああ、オレもいいかげん頭にキてんだよ!
あんのクソドラゴン、目に物見せてやる!
オレは姫様が作り出した影に乗ってドラゴンの頭の上に到着する。
おうおう余裕だな、頭の上に乗られても平気ですってか。
ああん、その余裕がいったいどこまで続くか見せてもらおうじゃねえか。
『出でよ! ドラゴンスレイヤー!』
オレは現れたドラスレに、全体重を乗せて頭にブッ刺してやる。
ストンと、まるで冗談かのように根元まで突き刺さるドラゴンスレイヤー。
一瞬、ドラゴンの動きが止まる。
「アッギャッギャーー、アンギャーー!」
次の瞬間、悲鳴を上げながらのた打ち回る。
「おっとっと、と、ドンドンいくゼ! ドラゴンスレイヤー!」
次々と脳天に向かってドラスレを突き立てるオレ。
いやあ、面白いように刺さりますわぁ。
おやどうしたのドラゴン君、さっきまでの余裕は何処行ったんでしょうかね?
手でオレを叩き落そうとするがそうはさせない。
逆に迫ってきた手にドラスレを突き立ててやる。
ハッ、普段からちゃんと運動しねえから、そんなにトロくせえんだよ!
逆上したドラゴンが頭を壁に打ち付ける。
ヤバイッ! ちょっと調子に乗り過ぎたか!?
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