波に声を乗せて

山田ジギタリス

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空で会えたら4

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プレゼントの定期入れは喜んでもらえた。
その場で古い定期入れから中身を出して入れ替えてくれた。
ぼくのプレゼントを胸ポケットに入れて、古いのは大事そうに鞄にしまった。

すぐにタカハシ先輩に見つかってからかわれていた。

◆◆◆

体育祭が近い。

6月の半ばに学年クラスが3つのチームに分かれていろんな球技を競うのだ。
1週間にわたって行われるので運動部の部員は張り切っている。

今日は無線部が体育の先生に頼まれて学校のトランシーバーの確認をしていた。
これは特定小電力と呼ばれるものなので500mくらいは届くのだけど去年本部から繋がらない場所があって困ったそうだ。
なので、ぼくはナイトウさんと組んでグラウンドで繋がるかつながらないか調べていた。

「あぶない!」
声がした方を見ると、大きな音がしてナイトウさんがほっぺたを押さえてうずくまっている。

サッカー部の部員が走ってきた。
「ごめんごめん、おんなのこにあてるなんてごめんね」

軽くあやまる。
ナイトウさんが立ち上がっていつもと違う形相でまくしたてた。
「何よへたくそ、人に当てるなんてへたくそもいいところよね。そんなだからいつも勝てないのよ」
さすがに言いすぎだと思って止めよとしたら部員も言い返す
「へっ、そっちのちびは女に守られてるんだ、なさけねーなー」
こっちに飛び火してきた。
「なによ、ヤマナシ君は先生から頼まれた学校のトランシーバーもってるの。壊れたら困るからかばうの当たり前でしょ」

そこに救急箱を持った女子が走って来た。
「シンタロウ、人にぶつけておいてその言い方ないよ。ごめんなさいうちのシンタロウが。赤くなってるけど大丈夫?くらくらしない? とりあえずこれで冷やしながら保健室いこ。シンタロウ、あんた二人に謝りなさい」
剣幕に押された男子部員が謝る
「すみませんでした」

ナイトウさんと女子が二人で保健室に向かったところに体育の先生が来た。
あとから心配そうに先輩方も来る。アイノ先生がナイトウさんに付き添って保健室に向かったようだ。
「大丈夫か」
「ぼくは大丈夫ですがナイトウさんが」
「ああ見ていた。ササキが一緒について行ってくれてるから大丈夫だろう。今日は保健室に先生がいるし」

そして促されたので調べた結果を報告する。
「それで、こことここが繋がりにくいですが本部をずらせば大丈夫そうです。あと電池が減るの早いから予備の電池を持ってもらった方がいいと思います」
「そうか、ありがとう。助かったよ。後はこちらでやっておく」
ぼくも保健室に向かおうとしたら、先生が行っているし、男が行くと恥ずかしがるからと止められた。

ぼくが部室に戻ってしばらくするとナイトウさんとアイノ先生が戻って来た。
大丈夫と言ってはいたがまだぶつかったところが赤い。アイノ先生が付き添って帰っていった。

体育祭は運動部の輝くイベント。
この間のサッカー部員がナイトウさんに何やら言っているのが見えた。
ナイトウさんはつれなくあしらっている。

それでも気になったようで彼の姿を目で追っている。
彼の活躍でチームが勝った。ナイトウさんの目線に気が付いた彼はガッツポーズをしている。
ナイトウさんはそっぽを向いたあとちらちらとそちらを見ていた。

ぼくの組は負けたとだけ。特にぼくは、、、言わないでおこう。
うん、無線部は体力だけあれば運動下手でもいいんだよ。

それからしばらく、ナイトウさんが一人でいるところにあのサッカー部員をよく見かけた。
そのあとは決まって女子が数人ナイトウさんに絡んでいる。
1学期が終わるころにはそれもなくなった。
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