8 / 159
8.ラピス教会②
しおりを挟む
「それではアミィちゃん、この世界のことから知っていきましょう」
「はーい!」
「……これって俺いるか?」
「保護者同伴のほうが彼女も落ち着くだろう?」
「誰が保護者だ」
世界の中でも一番でかいとされているこのラピス教会の一室で、アミィのための勉強会が始まった。正直俺は教えるのが苦手だし、そういうのはティエラに任せちまおうと思っていたところなぜか金髪騎士もとい、ウィルに捕まって渋々同伴している。
「まず、この世界は四つの精霊と、そしてその精霊たちをまとめる女神によって成り立っています」
「そうなの?」
「はい。わたしたちが魔術を使えるのもその精霊たちのおかげです」
四つの精霊はそれぞれの大陸を加護している。北の地、フェルド大陸は火の精霊であるサラマンダー。南の地のアルディナ大陸は土の精霊のノーム、東の地のリヴィエール大陸には水の精霊のウンディーネ、そして西の地のウィンドシア大陸には風の精霊のシルフ。そしてそれらをまとめているのが世界の中心部にいると言われている、女神エーテル。これは子どもの頃から基礎知識として教えられるものだ。
ところがアミィの様子からしてそれすらも知らなかったようで。ティエラの目が若干丸くなったものの、それもすぐに朗らかなものに変わる。
「わたしたちはその精霊たちの恩恵を受けて生活しています。今こうして自然があるのも、大陸があるのも、精霊たちが支えてくれているからです。ここで先程少し話した『魔術』の話をしますね。アミィちゃんはなぜ人が『魔術』を使えるのか、その仕組を知っていますか?」
「ううん。けんきゅーしゃの人がてきとうに力をこめて、そして出せばいいって、そう言ってたけど」
「……そうなんですね」
ティエラと共に話を聞いていたウィルの表情も少し歪む。目が合い、俺も軽く肩を上げるしかなかった。
「わたしたちは精霊たちから力を借りて魔術を使えるようになります。ですが、借りられる魔力の量は人によって違うんです。そしてそれは目の色に表れています」
「め?」
「はい、例えばわたしの黄緑やウィルさんの黄色、そして青色はとても一般的です。傷を治したり火を出したりと普通の魔術は使えますがとても威力があるものは使えません」
「カイムの目……茶色だね」
「黒や茶という人は、ほとんど魔術が使えないんです」
「そうなの? カイム」
「ああ。だからその代わりにガジェットを使ってんだよ」
魔術が使えれば空を飛べるかもしれないし、まぁ空を飛んでいるヤツを実際見たことがないから「かもしれない」程度だけど。ただ逃げている最中に魔術で色々と妨害をすることはできただろう。橋でもわざわざガジェットを取り出すこともなかった。
「別に魔術が使えないから悪い、なんてことは決してありません。人には得意不得意があって、それが魔術が使えるかどうかという話だけなんです。それに魔術を使えない方々はその分とてもガジェットの使い方が上手なんですよ?」
「そうなんだ!」
「はい! 特にウィンドシア大陸のべ―チェル国にはその職人さんが集まっているんです。行ける機会があったらぜひ行ってみてください」
「うん!」
「それでは話を続けますね。わたしたちの目は一般的ですが、ランク付けで言うとその上にいるのがアミィちゃんのように紫色の目を持った人なんです」
「アミィの目って紫色なんだ?」
「はい、そうですよ? 紫色の目の人は自身に蓄える魔力量も多くてとても強い魔術が使えます。魔術のセンスを持っている人が多いんです。なので色んな功績を上げて表彰される方の目の色が紫色という話はよく聞きます」
「へぇ~」
「それと実は世界に数人しかいないと言われる、紫よりも更に上にいる目の色が――赤色なんです。本当にごく僅かしかいません」
そうしてティエラによる勉強会は進み、色んなことを知るのが楽しかったのか常に目をキラキラさせていたアミィは疲れたのかすっかり寝入ってしまった。
「すみません、無理させてしまいましたね」
「別にアンタのせいじゃねぇだろ。はしゃぎ疲れただけだ」
脱力してスースー寝息を立てているアミィを抱え、割り当てられている部屋に運んでベッドに寝かせる。あの生臭神父……もとい、ここの責任者の言っていた通り今のところあの騎士たちがここにやってくる気配はない。
とはいえそれも時間の問題だろう。魔術の制御する方法を教えてもらったらすぐにここを発ったほうがよさそうだと息を吐き出し、部屋を出てさっきの場所に戻る。
「アミィちゃん……本当に何も知らないんですね」
「一体どんな研究をされていたんだろうか……」
「……アミィちゃん、実は十四歳らしいです」
「……はぁっ?」
二人が神妙な顔をして喋りだしたかと思えば、とんでもない発言に思わず声をひっくり返してしまった。十三って、もうちょっと成長しているだろうしそれにあの知識のなさもあり得ない。
っていうか、もっと下かと思って勝手に着替えの手伝いをしてしまったんだけど。それはまぁ、事態が事態だったしここで言うことでもないかと口を噤む。
けど驚いたのはどうやら俺だけじゃなかったらしい。ウィルが唖然とし開いた口が塞がらないでいた。
「僕は十にも満たないと思っていた……しかし、それにしても……」
「実験のせいで成長過程に弊害が生じたんだろうね」
奥から神父が神妙な顔をして歩いてきた。ちなみに生臭神父の目の色は、さっきティエラが言っていたように世界に数人しかいないと言われている赤色だ。ティエラ曰く誰かを攻撃するために魔術を使っているところを見たことはないが、この教会の結界は神父が張っているらしい。あと何かあった際には物理的に解決しているんだと。
「それに……悪いけどあの子の首をチラッと見せてもらったよ。まさか媒体が直接身体に着いているとはね」
「もしかしてそれも成長に関係しているのでしょうか……?」
「恐らくそうだろうね。研究者たちはあの子の身体がどうなろうと知ったことじゃなかったんだろう。本当に『兵器』を作っていただけ」
「ッ……あんな、幼気な子になんてことを……!」
「ウィルの怒りももっともだ――カイム、君が偶然見つけてよかったよ。精神的にも弊害が生じている中で『逃げる』という選択を取ったということは、それほどまでに追い詰められていたんだろうから」
重い空気が辺りに漂う。自分たちが想定していた以上にアミィの身に起こっていたことはとてつもないものだった。今日一日中ずっとアミィに色々と教えていたティエラは色んな感情がわき起こったのか、目を赤くしながら鼻を啜っていた。
「わたし、明日ちゃんとアミィちゃんに魔術の制御の仕方を教えます。それだけじゃなく、もっと、色んなことを教えてあげたいです」
「うん、ティエラは教えるのが上手いからね、そうしてあげなさい」
「はいっ……!」
「カイムはちゃんとあの子をミストラル国に送り届けること。あそこの王ならしっかりと保護してくれるはずだ」
「そうだな」
「それと……ウィル。何を思いどう感じたのか、それをちゃんと思い返して今後のことを考えるといい」
「……はい」
ちゃんと神父らしいことできるんだな、と思った言葉はどうやら口に出していたらしい。神父が目を丸めキョトンとしたあと、小さく笑って笑顔を浮かべた。
「私は君たちよりもずーっと長生きだからね、それなりの助言はするさ」
「はーい!」
「……これって俺いるか?」
「保護者同伴のほうが彼女も落ち着くだろう?」
「誰が保護者だ」
世界の中でも一番でかいとされているこのラピス教会の一室で、アミィのための勉強会が始まった。正直俺は教えるのが苦手だし、そういうのはティエラに任せちまおうと思っていたところなぜか金髪騎士もとい、ウィルに捕まって渋々同伴している。
「まず、この世界は四つの精霊と、そしてその精霊たちをまとめる女神によって成り立っています」
「そうなの?」
「はい。わたしたちが魔術を使えるのもその精霊たちのおかげです」
四つの精霊はそれぞれの大陸を加護している。北の地、フェルド大陸は火の精霊であるサラマンダー。南の地のアルディナ大陸は土の精霊のノーム、東の地のリヴィエール大陸には水の精霊のウンディーネ、そして西の地のウィンドシア大陸には風の精霊のシルフ。そしてそれらをまとめているのが世界の中心部にいると言われている、女神エーテル。これは子どもの頃から基礎知識として教えられるものだ。
ところがアミィの様子からしてそれすらも知らなかったようで。ティエラの目が若干丸くなったものの、それもすぐに朗らかなものに変わる。
「わたしたちはその精霊たちの恩恵を受けて生活しています。今こうして自然があるのも、大陸があるのも、精霊たちが支えてくれているからです。ここで先程少し話した『魔術』の話をしますね。アミィちゃんはなぜ人が『魔術』を使えるのか、その仕組を知っていますか?」
「ううん。けんきゅーしゃの人がてきとうに力をこめて、そして出せばいいって、そう言ってたけど」
「……そうなんですね」
ティエラと共に話を聞いていたウィルの表情も少し歪む。目が合い、俺も軽く肩を上げるしかなかった。
「わたしたちは精霊たちから力を借りて魔術を使えるようになります。ですが、借りられる魔力の量は人によって違うんです。そしてそれは目の色に表れています」
「め?」
「はい、例えばわたしの黄緑やウィルさんの黄色、そして青色はとても一般的です。傷を治したり火を出したりと普通の魔術は使えますがとても威力があるものは使えません」
「カイムの目……茶色だね」
「黒や茶という人は、ほとんど魔術が使えないんです」
「そうなの? カイム」
「ああ。だからその代わりにガジェットを使ってんだよ」
魔術が使えれば空を飛べるかもしれないし、まぁ空を飛んでいるヤツを実際見たことがないから「かもしれない」程度だけど。ただ逃げている最中に魔術で色々と妨害をすることはできただろう。橋でもわざわざガジェットを取り出すこともなかった。
「別に魔術が使えないから悪い、なんてことは決してありません。人には得意不得意があって、それが魔術が使えるかどうかという話だけなんです。それに魔術を使えない方々はその分とてもガジェットの使い方が上手なんですよ?」
「そうなんだ!」
「はい! 特にウィンドシア大陸のべ―チェル国にはその職人さんが集まっているんです。行ける機会があったらぜひ行ってみてください」
「うん!」
「それでは話を続けますね。わたしたちの目は一般的ですが、ランク付けで言うとその上にいるのがアミィちゃんのように紫色の目を持った人なんです」
「アミィの目って紫色なんだ?」
「はい、そうですよ? 紫色の目の人は自身に蓄える魔力量も多くてとても強い魔術が使えます。魔術のセンスを持っている人が多いんです。なので色んな功績を上げて表彰される方の目の色が紫色という話はよく聞きます」
「へぇ~」
「それと実は世界に数人しかいないと言われる、紫よりも更に上にいる目の色が――赤色なんです。本当にごく僅かしかいません」
そうしてティエラによる勉強会は進み、色んなことを知るのが楽しかったのか常に目をキラキラさせていたアミィは疲れたのかすっかり寝入ってしまった。
「すみません、無理させてしまいましたね」
「別にアンタのせいじゃねぇだろ。はしゃぎ疲れただけだ」
脱力してスースー寝息を立てているアミィを抱え、割り当てられている部屋に運んでベッドに寝かせる。あの生臭神父……もとい、ここの責任者の言っていた通り今のところあの騎士たちがここにやってくる気配はない。
とはいえそれも時間の問題だろう。魔術の制御する方法を教えてもらったらすぐにここを発ったほうがよさそうだと息を吐き出し、部屋を出てさっきの場所に戻る。
「アミィちゃん……本当に何も知らないんですね」
「一体どんな研究をされていたんだろうか……」
「……アミィちゃん、実は十四歳らしいです」
「……はぁっ?」
二人が神妙な顔をして喋りだしたかと思えば、とんでもない発言に思わず声をひっくり返してしまった。十三って、もうちょっと成長しているだろうしそれにあの知識のなさもあり得ない。
っていうか、もっと下かと思って勝手に着替えの手伝いをしてしまったんだけど。それはまぁ、事態が事態だったしここで言うことでもないかと口を噤む。
けど驚いたのはどうやら俺だけじゃなかったらしい。ウィルが唖然とし開いた口が塞がらないでいた。
「僕は十にも満たないと思っていた……しかし、それにしても……」
「実験のせいで成長過程に弊害が生じたんだろうね」
奥から神父が神妙な顔をして歩いてきた。ちなみに生臭神父の目の色は、さっきティエラが言っていたように世界に数人しかいないと言われている赤色だ。ティエラ曰く誰かを攻撃するために魔術を使っているところを見たことはないが、この教会の結界は神父が張っているらしい。あと何かあった際には物理的に解決しているんだと。
「それに……悪いけどあの子の首をチラッと見せてもらったよ。まさか媒体が直接身体に着いているとはね」
「もしかしてそれも成長に関係しているのでしょうか……?」
「恐らくそうだろうね。研究者たちはあの子の身体がどうなろうと知ったことじゃなかったんだろう。本当に『兵器』を作っていただけ」
「ッ……あんな、幼気な子になんてことを……!」
「ウィルの怒りももっともだ――カイム、君が偶然見つけてよかったよ。精神的にも弊害が生じている中で『逃げる』という選択を取ったということは、それほどまでに追い詰められていたんだろうから」
重い空気が辺りに漂う。自分たちが想定していた以上にアミィの身に起こっていたことはとてつもないものだった。今日一日中ずっとアミィに色々と教えていたティエラは色んな感情がわき起こったのか、目を赤くしながら鼻を啜っていた。
「わたし、明日ちゃんとアミィちゃんに魔術の制御の仕方を教えます。それだけじゃなく、もっと、色んなことを教えてあげたいです」
「うん、ティエラは教えるのが上手いからね、そうしてあげなさい」
「はいっ……!」
「カイムはちゃんとあの子をミストラル国に送り届けること。あそこの王ならしっかりと保護してくれるはずだ」
「そうだな」
「それと……ウィル。何を思いどう感じたのか、それをちゃんと思い返して今後のことを考えるといい」
「……はい」
ちゃんと神父らしいことできるんだな、と思った言葉はどうやら口に出していたらしい。神父が目を丸めキョトンとしたあと、小さく笑って笑顔を浮かべた。
「私は君たちよりもずーっと長生きだからね、それなりの助言はするさ」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです
珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。
老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。
そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました
やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>
フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。
アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。
貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。
そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……
蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。
もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。
「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」
「…………はぁ?」
断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。
義妹はなぜ消えたのか……?
ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?
義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?
そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?
そんなお話となる予定です。
残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……
これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。
逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……
多分、期待に添えれる……かも?
※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる