ヤンデレでも好きだよ!

はな

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8(隼人視点)前編

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いつも僕に付き纏ってくる奴がいた。何回も告白をされて、しょうがなく付き合って同棲をした。

「隼人、大好き」

いつもそう言って僕に笑いかける。僕はなるべく早く別れたくていつも、冷たい言葉をかけるようにしていた。

それでも、諦めてはくれない。隼人と付き合っている間に何人もの女の子を好きになって、その度にストーカーしたりしてたのだが、隼人にはいつも怒られていた。

「いつか、僕一筋になるよ」

予言するかのように言い放っては、僕が新しく好きな人ができると、悲しそうな顔をした。

ある時、僕が好きだった女の子が突然、家に来て玲を追い出した。

「隼人くん、ずっと一緒にいようね?」
「麗華!」

その日、僕は麗華と夜を過ごした。


だが次の日、早速玲がやってきて俺をホテルで逃してきた。
頼んでもいないのに、こんなことするとかおかしいと思いながらも少しだけ玲が来てくれたことが嬉しかった。

「隼人…もう大丈夫だからね」
「別に頼んでない」

そう言うと困ったように眉を下げて笑った。

「荷物とってくるから待ってて」
「今から部屋に戻んの?」
「大丈夫。まだ帰って来ないんでしょう?」
「…」
「これ、何かあったら呼んでね」

そう言ってドアを開けた瞬間、麗華が発狂しながらナイフを玲に突き刺した。
血が溢れてくる。玲は何が起こったか分からないような顔をしてから倒れた。

「あ、あんたのせいよ!あんたが避けないから!隼人、行きましょう!」

手を引かれて、僕はドアから出た。玲は追いかけてくる様子もない。

「隼人、大丈夫?怖い思いさせちゃってごめんね…ちゃんと処理できたから大丈夫」
「し、処理?」
「…あいつは隼人に悪影響を及ぼすでしょ?それにあんな地味な奴なんか隼人もいらないでしょ?だから、処理してあげたの」

意味のわからないことをツラツラと並べる麗華に僕は困惑した。

そして、麗華と暮らすことになってから麗華は家事ができないことが分かった。

それまでは、玲が隅々まで綺麗にしてくれていた床がゴミ袋でいっぱいになった。
玲が毎日洗濯してくれた服は汚れて薄汚くなっている。
そして、なによりも料理が下手なのが致命的だった。

「料理つくんないの?」
「え?だって面倒臭いし、カップ麺美味しいし良くない?」
「そ、そっか…」

毎日の料理はカップ麺か出前でとったカロリーの高いジャンクフードだ。
散々酷評した、玲の料理が不思議と恋しくなった。

「あ、僕はもういらない」
「そう?分かった」

今まで魅力的に見えていたものがどんどん崩れていく。
嫌なところしか見えない。

ふと、玲を思い出してみる。あの後どうなったのだろうか?

(まさか、死んでないよね?)

不安と罪悪感でその日は寝れなかった。





数日がたって家に警察が入ってきた。麗華は逮捕されて玲は無事だということを聞かされた。

僕は急いで玲に会いに行った。しかし、その時には違う男と暮らしていた。
門前払いを喰らった俺はやるせない気持ちだった。

だけど、玲が新しい家に引っ越すと聞いて僕は玲に会いに行った。
案の定、玲は驚きながらもその瞳は喜んでいる。

僕があんなことをしたのにも構わず受け入れてくれる。
そんな玲に僕は愛おしくなった。

「玲が優しくて料理が上手で、家事ができて、こんな僕みたいな奴にも愛想を尽かさないでくれる…玲が好き」
「え…で、でもどうせ、また好きな人ができるよ」

寂しそうに目を伏せる玲が、ものすごく可愛いくて上を向かせて、キスをした。
きょとんとしてから、顔が赤くなる。

「そんなことないよ、愛してる」
「っ!……僕も、愛してる!」
「本当?嬉しいな」

玲は今までにないくらい、とびきりの笑顔で笑った。
玲に酷いことを言ったことをとても、後悔した。こんなに可愛くて、健気ならきっと、ずっと愛せるだろう。




「玲!ただいま!」
「今日もね、いっぱい頑張ってきた!」
「すごいね~!フフ、よしよし」
「玲~!」

玲はいつも、玄関まで迎えにきてくれる。ハグをしてから、ただいまのキスをする。

玲の料理はまた一段と美味しくなっており、僕は毎日が最高だった。
でも、やっぱり好きな人ができてしまった。




玲は帰るたびにキスをせがんできて鬱陶しくなった。料理も質素なものばかりで、飽き飽きする。

玲の寂しそうな顔を見ても何も思わない。
それでも玲は僕に愛を伝えてきた。

「隼人…好きだよ」
「…」
「前みたいに好きって言ってくれないの?」

ソファに座る僕に身を寄せて、そう聞いてくる玲にイラっとした。

「あの時は頭がおかしかったんだよ、玲を好きになるとか」
「そんな、でも」
「うるさいんだよ!好きじゃないから」
「…ごめんなさい」

玲はそっと、僕から離れた。何故だか行かないでほしくて手を伸ばしたが躊躇してやめた。




そうして、玲との記念日がやってきた。もちろん、僕は到底忘れていたが玲はやけに記念日にこだわる。

ニコニコ笑ってカレンダーを見てる。

「ねぇ、隼人!今日は早く帰ってきてね?」
「…頑張るよ」
「うん!待ってるね」

いつもよりも、元気に送ってくれた。玲は僕を抱きしめてからキスをした。
流石に鬱陶しくなった僕は玲を払いのけて家から出た。

大学でも、玲は僕についてきて好きな人がどうたらとかストーカーは駄目だとか言っている。

「今日さ、デートとかしない?記念日だし!」

玲は僕の手を握って恥ずかしそうに言った。

「は?なんで記念日にデートすんの?」

思っていた返事と違ったのか少しだけ悲しそうな顔をした。握られてる手の力が弱くなる。

「と、特別な日だし隼人といたいなぁって」

玲は悲しそうに笑って「嫌かな?」と小さい声で聞いてきた。
その姿にキュンとするわけでもなく、でも少しだけ試したくなった僕は玲に冷たい言葉を言い放った。

「…あのさ、別れようよ」

玲はキョトンとして、どんどん顔が青ざめていく。

「な、なんで…」
「鬱陶しいし、記念日とかもうざいんだよ」
「えっ!じ、じゃあ!デートも行かなくていいし、早く帰って来なくても…いいから」

語尾がどんどん小さくなっていく。玲は泣きそうな顔をして僕にお願いをした。

「別れたくない…」

抱きしめられて、少しだけ可愛く思うが僕はわざとらしく溜息を吐き玲を避けてうなずいた。

結局、僕は記念日に早く帰ることはなかった。





次の日、起きてから妙に玲が今までよりも鬱陶しくなった。声をかけられるのすら嫌になってくる。

そして、つい酷いことを沢山言ってしまった。
玲の目から涙がこぼれ落ちる。それすら、イラついてしまう。

「僕の方が泣きたいくらいだよ」
「ご、ごめん」
「……そうやって媚びるわけ?気持ち悪い」

そう言っているうちに玲はポロポロと涙をこぼしていく。
そして、取り返しのつかないことを僕は言ってしまったのだった。

 











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