krystallos

みけねこ

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在りし日の

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「よぉ」
「なっ、なっ……⁈」
 船に戻るとフレイが目をまん丸にして口をぽかんと開けて、フルフルと指差している手を震わせて固まっている。そんな反応に私の隣で隠すことなくムッと表情を歪ませた。
 正直、今最も注目の的になっているせいもあってあまり気分のいいものじゃないんだろう。そういう不機嫌になってしまうのも昔から変わらない。
「なんだその幽霊を見たような顔は」
「なんだ、じゃないよ! っていうか幽霊みたいなものだったじゃないか!」
「誰が幽霊だ誰が。足ちゃんと生えてんだろうが」
「ああ、生えて……ってことは――アンタ本当にカイムかい⁈」
 再会してからずっと指を差されているものだから「いつまで指差してんだ」って小言を返しつつ、カイムは頷いた。
 カイムと再会してこれからのことも聞いて、一先ずは船に戻ろうってことでこうして一緒に戻ってきたわけなんだけど。私を待っていてくれていたフレイは私の隣を見た途端絶句した。
 だって今まで毎年行っていたけれど、戻ってくるのは私一人。もし一緒に戻ってきたとしてもそれはもっとずっと先の話だと思っていたに違いない。っていうかみんなきっとそう思っていた。なんならカイムでさえ。
 それが八年経ってこうして急に動いているものだから、フレイが驚いちゃうのも仕方がない。何度も何度もカイムの顔を見て、足を見て、そしてもう一度顔を見てる。会話もちゃんとしてるのに中々実感が湧かないみたいだ。
「おやおや、騒がしいかと思ったら。随分と懐かしい人がいるじゃないですか」
「なんだお前もいたのかよ」
「ええ、どうも久しぶりです。私の研究対象者さん」
「いつまで研究対象で見てんだゴラ」
「ははははは」
 眼鏡をクイッと上げながら笑ってるクルエルダだけど、本当にちょっとだけどこか楽しそうだ。
 それもそうか、女神の力を受け取ってそして『楔』としての役割を果たしに行ったのはすぐだった。そのあと姿だけは見つけたけど、でもそれもクリスタルの中。戦いの直後のカイムがどうなったのか、その様子がまったくわからなかったからクルエルダなりに気になっていたのかもしれない。
「って、こんなことしてる場合じゃない! 知らせないと!」
 さっきまでぽかんと固まっていたのに、ふと何かに気付いたのかフレイは弾かれたように顔を上げてこの場から走り去った。一体なんなんだと言いたげなカイムに、クルエルダはちょっとだけ呆れたように肩を竦める。
「やれやれ、相変わらず騒がしいですね」
「アミィから八年経ったって聞いたけどよ、色々と変わってんのか」
「ええ、まぁ変わりましたね。色々と。何せ魔術がほとんど使えなくなったので私としては困ったものですよ」
「『紫』でもか」
 その言葉に『紫』である私とクルエルダはお互い目を合わせて、そして同時に頷く。私たちの答えにカイムは何か考えたあと短く「そうか」とだけ告げて視線を海のほうに向ける。
 正直あの戦いの直後のほうがほとんど使えなかった。せめて傷を癒すだけの魔術があればよかったんだけど、本当に水瓶に溜めていた水が一気に失われたようだった。あの時ほど薬草とかが役に立ったことはないと思う。
 今は人々の信仰心が徐々に戻りつつあるからか、意識すれば魔力を感じることができる。けれど魔術の代替にガジェットを使っている今、全力で魔術を使う機会があまりない。だからどれくらい精霊たちの力が戻っているのかしっかりと確認しているわけでもなく、詳しく話すことができない。
 カイムも八年ぶりに戻ってきたことだし、それに身体を動かすのも久々だ。もしかしたら動きづらいのかもしれないと声をかけようとしたけれど、その前にパタパタと走る音が耳に届いた。走ってきたのはさっき慌てて船内に行ったフレイだ。
「急に悪いね! 今からの行き先はあたしが決めるけどいいよね?」
「うん、私は構わないよ。寧ろ私の我儘に付き合ってもらってたんだし」
「それなら俺は別の船に――」
「はぁっ⁈ アンタも一緒に行くに決まってるだろう⁈ 大人しくついてくる!」
「一体なんなんだよ……」
 多分カイム的には女神を連れてすぐに移動したいんだろうけど、フレイの圧が物凄く強かった。船から降りようとしてたけど渋々といった感じで戻ってきた。
「野郎共、出航だ!」
「おぉ!」
 フレイの合図一つで多くの野太い声が戻ってきた。むさ苦しいな、と眉間に皺を寄せて小さくこぼしたカイムのぼやきは私の耳にはしっかり届いた。

 移動している間、みんなで色々とお喋りしつつもカイムの視線は常に景色のほうに向いていた。私たちは感じにくくなっているけれど、ずっと女神と一緒にいるカイムには感じ取れる何かがあるのかもしれない。ただジッと彼方のほうを見てるカイムに横槍みたいに話しかけることもできず、船はゆっくりとフレイの目的地へと進んだ。
「はい到着!」
「ア? こんなとこに港ができたのかよ」
「はいはい降りる降りる」
 フレイの船ネレウスが停まった場所はアルディナ大陸とフェルド大陸を結んでいる山脈の近くにある、ムーロという小さな村だった。
 ムーロは八年前に大きな被害を被った村の一つだ。前線に近いこともあってあの時は補給地点にされていたとのこと。でも本当に荷物を置くのと、怪我人の手当てをする場所の確保だけされていて、村の人々はその時点で殆どいなかった。
 そんな村だけれど、私も前にフレイの船に乗って来た時は少しずつ復興している最中だった。散り散りに逃げ果せた村の人たちが戻ってきて、元の村に戻そうと奮起していたそうだ。
 私はしばらくして、その村がスピリアル塔から逃げて初めてカイムと訪れた村だということを思い出した。あの時目に映るものすべてが新鮮で、そしてカイムと兄妹に間違えられた。そんな大切な思い出をこの場所に来ないと思い出せなかった自分が少し不甲斐なく感じた。
 そしてムーロには港が出来た。前までだと港なんて作ってしまえば海路からもイグニート国に攻め込まれてしまう、という理由で作られなかったそうだ。今はその心配はなく、寧ろ港が出来たことによって各国の行き来がしやすくなって村は更に発展している最中だ。
「ここになんか用事があんのか」
「いいや? 向こうには港がないから、あとは陸路だね」
 場所がここじゃなくて、陸路を進むと聞いてカイムは何かを察したような気がした。私も確か初めてムーロにやってきて、その次にどこへ向かったかといったら一箇所だけ頭の中にポンと浮かぶ。もしそこじゃない場所だとしたら別にムーロの港に船を停める必要もない。
「久々にこの四人でゆっくり行こうじゃないかい」
「ははは、この四人だと罠にかかりまくったいい思い出が浮かんできますねぇ」
「あの時大変だったね」
「シルフのせいでな」
 一つ何かのきっかけがあれば、次々にあの時の記憶が蘇ってくる。八年前はほぼ六人で行動してたけど、この四人でとなるとやっぱり精霊の遺跡を回った時だ。シルフの時は本当に大変で必死だったけど、今思うとあれもあれで楽しかった。
 八年って、結構長く感じる。私は子どもから大人になった。色んなものが変わった。人も、精霊も、自然も。そんな長い月日の中、それでも八年前と変わらないように会話をして一緒に歩いている。
 隣にカイムがいるだけでこんなに違うんだ、って。八年前と違って大きく見上げることなくそっと隣を見るとそこにある顔に、少しだけツンと鼻が痛くなった。
 フレイの目的地に辿り着いたのは思いの外早くて、それもきっと私の踏み出す一歩が広くなったことも関係しているんだなと思いつつ見えてきた城下に目を向ける。フレイがこっちだと言って迷わず前に足を進めた。
「カイム? どうしたの?」
 少しだけまじまじと周りを見ていたカイムが気になって声をかけてみると、「いいや」と短い言葉だけが返ってきて私たちと同じように歩き始める。
「流石に八年も経つと変わるか」
「やっぱりそう見えるんだ?」
「そうだな。なんつーか、随分と雰囲気が柔らかくなった」
 前はあんだけ厳つかっただろ、と続けたカイムに確かにと思わず苦笑で返す。八年前のこの場所、バプティスタ国は厳かでどこかピリッとした空気が漂っていた。それもそうだ、あの時バプティスタ国は常にイグニート国との戦いを強いられていて和やかに過ごすことなんて無理だったのだから。
 でもカイムが言っていたように、バプティスタ国も変わった。行き交う人たちには笑顔が浮かんでいて、露店もよく見える。他の国に比べたら相変わらず規則には厳しい国だけれど、それでも人が纏っている雰囲気には確かな違いがあった。
「ほーらアンタたち! ボサッとしない! こっちだよ!」
「アイツの声のでかさは変わんねぇな」
「あははっ、フレイはいつも元気だよ!」
「クルエルダー! アンタはウロウロしない! こっちに来な!」
「……なぜ名指しなんでしょうかねぇ」
 それはもう、私とカイムの後ろについてきているかと思ったらガジェットを取り扱っているお店にフラフラと引き寄せられていたせいだと思う。それをフレイが目ざとく見つけただけだ。
 ちょっとだけ真顔になったクルエルダはやれやれといった様子で私たちを抜かして、急いでフレイの元へ向かった。
「へぇ?」
 なんだか意味深にカイムがそう呟いたけど、私はいまいちわからなくてただ首を傾げるだけだった。
 フレイが立っていたのは宿と食堂が一緒になっている場所だった。前に泊まったところとはまた別所でこのバプティスタ国内でも広い施設になっている。広いから、そこを利用する人も多い。
 早く早くと手招きで急かされて、小走りで向かおうとしていた私に対してカイムはマイペースに歩いていて思わずその腕を引っ張る。仕方なしにされるがままのカイムはそのまま走っている私についてきて一緒に宿屋へと入った。
「カイム⁈」
「カイムさん⁈」
 そして一歩踏み入れた瞬間真っ先に飛んできたのはその声だ。目の前には少し前に私が顔を見せに行った――ウィルとティエラ、二人の姿。
「フレイから知らせが来たからまさかとは思ったが……!」
「おう、何やら立派になってんじゃねぇか」
 ウィルは急いで休みを取ったのか、鎧は纏っていなかったけれど服が如何にも騎士団のもののままだった。それを見てカイムは片方だけ口角を上げ、ウィルは「君は変わらないな」と笑顔で返した。
「ティエラ、ここに来るの大変だったんじゃない?」
「はい、連絡がつい先程だったのですぐに駆けつけられないと思ったんですが、神父様が近くまで運んでくださいました」
「なんだあの神父はまだ使えんのか」
「とは言ってもやはり以前のようにはいかないみたいですが、私一人ぐらいだったら大丈夫だと言って」
 「魔術」の一言も出てないのに察したカイムに、ティエラも丁寧に言葉を返す。昔は特になんとも思わなかったけど、多分八年前からみんなこんな感じで会話をしていた。それぞれ頭の回転が早いんだ。
「八年ぶりの再会だ、ここはみんなで楽しくお喋りしようじゃないの!」
 あたしの奢りだよ! ってフレイは食堂の奥のほうにある席を指差した。その時クルエルダの懐から財布を抜き取ったように見えたけど。私の気のせいだということにしておこう、うん。
「カイム、行こ!」
「ったく……マジで成人したのかよ、お前」
「成人しました! 何度言ったらわかってくれるの!」
「言動が昔と変わってねぇんだよ」
 カイムの手をグイグイと引っ張って、奥の席へ行こうとしている私にカイムから呆れの声を返される。ああ本当、カイムの言う通り。折角再会したら素敵なレディになったところを見せつけようと思っていたのに。
 こうして実際カイムと会ってしまえば、八年前の子どもの私がひょっこりと顔を出してくる。あの頃の私が、大喜びしている。
 それほどずっと、あなたに会いたかったんだよ。カイム。
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