括り紮げる

璃鵺〜RIYA〜

文字の大きさ
上 下
4 / 36
括り紮げる

括り紮げる 4

しおりを挟む
「手伝う」
「あ・・・じゃあ洗剤すすぐのお願いします」
「うん・・・」

緋音さんはオレが洗剤で洗った食器を素直に受け取って、お湯ですすぐ。

無言で作業をしながら、オレの様子を伺(うかが)うように時々視線を送ってくる。

これは、なんか話しがあるんだな。

言い難(にく)い話しがある時、緋音さんは大体こういう態度を取る。
さすがに付き合いが長くなってきたから、オレでもわかるようになってきた。

ご飯を食べている時には言い出せなかったくらいだから、なかなかなことかもしれない・・・。

急(せ)かすようなことはせず、緋音さんが話せるタイミングを待つため、オレは敢(あ)えて何も言わずにひたすら作業を続ける。

緋音さんが意を決したように、紅い口唇をきゅっと噛み締めて、お茶碗(ちゃわん)を洗いながらポツリと言った。

「今度・・・またイギリス行くから」

オレは反射的に顔をあげて、少し声を上げてしまった。

「え?またですか?」
「前のプロジェクトが好評だったから・・・またアルバム作ることになって・・・それも好評だったらツアーやるって話しになってる」
「ああ、そういうことですか・・・」

前に作ったアルバムが好評だったことくらい、オレでも知ってる。
ってか緋音さんが参加してる曲は全部買ってるし、雑誌やネットも全部チェックしてるから、世間の反響くらい知ってる。

1年くらい前にお遊び的な感覚で始まった話しに火がついて、オレをほっぽって、イギリスまで行ってアルバムが作られて発売されている。
参加している人が世界的なミュージシャンばかりだったこともあり、全世界にCDが流通して、ネット配信もされている。
それが好評だったからまたアルバム作って、曲数ためて、ツアーする気なのか。

事務所やレコード会社の考えそうなことだ。

オレは最後の皿を洗い終わって緋音さんに渡すと、スポンジを洗いながら、

「今度はどのくらい・・・行くんですか?」

拗(す)ねた口調になっているのが自分でもわかる。眉根がものすごい寄って、心底嫌そうな顔をしているのもわかった。

仕事なんだからしょうがないってわかっていても、緋音さんと離れるのがとにかく嫌だった。
緋音さんがオレのテリトリーから外れたところに行くのが、とにかく許せなかった。

オレがそう思うことをわかっているから、緋音さんはなかなか言い出せなかったんだろう。

緋音さんには申し訳ないけど、嫌なものは嫌だ。

緋音さんは皿を洗い終わって、水道を止めると、水切りカゴに皿を入れながら呟(つぶや)いた。

「2ヶ月くらい・・・状況によっては伸びる」
「そんなに?!」
「前回は5曲だったけど、今度はフルで作るから、むしろ時間ないくらいだ」
「それは・・・わかります・・・」

緋音さんはタオルで手を拭(ふ)いて、ダイニングテーブルに戻ると、残っていた白ワインをグラスに注いだ。
そして自分の椅子に座り直すと、オレのグラスにもワインを注いで、こちらを振り返った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?

こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。 自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。 ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

男の子たちの変態的な日常

M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。 ※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

クソザコ乳首くんの出張アクメ

BL
おさわりOK♡の家事代行サービスで働くようになった、ベロキス大好きむっつりヤンキー系ツン男子のクソザコ乳首くんが、出張先のどすけべおぢさんの家で乳首穴開き体操着でセクハラ責めされ、とことんクソザコアクメさせられる話。他腋嗅ぎ、マイクロビキニなど。フィクションとしてライトにお楽しみください。 ネタの一部はお友達からご提供いただきました。ありがとうございました! pixiv/ムーンライトノベルズにも同作品を投稿しています。 なにかありましたら(web拍手)  http://bit.ly/38kXFb0 Twitter垢・拍手返信はこちらから https://twitter.com/show1write

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

処理中です...