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めぐる魔女
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「本当に愚かな子だね」
傍に立っている男子にそう声をかけると、その子どもは嫌そうな表情は一切見せず寧ろ微笑んでみせた。
本当に愚かな子だこと、ともう一度心の中で小さくこぼす。
「でも僕、楽しいですよ?」
「草を両手に抱えることがかい?」
「はい!」
本当にこの子はどうしてくれようか。こんな森の中でひっそりと建つ家に、子どもが楽しむようなことなど何一つもない。それなのに子どもは楽しいと笑ってみせる。
「早くこっちに持ってきな」
「はい!」
こんな老婆の言葉に嬉しそうに頷き駆け寄ってくる人の子が、愚かに見えずとしてなんと言えようか。
*
空気が鬱蒼としている。数刻後には雨が降ってくるだろう。
あれだけ賑やかだった家は随分と静かになった。それもそうだろう、なんせこの家には私一人だけなのだから。木々の間から見える鈍色の空を眺めながら手に持っていた草を置いた。
ドンドンと扉が激しく叩かれている音が家の中に響く。そんなに強く叩いてしまっては扉も壊れてしまうだろう。力加減を知らない来訪者だと小さく息を吐き出し、手を掲げ鍵を外してあげれば人間が飛び込んできた。
「やっと見つけたわよ⁈ リティは、リティはどこッ⁈」
「急にやってきたかと思えば、人の家にズカズカと入り込むなど。近頃の人間は礼儀を知らないね」
「うるさいッ! リティをどこにやったのよッ!」
怒りを撒き散らしている女子に隠すことなく堂々と息をつく。それが相手に物を聞く態度なのだろうか。
子どもは子どもでも色んな性格がいるものだと肩にかかった髪を払い除けた。
「あの子はもういないよ」
「は……? どう、いう、意味よ……」
「そのままの意味だ。あの子はもういない」
「なっ……! ……アンタが、アンタが殺したんでしょう⁈ この魔女がッ!」
「いない、と言っただけだというのに勝手に人殺しにするのかい」
「リティは身体が弱かったのよ⁈ それなのにこんなところに来てっ……私たちと一緒にいればつらい思いもしなかったはずなのに!」
甲高い声でキーキー鳴くこの女子をどうしてやろうか。決めつけで物を言い、こちらの話を聞こうともしない。自分がそうだと思ったことしか信じたくないのだろう。
よくよく見てみると女子の後ろにはまた別の子どもが立っていた。この女子やあの子と大して年齢は変わらないだろうが、二人よりも一回り身体が大きい。今まで怪我はあったものの、病気など何一つとなかった健康な身体なのだろう。
女子のように喚き散らすことはしないが、ひたすら殺意を込めてこちらを睨みつけている。
「つらい思いをしなかった、ね」
「そうよ! 私たち幼馴染だったんだから、私たちと一緒にいたほうがよかったに決まってるでしょう⁈」
「それで、一緒にいて何をしたっていうんだい」
「は……?」
あれだけけたたましかったというのに少し尋ねただけですぐ静かになる。何も言い返されることはなく、一方的に暴言を吐けるとでも思ったか。
まったくしょうがない子。子どもだからと多めに見るべきなのか。しかし私が見ず知らずのこの子にそこまで優しくする必要もない。
手元に向けていた視線を上げ女子に向けると、女子が半歩だけ小さく下がった。先程の強気はどこにいったのか。
「一緒にいて、あの子の病を治してあげることができたのかい。傍にいて『絶対に治る』『また普通に暮らせる』と、不治の病に対してそんな慰めの言葉を向けていたんじゃないだろうね」
「っ……!」
「アンタたちは一体誰を慰めていたんだい?」
女子と、そして背後に立っていた男子の息を呑む音が聞こえた。図星だったのだろう。何も言い返すことができず先程から口がモゴモゴと小さく動いているだけだった。
「そうやってあの子を慰めるふりをして自分たちを慰めて、あの子の本音なんて聞きやしなかっただろう。そうでなかったらこんなところにわざわざ来るものか。あの子がいなくなったのは自分たちのせいじゃない、私のせいだと言っておけば罪悪感を抱かずに済むものねぇ」
こんな鬱蒼とした森の中にやってきた子どもは、不治の病だった。一縷の望みをかけてここにやってきたようだったけれど、残念ながら私の作る薬でも治療は難しかった。
このまま家に帰って家族と過ごすほうがいいんじゃないか、その提案に首を横に振ったのはあの子だった。
「僕がどんどん弱まっていく姿を見ている周りの人たちの表情が、すごくつらく感じるんだ。歯がゆくて、でも自分じゃどうにもできない」
気休めにと煎じてやった薬を飲みながらあの子はそう吐露した。
「私は『絶対に治る』とも『元通りになる』とも、そんな確証のない言葉は何一つ言っていない。ただこう言っただけ」
つらいならつらいと言ってもいい。逃げてもいい。弱音を吐いたって構わない。別に強がる必要なんて何一つない。弱い姿を見たところで失望もない。人は弱い生き物なのだから。
「あの子がここに残ったのは自分の意志だ」
「ッ……嘘よッ!」
「嘘じゃない。あの子が両親ともしっかり話し合って、そして決めたことだ」
「嘘、嘘嘘嘘! だって、リティが私たちに何も言わずにっ……そんなのデタラメ! 私たちのほうが誰よりもリティのこと知ってるんだからっ!」
「そう思い込みたかったら思い込めばいい。さぁもうお行き。この場所には用はないだろう」
「っ……‼」
選別していた薬草を手に持つ。あの子も大人しくしていればよかったものの。少しでも動けばすぐに息切れしてしまう身体で、よく私の手伝いをしてくれた。
結局最期の最期まであの子は笑顔だった。
「……ちがう」
立ち去る音が聞こえないと思いつつ振り返ってみると、何やら女子がブツブツ言っている。後ろに立っていた男子もまるで立ち塞がるかのように扉の前に立って動かない。
「ちがう、アンタが殺したの。魔女である、アンタが。そうじゃないと、リティが私たちから消えたりしなかったの」
「……何を言っても無駄のようだね」
「アンタさえいなければッ‼」
真っ直ぐに突進してきた女子に対して、無理やり何かをすることはなかった。
視線を下ろしてみると胸に深々と刺さっているナイフが見える。そのナイフを握っている手は小さく震えていた。恐怖で震えているんじゃない、抑えきれない憎悪でだ。
周りは私を『魔女』だという。確かに普通の人間と比べて寿命は随分と長い。あらゆる知識にも長けているだろう。なれど、物語に出てくる魔女のように奇妙な力を使えるわけではない。
だから、自身に突き刺さっているナイフを奇妙な力で抜き取ることはできないし、致命傷だってその力で治すことなんてできやしない。寿命は長いとはいえ身体の作りは普通の人間とそう大差はなかった。
「魔女の心臓を食べれば魔女になれるんでしょ? ならアンタの心臓食べて魔女になってやるわよ。魔女になって、リティを蘇らせるの。無能なアンタなんて、リティを見殺しにした魔女なんて必要ない死んで当然なのよッ!」
胸に突き刺さっているナイフが引き抜かれた。血が吹き出て女子の顔を濡らした。
今まで何度か愚かな人間を見たことはあったけれど、ここまで愚か者を見たのはこれが初めてかもしれない。
まったく、どうしようもない者はどこにでもいるものだ。
*
待って、どうして、そんな言葉が頭の中をぐるぐると回る。
どうして私こんなに必死に逃げてるんだろう。どうして彼らは私を追ってくるんだろう。家は燃やされて帰ることもできない。前の家も、今はもうなくなって新しい家が建って別の人間が住んでいる。
「どうしてよ……なんでこんなことになったのよ⁈」
「逃げろマカ!」
「ヴィター……怪我が……!」
「いいから走れ!」
迫ってくる足音の数がどんどん増えてくる。ヴィターに走れと言われても私はさっきからずっと全力で走ってる。走っているのに逃げ切れる気がしない。
「うっ!」
「ヴィター⁈」
「俺に、構うな……!」
私の後ろを走っていたはずのヴィターが呻き声を上げて倒れた。傷からしとしとと血が流れてきてる。
ヴィターも私と同じはずなのに。それなのにどうして血が止まらないんだろう。あんな真っ青になって倒れているんだろう。
急いで駆け寄ろうとしたけれど、それよりも先にヴィターは周りを囲まれてしまった。そんな状況でも必死に逃げろと叫んでくる。私は引き返すことなく誰もいない場所へと走り出した。
後ろから色んな音が聞こえて、その間をぬってくるかのように悲鳴が聞こえてくる。
これはきっと何かの間違い。きっと悪い夢。
「きゃあ⁈」
足がもつれて派手に転んでしまった。あちこち擦りむいて血が出てくる。痛いし、追われているし、わけがわからなくて涙が出てきた。どうして私たちがこんな目に合わなきゃいけないんだろう。
「いたぞ!」
「囲め囲め!」
「絶対に逃がすな!」
痛くて立ち上がれないっていうのに、そんな私に気遣うことなんて何一つなくて寧ろどんどん周りを囲い始める。
「ようやく捕まえたぞ、この魔女めッ‼」
槍を突きつけて一人の村人がそう怒鳴った。それを皮切りにどんどん私に罵声を浴びせ始める。誰も彼も睨みつけて、殺意を込めて、私を「魔女」と呼んでそれぞれ持っている農具や刃物を突きつけている。
「な……何よ……私が一体、何をしたっていうのよ⁈ こんな目に合わされることなんて何一つしてないっ!」
「黙れ魔女がッ!」
「だってそうでしょう⁈ 村の人たちのために色んなものを与えたじゃない! 生きやすいようにって、薬とか便利な道具とかあげたじゃないっ!」
「あんたは与えすぎたんだよ、魔女」
エプロンを付けている中肉中背の女性が包丁を向けながらそう言い放った。私は何を言いたいのかわからなくて唖然とする。
だって、私は魔女として色々と施してあげたのに。みんなのためにって力を貸してあげただけなのに。それなのにどうして村の人たちは怒っているんだろう。満足していないんだろう。まだ何か欲しいんだろうか。
「あんたは村の若いのに色々と与えただろう。そのせいであの子たちは自分たちが何もしなくてもなんでも手に入ると思い込んでしまったのさ。今じゃすっかりあんたに依存して自分たちで何かをしようともしない。考えることも放棄してしまった。これはあの子たちにとってよくないことなんだよ」
「な、何よ……だって便利なことはいいことじゃない。病気だって簡単に治るのよ? 無駄な労力を使わなくたって、私の薬があれば野菜も簡単に育つし食べ物に困らずいれたじゃない。それの何が駄目なわけ⁈」
「苦労もせずに手に入れられるから、村の若いもんは食料を大事にせずに簡単に破棄するようになったのじゃ。こっちが叱ったところで『魔女がまたくれる』だなんて言い出す」
「お前がいつまでもこの村にいる保証はどこにある? お前がいなくなったら、俺たちが老いて身体が動かなくなったら、若いのたちはどうやって野菜を育てる? どうやって生活するっていうんだ」
「対策せにゃならんのよ」
だから、私とヴィターを追いかけ回したっていうの? ヴィターの悲鳴が聞こえてからそのあとに全然声が聞こえてこない。一体ヴィターはどうなったのか。考えるだけでも悪寒が走る。
「それは村の若い子たちのせいじゃない! 私のせいにしないでよッ!」
私は与えただけ。それをどうするかなんて与えられた側の責任。自分たちで考えて動けばよかっただけの話。若い子たちが自分たちの思い通りにいかないからって、勝手に私たちのせいにされてたまったもんじゃない。
「それだけの理由で私を殺そうっていうの⁈ ふざけないでよッ!」
「黙れこの魔女がッ!」
「アッ! い、痛ぁ……ッ」
突き出された槍が太ももを貫いた。私は魔女なのに、普通の人間より長生きできるのに、突き刺さった槍をどうすることもできない。
「捕らえろ!」
「魔女の血に触れるな! 呪われるぞ!」
「うぅっ……なに、よ、それっ……!」
人に傷を負わせて血を流させておきながら、血に触るな呪われるなんて。そんな事実どこにもない。魔女の血は別に穢れてるわけじゃない、寧ろその血の奥にある心臓にはとんでもない価値があるっていうのに。
「変なことしないようロープで括れ!」
「これ以上刺すな、血が出る」
「それじゃどうやってこの魔女を」
「火炙りだ」
「燃やしてしまえば血がこっちにかかってくることもない」
叫ぶ人間もいれば淡々と私の身体にロープを巻き付け、そんなことを言い出す人間もいる。ゾッと背筋に悪寒が走った。まさか本当に、私を殺すつもりなのかと。
「ま、って、やめて、まって、私……わたし、そんな悪いことしたっ……⁈」
こんな大勢の人に恨まれるようなこと、憎まれるようなこと――殺されるようなこと、私した?
私はただ自分が持っているものを他の人たちに少しだけ分けてあげただけなのに。私はただ、ただ――
「あ――」
私はただ、大切だった幼馴染を助けたかっただけなのに。
ロープで巻かれて身動きできない身体をズルズルと引き摺られる。周りには人たがり。騒ぎを聞きつけて野次馬みたいにやってきた人間も多くいた。
その中で、見つけた。そう、ずっと探していた。
「っ……私は、私はただっ……リティ、あなたに与えたかっただけなのにっ……!」
あの頃と変わらない姿で、あの頃と違って苦しそうでもなければ顔色が悪いわけでもない、至って健康そうな顔が私の方を見ている。
その姿に縋り付くように手を伸ばす。だってずっと待っていたんだから。私の願いが叶うことを、ずっと。私の願いが届いたからこうして私の目の前にリティが立っているんでしょう?
「……僕は、あなたに何かを貰ったことなんて一度もない。会ったことも、喋ったこともないのに」
「え……」
「連れて行け!」
「大人しくしてろ魔女!」
「まって……まってよぉリティ! 私は、私はあなたのために! ねぇリティ!」
「動くな!」
「リティー!」
ズルズルと引き摺られて、リティとの距離もどんどん開いてしまう。どうして会ったことも喋ったこともないだなんて。私はずっと待っていたのに。
必死にリティを呼ぼうとしてもみくちゃにされながら必死に見たものは、リティの隣に知らない女の子どもが寄り添うように立っていたところ。リティも当然のようにその女の手に自分の手を添えていた。
「魔女と会ったことがあったの?」
「……ううん。大人たちの言う通り僕は他のみんなと違って森には近寄らなかったよ。僕の名前を知っていたのも魔女だから、かな」
「……なんだか必死だったような気がする」
僕と同じ歳で幼馴染でもある彼女が引き摺られていく魔女の姿を見ながらそう言葉にする。確かに魔女は何かを訴えようと必死だった。それは周りにいた大人たちも気付いていたはずだ。
それでもやめなかったのは、魔女の行いに目を瞑るのにはあまりにも行き過ぎたからだ。僕と同年齢ぐらいの子たちはすっかり魔女に依存してしまって、生きているのかいないのかわからない、半ば廃人のような状態になっている。
「……魔女は誰かに与えたかったんじゃなくて、自分が与えられたかったのかな」
冷静に状況を見ていた彼女に、そうかもしれないねと小さく返した。
*
とある森の奥に一人の女性が静かに暮らしていました。彼女は森の中にある薬草で薬を作り、森に住まわせてくれている村人たちにお礼をとその薬を分けていました。
彼女は少し変わった女性だったけれど、村人が彼女を恐れたことなど一度もありません。彼女が一度も村人に危害を加えたことがなかったからです。近すぎず遠すぎず、その距離を保って村人と彼女は共存していました。
ところがある日、一人の愚かな子どもが大人たちとの約束を破ります。
子どもは自分の思い通りにならない生活に苛立ちを覚え、なんとその森にひっそりと暮らす彼女に危害を加えたのです。それだけではなく、彼女の心臓をも喰らったのです。
見た目は子どもでも、その子どもは『魔女』だったのです。
彼女の持っていたものをすべて奪った魔女は、彼女が住んでいた家を自分の家として従者と共に好き勝手に使いました。
彼女から得た知識を自分の知識のように村人に振るい、村の子どもたちを自分の操り人形に仕立てようと企てます。「人のために」と口にして、すべては自分のために動いていたのです。
とうとう業を煮やした村人たちが、そんな悪い魔女を討伐します。魔女の血は穢れており、触れてしまうと呪われてしまいます。なので村人たちは魔女を焼くことにしました。
魔女が討伐されると操り人形のようになっていた子どもたちの様子も、徐々によくなっていきました。こうして村に巣食っていた魔女はいなくなり村は平和になったのです。
「リティの書いたおとぎ話、すごく好評なんだって」
「そうなんだ。嬉しいな」
パラパラと僕が書いた本のページを捲っていた彼女が顔を上げ、僕と目を合わせて小さく微笑む。僕も同じようにはにかみながら彼女に笑みを向けた。
「これって私たちが子どもの時に討伐された『魔女』の話?」
「そう、あれをベースにしてるんだ」
「それにしても『魔女』がこの村に巣食うようになったところ、よく創作できたね。まるで見てきたことのように書かれてる」
「ふふ、頑張ったんだ」
「そっか」
本を置いた彼女は「薬草を取りに行ってくる」と言って部屋から出ようとする。そこを慌てて呼び止めて、軽く頬にキスを落として「気を付けてね」と見送った。
十六歳で同棲なんて早すぎたかな、って思ったけど村人たちはみんな微笑ましく見守ってくれている。あんなことがあったから、こうして恋人たちが無事に一緒にいることが安心するみたいだ。
彼女が置いた本を手に取りペラペラとページを捲っていく。
「……彼女を、悪者にするわけがない」
森で出会った彼女は、確かに無愛想だったけれど優しい人でもあった。
とにかくつらかった。つらくて、歯がゆくて、でも自分でどうにかできるわけでもない。病に蝕まれていく身体に悲痛な表情をしていたのは僕だけじゃなく周りの人たちだった。
みんな口々に「いつか治る」「また元気になれる」、そう言ってくれたけれど治ることのない病気だということを医師の口からはっきり聞いていた。聞いていたから、元気付けさせようとかけてくれる言葉が気休めにしかならないことに苦しさを覚えた。
ある日、両親が僕に相談してきた――森の奥に、薬を作る『魔女』がいる。その魔女の薬に一縷の望みをかけてみないかと。
ただ彼女はあまり村人と関わりがなく、その人間性もわからない。怖い思いをさせられるかもしれないし、つらい思いをするかもしれない。そんな思いをしてまで大切な息子を森の奥に向かわせるのも気が引けるとも言葉を続けて。そして最終的には僕にどうするかを決めさせてくれた。
とてもいい両親だったと思う。つらそうな顔をしている日が多かったけれど、それでも僕の気持ちを最優先で考えてくれる人たちだった。そんな両親の心を少しでも軽くしてあげたくて、僕は森に行くことを決めた。
ただ僕も魔女に会ったことはなかったし、もし両親と一緒に行って両親に何かあったら。僕はそれが怖かった。だから僕一人で向かった。僕自身に何か起こったところでもう先の短い命だったから。
そうして森の奥に向かって、そして『魔女』に出会った。見た目は両親よりも年上で、友達のおばあちゃんと歳が近いかもしれない。それでも背筋はしっかりと伸びていて、何よりも所作が綺麗だった。
そしてその魔女は森の奥にやってきた僕に対して、一言。
「子ども一人こんなところに向かわせるなんて、周りの大人たちは何を考えているんだい」
僕の身を案じる言葉だった。それだけで、ああ、この人はきっと優しい人なのだとわかった。
彼女はすぐに家に招き入れてくれて、あたたかいミルクを淹れてくれた。ゆっくりでいいから事情を説明してほしいとの言葉に、僕は怯えることなく魔女に向かって口を開いた。
魔女はずっと真剣な表情で話を聞いてくれた。病の話を聞いてすぐに何かを考えるような素振りを見せて、何やらブツブツと呟き始める。今思うと、あの時すでに薬草を配合して薬を作れないか考えていたのだと思う。
結局僕の病は魔女の知識を以てしても治ることは叶わなかった。
「こんなところじゃなくて、最期ぐらいは大切な人と一緒に過ごしな」
無愛想な声色で優しい心遣いの言葉に僕も一度悩んだ。確かに両親には彼女の薬草でも治らないということは伝えておいたほうがいいかもしれない、と。でも僕の病を治せなかったのは彼女のせいでもないということを。
そうして一度家に戻った僕は両親と深く深く話し合って、そして決めた。
「……愚かだねぇ」
話し合って、僕は彼女のところに戻ることを選んだ。
もう一度目の前に現れた僕に対し、そう短く呆れたかのように小さくこぼした彼女は僕を家に招き入れる。最初に出会った頃と同じようにあたたかいミルクを淹れてくれる。
「やっぱり、みんなの悲しむ顔を見るのがつらくて。なので、あなたさえよければ僕をここに置いてくれませんか?」
「……まったく」
そうして僕は短い間、彼女と同じ時間を過ごすことになった。
彼女は優しい人だった。村にいた頃はみんなとにかく僕に気を遣っていた。動くと必ず誰かが傍にいて、なんなら食べている時でさえ自分でできるのに食べさせようとしてくる。優しいけれど、一方で息苦しさも感じつつ、それでもみんなの好意を無碍にすることができなくて言葉を飲み込んだ。
彼女は僕をそんな風に気遣うことはなかった。動きたいと言ったら森の奥に行かないことだけを約束して自由にさせてくれた。食べ物も今まで食べたことのないものも食べさせてくれたし、手伝いたいと言ったら手伝わせてくれる。
でも僕の顔色が悪くなったり、咳き込んだりするとすぐにベッドに横たわらせて薬を飲ませてくれる。熱が下がらない時は下がる時まで傍にいてくれる。
弱音を吐いていい強がる必要もない逃げてもいい。彼女の口から出てくる言葉で僕がどれほど救われたことか。
「弱いのは当たり前だ。人間は弱い生き物だからね」
不安を抱えるのも当然で、泣いてしまうのも当然のこと。僕が村にいる時に我慢していたものを彼女はすべて許してくれた。
徐々に身体が弱まってきて、とうとう起き上がるのも困難になってきても彼女は嫌な顔一つもしない。いつも通り「おはよう」と声をかけ、僕が食べれるようにとスープを作ってくれる。彼女が煎じてくれた薬は段々苦味を増してきたけれど、それも彼女が僕を生かそうと必死なのだと伝わってきた。
確かにつらくもあったし、泣きたい時もあった。でも村にいた時よりもずっと僕の心は穏やかだった。彼女の表情は変わらない。いつも通りに接してくれる。そうすることで僕の心が軽くなることを知っていたんだと思う。
そんな彼女が、ある日ベッドの縁に座って僕の胸に手を当てながら口を開いた。
「魔女の心臓でも喰らうかい?」
「え……?」
「病が完治するかどうかはわからないが……それでも大切な人たちと共に過ごせる月日を生きることができるはずだ。知恵も同時に引き継がれるから生活には困らないはずだよ」
ぽんぽん、と一定のリズムで叩いてくれる手に、じわっと涙があふれてくる。
『魔女』がどういう人なのか彼女から直接聞いた。人より長生きで知識に溢れていて、でも万能というわけでもない。怪我をすれば普通に血は流れるし、心臓を貫かれると死んでしまう。
その『魔女』が、自分の心臓を喰らって生き長らえろと言う。
のろのろと腕を動かし、自分の胸に置いてある彼女の手にそっと自分の手を重ねる。
「僕、僕……生きるとしたら、あなたと一緒に生きたい」
「……! 本当に、愚かな子だ」
「えへへ……」
『魔女』の心臓を喰らって生き長らえたとしても、そこにあなたがいなければ意味がない。
そうして僕は最期、彼女に看取られてそのまま息を引き取った。
『魔女』の心臓を喰らった人間がいる。そうすぐに気付いたのは森の奥に巣食っている二人の人間の存在だった。
確認のために一度だけ遠目で見たことがある。まるであの子どもたちが成長したかのような姿をしていた二人はきっと、百年以上ずっと変わらないでいるのだろう。
僕の心に沸き立ったものは二人とまた再会できるという感動なんかじゃない――大切なあの人の心臓を喰らった二人への、確かな憎悪だった。
別に嫌いだったわけじゃない、寧ろ大切な幼馴染だった。僕が病に侵されてもそれまでと変わらないように接してくれて、元気付けさせようとしてくれた。
でもそれがどんどんつらくなってきて、あれだけ喜んでいたお見舞いも億劫になってくる。身体の調子が悪いからと断って次会う時は、いつも「どうして会ってくれないの?」という言葉から始まる。
幼馴染たちは、本当に僕のことが心配なんだろうか。そう思ってしまう自分にも嫌気が差した。
でもそれももう過去のことだ。あの子たちはやってはやらないことをやった。あんなにも、あんなにも優しかった人を傷付けた。それだけじゃない、心臓を喰らって、彼女のすべてを奪っていった。
許せなかった。あんなにも優しい人を。心臓を奪われた時、一体どれほど苦しかったのだろう痛かったのだろう。ずっと病に侵されていた僕はその苦しみがほんの少しだけわかる。
それだけの苦痛を大切な人に味合わせた、許せるはずがなかった。
その頃村ではその『魔女』の行いが問題視され始めていた。子どもを集めて、あらゆるものを与えて廃人にさせていると。大人たちがいくら子どもにもう森の奥には行くなと言っても、一度与えられた甘味を子どもたちは忘れることはなかった。
「僕、本で『魔女狩り』っていうものがあるって読んだんだけど」
ある日両親が他の大人たちと話し合いしているところ、そう一言告げた。そしてその言葉が引き金となった。
悪い魔女は狩られ、そして子どもたちは解放され普通の生活に戻る。物語としては王道で美しい終わりを告げたはずだ。
王道だから、僕が手掛けたこの物語も好評なのだろう。
絶対に彼女を悪い『魔女』にするわけにはいかなかった。彼女は他の誰よりもずっと優しい人だったのだから。そんな優しい人が、本当に悪い『魔女』から奪われた事実。これは絶対に周囲に知られなければならないことだ。
悪い『魔女』はただ一人だ。
「ただいま。ちょっと遅くなっちゃったかな」
「ううん、まだ日も落ちてないし大丈夫だよ。お疲れ様。あ、僕がその薬草持つよ」
「そう? ありがとうリティ」
お礼を告げる彼女ににこりと笑みを向ける。だって森の奥にいた時ずっとやっていたことだもの。
「君が作る薬、すごく効くって評判がいいよ」
「よかった。なんでか薬草の知識だけはあって」
他はそこまで器用じゃないのにね、と肩を竦める彼女は慣れた手つきで夕飯作りに取り掛かる。僕の健康のためにと作られるスープは他の何よりも美味しかった。
そして、以前と変わらない味だった。
台所に立つ彼女の背中を見るのが好きだ。前は見上げなきゃ見れない姿だったけれど、今は大人しく椅子に座って次の物語を書くふりをしながらジッとその姿を眺めることができる。
僕の最期の願いはもしかしたら、まだ力の残っていたあなたが叶えてくれたのかもしれない。
あなたがいてくれたから、つらくても苦しくても僕は生きることができた。
あなたがいてくれないと、僕はこうして毎日幸せな日々を過ごすことなんてきっとできない。
僕をずっと待っていた大切な幼馴染を切り捨ててしまえるほど、僕はあなたと共に生きたかった。
傍に立っている男子にそう声をかけると、その子どもは嫌そうな表情は一切見せず寧ろ微笑んでみせた。
本当に愚かな子だこと、ともう一度心の中で小さくこぼす。
「でも僕、楽しいですよ?」
「草を両手に抱えることがかい?」
「はい!」
本当にこの子はどうしてくれようか。こんな森の中でひっそりと建つ家に、子どもが楽しむようなことなど何一つもない。それなのに子どもは楽しいと笑ってみせる。
「早くこっちに持ってきな」
「はい!」
こんな老婆の言葉に嬉しそうに頷き駆け寄ってくる人の子が、愚かに見えずとしてなんと言えようか。
*
空気が鬱蒼としている。数刻後には雨が降ってくるだろう。
あれだけ賑やかだった家は随分と静かになった。それもそうだろう、なんせこの家には私一人だけなのだから。木々の間から見える鈍色の空を眺めながら手に持っていた草を置いた。
ドンドンと扉が激しく叩かれている音が家の中に響く。そんなに強く叩いてしまっては扉も壊れてしまうだろう。力加減を知らない来訪者だと小さく息を吐き出し、手を掲げ鍵を外してあげれば人間が飛び込んできた。
「やっと見つけたわよ⁈ リティは、リティはどこッ⁈」
「急にやってきたかと思えば、人の家にズカズカと入り込むなど。近頃の人間は礼儀を知らないね」
「うるさいッ! リティをどこにやったのよッ!」
怒りを撒き散らしている女子に隠すことなく堂々と息をつく。それが相手に物を聞く態度なのだろうか。
子どもは子どもでも色んな性格がいるものだと肩にかかった髪を払い除けた。
「あの子はもういないよ」
「は……? どう、いう、意味よ……」
「そのままの意味だ。あの子はもういない」
「なっ……! ……アンタが、アンタが殺したんでしょう⁈ この魔女がッ!」
「いない、と言っただけだというのに勝手に人殺しにするのかい」
「リティは身体が弱かったのよ⁈ それなのにこんなところに来てっ……私たちと一緒にいればつらい思いもしなかったはずなのに!」
甲高い声でキーキー鳴くこの女子をどうしてやろうか。決めつけで物を言い、こちらの話を聞こうともしない。自分がそうだと思ったことしか信じたくないのだろう。
よくよく見てみると女子の後ろにはまた別の子どもが立っていた。この女子やあの子と大して年齢は変わらないだろうが、二人よりも一回り身体が大きい。今まで怪我はあったものの、病気など何一つとなかった健康な身体なのだろう。
女子のように喚き散らすことはしないが、ひたすら殺意を込めてこちらを睨みつけている。
「つらい思いをしなかった、ね」
「そうよ! 私たち幼馴染だったんだから、私たちと一緒にいたほうがよかったに決まってるでしょう⁈」
「それで、一緒にいて何をしたっていうんだい」
「は……?」
あれだけけたたましかったというのに少し尋ねただけですぐ静かになる。何も言い返されることはなく、一方的に暴言を吐けるとでも思ったか。
まったくしょうがない子。子どもだからと多めに見るべきなのか。しかし私が見ず知らずのこの子にそこまで優しくする必要もない。
手元に向けていた視線を上げ女子に向けると、女子が半歩だけ小さく下がった。先程の強気はどこにいったのか。
「一緒にいて、あの子の病を治してあげることができたのかい。傍にいて『絶対に治る』『また普通に暮らせる』と、不治の病に対してそんな慰めの言葉を向けていたんじゃないだろうね」
「っ……!」
「アンタたちは一体誰を慰めていたんだい?」
女子と、そして背後に立っていた男子の息を呑む音が聞こえた。図星だったのだろう。何も言い返すことができず先程から口がモゴモゴと小さく動いているだけだった。
「そうやってあの子を慰めるふりをして自分たちを慰めて、あの子の本音なんて聞きやしなかっただろう。そうでなかったらこんなところにわざわざ来るものか。あの子がいなくなったのは自分たちのせいじゃない、私のせいだと言っておけば罪悪感を抱かずに済むものねぇ」
こんな鬱蒼とした森の中にやってきた子どもは、不治の病だった。一縷の望みをかけてここにやってきたようだったけれど、残念ながら私の作る薬でも治療は難しかった。
このまま家に帰って家族と過ごすほうがいいんじゃないか、その提案に首を横に振ったのはあの子だった。
「僕がどんどん弱まっていく姿を見ている周りの人たちの表情が、すごくつらく感じるんだ。歯がゆくて、でも自分じゃどうにもできない」
気休めにと煎じてやった薬を飲みながらあの子はそう吐露した。
「私は『絶対に治る』とも『元通りになる』とも、そんな確証のない言葉は何一つ言っていない。ただこう言っただけ」
つらいならつらいと言ってもいい。逃げてもいい。弱音を吐いたって構わない。別に強がる必要なんて何一つない。弱い姿を見たところで失望もない。人は弱い生き物なのだから。
「あの子がここに残ったのは自分の意志だ」
「ッ……嘘よッ!」
「嘘じゃない。あの子が両親ともしっかり話し合って、そして決めたことだ」
「嘘、嘘嘘嘘! だって、リティが私たちに何も言わずにっ……そんなのデタラメ! 私たちのほうが誰よりもリティのこと知ってるんだからっ!」
「そう思い込みたかったら思い込めばいい。さぁもうお行き。この場所には用はないだろう」
「っ……‼」
選別していた薬草を手に持つ。あの子も大人しくしていればよかったものの。少しでも動けばすぐに息切れしてしまう身体で、よく私の手伝いをしてくれた。
結局最期の最期まであの子は笑顔だった。
「……ちがう」
立ち去る音が聞こえないと思いつつ振り返ってみると、何やら女子がブツブツ言っている。後ろに立っていた男子もまるで立ち塞がるかのように扉の前に立って動かない。
「ちがう、アンタが殺したの。魔女である、アンタが。そうじゃないと、リティが私たちから消えたりしなかったの」
「……何を言っても無駄のようだね」
「アンタさえいなければッ‼」
真っ直ぐに突進してきた女子に対して、無理やり何かをすることはなかった。
視線を下ろしてみると胸に深々と刺さっているナイフが見える。そのナイフを握っている手は小さく震えていた。恐怖で震えているんじゃない、抑えきれない憎悪でだ。
周りは私を『魔女』だという。確かに普通の人間と比べて寿命は随分と長い。あらゆる知識にも長けているだろう。なれど、物語に出てくる魔女のように奇妙な力を使えるわけではない。
だから、自身に突き刺さっているナイフを奇妙な力で抜き取ることはできないし、致命傷だってその力で治すことなんてできやしない。寿命は長いとはいえ身体の作りは普通の人間とそう大差はなかった。
「魔女の心臓を食べれば魔女になれるんでしょ? ならアンタの心臓食べて魔女になってやるわよ。魔女になって、リティを蘇らせるの。無能なアンタなんて、リティを見殺しにした魔女なんて必要ない死んで当然なのよッ!」
胸に突き刺さっているナイフが引き抜かれた。血が吹き出て女子の顔を濡らした。
今まで何度か愚かな人間を見たことはあったけれど、ここまで愚か者を見たのはこれが初めてかもしれない。
まったく、どうしようもない者はどこにでもいるものだ。
*
待って、どうして、そんな言葉が頭の中をぐるぐると回る。
どうして私こんなに必死に逃げてるんだろう。どうして彼らは私を追ってくるんだろう。家は燃やされて帰ることもできない。前の家も、今はもうなくなって新しい家が建って別の人間が住んでいる。
「どうしてよ……なんでこんなことになったのよ⁈」
「逃げろマカ!」
「ヴィター……怪我が……!」
「いいから走れ!」
迫ってくる足音の数がどんどん増えてくる。ヴィターに走れと言われても私はさっきからずっと全力で走ってる。走っているのに逃げ切れる気がしない。
「うっ!」
「ヴィター⁈」
「俺に、構うな……!」
私の後ろを走っていたはずのヴィターが呻き声を上げて倒れた。傷からしとしとと血が流れてきてる。
ヴィターも私と同じはずなのに。それなのにどうして血が止まらないんだろう。あんな真っ青になって倒れているんだろう。
急いで駆け寄ろうとしたけれど、それよりも先にヴィターは周りを囲まれてしまった。そんな状況でも必死に逃げろと叫んでくる。私は引き返すことなく誰もいない場所へと走り出した。
後ろから色んな音が聞こえて、その間をぬってくるかのように悲鳴が聞こえてくる。
これはきっと何かの間違い。きっと悪い夢。
「きゃあ⁈」
足がもつれて派手に転んでしまった。あちこち擦りむいて血が出てくる。痛いし、追われているし、わけがわからなくて涙が出てきた。どうして私たちがこんな目に合わなきゃいけないんだろう。
「いたぞ!」
「囲め囲め!」
「絶対に逃がすな!」
痛くて立ち上がれないっていうのに、そんな私に気遣うことなんて何一つなくて寧ろどんどん周りを囲い始める。
「ようやく捕まえたぞ、この魔女めッ‼」
槍を突きつけて一人の村人がそう怒鳴った。それを皮切りにどんどん私に罵声を浴びせ始める。誰も彼も睨みつけて、殺意を込めて、私を「魔女」と呼んでそれぞれ持っている農具や刃物を突きつけている。
「な……何よ……私が一体、何をしたっていうのよ⁈ こんな目に合わされることなんて何一つしてないっ!」
「黙れ魔女がッ!」
「だってそうでしょう⁈ 村の人たちのために色んなものを与えたじゃない! 生きやすいようにって、薬とか便利な道具とかあげたじゃないっ!」
「あんたは与えすぎたんだよ、魔女」
エプロンを付けている中肉中背の女性が包丁を向けながらそう言い放った。私は何を言いたいのかわからなくて唖然とする。
だって、私は魔女として色々と施してあげたのに。みんなのためにって力を貸してあげただけなのに。それなのにどうして村の人たちは怒っているんだろう。満足していないんだろう。まだ何か欲しいんだろうか。
「あんたは村の若いのに色々と与えただろう。そのせいであの子たちは自分たちが何もしなくてもなんでも手に入ると思い込んでしまったのさ。今じゃすっかりあんたに依存して自分たちで何かをしようともしない。考えることも放棄してしまった。これはあの子たちにとってよくないことなんだよ」
「な、何よ……だって便利なことはいいことじゃない。病気だって簡単に治るのよ? 無駄な労力を使わなくたって、私の薬があれば野菜も簡単に育つし食べ物に困らずいれたじゃない。それの何が駄目なわけ⁈」
「苦労もせずに手に入れられるから、村の若いもんは食料を大事にせずに簡単に破棄するようになったのじゃ。こっちが叱ったところで『魔女がまたくれる』だなんて言い出す」
「お前がいつまでもこの村にいる保証はどこにある? お前がいなくなったら、俺たちが老いて身体が動かなくなったら、若いのたちはどうやって野菜を育てる? どうやって生活するっていうんだ」
「対策せにゃならんのよ」
だから、私とヴィターを追いかけ回したっていうの? ヴィターの悲鳴が聞こえてからそのあとに全然声が聞こえてこない。一体ヴィターはどうなったのか。考えるだけでも悪寒が走る。
「それは村の若い子たちのせいじゃない! 私のせいにしないでよッ!」
私は与えただけ。それをどうするかなんて与えられた側の責任。自分たちで考えて動けばよかっただけの話。若い子たちが自分たちの思い通りにいかないからって、勝手に私たちのせいにされてたまったもんじゃない。
「それだけの理由で私を殺そうっていうの⁈ ふざけないでよッ!」
「黙れこの魔女がッ!」
「アッ! い、痛ぁ……ッ」
突き出された槍が太ももを貫いた。私は魔女なのに、普通の人間より長生きできるのに、突き刺さった槍をどうすることもできない。
「捕らえろ!」
「魔女の血に触れるな! 呪われるぞ!」
「うぅっ……なに、よ、それっ……!」
人に傷を負わせて血を流させておきながら、血に触るな呪われるなんて。そんな事実どこにもない。魔女の血は別に穢れてるわけじゃない、寧ろその血の奥にある心臓にはとんでもない価値があるっていうのに。
「変なことしないようロープで括れ!」
「これ以上刺すな、血が出る」
「それじゃどうやってこの魔女を」
「火炙りだ」
「燃やしてしまえば血がこっちにかかってくることもない」
叫ぶ人間もいれば淡々と私の身体にロープを巻き付け、そんなことを言い出す人間もいる。ゾッと背筋に悪寒が走った。まさか本当に、私を殺すつもりなのかと。
「ま、って、やめて、まって、私……わたし、そんな悪いことしたっ……⁈」
こんな大勢の人に恨まれるようなこと、憎まれるようなこと――殺されるようなこと、私した?
私はただ自分が持っているものを他の人たちに少しだけ分けてあげただけなのに。私はただ、ただ――
「あ――」
私はただ、大切だった幼馴染を助けたかっただけなのに。
ロープで巻かれて身動きできない身体をズルズルと引き摺られる。周りには人たがり。騒ぎを聞きつけて野次馬みたいにやってきた人間も多くいた。
その中で、見つけた。そう、ずっと探していた。
「っ……私は、私はただっ……リティ、あなたに与えたかっただけなのにっ……!」
あの頃と変わらない姿で、あの頃と違って苦しそうでもなければ顔色が悪いわけでもない、至って健康そうな顔が私の方を見ている。
その姿に縋り付くように手を伸ばす。だってずっと待っていたんだから。私の願いが叶うことを、ずっと。私の願いが届いたからこうして私の目の前にリティが立っているんでしょう?
「……僕は、あなたに何かを貰ったことなんて一度もない。会ったことも、喋ったこともないのに」
「え……」
「連れて行け!」
「大人しくしてろ魔女!」
「まって……まってよぉリティ! 私は、私はあなたのために! ねぇリティ!」
「動くな!」
「リティー!」
ズルズルと引き摺られて、リティとの距離もどんどん開いてしまう。どうして会ったことも喋ったこともないだなんて。私はずっと待っていたのに。
必死にリティを呼ぼうとしてもみくちゃにされながら必死に見たものは、リティの隣に知らない女の子どもが寄り添うように立っていたところ。リティも当然のようにその女の手に自分の手を添えていた。
「魔女と会ったことがあったの?」
「……ううん。大人たちの言う通り僕は他のみんなと違って森には近寄らなかったよ。僕の名前を知っていたのも魔女だから、かな」
「……なんだか必死だったような気がする」
僕と同じ歳で幼馴染でもある彼女が引き摺られていく魔女の姿を見ながらそう言葉にする。確かに魔女は何かを訴えようと必死だった。それは周りにいた大人たちも気付いていたはずだ。
それでもやめなかったのは、魔女の行いに目を瞑るのにはあまりにも行き過ぎたからだ。僕と同年齢ぐらいの子たちはすっかり魔女に依存してしまって、生きているのかいないのかわからない、半ば廃人のような状態になっている。
「……魔女は誰かに与えたかったんじゃなくて、自分が与えられたかったのかな」
冷静に状況を見ていた彼女に、そうかもしれないねと小さく返した。
*
とある森の奥に一人の女性が静かに暮らしていました。彼女は森の中にある薬草で薬を作り、森に住まわせてくれている村人たちにお礼をとその薬を分けていました。
彼女は少し変わった女性だったけれど、村人が彼女を恐れたことなど一度もありません。彼女が一度も村人に危害を加えたことがなかったからです。近すぎず遠すぎず、その距離を保って村人と彼女は共存していました。
ところがある日、一人の愚かな子どもが大人たちとの約束を破ります。
子どもは自分の思い通りにならない生活に苛立ちを覚え、なんとその森にひっそりと暮らす彼女に危害を加えたのです。それだけではなく、彼女の心臓をも喰らったのです。
見た目は子どもでも、その子どもは『魔女』だったのです。
彼女の持っていたものをすべて奪った魔女は、彼女が住んでいた家を自分の家として従者と共に好き勝手に使いました。
彼女から得た知識を自分の知識のように村人に振るい、村の子どもたちを自分の操り人形に仕立てようと企てます。「人のために」と口にして、すべては自分のために動いていたのです。
とうとう業を煮やした村人たちが、そんな悪い魔女を討伐します。魔女の血は穢れており、触れてしまうと呪われてしまいます。なので村人たちは魔女を焼くことにしました。
魔女が討伐されると操り人形のようになっていた子どもたちの様子も、徐々によくなっていきました。こうして村に巣食っていた魔女はいなくなり村は平和になったのです。
「リティの書いたおとぎ話、すごく好評なんだって」
「そうなんだ。嬉しいな」
パラパラと僕が書いた本のページを捲っていた彼女が顔を上げ、僕と目を合わせて小さく微笑む。僕も同じようにはにかみながら彼女に笑みを向けた。
「これって私たちが子どもの時に討伐された『魔女』の話?」
「そう、あれをベースにしてるんだ」
「それにしても『魔女』がこの村に巣食うようになったところ、よく創作できたね。まるで見てきたことのように書かれてる」
「ふふ、頑張ったんだ」
「そっか」
本を置いた彼女は「薬草を取りに行ってくる」と言って部屋から出ようとする。そこを慌てて呼び止めて、軽く頬にキスを落として「気を付けてね」と見送った。
十六歳で同棲なんて早すぎたかな、って思ったけど村人たちはみんな微笑ましく見守ってくれている。あんなことがあったから、こうして恋人たちが無事に一緒にいることが安心するみたいだ。
彼女が置いた本を手に取りペラペラとページを捲っていく。
「……彼女を、悪者にするわけがない」
森で出会った彼女は、確かに無愛想だったけれど優しい人でもあった。
とにかくつらかった。つらくて、歯がゆくて、でも自分でどうにかできるわけでもない。病に蝕まれていく身体に悲痛な表情をしていたのは僕だけじゃなく周りの人たちだった。
みんな口々に「いつか治る」「また元気になれる」、そう言ってくれたけれど治ることのない病気だということを医師の口からはっきり聞いていた。聞いていたから、元気付けさせようとかけてくれる言葉が気休めにしかならないことに苦しさを覚えた。
ある日、両親が僕に相談してきた――森の奥に、薬を作る『魔女』がいる。その魔女の薬に一縷の望みをかけてみないかと。
ただ彼女はあまり村人と関わりがなく、その人間性もわからない。怖い思いをさせられるかもしれないし、つらい思いをするかもしれない。そんな思いをしてまで大切な息子を森の奥に向かわせるのも気が引けるとも言葉を続けて。そして最終的には僕にどうするかを決めさせてくれた。
とてもいい両親だったと思う。つらそうな顔をしている日が多かったけれど、それでも僕の気持ちを最優先で考えてくれる人たちだった。そんな両親の心を少しでも軽くしてあげたくて、僕は森に行くことを決めた。
ただ僕も魔女に会ったことはなかったし、もし両親と一緒に行って両親に何かあったら。僕はそれが怖かった。だから僕一人で向かった。僕自身に何か起こったところでもう先の短い命だったから。
そうして森の奥に向かって、そして『魔女』に出会った。見た目は両親よりも年上で、友達のおばあちゃんと歳が近いかもしれない。それでも背筋はしっかりと伸びていて、何よりも所作が綺麗だった。
そしてその魔女は森の奥にやってきた僕に対して、一言。
「子ども一人こんなところに向かわせるなんて、周りの大人たちは何を考えているんだい」
僕の身を案じる言葉だった。それだけで、ああ、この人はきっと優しい人なのだとわかった。
彼女はすぐに家に招き入れてくれて、あたたかいミルクを淹れてくれた。ゆっくりでいいから事情を説明してほしいとの言葉に、僕は怯えることなく魔女に向かって口を開いた。
魔女はずっと真剣な表情で話を聞いてくれた。病の話を聞いてすぐに何かを考えるような素振りを見せて、何やらブツブツと呟き始める。今思うと、あの時すでに薬草を配合して薬を作れないか考えていたのだと思う。
結局僕の病は魔女の知識を以てしても治ることは叶わなかった。
「こんなところじゃなくて、最期ぐらいは大切な人と一緒に過ごしな」
無愛想な声色で優しい心遣いの言葉に僕も一度悩んだ。確かに両親には彼女の薬草でも治らないということは伝えておいたほうがいいかもしれない、と。でも僕の病を治せなかったのは彼女のせいでもないということを。
そうして一度家に戻った僕は両親と深く深く話し合って、そして決めた。
「……愚かだねぇ」
話し合って、僕は彼女のところに戻ることを選んだ。
もう一度目の前に現れた僕に対し、そう短く呆れたかのように小さくこぼした彼女は僕を家に招き入れる。最初に出会った頃と同じようにあたたかいミルクを淹れてくれる。
「やっぱり、みんなの悲しむ顔を見るのがつらくて。なので、あなたさえよければ僕をここに置いてくれませんか?」
「……まったく」
そうして僕は短い間、彼女と同じ時間を過ごすことになった。
彼女は優しい人だった。村にいた頃はみんなとにかく僕に気を遣っていた。動くと必ず誰かが傍にいて、なんなら食べている時でさえ自分でできるのに食べさせようとしてくる。優しいけれど、一方で息苦しさも感じつつ、それでもみんなの好意を無碍にすることができなくて言葉を飲み込んだ。
彼女は僕をそんな風に気遣うことはなかった。動きたいと言ったら森の奥に行かないことだけを約束して自由にさせてくれた。食べ物も今まで食べたことのないものも食べさせてくれたし、手伝いたいと言ったら手伝わせてくれる。
でも僕の顔色が悪くなったり、咳き込んだりするとすぐにベッドに横たわらせて薬を飲ませてくれる。熱が下がらない時は下がる時まで傍にいてくれる。
弱音を吐いていい強がる必要もない逃げてもいい。彼女の口から出てくる言葉で僕がどれほど救われたことか。
「弱いのは当たり前だ。人間は弱い生き物だからね」
不安を抱えるのも当然で、泣いてしまうのも当然のこと。僕が村にいる時に我慢していたものを彼女はすべて許してくれた。
徐々に身体が弱まってきて、とうとう起き上がるのも困難になってきても彼女は嫌な顔一つもしない。いつも通り「おはよう」と声をかけ、僕が食べれるようにとスープを作ってくれる。彼女が煎じてくれた薬は段々苦味を増してきたけれど、それも彼女が僕を生かそうと必死なのだと伝わってきた。
確かにつらくもあったし、泣きたい時もあった。でも村にいた時よりもずっと僕の心は穏やかだった。彼女の表情は変わらない。いつも通りに接してくれる。そうすることで僕の心が軽くなることを知っていたんだと思う。
そんな彼女が、ある日ベッドの縁に座って僕の胸に手を当てながら口を開いた。
「魔女の心臓でも喰らうかい?」
「え……?」
「病が完治するかどうかはわからないが……それでも大切な人たちと共に過ごせる月日を生きることができるはずだ。知恵も同時に引き継がれるから生活には困らないはずだよ」
ぽんぽん、と一定のリズムで叩いてくれる手に、じわっと涙があふれてくる。
『魔女』がどういう人なのか彼女から直接聞いた。人より長生きで知識に溢れていて、でも万能というわけでもない。怪我をすれば普通に血は流れるし、心臓を貫かれると死んでしまう。
その『魔女』が、自分の心臓を喰らって生き長らえろと言う。
のろのろと腕を動かし、自分の胸に置いてある彼女の手にそっと自分の手を重ねる。
「僕、僕……生きるとしたら、あなたと一緒に生きたい」
「……! 本当に、愚かな子だ」
「えへへ……」
『魔女』の心臓を喰らって生き長らえたとしても、そこにあなたがいなければ意味がない。
そうして僕は最期、彼女に看取られてそのまま息を引き取った。
『魔女』の心臓を喰らった人間がいる。そうすぐに気付いたのは森の奥に巣食っている二人の人間の存在だった。
確認のために一度だけ遠目で見たことがある。まるであの子どもたちが成長したかのような姿をしていた二人はきっと、百年以上ずっと変わらないでいるのだろう。
僕の心に沸き立ったものは二人とまた再会できるという感動なんかじゃない――大切なあの人の心臓を喰らった二人への、確かな憎悪だった。
別に嫌いだったわけじゃない、寧ろ大切な幼馴染だった。僕が病に侵されてもそれまでと変わらないように接してくれて、元気付けさせようとしてくれた。
でもそれがどんどんつらくなってきて、あれだけ喜んでいたお見舞いも億劫になってくる。身体の調子が悪いからと断って次会う時は、いつも「どうして会ってくれないの?」という言葉から始まる。
幼馴染たちは、本当に僕のことが心配なんだろうか。そう思ってしまう自分にも嫌気が差した。
でもそれももう過去のことだ。あの子たちはやってはやらないことをやった。あんなにも、あんなにも優しかった人を傷付けた。それだけじゃない、心臓を喰らって、彼女のすべてを奪っていった。
許せなかった。あんなにも優しい人を。心臓を奪われた時、一体どれほど苦しかったのだろう痛かったのだろう。ずっと病に侵されていた僕はその苦しみがほんの少しだけわかる。
それだけの苦痛を大切な人に味合わせた、許せるはずがなかった。
その頃村ではその『魔女』の行いが問題視され始めていた。子どもを集めて、あらゆるものを与えて廃人にさせていると。大人たちがいくら子どもにもう森の奥には行くなと言っても、一度与えられた甘味を子どもたちは忘れることはなかった。
「僕、本で『魔女狩り』っていうものがあるって読んだんだけど」
ある日両親が他の大人たちと話し合いしているところ、そう一言告げた。そしてその言葉が引き金となった。
悪い魔女は狩られ、そして子どもたちは解放され普通の生活に戻る。物語としては王道で美しい終わりを告げたはずだ。
王道だから、僕が手掛けたこの物語も好評なのだろう。
絶対に彼女を悪い『魔女』にするわけにはいかなかった。彼女は他の誰よりもずっと優しい人だったのだから。そんな優しい人が、本当に悪い『魔女』から奪われた事実。これは絶対に周囲に知られなければならないことだ。
悪い『魔女』はただ一人だ。
「ただいま。ちょっと遅くなっちゃったかな」
「ううん、まだ日も落ちてないし大丈夫だよ。お疲れ様。あ、僕がその薬草持つよ」
「そう? ありがとうリティ」
お礼を告げる彼女ににこりと笑みを向ける。だって森の奥にいた時ずっとやっていたことだもの。
「君が作る薬、すごく効くって評判がいいよ」
「よかった。なんでか薬草の知識だけはあって」
他はそこまで器用じゃないのにね、と肩を竦める彼女は慣れた手つきで夕飯作りに取り掛かる。僕の健康のためにと作られるスープは他の何よりも美味しかった。
そして、以前と変わらない味だった。
台所に立つ彼女の背中を見るのが好きだ。前は見上げなきゃ見れない姿だったけれど、今は大人しく椅子に座って次の物語を書くふりをしながらジッとその姿を眺めることができる。
僕の最期の願いはもしかしたら、まだ力の残っていたあなたが叶えてくれたのかもしれない。
あなたがいてくれたから、つらくても苦しくても僕は生きることができた。
あなたがいてくれないと、僕はこうして毎日幸せな日々を過ごすことなんてきっとできない。
僕をずっと待っていた大切な幼馴染を切り捨ててしまえるほど、僕はあなたと共に生きたかった。
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