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抱いて ちゃんと 抱いて

抱いて ちゃんと 抱いて 7

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とてもとても奇麗な顔を、拗ねたように歪ませて、紅い口唇を割って出てくる声は艶(つや)っぽい。

夢の中にいるように、とても奇麗で。

緋音さんが怒りながら早口でまくし立てているのを、呆然(ぼうぜん)と聞いていた。

「LINEも寄越さないし、電話もしてくれないし、合鍵持ってるくせに来ないし。逢いたいなら逢いに来ればいいじゃねぇか!」
「緋音さん・・・嘘・・・何でここに・・・?」
「お前が・・・来ないから!全然音沙汰なくて、全然ウチにも来ないから!・・・だから、お前が何処にいるのか、聞き回ったんだよ!そしたら実家に帰ってるって聞いて・・・もっと言い訳しろよ!もっと否定しろよ!嘘でもいいからオレを納得させろよ!」

泣きそうな表情(かお)をして、緋音さんが叫んでいる。真っ白な息を吐きながら、オレに不満をぶつけている。
オレはゆっくりと緋音さんに歩み寄る。スコップはとっくに手放していた。

一歩ずつ近づくオレを、泣きそうな顔で睨みつけながら、緋音さんが叫び続ける。

「オレを・・・抱きたいんだったら、オレだけだって言えよ!オレのことだけ好きだって、言ってっっ!!!」
「緋音さん」

緋音さんの瞳から涙が落ちた。太陽の光を反射して、キラキラ光りながら、真っ白な雪の上に落ちていく。

泣かないで。お願いだから、泣かないで。
笑って。お願いだから、笑って。
オレは、貴方に笑って欲しいんだ。

「オレしか見てないって言って・・・っっ!!オレのことしか考えてないって言って!!オレしか抱きたくないって言って!ねえ、言ってっっ言ってぇっっ!!」
「緋音さんっ!」

抱きしめる。緋音さんの細い躰を、やっと、抱きしめられた。
叫び続けたせいで、全身で荒い呼吸を繰り返す、細い躰。
もう二度と放したくない。
閉じ込めて、飼って、誰にも見せたくない。
ぎゅっと、抱きしめる。力の加減がわからなくなっている。
緋音さんが恐る恐るオレの背中に腕を回す。
抱きしめてくれた。オレの背中を、ぎゅっと抱きしめてくれた。

緋音さんはオレの首筋に顔を埋める。緋音さんの息遣いが耳元で繰り返されて、ぞくぞくしてしまった。

緋音さんが、オレの服を思いっきり握りしめたのを、背中越しに感じた。

「抱いて・・・・ちゃんと、抱いて」

耳元で囁かれる。
小さく、掠れた声。
微かに、震えた声。
誘惑する声。

緋音さんの紅い口唇に、口吻ける。



「・・・んんっっ・・・はく・・・え・・・っっっ!」

緋音は珀英の背中にすがりつく。珀英は覆いかぶさるように緋音を組み敷くと、口吻けをして舌を搦(から)めとる。

珀英は緋音を庭の端のほうに造ったログハウスへと連れ込んでいた。
田舎あるあるで、庭が広すぎるので母屋とは離れた所に、簡易宿泊もできる、BBQもできる、小屋というにはそこそこ立派な、ログハウスがあった。

若かりし珀英が勝手に造ったものなので、珀英くらいしか訪れない。
昨日軽く掃除をして、電気製品が動く事も確認していたので、ここなら大丈夫だろうと思い、緋音を誘い込んでいた。

石油ストーブをつけて、緋音が寒くないよう毛布をかけて、木の壁と繋がっている、硬い木のソファに緋音を押し倒して。
口吻けて、口の中全部全部舐めて、緋音が感じるところ全部をまさぐって、刺激する。

「はくえぃ・・・あああん・・・ううんんっっっ・・・珀英っ」

緋音が何度も何度も珀英の名前を呼ぶ。嬉しそうに愛おしそうに何度も何度も呼んでくれる。
耳元で繰り返される、優しい甘い囁きに、珀英は歯止めが効きそうもなくなっていた。
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