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44.遺跡の浄化―火の精霊―①
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『事情はわかった。私はまだ精霊の力には遠く及ばないと思うが、尽力しよう』
『ありがとうございます。私たちも力を貸しますから』
『そうそう! どーんと任せてよ!』
『このような者に力を借りねばならぬほど、我々の力も弱まってしまっているのだがな』
一応話はまとまったようだが、だがこのフラウから力を借りるとなるとこの土地の加護はどうなるという話になるんだが。精霊たち曰く入り口のあの炎をどうにかしてもらうだけで、あとはすぐにでも戻ってもらっても構わないということだった。そういうことでフラウも納得し頷いた。
『ああでも、一ついいだろうか。どれほどの力を使うかわからない。念の為に人間の力も借りたい』
『人の子の力、ですか?』
ウンディーネの視線が俺に向かうが、フラウの視線は別のほうに向いていた。
『あの子の力を借りていいだろうか。あの子の力は私に近い』
「ア、アミィ?」
まさか指名されるとは思っていなかったのか、目を丸くしながら辺りをキョロキョロと見渡している。だが思い返してみれば、アミィの魔術が暴走した時氷の刃があっちこっちに飛んでいっていた。それがクロウカシス出身だったからと言われたら納得する。
精霊たちに視線を向け、小さく頷けば向こうも頷き返してきた。魔術の威力を高めるためには同じ属性がいい。
『わかりました。では私たちはサポートします』
それぞれが納得いく形になり、俺たちは早々に洞窟から出て港へと向かった。
「クロウカシスから出れたのはいいですが、今度は暑そうですね……」
「お前気温変化に弱すぎだろ」
船に乗り込んだ俺たちは着込んでいた服を脱ぎ捨て、再び火の精霊の遺跡へと向かっていた。隣の大陸だっつーのに寒いやら暑いやら気温差が激しい。寒い寒いと震えていたクルエルダは今度は暑い暑いとバテ気味だ。まぁ俺たちと違ってあちこち行くこともなく研究に籠もっていればこうなるか。
何度見ても遠くから見てもわかるその禍々しさに思わず顔を顰めてしまうが、今度こそあの奥に入らねぇといけない。アミィに視線を向ければずっとアミィの傍にいるフラウがふよふよと近くを浮き、何やらアミィの様子を気遣わしい目で見ている。
『確かのあの子の力がフラウと近いですが……』
「いざという時俺も使えばいいだろ」
『……そうですね』
それがどれだけリスキーなのか、どうやらウンディーネもわかっているらしい。フェルド大陸の傍ではなるべく力は使いたくはないが、そうも言っていられない。今はまだ力を封じている状態だが精霊たちの様子を見る限り、サラマンダーの調子もよくなさそうだ。
「船、寄せるよ」
「ああ」
フレイの指示で船が遺跡の入り口へと寄せられる。ここまでは今までの遺跡と何も変わらない。問題はこれからだ。
船から降りればその熱気が直に襲いかかってくる。黒く禍々しい炎は何度見ても衰えようとはしないし寧ろ更に増したような気もする。アミィに視線を向けると緊張気味でありながらも頷いたアミィは、次にフラウに視線を向け互いに頭を小さく縦に振る。
『では、やろうか』
「う、うん……!」
全員が見守る中、フラウの力が巻き起こる。吹雪を身に纏いながら手を伸ばし、炎へと狙いをつける。ちらりと視線を走らせるとそれに気付いたアミィが両腕を伸ばし、同じようにフラウの精霊の力を借りながら魔術を発動させる。
『大丈夫だ、焦らなくていい。制御は私に任せろ』
「わかった……!」
『行くぞ』
「クルエルダ」
「わかっていますよ」
二人の様子を横目で見つつ、後ろにいるクルエルダに声をかける。いざという時に俺自身にかかっている魔術を半分クルエルダに解かせる算段だった。
「頑張れ、アミィ……!」
「アミィちゃん……!」
まだまだ精神年齢が成長していなかった頃のアミィを知っているウィルとティエラは固唾を呑みながら見守っている。
吹雪は覆い被さるように炎を包み込む。足りたい力はアミィとそして他の精霊たちが助力し、しばらく待っていると炎は徐々に形を小さくさせていっていた。が、吹雪を操っていたフラウに焦りの色が浮かび始める。上手くいっているように見えるが、あと一息というところで炎が消えない。
どうした、と口にする前に苦々しくフラウは口を開いた。
『あの穢れが、邪魔だっ……!』
あの禍々しかったものは、間違いなく穢れだったということ。一瞬視線をクルエルダに走らせればヤツは頷きすぐに解術を俺に放った。半分だけ解かれた状態で残り半分は自分で解術する。穢れの浄化が精霊や他のヤツらができればよかったんだが、どうやら精霊に関する穢れは俺が祓わなきゃならないようだ。
元の姿に戻った俺は黒い塊だけになろうとしているそれに術を放つ。すると途端に炎の力が弱まった。その隙きをフラウは見過ごすことはなく、一瞬にして炎は跡形もなく消え去った。
「よし、すぐに中に入るぞ」
「力を貸してくれてありがとう、フラウ」
『いいや、こちらこそ力を貸してくれてありがとう。では私はこれで』
『ええ。私たちも貴女に感謝します』
少しバタついてはいるが、フラウはそういうとすぐさま姿を消し俺たちも開けた入り口からすぐに遺跡の中に入った。一度術をかけ直してもよかったがどうせ中の穢れを浄化するために術を解く。それなら今の状態で入ったほうがいいだろうとそのままにしているが、それならそれで別の誰かに姿を見られるリスクもあったためすぐに行動に移したといったところだった。
「やはり火の精霊の遺跡のため、少し暑いな……」
「そうですね……クルエルダさん、大丈夫ですか?」
「……フラウにはもう少しいてもらってもよかったんじゃないんですか?」
「暑いなら脱げばいいじゃないか」
後ろ四人の声を聞きつつ、構うことなく足を進める。とにかくスピード勝負。入り口にあったの禍々しい炎が自然にできたわけじゃない。きっと誰かが中に入らせないように仕掛けた罠に違いない。
それを解いた今仕掛けたヤツらには伝わってしまっただろう。今のところ中は穢れが充満しているようじゃないが急いだほうがいい。もし様子を見に来る人間がいるとしたらそいつはきっとイグニート国の人間だ。
暑いせいで足の進みが悪くなりそうなクルエルダに弱めの氷の魔術をかけてやる。ひんやりとして少しはマシになるだろう。周辺の空気が若干涼しくなったことに気付いたクルエルダはパッと顔を上げ、めずらしく素直に礼を言ってきた。が、それに若干引いたのはアミィだ。今までが今までだったせいでクルエルダに対しての不信感はそれなりのものらしい。
遺跡の中は確かに暑いことには暑いが、他の遺跡に比べて馬鹿みたいに広くもなければ複雑に入り組んでいるわけでもない。この暑さだけが他所者を立ち入らせない防壁の役割を果たしているようだ。
もしくは、遺跡に何も細工ができないほど火の精霊の力が弱まっているか。
今まではアミィの目を頼りに進んできたが、元の姿に戻っているため精霊の力の流れがよく見える。足取りも迷うことなくどんどん奥に進んでいっているが、後ろからは道は大丈夫なのかの心配の声が聞こえてきた。それもまぁ、無視するとして。
そろそろ最奥だろう、と目星をつけたのはより一層光が強くなったからだ。なるほど、確かにアミィの言うとおり精霊特有の光が見える。
「そろそろだな」
「えっ、もうかい?」
「どこにも迷うことなく進んだな……」
関心しているフレイとウィルだけでなく他二人も素直に後ろをついてくる。この扉の先が最奥だ、そう思い扉に手をかける。中々の重みがあるためゆっくりになるがそれでも確かに扉は開かれた。
「っ……!」
息を呑んだのは一体誰か。最奥だと思っていた場所には今まで通り祭壇のようなものがあると思っていた。いや、祭壇はあることにはある。
ただ、俺たちの目の前に飛び込んできた景色は予想だにしていないものだった。
『ありがとうございます。私たちも力を貸しますから』
『そうそう! どーんと任せてよ!』
『このような者に力を借りねばならぬほど、我々の力も弱まってしまっているのだがな』
一応話はまとまったようだが、だがこのフラウから力を借りるとなるとこの土地の加護はどうなるという話になるんだが。精霊たち曰く入り口のあの炎をどうにかしてもらうだけで、あとはすぐにでも戻ってもらっても構わないということだった。そういうことでフラウも納得し頷いた。
『ああでも、一ついいだろうか。どれほどの力を使うかわからない。念の為に人間の力も借りたい』
『人の子の力、ですか?』
ウンディーネの視線が俺に向かうが、フラウの視線は別のほうに向いていた。
『あの子の力を借りていいだろうか。あの子の力は私に近い』
「ア、アミィ?」
まさか指名されるとは思っていなかったのか、目を丸くしながら辺りをキョロキョロと見渡している。だが思い返してみれば、アミィの魔術が暴走した時氷の刃があっちこっちに飛んでいっていた。それがクロウカシス出身だったからと言われたら納得する。
精霊たちに視線を向け、小さく頷けば向こうも頷き返してきた。魔術の威力を高めるためには同じ属性がいい。
『わかりました。では私たちはサポートします』
それぞれが納得いく形になり、俺たちは早々に洞窟から出て港へと向かった。
「クロウカシスから出れたのはいいですが、今度は暑そうですね……」
「お前気温変化に弱すぎだろ」
船に乗り込んだ俺たちは着込んでいた服を脱ぎ捨て、再び火の精霊の遺跡へと向かっていた。隣の大陸だっつーのに寒いやら暑いやら気温差が激しい。寒い寒いと震えていたクルエルダは今度は暑い暑いとバテ気味だ。まぁ俺たちと違ってあちこち行くこともなく研究に籠もっていればこうなるか。
何度見ても遠くから見てもわかるその禍々しさに思わず顔を顰めてしまうが、今度こそあの奥に入らねぇといけない。アミィに視線を向ければずっとアミィの傍にいるフラウがふよふよと近くを浮き、何やらアミィの様子を気遣わしい目で見ている。
『確かのあの子の力がフラウと近いですが……』
「いざという時俺も使えばいいだろ」
『……そうですね』
それがどれだけリスキーなのか、どうやらウンディーネもわかっているらしい。フェルド大陸の傍ではなるべく力は使いたくはないが、そうも言っていられない。今はまだ力を封じている状態だが精霊たちの様子を見る限り、サラマンダーの調子もよくなさそうだ。
「船、寄せるよ」
「ああ」
フレイの指示で船が遺跡の入り口へと寄せられる。ここまでは今までの遺跡と何も変わらない。問題はこれからだ。
船から降りればその熱気が直に襲いかかってくる。黒く禍々しい炎は何度見ても衰えようとはしないし寧ろ更に増したような気もする。アミィに視線を向けると緊張気味でありながらも頷いたアミィは、次にフラウに視線を向け互いに頭を小さく縦に振る。
『では、やろうか』
「う、うん……!」
全員が見守る中、フラウの力が巻き起こる。吹雪を身に纏いながら手を伸ばし、炎へと狙いをつける。ちらりと視線を走らせるとそれに気付いたアミィが両腕を伸ばし、同じようにフラウの精霊の力を借りながら魔術を発動させる。
『大丈夫だ、焦らなくていい。制御は私に任せろ』
「わかった……!」
『行くぞ』
「クルエルダ」
「わかっていますよ」
二人の様子を横目で見つつ、後ろにいるクルエルダに声をかける。いざという時に俺自身にかかっている魔術を半分クルエルダに解かせる算段だった。
「頑張れ、アミィ……!」
「アミィちゃん……!」
まだまだ精神年齢が成長していなかった頃のアミィを知っているウィルとティエラは固唾を呑みながら見守っている。
吹雪は覆い被さるように炎を包み込む。足りたい力はアミィとそして他の精霊たちが助力し、しばらく待っていると炎は徐々に形を小さくさせていっていた。が、吹雪を操っていたフラウに焦りの色が浮かび始める。上手くいっているように見えるが、あと一息というところで炎が消えない。
どうした、と口にする前に苦々しくフラウは口を開いた。
『あの穢れが、邪魔だっ……!』
あの禍々しかったものは、間違いなく穢れだったということ。一瞬視線をクルエルダに走らせればヤツは頷きすぐに解術を俺に放った。半分だけ解かれた状態で残り半分は自分で解術する。穢れの浄化が精霊や他のヤツらができればよかったんだが、どうやら精霊に関する穢れは俺が祓わなきゃならないようだ。
元の姿に戻った俺は黒い塊だけになろうとしているそれに術を放つ。すると途端に炎の力が弱まった。その隙きをフラウは見過ごすことはなく、一瞬にして炎は跡形もなく消え去った。
「よし、すぐに中に入るぞ」
「力を貸してくれてありがとう、フラウ」
『いいや、こちらこそ力を貸してくれてありがとう。では私はこれで』
『ええ。私たちも貴女に感謝します』
少しバタついてはいるが、フラウはそういうとすぐさま姿を消し俺たちも開けた入り口からすぐに遺跡の中に入った。一度術をかけ直してもよかったがどうせ中の穢れを浄化するために術を解く。それなら今の状態で入ったほうがいいだろうとそのままにしているが、それならそれで別の誰かに姿を見られるリスクもあったためすぐに行動に移したといったところだった。
「やはり火の精霊の遺跡のため、少し暑いな……」
「そうですね……クルエルダさん、大丈夫ですか?」
「……フラウにはもう少しいてもらってもよかったんじゃないんですか?」
「暑いなら脱げばいいじゃないか」
後ろ四人の声を聞きつつ、構うことなく足を進める。とにかくスピード勝負。入り口にあったの禍々しい炎が自然にできたわけじゃない。きっと誰かが中に入らせないように仕掛けた罠に違いない。
それを解いた今仕掛けたヤツらには伝わってしまっただろう。今のところ中は穢れが充満しているようじゃないが急いだほうがいい。もし様子を見に来る人間がいるとしたらそいつはきっとイグニート国の人間だ。
暑いせいで足の進みが悪くなりそうなクルエルダに弱めの氷の魔術をかけてやる。ひんやりとして少しはマシになるだろう。周辺の空気が若干涼しくなったことに気付いたクルエルダはパッと顔を上げ、めずらしく素直に礼を言ってきた。が、それに若干引いたのはアミィだ。今までが今までだったせいでクルエルダに対しての不信感はそれなりのものらしい。
遺跡の中は確かに暑いことには暑いが、他の遺跡に比べて馬鹿みたいに広くもなければ複雑に入り組んでいるわけでもない。この暑さだけが他所者を立ち入らせない防壁の役割を果たしているようだ。
もしくは、遺跡に何も細工ができないほど火の精霊の力が弱まっているか。
今まではアミィの目を頼りに進んできたが、元の姿に戻っているため精霊の力の流れがよく見える。足取りも迷うことなくどんどん奥に進んでいっているが、後ろからは道は大丈夫なのかの心配の声が聞こえてきた。それもまぁ、無視するとして。
そろそろ最奥だろう、と目星をつけたのはより一層光が強くなったからだ。なるほど、確かにアミィの言うとおり精霊特有の光が見える。
「そろそろだな」
「えっ、もうかい?」
「どこにも迷うことなく進んだな……」
関心しているフレイとウィルだけでなく他二人も素直に後ろをついてくる。この扉の先が最奥だ、そう思い扉に手をかける。中々の重みがあるためゆっくりになるがそれでも確かに扉は開かれた。
「っ……!」
息を呑んだのは一体誰か。最奥だと思っていた場所には今まで通り祭壇のようなものがあると思っていた。いや、祭壇はあることにはある。
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