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116.因縁の対決②
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カイムは大変だろうけど、でもあのヘンタイカイムのところしか行かないしそれにあのヘンタイ相手できるのはきっとカイムだけ。アミィたちが手助けに入ってもきっと邪魔にしかならない。
だからウィルが言っていたとおり、アミィたちはこっちのお姉さんのほうをなんとかしなきゃいけない。こうしてアミィたちが身構えていると周りにはお姉さんが動かしているイグニート国の兵士がユラユラ動いていて、少し気持ち悪い。前から思ってたけどこうして亡くなってるのに無理矢理動かすなんてひどいことだと思う。でも、だからって何もしなかったらアミィたちが危ないから。
そんなアミィたちと向き合っているお姉さんはさっきのクルエルダとの会話からずっとつまらなさそうな顔してる。カイムとヘンタイが戦っているのを見ている時は楽しそうに見てるけど、ウィルが剣を身構えたのと同時にこっちに向き直って今の顔になった。
「……面白いね。『赤』じゃない君たちが私と対峙しようとは」
面白いって言いながら全然面白くなさそうな顔をしてる。そんなお姉さんに対してウィルはしっかりと剣を向けた。
「ああそうだ、僕たちは『赤』ではない。けれど君を止めなければ」
「騎士である君が人を殺そうと言うのかい?」
そんな言い方、あんまりだ。そんなこと言われたらウィルだって困っちゃう。どうするんだろうってウィルのほうに視線を向けてみたけど、でもウィルはそれでも剣を真っ直ぐに持ってお姉さんと向き合っていた。
「人々を守るために騎士は存在している。しかしその人々の安寧が脅かされようとしているのであれば、僕は戦場に立つ。その覚悟を持ってここにいる」
「……ふーん、とても高潔な意志だね。でもそちらのお嬢さんはどうなんだろうね? 君は神官か何かだろう? ただ祈りを捧げる君がここにいるのはまさに場違いだ」
なんでさっきからそんな嫌な質問をするんだろう。アミィたちに嫌な思いをさせたいのか、それともお姉さんにとってはそれすら素朴な疑問みたいなところがあるのかな。それでもすごく意地悪なことを聞いてくる。
突然喋りかけられたティエラは少しびっくりしていたけど、でも持っていた杖にギュッと力を込めてウィルと同じように真っ直ぐに立っていた。
「あなたの言う通り、わたしの役目は人の傷を癒やすこと。なのでわたしはここにいるんです。大切な人たちの傷を癒やすために。少しでも傷を増やさないように守るために」
「綺麗事を言葉にして、所詮は私を殺そうとしている口だろう?」
「……あなたに何と言われようとも、わたしはあなたを止めるべきだと思っています。人の死を、このように冒涜していいものではありません」
「なるほど? そういうことなら君が私に対峙する理由になるね。けれどまるでこれだと私が悪者のようだ。私はただ依頼主からの要望に応えているだけにしかすぎない。そうしてみんなで集まって多数のほうが正しい意見かい? 多数派のほうが正義なのかい? 私からしてみたらこの状況は少数派に対しての威圧的行為、弱い者いじめだよ」
急に困ったような顔して肩を上げてそんなことを言われた。何が言いたいのかわからなくて困っていたんだけど、そう思っていたのはアミィだけじゃなかったみたい。ウィルもティエラもちょっとだけ戸惑っているような気がした。
どうすればいいんだろうってキョロキョロしていたらどこからか溜め息が聞こえてきた。そっちの方向を見てみるとクルエルダが眼鏡をかけ直しているところだった。
「『赤』の貴女に言われたところで、という感じなんですけどね」
「けれど本当のことだろう? 君たちは意見が違うからという理由で私を殺そうとしている。けれどよく考えてみてほしい、果たしてイグニート国王が成そうとしていることは本当に悪なのだろうか、と」
「言ってる意味がわかんないよ……だっていっぱい酷いことをしてるのに」
「細部まで見ようとするからだよ小さいお嬢さん。もっと大局に目を向けてごらん」
そんなこと言われたって、周りにお姉さんが動かしている兵士たちがユラユラ動いているのに何を見ろって言うんだろう。もっと困っていたらお姉さんは少しだけ首を傾げて顎に手を当てて、何か考え込んでいる様子だった。
「子どもに説明するのは難しいね。でもイグニート国王の考えは悪くないと思うんだ。彼が理想としているのは実力主義。生まれ関係なしに実力さえあれば這い上がれるんだ。そして彼はそんな人間に対して支援を惜しまない。今の私のようにね」
ウィルの近くにいた兵士が思いっきり剣を振り上げてきた。もちろんウィルはそれに気付いているし、すんなり斬られることもない。しっかりと自分の剣で弾き飛ばして兵士のお腹に向かって剣を振り払った。
でも動いたのはその兵士だけじゃなくてアミィたちの近くにいた兵士もそうだった。急いで魔術を使って燃やして、みんなのサポートをしてくれているティエラの近くでフレイがしっかりと守ってくれている。
「君たちは感情でしか動いていない。そんな単純に世の中は動いていないんだよ。力もない思想は所詮理想でしかない。何も変えることができず進化もできず、その場に溜まっているだけの烏合の衆だ」
「確かに人類は今に至るまで一応は進化を続けていますからねぇ。それこそ魔術や、最近最も顕著に現れているのはガジェットですね。あれの進歩速度は凄まじい」
「そうだろう? イグニート国王はそれを技術面だけではなく人間でも同じように施そうとしている。それの何がいけないんだろうか? それのどこが悪なんだろうか? 人とは日々進化を続けるものだよ」
いきなり目の前に剣が現れたから慌てて屈み込んだら、アミィの頭の上に鎖鎌が飛んでいった。ジャラジャラ音を立ててそれはフレイの手に戻っていく。
あのお姉さんに対してきっとフレイが一番怒っているっていうか、言い方は違うかもしれないけど嫌っていると思う。でも今のところフレイはすごく静かだ。怒っているから静かなのかなってチラッて顔を見てみたけど、でも表情はいつものフレイだ。怒っている、みたいな感じじゃない。
でもそんなフレイに対していつも以上に喋ってるのはクルエルダのほうだった。魔術を使いつつ隙があればお姉さんに魔術が当たらないかなみたいな感じで放ちつつ、身体を動かしながらも器用に喋っている。
「まぁ、研究者からしたら魅力的に見えるかもしれませんね。貴女がそちら側についた理由はそこでしょうし」
「その通りだ。やっと理解してくれたかな、クルエルダ・ハーシー」
「しかし、研究と実験には失敗がつきものです」
ピタッて兵士たちの攻撃が止まった。今度は何、って辺りを見渡してみたら止まっているのは兵士だけじゃなくて兵士を操っているお姉さんもそうだった。
「話を聞く限りイグニート国王は、一度の失敗も許さない人間でしょう。そうすると我々からしたらとても研究しづらい環境だ」
「……それが、どうし」
「貴女は『赤』だ。今まで生きてきた中で『失敗』した経験が一度もない。その瞳を持っているから今まで何でも自分の思い通りにやることができた。しかし、それは貴女だからなんですよ。『赤』ではない我々は失敗を何度も繰り返して成功へと導いている。貴女の言うイグニート国王の理念は、そういった人間をすべて斬り捨てる。優れている者しか生きられない世界、ということでしょう」
生きづらいどころか、生きていけない世界じゃないですか嫌ですねぇ。ってクルエルダは笑いながらそう続けた。笑ってるけど、目が全然笑ってない。それにそんな世界、アミィだって嫌だって心の底から思った。
だってアミィもいっぱい失敗してきたもん。その度にカイムとかティエラたちとか色んな人たちが助けてくれた。人ってそうやって生きてるんじゃないかな。カイムたちに出会う前に、お父さんとお母さんと一緒に暮らしていた時もそうだった。苦手なことがあったらそれが得意な人が助けて、その人が苦手なものはできる人が助けて。そうやって人って生きてるんじゃないのかな。
それにクルエルダが言っていた通り、何度も何度も失敗しても、それでちょっとずつでも上手くなって最後はできるようになることだってある。
お姉さんが言ってることが、それがないってこと。できなかったら誰も助けてくれないし、できないって言った瞬間にもしかしたら殺されるのかもしれない。できる人しか生きられない世界って、本当に実現できるのかなって。
「貴女に凡人の考えなんて理解できませんよね。ただ面白いことに、『赤』だから理解できないというわけではないんですよこれが。私たちが会った『赤』の中で、それを理解できる人間がいるんですよねぇ」
「……!」
「アンタたちさっきから難しいことガチャガチャ言ってるけどさ」
今は兵士たちの動きが止まってるから、攻撃を防いでくれていたフレイの手も止まってる。立ち止まって、ちょっとだけ息を吐きだしてお姉さんのほうに顔を向けた。
「別に優秀な人間がどうこうしようとそいつの勝手さ。でもその勝手のせいで、つらい思いをする人間がいる。アンタらはそれがわからないだけなのさ。すごく単純なことなのに、それを知る機会がなかった。可哀想っていったら可哀想なもんだよ」
クルエルダにフラれた時みたいにお姉さんの顔から表情がなくなる。ただカイムと同じ『赤』のはずなのに、なんだか暗く感じる。その暗い目でフレイのほうを黙って見てるし、フレイも目を逸らさなかった。
「あたしたちの意見の食い違いは、人に愛してもらったか愛してもらえなかったか。それじゃないかな」
バチンッてどこからか音が聞こえた。急に大きな音が聞こえたもんだから目を丸くして音のほうを見てみたら、少し離れたところでカイムとあのヘンタイが変わらずに戦ってる。アミィたちがこうしてお話をしている間も二人はずっと戦ってる。
なんかヘンタイが一方的に喋ってカイムがものすっごく嫌そうな顔をしているのが見えた。
「アンタらが無駄だと思っているもんが、あたしたちにとっちゃ大切なもんなんだよ。元から物事の受け入れ方が違うんだ、そりゃ意見が合うこともないよ」
「……確かにそうだね。私も君たちの考えに一切同調できない。理解もできない。ただ力のないものの虚勢にしか聞こえない」
お姉さんが両腕を広げた瞬間、地面に倒れ込んでいた兵士たちが一斉に起き上がった。たくさんある剣がアミィたちに向けられる。
「ただ時間を無駄にしただけだった」
その言葉を合図に兵士たちが一気に襲いかかってきた。
だからウィルが言っていたとおり、アミィたちはこっちのお姉さんのほうをなんとかしなきゃいけない。こうしてアミィたちが身構えていると周りにはお姉さんが動かしているイグニート国の兵士がユラユラ動いていて、少し気持ち悪い。前から思ってたけどこうして亡くなってるのに無理矢理動かすなんてひどいことだと思う。でも、だからって何もしなかったらアミィたちが危ないから。
そんなアミィたちと向き合っているお姉さんはさっきのクルエルダとの会話からずっとつまらなさそうな顔してる。カイムとヘンタイが戦っているのを見ている時は楽しそうに見てるけど、ウィルが剣を身構えたのと同時にこっちに向き直って今の顔になった。
「……面白いね。『赤』じゃない君たちが私と対峙しようとは」
面白いって言いながら全然面白くなさそうな顔をしてる。そんなお姉さんに対してウィルはしっかりと剣を向けた。
「ああそうだ、僕たちは『赤』ではない。けれど君を止めなければ」
「騎士である君が人を殺そうと言うのかい?」
そんな言い方、あんまりだ。そんなこと言われたらウィルだって困っちゃう。どうするんだろうってウィルのほうに視線を向けてみたけど、でもウィルはそれでも剣を真っ直ぐに持ってお姉さんと向き合っていた。
「人々を守るために騎士は存在している。しかしその人々の安寧が脅かされようとしているのであれば、僕は戦場に立つ。その覚悟を持ってここにいる」
「……ふーん、とても高潔な意志だね。でもそちらのお嬢さんはどうなんだろうね? 君は神官か何かだろう? ただ祈りを捧げる君がここにいるのはまさに場違いだ」
なんでさっきからそんな嫌な質問をするんだろう。アミィたちに嫌な思いをさせたいのか、それともお姉さんにとってはそれすら素朴な疑問みたいなところがあるのかな。それでもすごく意地悪なことを聞いてくる。
突然喋りかけられたティエラは少しびっくりしていたけど、でも持っていた杖にギュッと力を込めてウィルと同じように真っ直ぐに立っていた。
「あなたの言う通り、わたしの役目は人の傷を癒やすこと。なのでわたしはここにいるんです。大切な人たちの傷を癒やすために。少しでも傷を増やさないように守るために」
「綺麗事を言葉にして、所詮は私を殺そうとしている口だろう?」
「……あなたに何と言われようとも、わたしはあなたを止めるべきだと思っています。人の死を、このように冒涜していいものではありません」
「なるほど? そういうことなら君が私に対峙する理由になるね。けれどまるでこれだと私が悪者のようだ。私はただ依頼主からの要望に応えているだけにしかすぎない。そうしてみんなで集まって多数のほうが正しい意見かい? 多数派のほうが正義なのかい? 私からしてみたらこの状況は少数派に対しての威圧的行為、弱い者いじめだよ」
急に困ったような顔して肩を上げてそんなことを言われた。何が言いたいのかわからなくて困っていたんだけど、そう思っていたのはアミィだけじゃなかったみたい。ウィルもティエラもちょっとだけ戸惑っているような気がした。
どうすればいいんだろうってキョロキョロしていたらどこからか溜め息が聞こえてきた。そっちの方向を見てみるとクルエルダが眼鏡をかけ直しているところだった。
「『赤』の貴女に言われたところで、という感じなんですけどね」
「けれど本当のことだろう? 君たちは意見が違うからという理由で私を殺そうとしている。けれどよく考えてみてほしい、果たしてイグニート国王が成そうとしていることは本当に悪なのだろうか、と」
「言ってる意味がわかんないよ……だっていっぱい酷いことをしてるのに」
「細部まで見ようとするからだよ小さいお嬢さん。もっと大局に目を向けてごらん」
そんなこと言われたって、周りにお姉さんが動かしている兵士たちがユラユラ動いているのに何を見ろって言うんだろう。もっと困っていたらお姉さんは少しだけ首を傾げて顎に手を当てて、何か考え込んでいる様子だった。
「子どもに説明するのは難しいね。でもイグニート国王の考えは悪くないと思うんだ。彼が理想としているのは実力主義。生まれ関係なしに実力さえあれば這い上がれるんだ。そして彼はそんな人間に対して支援を惜しまない。今の私のようにね」
ウィルの近くにいた兵士が思いっきり剣を振り上げてきた。もちろんウィルはそれに気付いているし、すんなり斬られることもない。しっかりと自分の剣で弾き飛ばして兵士のお腹に向かって剣を振り払った。
でも動いたのはその兵士だけじゃなくてアミィたちの近くにいた兵士もそうだった。急いで魔術を使って燃やして、みんなのサポートをしてくれているティエラの近くでフレイがしっかりと守ってくれている。
「君たちは感情でしか動いていない。そんな単純に世の中は動いていないんだよ。力もない思想は所詮理想でしかない。何も変えることができず進化もできず、その場に溜まっているだけの烏合の衆だ」
「確かに人類は今に至るまで一応は進化を続けていますからねぇ。それこそ魔術や、最近最も顕著に現れているのはガジェットですね。あれの進歩速度は凄まじい」
「そうだろう? イグニート国王はそれを技術面だけではなく人間でも同じように施そうとしている。それの何がいけないんだろうか? それのどこが悪なんだろうか? 人とは日々進化を続けるものだよ」
いきなり目の前に剣が現れたから慌てて屈み込んだら、アミィの頭の上に鎖鎌が飛んでいった。ジャラジャラ音を立ててそれはフレイの手に戻っていく。
あのお姉さんに対してきっとフレイが一番怒っているっていうか、言い方は違うかもしれないけど嫌っていると思う。でも今のところフレイはすごく静かだ。怒っているから静かなのかなってチラッて顔を見てみたけど、でも表情はいつものフレイだ。怒っている、みたいな感じじゃない。
でもそんなフレイに対していつも以上に喋ってるのはクルエルダのほうだった。魔術を使いつつ隙があればお姉さんに魔術が当たらないかなみたいな感じで放ちつつ、身体を動かしながらも器用に喋っている。
「まぁ、研究者からしたら魅力的に見えるかもしれませんね。貴女がそちら側についた理由はそこでしょうし」
「その通りだ。やっと理解してくれたかな、クルエルダ・ハーシー」
「しかし、研究と実験には失敗がつきものです」
ピタッて兵士たちの攻撃が止まった。今度は何、って辺りを見渡してみたら止まっているのは兵士だけじゃなくて兵士を操っているお姉さんもそうだった。
「話を聞く限りイグニート国王は、一度の失敗も許さない人間でしょう。そうすると我々からしたらとても研究しづらい環境だ」
「……それが、どうし」
「貴女は『赤』だ。今まで生きてきた中で『失敗』した経験が一度もない。その瞳を持っているから今まで何でも自分の思い通りにやることができた。しかし、それは貴女だからなんですよ。『赤』ではない我々は失敗を何度も繰り返して成功へと導いている。貴女の言うイグニート国王の理念は、そういった人間をすべて斬り捨てる。優れている者しか生きられない世界、ということでしょう」
生きづらいどころか、生きていけない世界じゃないですか嫌ですねぇ。ってクルエルダは笑いながらそう続けた。笑ってるけど、目が全然笑ってない。それにそんな世界、アミィだって嫌だって心の底から思った。
だってアミィもいっぱい失敗してきたもん。その度にカイムとかティエラたちとか色んな人たちが助けてくれた。人ってそうやって生きてるんじゃないかな。カイムたちに出会う前に、お父さんとお母さんと一緒に暮らしていた時もそうだった。苦手なことがあったらそれが得意な人が助けて、その人が苦手なものはできる人が助けて。そうやって人って生きてるんじゃないのかな。
それにクルエルダが言っていた通り、何度も何度も失敗しても、それでちょっとずつでも上手くなって最後はできるようになることだってある。
お姉さんが言ってることが、それがないってこと。できなかったら誰も助けてくれないし、できないって言った瞬間にもしかしたら殺されるのかもしれない。できる人しか生きられない世界って、本当に実現できるのかなって。
「貴女に凡人の考えなんて理解できませんよね。ただ面白いことに、『赤』だから理解できないというわけではないんですよこれが。私たちが会った『赤』の中で、それを理解できる人間がいるんですよねぇ」
「……!」
「アンタたちさっきから難しいことガチャガチャ言ってるけどさ」
今は兵士たちの動きが止まってるから、攻撃を防いでくれていたフレイの手も止まってる。立ち止まって、ちょっとだけ息を吐きだしてお姉さんのほうに顔を向けた。
「別に優秀な人間がどうこうしようとそいつの勝手さ。でもその勝手のせいで、つらい思いをする人間がいる。アンタらはそれがわからないだけなのさ。すごく単純なことなのに、それを知る機会がなかった。可哀想っていったら可哀想なもんだよ」
クルエルダにフラれた時みたいにお姉さんの顔から表情がなくなる。ただカイムと同じ『赤』のはずなのに、なんだか暗く感じる。その暗い目でフレイのほうを黙って見てるし、フレイも目を逸らさなかった。
「あたしたちの意見の食い違いは、人に愛してもらったか愛してもらえなかったか。それじゃないかな」
バチンッてどこからか音が聞こえた。急に大きな音が聞こえたもんだから目を丸くして音のほうを見てみたら、少し離れたところでカイムとあのヘンタイが変わらずに戦ってる。アミィたちがこうしてお話をしている間も二人はずっと戦ってる。
なんかヘンタイが一方的に喋ってカイムがものすっごく嫌そうな顔をしているのが見えた。
「アンタらが無駄だと思っているもんが、あたしたちにとっちゃ大切なもんなんだよ。元から物事の受け入れ方が違うんだ、そりゃ意見が合うこともないよ」
「……確かにそうだね。私も君たちの考えに一切同調できない。理解もできない。ただ力のないものの虚勢にしか聞こえない」
お姉さんが両腕を広げた瞬間、地面に倒れ込んでいた兵士たちが一斉に起き上がった。たくさんある剣がアミィたちに向けられる。
「ただ時間を無駄にしただけだった」
その言葉を合図に兵士たちが一気に襲いかかってきた。
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