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第一章
レベル12
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例のドラゴンガッポガッポ事件からさらに2年が経過した。
オレは14歳、エクサリーは16歳となった訳なのだが。
この国では15歳で成人として認められる。
しかしながら、結婚できるのは16歳からとなっている。
ようは、15歳で成人して、16歳までにお相手を見つけなさいよって事らしい。
特に女性の場合、結構な人が16歳で結婚される。
うちのエクサリーさんは、まあ、顔つきを気にしてか、特に結婚を急いではいないようなのだが。
周りが放っておかないんです。
実はうちの店、この2年の間で、周りの土地を買い取って、3階建ての大店舗へ改装、取扱商品もグンと増やし、なんと! ここ宿場町で一番と言われるほどまで大きくなったのだった。
せっかく表に豪華な剣を置いてあるんだ、どうせなら武器防具も扱うかって事になって、ドラゴン討伐の報酬を元手に武器・防具も売り出した所、これが大ヒット!
態々遠くからドラスレを抜きに訪れる人や、高名な冒険者まで訪れ、一躍有名店に。
腕の立つ鍛冶屋さんなども訪れ、ドラスレの意匠や作りに胸を打たれたらしく、近場に工房などを作り始めた。
で、そんな所から商品を仕入れるもので、品質は常に最高峰。
ドラスレ研究させてくれって言われたので、どうぞどうぞと自由にさしてあげる事にした。
例え壊れても、カードに戻せばすぐ元通りになるしね。
なんでもこのドラスレ、この世界にはない鉱物で作られているらしい。
こんな細かい意匠も、現在の技術では再現不可能だとか。
研究のしがいがある素材だって鍛冶屋さん達は大歓喜。
その代わりと言ってはなんだが、鍛冶屋さん達の商品をお安く仕入れさせてもらえる事に。
うちの店に来れば、安く、いいもの、が手に入る。と、評判になった理由です。ハイ。
そんなこんなで気が付けば、いまや飛ぶ鳥落とす勢いの大商店。
そんな大商店の跡取りであるエクサリーさん、そりゃもう引っ張りだこでございます。
それに……本人は未だ気づいていないようだが……エクサリーさん、大人になって、なんというか、魅力が出てきたというか、子供の時はただ怖い、だけだった顔が、今じゃキリッとした美人に見えないことも……ないこともないような気も……
お店が大きくなるにつれて人もいっぱい増えて、エクサリーさんが実は優しいんだって知ってる人も増えて、そうすると、エクサリーさんも自然な笑顔を偶に見せる事があったり。
そんなレア表情にやられる人もそこそこ居たりする訳で。
つまり、何が言いたいかというと――――気が気じゃないんだよ!
エクサリーに縁談の話が持ち上がる度にヤキモキしてんだよ! 悪いかよ!?
なぜかその縁談の話、全部断ってはいるようだけど。
「だったらオレの女に手を出すな、ぐらいは言ってあげてもいいんじゃないですか?」
べっ、別にエクサリーの事をどうこうだなんて思ってないシ~。
「そんなしょうもない意地を張ってどうするんですか?」
「べっ、べべべ、別に意地なんて張ってないもん!」
呆れたような視線を投げかけてくるラピス。
そんなラピスにオレは反撃を掛ける。
「つーかお前、いつまでこんなとこで油売ってんだよ。さっさと冒険行ってこい」
ラピスは優雅にお茶を啜りながら、
「なんであんな危険な事しなくちゃならないんですか? こっちの方が数倍儲かるのに」
「………………」
お前、あれだけさんざん冒険者、冒険者って言っときながら……
ラピスも最初の頃は張り切って、森やダンジョンに向かっていた。
自分のパーティが出来た、なんてはしゃいでいた頃もあったっけ。
しかし、店の売り上げが軌道に乗るにつれて、死ぬ気で稼いできた数か月の儲けが、店にとっては一日分の売り上げにすら及ばない事を知ってしまって以来、やる気をなくしてしまったようだ。
その時のラピスの悲哀に満ちた表情は、未だに忘れられない。
帳簿なんて見せるんじゃなかったな。
「ほら、パーティメンバーも待ってんだろ? オレも付いて行ってやるから、行くぞ」
「え~」
「え~言うな」
やる気をなくすのはまあ、分からない事もない。
冒険者って意外に儲からないからな。
しかし、すでにパーティを組んでしまっている状態。
他のパーティメンバーに迷惑は掛けられない。
仕方ないんでオレもメンバーとして参加し、無理やりラピスを冒険に連れて行く事もしばしばだ。
レベルも上げなくちゃならないからな。
「ほら、もうすぐ20なんだろ、20レベルになったらまた何か有るかもしれないし」
レベル10の時は、パラメーターに振れるボーナスポイントが倍ほどあった。
たぶん20レベルも何か有ると思われる。
「働きたくないでござるぅうう」
そう言って、働いたら負けって机に落書きする。
「お前、どこでそんな知識仕入れて来るんだ?」
時々ラピスの奴、オレの前世の世界でしか分からないようなセリフを吐く。
「そりゃ私の知識の元は、そのモンスターカードのシステムがあった世界から来てますしね」
「えっ?」
そんなの初耳なんだが。
「ぬるぽ」
「ガッ!」
マジかよ。
オレは14歳、エクサリーは16歳となった訳なのだが。
この国では15歳で成人として認められる。
しかしながら、結婚できるのは16歳からとなっている。
ようは、15歳で成人して、16歳までにお相手を見つけなさいよって事らしい。
特に女性の場合、結構な人が16歳で結婚される。
うちのエクサリーさんは、まあ、顔つきを気にしてか、特に結婚を急いではいないようなのだが。
周りが放っておかないんです。
実はうちの店、この2年の間で、周りの土地を買い取って、3階建ての大店舗へ改装、取扱商品もグンと増やし、なんと! ここ宿場町で一番と言われるほどまで大きくなったのだった。
せっかく表に豪華な剣を置いてあるんだ、どうせなら武器防具も扱うかって事になって、ドラゴン討伐の報酬を元手に武器・防具も売り出した所、これが大ヒット!
態々遠くからドラスレを抜きに訪れる人や、高名な冒険者まで訪れ、一躍有名店に。
腕の立つ鍛冶屋さんなども訪れ、ドラスレの意匠や作りに胸を打たれたらしく、近場に工房などを作り始めた。
で、そんな所から商品を仕入れるもので、品質は常に最高峰。
ドラスレ研究させてくれって言われたので、どうぞどうぞと自由にさしてあげる事にした。
例え壊れても、カードに戻せばすぐ元通りになるしね。
なんでもこのドラスレ、この世界にはない鉱物で作られているらしい。
こんな細かい意匠も、現在の技術では再現不可能だとか。
研究のしがいがある素材だって鍛冶屋さん達は大歓喜。
その代わりと言ってはなんだが、鍛冶屋さん達の商品をお安く仕入れさせてもらえる事に。
うちの店に来れば、安く、いいもの、が手に入る。と、評判になった理由です。ハイ。
そんなこんなで気が付けば、いまや飛ぶ鳥落とす勢いの大商店。
そんな大商店の跡取りであるエクサリーさん、そりゃもう引っ張りだこでございます。
それに……本人は未だ気づいていないようだが……エクサリーさん、大人になって、なんというか、魅力が出てきたというか、子供の時はただ怖い、だけだった顔が、今じゃキリッとした美人に見えないことも……ないこともないような気も……
お店が大きくなるにつれて人もいっぱい増えて、エクサリーさんが実は優しいんだって知ってる人も増えて、そうすると、エクサリーさんも自然な笑顔を偶に見せる事があったり。
そんなレア表情にやられる人もそこそこ居たりする訳で。
つまり、何が言いたいかというと――――気が気じゃないんだよ!
エクサリーに縁談の話が持ち上がる度にヤキモキしてんだよ! 悪いかよ!?
なぜかその縁談の話、全部断ってはいるようだけど。
「だったらオレの女に手を出すな、ぐらいは言ってあげてもいいんじゃないですか?」
べっ、別にエクサリーの事をどうこうだなんて思ってないシ~。
「そんなしょうもない意地を張ってどうするんですか?」
「べっ、べべべ、別に意地なんて張ってないもん!」
呆れたような視線を投げかけてくるラピス。
そんなラピスにオレは反撃を掛ける。
「つーかお前、いつまでこんなとこで油売ってんだよ。さっさと冒険行ってこい」
ラピスは優雅にお茶を啜りながら、
「なんであんな危険な事しなくちゃならないんですか? こっちの方が数倍儲かるのに」
「………………」
お前、あれだけさんざん冒険者、冒険者って言っときながら……
ラピスも最初の頃は張り切って、森やダンジョンに向かっていた。
自分のパーティが出来た、なんてはしゃいでいた頃もあったっけ。
しかし、店の売り上げが軌道に乗るにつれて、死ぬ気で稼いできた数か月の儲けが、店にとっては一日分の売り上げにすら及ばない事を知ってしまって以来、やる気をなくしてしまったようだ。
その時のラピスの悲哀に満ちた表情は、未だに忘れられない。
帳簿なんて見せるんじゃなかったな。
「ほら、パーティメンバーも待ってんだろ? オレも付いて行ってやるから、行くぞ」
「え~」
「え~言うな」
やる気をなくすのはまあ、分からない事もない。
冒険者って意外に儲からないからな。
しかし、すでにパーティを組んでしまっている状態。
他のパーティメンバーに迷惑は掛けられない。
仕方ないんでオレもメンバーとして参加し、無理やりラピスを冒険に連れて行く事もしばしばだ。
レベルも上げなくちゃならないからな。
「ほら、もうすぐ20なんだろ、20レベルになったらまた何か有るかもしれないし」
レベル10の時は、パラメーターに振れるボーナスポイントが倍ほどあった。
たぶん20レベルも何か有ると思われる。
「働きたくないでござるぅうう」
そう言って、働いたら負けって机に落書きする。
「お前、どこでそんな知識仕入れて来るんだ?」
時々ラピスの奴、オレの前世の世界でしか分からないようなセリフを吐く。
「そりゃ私の知識の元は、そのモンスターカードのシステムがあった世界から来てますしね」
「えっ?」
そんなの初耳なんだが。
「ぬるぽ」
「ガッ!」
マジかよ。
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