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第37話
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「あらあら、どうしたのかしらね? そんなに鼻息を荒くして」
どうしたのかしらね? じゃね~よ! 散々人の命を狙っておいて! アレから何度、死に掛けたと思ってんだよ!
あのおばはん、ほんと容赦しね~の。崖から突き落とそうとするわ、食事に毒を盛ろうとするわ。何度、三途の川を渡りそうになったことか!
シュマお嬢様にチクッても、
「え、シルエスタさんに命を狙われている? 何、言ってるのよ、あの人、セイジが落とし穴に落ちたときも、慌てて1人で救出に向かったのよ?」
などと言う始末。どうやら、巧妙にシュマお嬢様の好感度ポイントを稼いでいる模様。そりゃ未来の王妃かもしれないんだしな。頑張るよね?
ようやく王都へ行く日となったので、着いたとたんオレは王太子に許可を貰って妹姫の部屋へ文句を言いに来てるところだ。
「オレ狙う、やめろ!」
オレがそう言うと、目を細くしてこちらを睨み付けてきて、
「誰に物を聞いているのかしら? 下賎な冒険者がっ」
そう吐き捨てる。
「あなたには、口の聞き方、というものを教えて頂ける人物は居なかったのかしらね。なんなら家庭教師をご紹介しましょうか?」
その家庭教師がヒットマンなんだろ? ほんとやめてくれよ!
「なぜ、オレ、狙う」
「別にあなたが憎いわけではありませんわ」
お姫様は一口、紅茶を飲んで続けてくる。
「お兄様はどうやら本気の模様。わたくしもまあ、彼女ならいいかもしれないと思いましてね」
シュマお嬢様は辺境の領主家。
辺境とはいえ一応貴族。尚且つ英雄を兄に持つ。ぎりぎりボーダーラインに入ると。
また、そういうサクセスストーリーは民が好むもの。
「それにね、彼女は野望? といった物とは程遠い。お兄様の愛玩動物にするには、まあ、いいんじゃないかと判断しましたのよ」
このお方は人をなんと心得ているのだろうか? いや、王家の人はこれが標準なのかもしれない。
「なによりも、彼女は王家にとって、毒にもならなければ薬にもならない。そういう居るだけっていう后って結構便利ですのよ」
などとのたまう。
「しかしそれにはあなたが邪魔ですの。気づいているでしょう? あの子の想い人があなたであることを」
オレは一瞬息が詰まる。
確かに、お嬢様は何かとオレを頼りにしてくる。
それにお嬢様なのに、とても、かいがいしく世話を焼いてくる。
それは普通の好意より、きっと上のものなのだろう。
「そうですわね……あなたに、二つ選択肢を差し上げますわ。死ぬか、国を出て行くか」
それ選択肢ないだろ?
国を出て行くかって、結局、刺客を差し向けるんだろ?
だってその後、帰ってこない事という注釈がない。所謂、帰って来れないという意味と見た。
「フフフ、この国のルールはご存知よね? あなたが犯罪を犯せば、あなたを推薦してくれた人達も裁かれる。どう、もしここで、私が悲鳴を上げればどうなるか……試してみる?」
くっ、この国の推薦制度、結構いいなと思っていたのに、そんな落とし穴があったとは……
「分かった」
「そう?」
「全て追い払う、それだけ、強くなればいい」
一瞬、ポカンとした顔をするお姫様。
次の瞬間、爆笑し始める。
オレはその笑い声を聞きながら部屋を後にするのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「いや~、一生分、笑ったような気がしますわ」
「あまり笑い事でもありませんよ」
部屋の奥から1人の女性が現れる。
「単騎でスケルトンドラゴンを仕留めております。それ以外にも、シルエスタからの攻撃を、ことごとくかわしています」
「それでも、人一人の力なら知れているでしょう?」
「そうですね、一人であればですね」
その言葉に眉をしかめるお姫様。
「彼の為なら、命を投げ出しても構わない。そういった人物が少なからず存在します。次期領主様含めてです」
「あんな田舎侍に?」
「ご興味がおありでしたら、下準備をいたしますが?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
オレはお嬢様をラルズさんに預けて、すぐに冒険者ギルドに赴く。
なにはなくともレベルアップだ。
こないだのスケルトンドラゴンで結構経験値は入っているはず。あと少し頑張ればルート開放が。
やはりマシンガンがいいのだろうか? ライフルはどうだ? 守りに入るならマシンガンでばら撒くほうがいいよな。
えっ、人が撃てるのかだって?
実はですね、ここに来る途中、ずっと馬車から風景を撃ってまして、レベルアップしたんですよぉ。
女神様も空気読んでいるらしく、
機能追加:手加減
に、
弾選択:不殺弾
というものが。
とりあえず、道中襲って来た盗賊さんに感想を聞いたところ、体が弾けるような感触がしたということで。
当たった場所は痣すらないんですが、普通に食らったダメージが痛みとして発現している模様。
みんな土下座して泣いてました。うん、やりすぎたかな?
なお、手加減をオンにしていると痛みは減少する模様。それでも大の大人が声を上げて泣くレベル。
いいものを手に入れたぜ。
しかしながらハンドガンでは連射が利かない。ここはやはり、マシンガン希望で。希望を聴いてくれるかどうかはしらないが。
どうしたのかしらね? じゃね~よ! 散々人の命を狙っておいて! アレから何度、死に掛けたと思ってんだよ!
あのおばはん、ほんと容赦しね~の。崖から突き落とそうとするわ、食事に毒を盛ろうとするわ。何度、三途の川を渡りそうになったことか!
シュマお嬢様にチクッても、
「え、シルエスタさんに命を狙われている? 何、言ってるのよ、あの人、セイジが落とし穴に落ちたときも、慌てて1人で救出に向かったのよ?」
などと言う始末。どうやら、巧妙にシュマお嬢様の好感度ポイントを稼いでいる模様。そりゃ未来の王妃かもしれないんだしな。頑張るよね?
ようやく王都へ行く日となったので、着いたとたんオレは王太子に許可を貰って妹姫の部屋へ文句を言いに来てるところだ。
「オレ狙う、やめろ!」
オレがそう言うと、目を細くしてこちらを睨み付けてきて、
「誰に物を聞いているのかしら? 下賎な冒険者がっ」
そう吐き捨てる。
「あなたには、口の聞き方、というものを教えて頂ける人物は居なかったのかしらね。なんなら家庭教師をご紹介しましょうか?」
その家庭教師がヒットマンなんだろ? ほんとやめてくれよ!
「なぜ、オレ、狙う」
「別にあなたが憎いわけではありませんわ」
お姫様は一口、紅茶を飲んで続けてくる。
「お兄様はどうやら本気の模様。わたくしもまあ、彼女ならいいかもしれないと思いましてね」
シュマお嬢様は辺境の領主家。
辺境とはいえ一応貴族。尚且つ英雄を兄に持つ。ぎりぎりボーダーラインに入ると。
また、そういうサクセスストーリーは民が好むもの。
「それにね、彼女は野望? といった物とは程遠い。お兄様の愛玩動物にするには、まあ、いいんじゃないかと判断しましたのよ」
このお方は人をなんと心得ているのだろうか? いや、王家の人はこれが標準なのかもしれない。
「なによりも、彼女は王家にとって、毒にもならなければ薬にもならない。そういう居るだけっていう后って結構便利ですのよ」
などとのたまう。
「しかしそれにはあなたが邪魔ですの。気づいているでしょう? あの子の想い人があなたであることを」
オレは一瞬息が詰まる。
確かに、お嬢様は何かとオレを頼りにしてくる。
それにお嬢様なのに、とても、かいがいしく世話を焼いてくる。
それは普通の好意より、きっと上のものなのだろう。
「そうですわね……あなたに、二つ選択肢を差し上げますわ。死ぬか、国を出て行くか」
それ選択肢ないだろ?
国を出て行くかって、結局、刺客を差し向けるんだろ?
だってその後、帰ってこない事という注釈がない。所謂、帰って来れないという意味と見た。
「フフフ、この国のルールはご存知よね? あなたが犯罪を犯せば、あなたを推薦してくれた人達も裁かれる。どう、もしここで、私が悲鳴を上げればどうなるか……試してみる?」
くっ、この国の推薦制度、結構いいなと思っていたのに、そんな落とし穴があったとは……
「分かった」
「そう?」
「全て追い払う、それだけ、強くなればいい」
一瞬、ポカンとした顔をするお姫様。
次の瞬間、爆笑し始める。
オレはその笑い声を聞きながら部屋を後にするのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「いや~、一生分、笑ったような気がしますわ」
「あまり笑い事でもありませんよ」
部屋の奥から1人の女性が現れる。
「単騎でスケルトンドラゴンを仕留めております。それ以外にも、シルエスタからの攻撃を、ことごとくかわしています」
「それでも、人一人の力なら知れているでしょう?」
「そうですね、一人であればですね」
その言葉に眉をしかめるお姫様。
「彼の為なら、命を投げ出しても構わない。そういった人物が少なからず存在します。次期領主様含めてです」
「あんな田舎侍に?」
「ご興味がおありでしたら、下準備をいたしますが?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
オレはお嬢様をラルズさんに預けて、すぐに冒険者ギルドに赴く。
なにはなくともレベルアップだ。
こないだのスケルトンドラゴンで結構経験値は入っているはず。あと少し頑張ればルート開放が。
やはりマシンガンがいいのだろうか? ライフルはどうだ? 守りに入るならマシンガンでばら撒くほうがいいよな。
えっ、人が撃てるのかだって?
実はですね、ここに来る途中、ずっと馬車から風景を撃ってまして、レベルアップしたんですよぉ。
女神様も空気読んでいるらしく、
機能追加:手加減
に、
弾選択:不殺弾
というものが。
とりあえず、道中襲って来た盗賊さんに感想を聞いたところ、体が弾けるような感触がしたということで。
当たった場所は痣すらないんですが、普通に食らったダメージが痛みとして発現している模様。
みんな土下座して泣いてました。うん、やりすぎたかな?
なお、手加減をオンにしていると痛みは減少する模様。それでも大の大人が声を上げて泣くレベル。
いいものを手に入れたぜ。
しかしながらハンドガンでは連射が利かない。ここはやはり、マシンガン希望で。希望を聴いてくれるかどうかはしらないが。
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