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第二章

レベル29 オレがそのバカな貴族の長男です

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 そんなアポロの両親は平民の生活が我慢出来なく、敵国である隣国に亡命を決意した。
 しかし、世の中そんなにうまい事行く訳はなく、国境付近で兵士に見つかり捕まってしまうのだった。
 捕まればとんでもない事態になる事必須。どうにか娘達だけでも、ということで夜闇に紛れて逃がしてくれたらしい。

 なにせ、隣国でも貴族にしてもらおうと、自国のプライバシーをいっぱい持ち出していたそうだ。
 捕まれば良くて生涯強制労働、悪くて死罪だ。

 その小ささを武器に、3人でなんとか逃げ出し隣国まで来たのだが、亡命を申請しようにも、お土産もなければ、証明も出来ない。

 せめてスキルがあればと、持たせてくれたお金を使ってアポロのスキル開放を行ったのだが。
 神殿までの仲介料、手数料などで莫大なお金を取られてしまった。
 子供しか居ない上に、貴族上がりでよく世間を知らない。まさしくカモだったようだ。

 レアスキルが出て、これで証明出来るかと思ったのだが、逆にスパイを疑われ逃亡の身となる。

 そして城門を抜け、この宿場町で生計を立てる必要が出てきた。
 とりあえずスキルを生かして生活をするなら冒険者だろうと、向かったダンジョンで危機一髪の所をラピスに拾われたという話だ。

「まったく、偉い貴族の長男だったら、ジッとしてれば左団扇ですよ。ほんとバカな事をしてくれて……」

 ラピスがオレの事を下から伺うような視線で見てくる。
 おいバカやめろ、ジッとこっちを見つめるんじゃない。オレがそのバカな貴族の長男だってバレたらどうするんだよ!
 つまり、この3人はオレの所為で全てを失ったと。やっべぇ! どうやって償えば……

「そっ、そっ、そっ、それで、そ、相談とは何かね?」

 おっと、動揺して口調がカシュアのようになってしまった。

「実は、もうすぐ一人分のスキル開放の費用が貯まりそうなのです」
「別にうちらは大したスキルは持ってなさそうだからいいって言ってんスけどね」
「……そんな事無い、二人とも、レアスキル」
「「アポロの自信はどこからくるんだろう」」

 そこで前回、仲介料や手数料をぼったくられたので、なんとか良心的な相場でスキル解放が出来ないだろうかと。

「なんだそんな事か、それならばボクに任せてくれたまえ! 王子として指示を出せば一発だよ!」

 いやお前、もう王子じゃないから。
 しかし、どちらにしろスキル開放の手続きはしてあげないとな。
 そんぐらいじゃ償いにはならないだろうが、やるだけの事はやってあげないと。

「オレに任せて置け、全部段取りをしておいてやる。後、今回の魔石は全部3人で分けてくれ」
「「「えっ!?」」」
「オレの目的はカシュアのレベル上げだ。ほら見てくれ、3人が手を貸してくれたおかげでもう8レベルになっている」

 一週間で8レベルって破格にも程が有る。
 場所と相性がとにかくうまくハマッたようだ。
 後衛が充実していたというのも良かったようだ。
 ラピスも結構狩ったようで1レベル上がって21となっている。

 ちなみにカシュアのボーナスポイントは、防御7、攻撃3の割合で振っている。
 えっ、器用さと知能伸ばすんじゃなかったのかだって?
 だって最初そこに振ったら、ほとんど伸びなかったんだよ。えっ、何がって? ゲージ。
 これはダメだって諦めた。

 ふとメタルスライムを見て見ると9レベルになっていた。
 あちらも頑張って居るようだ。
 メタルスライムの方はバランスよく振っている。

 知能にガン振りしないのかって聞いたら、スライムは唯でさえ弱いモンスター、まずは強くしてあげるのが最優先だって。
 愛されているね、スラミィ。

「でも全部っていくらなんでもそんなこと……」
「うちらはパーティだよ、報酬の分配はキチンとしないと後々揉め事の元ッスよ」
「…………施しは受けない」

 3人が同情しているならやめてくれと言ってくる。

「同情して何が悪い! コレを見てくれ!」

 オレは首の痣を見せ付ける。
 奴隷のチョーカーの跡だ。

「オレだってな、元は貴族だったんだ! それが、奴隷まで落ちた事がある。お前達の気持ちは良く分かるつもりだ!」

 そしてオレはさらに続ける。

「それに、お前達はその話をオレにしてくれた。それはオレを心から仲間だって認めてくれたって事だろ? だったら、オレはお前達の仲間として出来る限りの事をしてやりたい!」

 じゃないとオレの良心が根をあげちゃう。

「く、クイーズさんも元貴族……」
「そりゃ、こんなレア中のレアスキル持ってりゃ……もしかしてかなりの高位の貴族?」

 おっとそれ以上はまずい。
 オレはギュッとアポロの肩を抱く。

「幸いにもオレは宝物に出会う事が出来た。その宝物とはオレを助けてくれた人達の事だ。だからオレは今、奴隷でも何でもなく、一人のクイーズとして生きていける。アポロにもそんな宝物に出会って欲しい、そしてそれはオレであって欲しいと願っている!」

 ちょっと強引でしたでしょうか?
 なんだかアポロがボーとオレを見つめてくる。
 と思ったらプイッと顔を横に向けてしまった。
 なんだか頬が赤くなって来てるような気がする。

「…………クイーズはもう、すでに私の宝物」

 ポツリと小さな声でそう言うのであった。
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