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第二章
レベル32
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「クイーズ、これを……」
ふと見ると、エクサリーがオレに一つの瓶を差し出してくる。
「これは……?」
「最上級ポーション。万が一の為に買って置いたの」
「クイーズにもしもの事があった時の為にってな。おかげで一時、店の蓄えが底を尽きかけたぜ」
そんな、そんな高価な物を……
「元々はクイーズのおかげで買えた物だ。お前の好きにすればいい」
ありがてえ、ありがたすぎて涙が止まらねえや。
最上級ポーションと言えば、コレ一個で豪邸が立つという。
ソレをオレの為に買って置いてくれただなんて。
あの頃はまだ店だってどうなるか分からなかっただろうに。
ありがたくこのポーション使わせてもらうぜ!
この料金はもっともっと店を大きくして倍にして返してみせる!
オレはそれを口に含んでアポロに口移しで飲ませる。
これでなんとか、助かってくれ!
オレ達の祈りが通じたのか、徐々に傷口がふさがり、顔色も良くなっていく。
「先生、どうなんでしょうか?」
「ふう……どうやら持ち直したようですね。さすがは最上級、体の方も健常者と変わりありません。ただ……」
お医者さんはアポロの顔を見つめる。
そこには額から顎まで、斜めに走る傷跡が……
「それでも……それでも命が助かって、ぐすっ、良かったッス」
「クイーズさん、このご恩は一生忘れません! ポーションの代金も、必ず! 必ずお返しいたします!」
オレは二人の頭をグシャグシャって撫でつける。
「二人とも頑張ったな」
「うっ、ぐすっ、……」
「…………ふぇーん・・」
ティニーが、気の強そうなサヤラまでもが、涙を流しながらオレに抱き付いてくる。
後ろで良かった良かったとカシュアまで涙ぐむ。
こいつも頑張ってくれたようで、最後の方は僅かだが手元が輝いていた。
二人は暫くそうして泣いたあと、ポツポツと語ってくる。
どうやら魔石をお金に変えた後、柄の悪い連中に付けられていたらしい。
巻いたと思っていたのだが、宿屋に戻り、アポロが一人になった所を襲われたようだ。
盗賊たちの狙いはあくまで金目の物だったから、アポロも素早く逃げれば良かったのだが、どうやら激しい抵抗をしたらしく斬りつけられてしまった。
騒ぎを聞きつけた宿屋の人達が部屋に入った時にはもう、金品どころか装備まで持っていかれ、後には血まみれで倒れているアポロだけだったと言う。
真夜中な上、無一文になった3人はすがる思いでオレがいる店の戸を叩いたとの事だった。
もしかして、結局の所、今回もオレが悪いんじゃないか?
大金持った女の子達をそのままにして……
やべえ、どんどん借りが溜まっていく……人情の借金地獄やぁ。
「クイーズさん、厚かましいお願いなのですが……武器を貸して頂けませんか?」
「うちにもお願いするッス」
その二人が何かを決意したような顔でそう言ってくる。
……それで一体何をする気だ?
「さっきまで言ってた、ポーションの代金を必ず払うってのは嘘だったのか?」
「……万が一、私達の身に何かあれば、アンデッドとして使役して頂いても構いません」
「もし無事に事が終わったら、クイーズさんの奴隷にしても構わないッス」
そんな物は欲しくない。
お前達は勘違いをしている。
取り戻すものと失う物が天秤につりあって無い事を。
「お前達は、アポロの最後の宝石まで奪ってしまうつもりなのか?」
「えっ、どこに宝石なんて……」
「もううちらには何も残されてないッス」
オレは二人の頭にそれぞれ右手と左手を乗せる。
「あるじゃないかアポロの宝石、それはお前達自身の事だ。どんな金品にも変えられない、どんな高級な装備にだって変えられない。世界でたった一つの宝石」
「私達がアポロの宝石……」
「なあ、お前達にとってアポロはかけがえのない宝石だと思わないか? そしてそれは逆もまた然り」
二人はハッとした表情で互いに見つめあう。
「全ての物を取り戻したとしても、そんな宝石が傷ついてしまっていてはなんにもならないだろう。心に手を当てて考えてみろ、今お前達が怒っているのは、物を取られたからか? アポロを傷つけられたからか? どっちだ」
「どっちも……と言いたい所ですか、正直取られた物はどうでもいいです……」
「ウウッ、クイーズさん! ウチ許せないッス! アポロにこんな消えない傷をつけたあいつらが!」
オレだって同じ思いだ!
こんな事をしでかした奴らを放置するつもりはない。
「でも、衛兵なんてまともに捜査してくれないッスよ!」
「冒険者ギルドに……ダメよね、誰も本気で探してなんて……」
「それはどうかな」
落ち込んでいる二人にオレは不敵に笑いかける。
「オレに任しておけ! あいつらは後悔する、お前達に手を出した事を、アポロを傷つけた事を。そう、すぐにな……」
ふと見ると、エクサリーがオレに一つの瓶を差し出してくる。
「これは……?」
「最上級ポーション。万が一の為に買って置いたの」
「クイーズにもしもの事があった時の為にってな。おかげで一時、店の蓄えが底を尽きかけたぜ」
そんな、そんな高価な物を……
「元々はクイーズのおかげで買えた物だ。お前の好きにすればいい」
ありがてえ、ありがたすぎて涙が止まらねえや。
最上級ポーションと言えば、コレ一個で豪邸が立つという。
ソレをオレの為に買って置いてくれただなんて。
あの頃はまだ店だってどうなるか分からなかっただろうに。
ありがたくこのポーション使わせてもらうぜ!
この料金はもっともっと店を大きくして倍にして返してみせる!
オレはそれを口に含んでアポロに口移しで飲ませる。
これでなんとか、助かってくれ!
オレ達の祈りが通じたのか、徐々に傷口がふさがり、顔色も良くなっていく。
「先生、どうなんでしょうか?」
「ふう……どうやら持ち直したようですね。さすがは最上級、体の方も健常者と変わりありません。ただ……」
お医者さんはアポロの顔を見つめる。
そこには額から顎まで、斜めに走る傷跡が……
「それでも……それでも命が助かって、ぐすっ、良かったッス」
「クイーズさん、このご恩は一生忘れません! ポーションの代金も、必ず! 必ずお返しいたします!」
オレは二人の頭をグシャグシャって撫でつける。
「二人とも頑張ったな」
「うっ、ぐすっ、……」
「…………ふぇーん・・」
ティニーが、気の強そうなサヤラまでもが、涙を流しながらオレに抱き付いてくる。
後ろで良かった良かったとカシュアまで涙ぐむ。
こいつも頑張ってくれたようで、最後の方は僅かだが手元が輝いていた。
二人は暫くそうして泣いたあと、ポツポツと語ってくる。
どうやら魔石をお金に変えた後、柄の悪い連中に付けられていたらしい。
巻いたと思っていたのだが、宿屋に戻り、アポロが一人になった所を襲われたようだ。
盗賊たちの狙いはあくまで金目の物だったから、アポロも素早く逃げれば良かったのだが、どうやら激しい抵抗をしたらしく斬りつけられてしまった。
騒ぎを聞きつけた宿屋の人達が部屋に入った時にはもう、金品どころか装備まで持っていかれ、後には血まみれで倒れているアポロだけだったと言う。
真夜中な上、無一文になった3人はすがる思いでオレがいる店の戸を叩いたとの事だった。
もしかして、結局の所、今回もオレが悪いんじゃないか?
大金持った女の子達をそのままにして……
やべえ、どんどん借りが溜まっていく……人情の借金地獄やぁ。
「クイーズさん、厚かましいお願いなのですが……武器を貸して頂けませんか?」
「うちにもお願いするッス」
その二人が何かを決意したような顔でそう言ってくる。
……それで一体何をする気だ?
「さっきまで言ってた、ポーションの代金を必ず払うってのは嘘だったのか?」
「……万が一、私達の身に何かあれば、アンデッドとして使役して頂いても構いません」
「もし無事に事が終わったら、クイーズさんの奴隷にしても構わないッス」
そんな物は欲しくない。
お前達は勘違いをしている。
取り戻すものと失う物が天秤につりあって無い事を。
「お前達は、アポロの最後の宝石まで奪ってしまうつもりなのか?」
「えっ、どこに宝石なんて……」
「もううちらには何も残されてないッス」
オレは二人の頭にそれぞれ右手と左手を乗せる。
「あるじゃないかアポロの宝石、それはお前達自身の事だ。どんな金品にも変えられない、どんな高級な装備にだって変えられない。世界でたった一つの宝石」
「私達がアポロの宝石……」
「なあ、お前達にとってアポロはかけがえのない宝石だと思わないか? そしてそれは逆もまた然り」
二人はハッとした表情で互いに見つめあう。
「全ての物を取り戻したとしても、そんな宝石が傷ついてしまっていてはなんにもならないだろう。心に手を当てて考えてみろ、今お前達が怒っているのは、物を取られたからか? アポロを傷つけられたからか? どっちだ」
「どっちも……と言いたい所ですか、正直取られた物はどうでもいいです……」
「ウウッ、クイーズさん! ウチ許せないッス! アポロにこんな消えない傷をつけたあいつらが!」
オレだって同じ思いだ!
こんな事をしでかした奴らを放置するつもりはない。
「でも、衛兵なんてまともに捜査してくれないッスよ!」
「冒険者ギルドに……ダメよね、誰も本気で探してなんて……」
「それはどうかな」
落ち込んでいる二人にオレは不敵に笑いかける。
「オレに任しておけ! あいつらは後悔する、お前達に手を出した事を、アポロを傷つけた事を。そう、すぐにな……」
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