騎士と狩人

みけねこ

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再会したものの

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 まさに「息を呑む」というものを体現したなと感心してしまった。目が合った瞬間相手は固まり、そして首から徐々に赤く染まっていく。さっきまで元気に「戻りました‼」って大声で野生の動物のように飛び出してきたっていうのに。
「いつもタイミング悪いな、お前は」
「すすすすみません本当にわざとじゃないんです‼ 本当に! ただすぐに会いたくてやってきただけなんです!」
 と顔が真っ赤なままちょっと涙目になりつつ、視線が俺から離れない状態で言われても説得力ねぇなという感想しか持たないわけで。
 三ヶ月で戻ってくると意気込んでいたセオは結局半年で戻ってきた。三ヶ月過ぎて四ヶ月、五ヶ月となると焦りが出始めていたのか手紙の回数も増えて文字列も長くなっていた。騎士としては新人なんだからこればかりはしょうがないだろとこっちは気長に待っていたんだが。
 そしてようやく戻ってきたセオはこれまた俺が湯浴みをしているところに飛び出してきたというところだった。確かにわざとじゃないんだろうけど、いつもいつもタイミングが悪い。
 最初の時はすぐに視線を逸らしていたのに俺に好きだと伝えて開き直ったのか、今は逸らすことなくずっと見てくる。顔の赤さと行動が合ってない。欲に忠実か。
 やれやれと息を吐き出し、湯船から身を乗り出す。ヒュッと思い切り息を吸い込んだ音が聞こえたがやっぱり視線は俺から外れていない。そして俺は、そのまま真っ直ぐセオのところまで足を進めた。
「あ、あの、リクトさんっ……せめて前だけは隠したほうがっ……!」
「今まで散々見ておきながら?」
「そっ、そうですけど! でででも、誰も通りかからないとは限らないですからっ」
 こんな村はずれ、一体誰が通りかかるっていうんだ。でも村の同年代は近寄らなくても年上の人たちや幼馴染がやってこないとも限らない。一応セオの言葉を聞き入れて腰にタオルだけは巻いておくことにした。まぁ、それでもほぼ全裸であることには変わりやしない。
 セオの目の前に立つと喉仏が上下に動いたのがわかった。髪から滴り落ちた水滴が顎を伝って鎖骨に落ち、そのまま胸に流れる。無意識かどうかは知らないがセオの視線がそれを追っていた。
「リクト、さん」
 無理矢理にでも逸らされた視線に思わず笑い、手を伸ばしてセオの首に腕を回す。グッと縮まった距離にセオは視線を戻し、もう一度生唾を飲み込んだ。
「どうした。お前のもんになる身体だぞ」
 まつ毛の長い目がみるみる間に大きくなる。あれだけ行き所がなく忙しなく動いていた手は俺の腰に回った。そういや身体拭いてなかった、と今になって思い出したがどうやらセオはそこまで頭が回っていないらしい。自分が濡れるのもお構いなしにほとんどなかった距離を更に縮めた。
「……本当に?」
「ああ」
「っ……ありがとう、ございます」
 俺の肩口に顔を埋めたセオの口から「大切にします」と振るえた声が聞こえ、思わず苦笑した。初心なところはあるが、あの言い回しで気付いたのは意外だった。恋愛事に関して鈍感というわけではなさそうだ。
「――で」
 嬉しそうにしているところ悪いが、セオがしがみついている状態で俺は素直に口に出した。
「お前はいつも勃たせてんのか」
 これだけ密着しているのだから嫌でもわかる。自分に当たっている固いものが。
「だっ、だって、好きな人の裸が目の前にあるから……しょうがないじゃ、ないですか……」
 最後はゴニョゴニョと口ごもってしまったのは負い目があったからか。前回も俺の裸見て勃たせていたから言い訳も何もないだろ。だから俺も、わざと、グッと腰を引き寄せてやると目の前から「ヒッ」と短い悲鳴が上がった。
「抜いてやろうか?」
 耳元でつぶやくと目の前の身体が小さく跳ねた。今更嫌悪感もない、というか最初からなかったから別に抜いてやるのも構いやしない。手の甲で布を持ち上げているそれに軽く触れると熱っぽい息が短く吐き出された。
「……お願い、します」
 喉の奥で小さく笑い、少しだけ身体を離してファスナーに手を伸ばす。とはいっても密着していることには変わりはなく、期待と興奮で自然と早くなっていく息遣いが聞こえてくる。まぁ、まだまだ若いし当然の反応だ。
 勢いよく出てきたそれは以前と同じようにそそり勃っている。少しだけ触っただけなのに呻き声が聞こえた。
「堪え性がないな」
「あっ……」
 俺としてはいつも通りに呟いた程度だったが、丁度俺の口がセオの耳の近くにあった。声に反応したのか身体が小さく跳ね、切なげな声がもれた。赤い顔が尚更赤くなったが気にせず手を上下に動かす。前と同じような手の動きだが漏れ出ている声は気持ちよさそうだ。
 しばらくすれば先走りが手を濡らし、グチグチと音を鳴らしながら更に強く扱いてみる。俺の肩に顎を乗せている顔から聞こえてくる呼吸音が激しくなってきた。なんなら小さく自分から腰を揺らしている。
 前に比べて遠慮がなくなったな、と思ったのはセオの手の動きだ。最初は俺の腰を掴んでいたが次第にそれが後ろに周り、ゆっくりと下に降りていく。俺の手の動きが早くなったのと同時に、タオルの上からケツを掴んできやがった。最初は手探りのようで、そして俺が何も言わないことをいいことにやわく揉み始める。
 男の固いケツなんざ揉んで何が楽しいんだ。と思ったもののやりたいようにやらせていたら、だ。不意に嫌な予感がしセオがすぐに達するようにグッと先端を攻めた。
「は、あっ!」
 どぷっと手のひらに生暖かいものが広がる。密着した状態だったから避けることもできないし、なら手のひらに出させるしかないと手で覆ってみたものの。ぐったりとしているセオをそのままに手のひらに視線を向けてみると、まぁ量が多い。
「禁欲だったのか?」
「い……いいえ……その、リクトさんのことを思いながら、何度か……でも、妄想と現実は全然違ってて……」
 セオのことを一応恋愛対象だということは自覚したものの、正直「ああ、そう」という感想しか持てなかった。俺で抜いてたのか、と直球をかまさなかっただけでもマシなほうだろ。しかも俺で抜いていたものの、直接本人に抜いてもらったら尚更気持ちよくて量も多くなった、とセオは遠回しながら言ってしまったわけだが。
 ただ達した直後だからそこまで頭が回らなかったんだろう。お前それ村にいる同年代の奴らだったらびっくりしてひっくり返ってるぞと密かに思いつつ、自然と身体を離した。取りあえず手に付いたこれを洗い流さないと。
「すみません、リクトさん……あの、手に……」
「随分と気持ちよさそうだったな」
「っ、きっ……もち、よかったです……ありがとうございます」
「素直でよろしい」
 尻窄みになった声を聞きつつ湯船のところまで歩き軽く手を洗い流す。サッと視線を走らせたがセオのブツは落ち着いたらしい。俺もこのままだと身体を冷やしてしまうとすぐに身体を拭き服を着る。目端でどことなく残念そうな顔をしたセオには気付かなかったことにする。
「半年お疲れさん」
「早く帰ってこれるように頑張ったんですけど、半年もかかってしまって……」
「新人ならそのぐらいが普通だろ」
「隊長からもそう言われました……寧ろちゃんと真面目にやったから半年で済んだんだって」
 ならよかったじゃねぇかと水滴の付いてない手で近寄ってきたセオの頭をくしゃりと撫でてやると、少し俯きつつはにかんでいるのが見えた。
「これからまた会いに来ますね、リクトさん」
「ああ。まぁ俺がいればいいな」
「うっ……で、でも近くにいるっていうのはわかっているので! それだけで全然違います!」
 そういや物理的距離がってまるで恨み言のように手紙でつらつら書いていたな、とふと思い出す。あれは四ヶ月経った頃だったか。まぁここは首都から離れた田舎だからこればかりはしょうがない。
 タオルなどを籠に入れていると横から視線を感じ、顔を上げ目を向けるとやっぱりセオが俺をジッと見ていた。こいつは相変わらず俺のことを見てきて、飽きないのかと何度でも思ってしまう。
「あの、リクトさん。確認なんですけど。本当に――」
 セオが言い切る前に少し顔を傾け身を屈める。ふに、と当たる程度だったが顔を離せば顔を赤くしつつもパッと表情が輝いているセオの顔が目の前にあった。
「まぁ、よろしくな」
「あっ……必ず幸せにしますッ‼」
「うっるせぇ!」
 顔面でいきなり大声出されちゃ流石に耳に来る。しかも森で鍛えている耳だから多分他の人間よりも聴力がいい。うるさすぎて思わず頭を叩けば全力で謝られたが、流石にもう二度とするなと忠告しといた。テンション上がりすぎて毎度叫ばれたらたまったもんじゃない。
 それからセオは顔を見に来ただけだといい、どうやらすぐに屯所に戻らなきゃならないらしい。去り際に何度も名残惜しげに振り返ってきたが、「またな」と一言告げるとまるで褒めてもらった犬のように尻尾をブンブン振って元気に戻っていった。いや多分あの尻尾幻影なんだろうけど。なんか見えた。
 それにしても、とセオを見送ったあとに思わず顔を歪める。あの時のセオの手の動きだ。咄嗟に「まずい」と感じた俺の勘は恐らく当たっているはず。
 あいつ、尻を揉んだかと思ったら尻の谷間に手を這わせてきやがった。そのまま下降しそうな気配を感じてすぐに達してやったものの。
「……まさかな」
 流石にこの勘は外れてほしいもんだ、と正直心底思ってしまった。
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