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4章 異世界葛藤編

第47話 はじめてのケンカ

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 本来の予定では、今日は訓練をしにギルドに行く予定であったが、今日は大事をとって、家で休養することにした。

 家に帰り、お布団を広げてゴロンと横になる。
 はぁと深い溜息が天井へと昇っていく。

 ふと、ルリアの表情を思い出す…、怒らせてしまっただろうか。

 この後起こるであろう、気まずい空気感を想像し、また溜息をつきながら寝返りをうつと、治りたての腕がピリリと傷んだ。

 気を紛らわせようと一度昼寝でもしようかと思ったが、先程の事が気になって眠れない。

 俺は三度みたび溜息をついてから身体を起こすと、無心になって家の掃除を始めた。
 台所を拭いたり、床を水拭きしたり、ペリの馬小屋の清掃や餌やりなんかをして過ごす。

 最近覚えたてのブラッシングもかけてやる。
 特にスキルは身につかなかったが、最低限のやり方はルリアから教わったので、問題なく出来ているはずだ。
 その証拠に、ペリも『もっとやれ』と言わんばかりに、心地よさげにすり寄ってくる。

 庭の掃除もしようかと思ったが、先週したばかりである事を思い出し、家へと戻った。

 何か他にやれることはないか考えた結果、腕を使わないでも良い基礎トレーニングをすることにした。

 また朝方のような事が起きても対処できるようにしておかなければならない。
 その為には、早く魔法を使えるようにならなければならないし、基礎筋力や体力もつけなくてはならない。

 俺は日が落ちるまで、スクワットや腹筋をしつつ、疲れたら座学を行うなどして過ごしたのだった。







 夜になると、外から聞き慣れた足音が聞こえてくる。
 その足音は一度扉の前で止まり、しばらくしてから戸が開かれた。

「…ただいま」

「あぁ、おかえり。お仕事お疲れ様」

「うん…」

 ルリアは俺と目を合わせる事なく会話を続けた。
 …バカほど気まずい。

 俺は場の空気を変えようと、明るく振る舞った。

「朝はありがとうな。ルリアのおかげでもうほとんど痛くないよ。おかげで帰ってから掃除や基礎トレも捗ったし!」

「え…休んでたんじゃなかったの?」

「あぁ、すっかり元気になったから、朝のも兼ねてピッカピカにしといたぞ! この前教わったブラッシングもやったんだよ。多分うまく出来たと思うんだけどな、なんたってペリが」

「はは…、そっか。なんにも伝わってなかったんだ」

 ルリアは俯き、前髪が顔にかかって表情は伺えない。
 ただ、少なくともいつもの明るい声色ではないことだけは分かった。

「なぁ、心配かけたのは悪かったけどさ、今後はそうさせないように頑張るから、機嫌治してくれないか? 何ならまた一緒に訓練所にでも行ってさ」

「レイちゃんにとって、ボクは『迷惑をかけてしまっている家主』という存在でしかないんだね。」

「…え、どうしたんだ急に」

「ごめん。今日はこれ以上顔合わせたくない、出てって」

 急に冷たく言い放つルリアに驚きたじろぐ。

「出てってって言われても…」

 何処に泊まればいいんだよと困惑していると、

「ギルドにでも泊まればいいでしょ! 荷物持って出てって!」

 ルリアは俺の布団のところまで駆けていくと、枕を掴んで俺に投げつけてきた。
 ぽふっという音を立てて、枕が床に落ちる。

「…なんだよ。何急に怒ってんだよ。わかったよ、出てけばいいんだろ」

 売り言葉に買い言葉、俺は落ちた枕を拾い上げて布団に乗せると、それらをまとめて背負えるように紐で縛りかつぐと、お金だけを持ってルリアの家を後にした。

「…レイちゃんのバカ」

 ルリアの呟きは、俺には届かなかった。
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