27 / 111
せめて 抱きしめて〜承〜
せめて 抱きしめて〜承〜 5
しおりを挟む
どうして、どうしてこの人達はボクに優しくしてくれるんだろう?
どうして、こんなにも暖かいんだろう?
目に涙がにじんで来た。
視界がぼやける。
どんどん出て来る涙が、目から溢れて頬(ほほ)を伝っていく。
いきなり泣き出したボクに、燿子さんは驚いて、
「え?!痛かった?!そんな強く叩いてないけど・・・」
「ちが・・・違います・・・」
「ええ?・・・ちょ、泣かないでよ。私が虐(いじ)めたみたいじゃない」
「ちが・・・ふぇ・・・」
止めようと止めようと思っているのに、涙は止まらなかった。
燿子さんはおたおたとしていて、どうしたらいいのかわからない状態になっている。
そんな時に部員達と剛さんが現れた。
泣いているボクを見て剛さんが、
「千都星?!どうした?燿子に虐められたか?」
とボクの顔を覗き込む。心配そうな表情が嬉しかった。
「虐めてないわよ!今日は一緒にご飯行こうって誘っただけよ」
燿子さんが憤慨(ふんがい)して抗議する。
副部長をしている人が、
「あ~あ、可哀想に。燿子さん自分より美人だと、虐めるからな~」
「だから違うっての!千都星、いい加減泣くのやめてよね」
「千都星ちゃん可哀想・・・お局(つぼね)に虐められて」
「これってパワハラ?」
「おお、そうだパワハラだ」
部員達が完全に悪ノリして燿子さんにパワハラだと言っている。
冗談だとわかっているからこそのやり取り。
ボクは涙が止まらなくって、嗚咽(おえつ)も止まらなくって、目の前に立っている剛さんに、思わず抱きついてしまった。
広い胸に顔を埋めていると、温かくて心が落ち着いて来るのがわかった。
剛さんは急に抱きついてきたボクを、どう扱ったら良いのかわからないようで、ものすごく慌てている。
それでも、剛さんはボクの背中をさすってくれて、頭を撫ぜてくれた。
「大丈夫だから。もう大丈夫だから」
「うん・・うん・・」
ボクは頷(うなず)くことしかできなかった。
別に虐められたわけじゃないけど、逆にとても嬉しかったんだけど、何も言えなかった。
こうやってみんなといると、今まで自分がいかに一人ぼっちだったのかを、実感した。
ご飯食べに行ったり、冗談を言い合ったり、日常の何気ない場面が、ボクにはなかった。
いつも、いつも、一人だった。
それが淋しいなんて、気付かなかった。
でも、もう気付いてしまった。
気付いたら、失うのが恐くなった。
失って、また一人になるのが恐かった。
剛さんがいる嬉しさと、失うかもしれない恐怖が混ざって。
ボクは、剛さんの胸にしがみついていた。
暖かいここに、ずっといたかった。
どうして、こんなにも暖かいんだろう?
目に涙がにじんで来た。
視界がぼやける。
どんどん出て来る涙が、目から溢れて頬(ほほ)を伝っていく。
いきなり泣き出したボクに、燿子さんは驚いて、
「え?!痛かった?!そんな強く叩いてないけど・・・」
「ちが・・・違います・・・」
「ええ?・・・ちょ、泣かないでよ。私が虐(いじ)めたみたいじゃない」
「ちが・・・ふぇ・・・」
止めようと止めようと思っているのに、涙は止まらなかった。
燿子さんはおたおたとしていて、どうしたらいいのかわからない状態になっている。
そんな時に部員達と剛さんが現れた。
泣いているボクを見て剛さんが、
「千都星?!どうした?燿子に虐められたか?」
とボクの顔を覗き込む。心配そうな表情が嬉しかった。
「虐めてないわよ!今日は一緒にご飯行こうって誘っただけよ」
燿子さんが憤慨(ふんがい)して抗議する。
副部長をしている人が、
「あ~あ、可哀想に。燿子さん自分より美人だと、虐めるからな~」
「だから違うっての!千都星、いい加減泣くのやめてよね」
「千都星ちゃん可哀想・・・お局(つぼね)に虐められて」
「これってパワハラ?」
「おお、そうだパワハラだ」
部員達が完全に悪ノリして燿子さんにパワハラだと言っている。
冗談だとわかっているからこそのやり取り。
ボクは涙が止まらなくって、嗚咽(おえつ)も止まらなくって、目の前に立っている剛さんに、思わず抱きついてしまった。
広い胸に顔を埋めていると、温かくて心が落ち着いて来るのがわかった。
剛さんは急に抱きついてきたボクを、どう扱ったら良いのかわからないようで、ものすごく慌てている。
それでも、剛さんはボクの背中をさすってくれて、頭を撫ぜてくれた。
「大丈夫だから。もう大丈夫だから」
「うん・・うん・・」
ボクは頷(うなず)くことしかできなかった。
別に虐められたわけじゃないけど、逆にとても嬉しかったんだけど、何も言えなかった。
こうやってみんなといると、今まで自分がいかに一人ぼっちだったのかを、実感した。
ご飯食べに行ったり、冗談を言い合ったり、日常の何気ない場面が、ボクにはなかった。
いつも、いつも、一人だった。
それが淋しいなんて、気付かなかった。
でも、もう気付いてしまった。
気付いたら、失うのが恐くなった。
失って、また一人になるのが恐かった。
剛さんがいる嬉しさと、失うかもしれない恐怖が混ざって。
ボクは、剛さんの胸にしがみついていた。
暖かいここに、ずっといたかった。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
壁穴奴隷No.19 麻袋の男
猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。
麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は?
シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。
前編・後編+後日談の全3話
SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。
※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。
※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※サムネにAI生成画像を使用しています
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【R18】息子とすることになりました♡
みんくす
BL
【完結】イケメン息子×ガタイのいい父親が、オナニーをきっかけにセックスして恋人同士になる話。
近親相姦(息子×父)・ハート喘ぎ・濁点喘ぎあり。
章ごとに話を区切っている、短編シリーズとなっています。
最初から読んでいただけると、分かりやすいかと思います。
攻め:優人(ゆうと) 19歳
父親より小柄なものの、整った顔立ちをしているイケメンで周囲からの人気も高い。
だが父である和志に対して恋心と劣情を抱いているため、そんな周囲のことには興味がない。
受け:和志(かずし) 43歳
学生時代から筋トレが趣味で、ガタイがよく体毛も濃い。
元妻とは15年ほど前に離婚し、それ以来息子の優人と2人暮らし。
pixivにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる