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47.激動②
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ウィルたちが難しい顔をしながら色んな話しをしてるっていうのに、アミィがわかることはあんまりなくてすごく悔しい。アミイがもっと成長していたら、他の子たちと同じぐらいだったらまだ何かわかったのかもしれないのに。
アミィはただどうやったらカイムを助けることができるのか、それしか考えることができなかった。
「ねぇ……カイム、助けられないの……?」
「難しいですね。まず彼を助けるためにはイグニート国に入らなければなりません。それと同時に果たして貴女の単独行動を他の国が許すかどうかです」
「どういうこと……?」
「もしアミィが誘拐なんかされてアミィを材料に、そうだね、ミストラル国の王に揺さぶりをかけるとかしてくるかもしれないってことさ。イグニート国っていうのはそういうのを平然とやってのける国なんだよ」
「そこでもしアミィちゃんまでも『人間兵器』にされそうになっていたと知られてしまえば……事態が悪化する可能性もある、ということですよね……」
「そんな……」
「まぁまずイグニート国は血気盛んなので他所者が入り込んだ時点で一気に排除の方向に動くでしょうし」
色々と言われて頭が混乱するけど、アミィ一人じゃ無理だってことだけはわかった。多分みんなそれぞれ頭の中で色んなことを考えて、その中でどれが一番いい案なのかを探しているのかもしれない。ただ、自分にとっていい案でも相手にとってそうだとは限らない。だからみんな意見を出し合ってる。
「ああ見えて守りも堅いんですよねぇ、あの国は」
「……いや、最近そうとも限らないかもしれない」
「というと?」
お手上げだと軽く肩を上げたクルエルダにまだまだ難しい顔をしてるウィルがそう言い出した。なんだろう? って首を傾げて見上げてみるけど、ウィルの目はずっとテーブルの上にある地図に向けられている。
「最近イグニート国は何をきっかけかはわからないが攻め手を広げているようなんだ。前はアルディナ大陸とフェルド大陸の国境を重点的に攻め込んでいたというのに、最近ではウィンドシア大陸の国境にも手を伸ばしていると報告を受けた」
「ふむ。可視化できるあの剣も何かしらの関係があるんでしょうかね。今までああいったものを見たことがなかったのであれの完成と共に力関係にも変化が生じた、などあるかもしれませんね」
「そういやあの剣ってなんなのさ。普通の剣じゃないのかい?」
クルエルダはあの剣についてあとで言うって言ってた。多分ここは安全だし言うなら今なんじゃないのかなってフレイやティエラと同じようにクルエルダのほうを見た。
「私も予想でしかありませんが、あれは物理的に攻撃するようなものではありませんね。その証拠に彼の腹からは血が流れませんでしたし」
「それだったらなんなの? カイムすっごく苦しそうな顔してたよ」
「力が抜けたように見えたので、もしかしたらあの剣は向けた相手の魔力を奪う……といった類かもしれません」
そしたら血が流れなかったのも納得できるし、本来のカイムは『赤』だからその効果は他の人間よりも効いていたかもしれないってクルエルダはメガネをクイッて上げながら続けた。
つまりカイムは自分の中の魔力をあの剣に吸い取られたから、力を入れることができずにあんなに苦しそうな顔をしてたってこと? でもカイム、髪が黒の時は魔力がなくて、でもそれでも普通に動くことができてたのに。
カイムの身体の作りがアミィたちとちょっと違うのかどうかわかんない。ただ血が出なくてもカイムは苦しそうにしていた、それだけでもカイムを助けに行かなきゃって思うのにアミィにとっては十分。
「ねぇウィル、本当にカイムのこと助けらんないの……?」
「……イグニート国の攻撃がアルディナ大陸のほうに集中していれば、或いはウィンドシア大陸のほうから入り込めるかもしれない。ただまだ情報が不足している。もう少し状況がわかってからでないと……」
「リヴィエール大陸から行けるのが一番いいんだけどね。あそこは波が激しすぎて両大陸ともそこを渡るのは断念してるんだ」
「そしたら先にアルディナ大陸に攻め入り、そこからウィンドシア大陸、そしてリヴィエール大陸に攻め込む……という算段でしょうか」
「恐らく。だからこそバプティスタ国は常に防衛を強いられ続けていた」
「ともあれ、各国には知らせを送ったばかりですし、返答が来るまで我々も大きく動くことはできないでしょ。今のうちに頭を冷やすのもいいですし体力温存するのも手だと思いますがね」
「アミィちゃん……」
クルエルダに何も言い返せないのは、アミィが何も知らないから。結局アミィはずっとカイムに守ってもらっていただけでアミィ一人で何かできるわけじゃない。
すごく悔しい。やっと引っ込んだと思ってたのにまた目の前がじんわり滲んできた。ティエラが優しくアミィの肩に手を置いてくれたけど、こうしている間にカイムはひどい目に合っているかもしれない。つらい思いをしてるかもしれない。そう思ったら胸の中がズキズキして、モヤモヤした。
「フレイさん、部屋にお邪魔してもいいでしょうか?」
「ああいいよ。アミィも色々あって疲れただろう? 今のうちに休んでおきな」
「でも……」
「あとで心配かけさせたアイツを思いっきり殴ってやればいいさ! そのために今はしっかりと休むんだ。いいね?」
「……うん」
ティエラに手を引かれて部屋を出ていく。ドアが閉じる前に後ろを振り返ってみれば、みんなさっきよりもずっと難しくて怖い顔してる。クルエルダだけ普通だったけど。
「ティエラ……本当は、カイムのこと助けに行ったらダメなの……?」
フレイの部屋に戻ってティエラからベッドに座るようにそっと勧められた。押された背中をそのままにベッドの端っこに座って、アミィの前に屈んだティエラじゃなくて床を見ながらそう言ってみた。
みんなの雰囲気見てたらなんだかそんな感じだった。みんな助けに行くのは難しいって。カイムが『人間兵器』だから、きっとアミィ以外の人は助けに行こうとすら思わないんじゃないかって。
「……アミィちゃんは、どう思いますか?」
「アミィはカイムのこと助けたいよ! だってアミィのこと助けてくれたのカイムだもん! カイムが痛い思いするのやだ……」
急に頭の中でお父さんとお母さんの姿が浮かんだ。すごく優しかった。いつもアミィに笑顔を向けてた。だから、お父さんとお母さんがあんな目に合ってすごく悲しくて苦しくて、潰されそうになったからアミィはあの時のことを忘れちゃったのかもしれない。
カイムはいつもムッとしててお父さんとお母さんみたいに笑顔でお喋りしてくれるわけじゃなかった。お父さんとお母さんと全然似てない。でも、カイムがお父さんとお母さんと同じ目に合っちゃうのかもしれない、そう思っただけで泣きそうになる。
カイムまでいなくなったら、アミィどうすればいいの?
あの時カイムはアミィに何も言ってくれなかった。お父さんとお母さんみたいに「大丈夫だよ」なんて言わなかった。
「う……うぅっ……」
「アミィちゃん……」
「アミィたち……普通に生きちゃダメなのっ……?」
「っ……!」
ぼろぼろ泣き出したアミィにティエラは抱きしめてくれた。一生懸命、でもアミィが痛くないようにって。
「そんなことありません! 平穏は、誰にでも平等に訪れるべきなんです……!」
「でもみんなアミィたちのこと殺そうとするじゃんッ!」
「ッ! そ、れは」
「うぅっ、うわあぁっ!」
ティエラはアミィのこと心配してくれてるってわかってる。わかるのにそれでもすごく痛くて悲しかった。だってアミィは何度も襲われてその度に何度もカイムが助けてくれた。でも今度はそのカイムが危ない目に合ってる。
平等ってなに。平穏ってなに。そしたらみんなアミィたちのこと放ってくれたらいいのに。思いっきりティエラの身体を押しのけたらアミィを抱きしめていた腕が離れて、目の前に悲しそうなティエラの顔があって、もっと悲しくなって涙があふれてきた。
「……ごめんなさい」
ティエラが泣きそうな顔で、そう言った気がした。
「すまない、起こしてしまったか」
そんな声が聞こえてアミィはゆっくり目を開けた。いつの間にか寝ちゃったみたいで、そんなアミィの隣でティエラがずっと頭を撫でてくれていたみたい。アミィ、あんなひどいこと言っちゃったのに。
「ウィル……?」
「アミィ、君にもちゃんと言っておこうと思って。聞いてくれるか?」
心配そうに見てるティエラにちょっとだけ頷いて、身体を起こしたアミィは真正面からウィルの顔を見た。
「うん、聞くよ。言って」
「わかった……先程知らせが来たんだ。どうやらウィンドシア大陸のほうは今は手薄になっているようだ。イグニート国に行くならばそちらから向かうのが今のところ最善の方法だ」
「っ……! そうなの⁈」
「ああ。べーチェル国の王に話しを通せば何とかなるかもしれない。ただアミィ、忘れないでくれ。べーチェル国は『人間兵器』のアミィを殺そうとしていた国だ」
「っ、ウィルさん、それはっ……!」
ティエラが何かを言おうとしたら、ウィルが視線を向けて小さく首を振った。その反応にティエラは喋ろうとしていたのをやめて、アミィの肩を支えた。
「アミィ自身が、自分は無害だということをべーチェル国の王に話を通す必要がある。僕たちもできる限り力になるが、それを成し遂げるのはアミィ自身だ。できるか?」
ウィルはそのつもりはないかもしれないけど、なんだか聞き方がカイムに似てる気がする。ちょこっとだけ笑いそうになったけど、でもちゃんとウィルの言葉を受け止めて頭を縦に振った。
「うん。アミィやるよ。アミィは誰も傷付けないって、王様にちゃんと話す」
「そうか」
ぽん、って頭に手が置かれた。ティエラの手と違って大きくて、ちょっとゴツゴツしてる。カイムに似てる手だった。
「今から大変になるから、今のうちにゆっくり休んでおくんだ」
「うん……ありがとう、ウィル。ティエラも……フレイとクルエルダにも、そう言っててくれる?」
「ああ、ちゃんと伝えておこう」
ウィルは優しく笑うと部屋から出ていって、ティエラと二人っきりになった部屋で今もアミィの肩を支えてくれてるティエラの顔を見た。
「さっき、ひどいこと言ってごめんなさい」
「いいえ……アミィちゃんは何も悪くないんです」
もう一度優しく抱きしめてくれるティエラに、今度こそ押しのけることなくアミィもティエラを抱きしめた。
アミィはただどうやったらカイムを助けることができるのか、それしか考えることができなかった。
「ねぇ……カイム、助けられないの……?」
「難しいですね。まず彼を助けるためにはイグニート国に入らなければなりません。それと同時に果たして貴女の単独行動を他の国が許すかどうかです」
「どういうこと……?」
「もしアミィが誘拐なんかされてアミィを材料に、そうだね、ミストラル国の王に揺さぶりをかけるとかしてくるかもしれないってことさ。イグニート国っていうのはそういうのを平然とやってのける国なんだよ」
「そこでもしアミィちゃんまでも『人間兵器』にされそうになっていたと知られてしまえば……事態が悪化する可能性もある、ということですよね……」
「そんな……」
「まぁまずイグニート国は血気盛んなので他所者が入り込んだ時点で一気に排除の方向に動くでしょうし」
色々と言われて頭が混乱するけど、アミィ一人じゃ無理だってことだけはわかった。多分みんなそれぞれ頭の中で色んなことを考えて、その中でどれが一番いい案なのかを探しているのかもしれない。ただ、自分にとっていい案でも相手にとってそうだとは限らない。だからみんな意見を出し合ってる。
「ああ見えて守りも堅いんですよねぇ、あの国は」
「……いや、最近そうとも限らないかもしれない」
「というと?」
お手上げだと軽く肩を上げたクルエルダにまだまだ難しい顔をしてるウィルがそう言い出した。なんだろう? って首を傾げて見上げてみるけど、ウィルの目はずっとテーブルの上にある地図に向けられている。
「最近イグニート国は何をきっかけかはわからないが攻め手を広げているようなんだ。前はアルディナ大陸とフェルド大陸の国境を重点的に攻め込んでいたというのに、最近ではウィンドシア大陸の国境にも手を伸ばしていると報告を受けた」
「ふむ。可視化できるあの剣も何かしらの関係があるんでしょうかね。今までああいったものを見たことがなかったのであれの完成と共に力関係にも変化が生じた、などあるかもしれませんね」
「そういやあの剣ってなんなのさ。普通の剣じゃないのかい?」
クルエルダはあの剣についてあとで言うって言ってた。多分ここは安全だし言うなら今なんじゃないのかなってフレイやティエラと同じようにクルエルダのほうを見た。
「私も予想でしかありませんが、あれは物理的に攻撃するようなものではありませんね。その証拠に彼の腹からは血が流れませんでしたし」
「それだったらなんなの? カイムすっごく苦しそうな顔してたよ」
「力が抜けたように見えたので、もしかしたらあの剣は向けた相手の魔力を奪う……といった類かもしれません」
そしたら血が流れなかったのも納得できるし、本来のカイムは『赤』だからその効果は他の人間よりも効いていたかもしれないってクルエルダはメガネをクイッて上げながら続けた。
つまりカイムは自分の中の魔力をあの剣に吸い取られたから、力を入れることができずにあんなに苦しそうな顔をしてたってこと? でもカイム、髪が黒の時は魔力がなくて、でもそれでも普通に動くことができてたのに。
カイムの身体の作りがアミィたちとちょっと違うのかどうかわかんない。ただ血が出なくてもカイムは苦しそうにしていた、それだけでもカイムを助けに行かなきゃって思うのにアミィにとっては十分。
「ねぇウィル、本当にカイムのこと助けらんないの……?」
「……イグニート国の攻撃がアルディナ大陸のほうに集中していれば、或いはウィンドシア大陸のほうから入り込めるかもしれない。ただまだ情報が不足している。もう少し状況がわかってからでないと……」
「リヴィエール大陸から行けるのが一番いいんだけどね。あそこは波が激しすぎて両大陸ともそこを渡るのは断念してるんだ」
「そしたら先にアルディナ大陸に攻め入り、そこからウィンドシア大陸、そしてリヴィエール大陸に攻め込む……という算段でしょうか」
「恐らく。だからこそバプティスタ国は常に防衛を強いられ続けていた」
「ともあれ、各国には知らせを送ったばかりですし、返答が来るまで我々も大きく動くことはできないでしょ。今のうちに頭を冷やすのもいいですし体力温存するのも手だと思いますがね」
「アミィちゃん……」
クルエルダに何も言い返せないのは、アミィが何も知らないから。結局アミィはずっとカイムに守ってもらっていただけでアミィ一人で何かできるわけじゃない。
すごく悔しい。やっと引っ込んだと思ってたのにまた目の前がじんわり滲んできた。ティエラが優しくアミィの肩に手を置いてくれたけど、こうしている間にカイムはひどい目に合っているかもしれない。つらい思いをしてるかもしれない。そう思ったら胸の中がズキズキして、モヤモヤした。
「フレイさん、部屋にお邪魔してもいいでしょうか?」
「ああいいよ。アミィも色々あって疲れただろう? 今のうちに休んでおきな」
「でも……」
「あとで心配かけさせたアイツを思いっきり殴ってやればいいさ! そのために今はしっかりと休むんだ。いいね?」
「……うん」
ティエラに手を引かれて部屋を出ていく。ドアが閉じる前に後ろを振り返ってみれば、みんなさっきよりもずっと難しくて怖い顔してる。クルエルダだけ普通だったけど。
「ティエラ……本当は、カイムのこと助けに行ったらダメなの……?」
フレイの部屋に戻ってティエラからベッドに座るようにそっと勧められた。押された背中をそのままにベッドの端っこに座って、アミィの前に屈んだティエラじゃなくて床を見ながらそう言ってみた。
みんなの雰囲気見てたらなんだかそんな感じだった。みんな助けに行くのは難しいって。カイムが『人間兵器』だから、きっとアミィ以外の人は助けに行こうとすら思わないんじゃないかって。
「……アミィちゃんは、どう思いますか?」
「アミィはカイムのこと助けたいよ! だってアミィのこと助けてくれたのカイムだもん! カイムが痛い思いするのやだ……」
急に頭の中でお父さんとお母さんの姿が浮かんだ。すごく優しかった。いつもアミィに笑顔を向けてた。だから、お父さんとお母さんがあんな目に合ってすごく悲しくて苦しくて、潰されそうになったからアミィはあの時のことを忘れちゃったのかもしれない。
カイムはいつもムッとしててお父さんとお母さんみたいに笑顔でお喋りしてくれるわけじゃなかった。お父さんとお母さんと全然似てない。でも、カイムがお父さんとお母さんと同じ目に合っちゃうのかもしれない、そう思っただけで泣きそうになる。
カイムまでいなくなったら、アミィどうすればいいの?
あの時カイムはアミィに何も言ってくれなかった。お父さんとお母さんみたいに「大丈夫だよ」なんて言わなかった。
「う……うぅっ……」
「アミィちゃん……」
「アミィたち……普通に生きちゃダメなのっ……?」
「っ……!」
ぼろぼろ泣き出したアミィにティエラは抱きしめてくれた。一生懸命、でもアミィが痛くないようにって。
「そんなことありません! 平穏は、誰にでも平等に訪れるべきなんです……!」
「でもみんなアミィたちのこと殺そうとするじゃんッ!」
「ッ! そ、れは」
「うぅっ、うわあぁっ!」
ティエラはアミィのこと心配してくれてるってわかってる。わかるのにそれでもすごく痛くて悲しかった。だってアミィは何度も襲われてその度に何度もカイムが助けてくれた。でも今度はそのカイムが危ない目に合ってる。
平等ってなに。平穏ってなに。そしたらみんなアミィたちのこと放ってくれたらいいのに。思いっきりティエラの身体を押しのけたらアミィを抱きしめていた腕が離れて、目の前に悲しそうなティエラの顔があって、もっと悲しくなって涙があふれてきた。
「……ごめんなさい」
ティエラが泣きそうな顔で、そう言った気がした。
「すまない、起こしてしまったか」
そんな声が聞こえてアミィはゆっくり目を開けた。いつの間にか寝ちゃったみたいで、そんなアミィの隣でティエラがずっと頭を撫でてくれていたみたい。アミィ、あんなひどいこと言っちゃったのに。
「ウィル……?」
「アミィ、君にもちゃんと言っておこうと思って。聞いてくれるか?」
心配そうに見てるティエラにちょっとだけ頷いて、身体を起こしたアミィは真正面からウィルの顔を見た。
「うん、聞くよ。言って」
「わかった……先程知らせが来たんだ。どうやらウィンドシア大陸のほうは今は手薄になっているようだ。イグニート国に行くならばそちらから向かうのが今のところ最善の方法だ」
「っ……! そうなの⁈」
「ああ。べーチェル国の王に話しを通せば何とかなるかもしれない。ただアミィ、忘れないでくれ。べーチェル国は『人間兵器』のアミィを殺そうとしていた国だ」
「っ、ウィルさん、それはっ……!」
ティエラが何かを言おうとしたら、ウィルが視線を向けて小さく首を振った。その反応にティエラは喋ろうとしていたのをやめて、アミィの肩を支えた。
「アミィ自身が、自分は無害だということをべーチェル国の王に話を通す必要がある。僕たちもできる限り力になるが、それを成し遂げるのはアミィ自身だ。できるか?」
ウィルはそのつもりはないかもしれないけど、なんだか聞き方がカイムに似てる気がする。ちょこっとだけ笑いそうになったけど、でもちゃんとウィルの言葉を受け止めて頭を縦に振った。
「うん。アミィやるよ。アミィは誰も傷付けないって、王様にちゃんと話す」
「そうか」
ぽん、って頭に手が置かれた。ティエラの手と違って大きくて、ちょっとゴツゴツしてる。カイムに似てる手だった。
「今から大変になるから、今のうちにゆっくり休んでおくんだ」
「うん……ありがとう、ウィル。ティエラも……フレイとクルエルダにも、そう言っててくれる?」
「ああ、ちゃんと伝えておこう」
ウィルは優しく笑うと部屋から出ていって、ティエラと二人っきりになった部屋で今もアミィの肩を支えてくれてるティエラの顔を見た。
「さっき、ひどいこと言ってごめんなさい」
「いいえ……アミィちゃんは何も悪くないんです」
もう一度優しく抱きしめてくれるティエラに、今度こそ押しのけることなくアミィもティエラを抱きしめた。
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