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2章
23 転換点
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吐く息が白い。すっかり冬だ。
洗濯物を干して、キンと冷える外気を吸い込む。
「The air is crisp」
声に出して言ってみる。
昔英語学習番組で、カナダの登山家の方が言っていた台詞。『空気が冷たくパリッとしていて気持ちいい』というような意味だった。当時はクリスプって言葉は、クリスピーチキンやさくさくしたチョコに使うと思ってたよ。
「冬はつとめて」
枕草子の一節も唱えてみる。冬の早朝の冷たい空気の中の光景を称えている。
カナダでも日本でもヨーロッパでも、人はこの冷たくも透明感のある空気の美しさを感じてきたのだろうか。
いや、実は今は結構陽が昇って早朝でもないんだけど、十分その気分を堪能できる寒さだ。暖を求めてショールの前を掻き合わせる。
この時代、家の中と外の気温はあまり変わらない。石造りで密閉性や断熱性がいいのが救いだが、全室暖房などはできない。うちはそもそも、各寝室に暖炉はないし、毎日それだけの燃料を焚く財力もない。
ヴィクトリア朝には、裕福なお屋敷でも病気の人がいるとか特別な時以外では各寝室の暖炉に火を入れることはあまりなかった、と資料で読んだことがある。貧富というより、みんなそんなもんだと思えば諦めもつく。
朝、仕事部屋のインク壷のインクが凍ってるんだよ?! すみません、この時代の冬を舐めてました。
今まで洗濯室の湯沸かし釜の隣で洗濯していたため、蒸気と汗ですっかり熱く湿った体と服が、洗濯物を干しに外に出たら一気に冷やされた。
……自分がパリッとした氷像になる前に、家に駆け込んだ。
「ハナ。お茶にしませんか」
勝手口を入ると、キッチンで熱いお茶を用意してくれていたアレクが言い、真上に当たる2階のリビング兼ダイニングを差す。今日は休日なので2人共店を空けても大丈夫だ。
ダイニングに上がり、いつものテーブルでお茶を飲む。体を温めるジンジャーティーにしてくれたようだ。流石だアレク!冷えきった体に染み入るような温かさに、ほっと息を吐く。
「実はハナに話があります」
「え?何?」
「来週からハナに給料を出す体制にしようと思うんですが、どうでしょう」
「え?!」
……いつかそうなるのかな、とは思っていたけど、今日来たか。
「先月出した3冊目のガイドブックも好調で、ハナのお陰で店の収入も増えました。年末に一年分の掛け売りなども整理して、突発的なアクシデントもなく年を越せました。そろそろきちんとしようかと」
「うーん……でも、私の生活費が増えた分の差し引きだと赤字な訳だし」
「前はそう言われて引き下がりましたが、数日前無事に黒字に転じたんで、今だ!と」
拳を軽く振りそう言って、ニヤリとするアレク。
『今だ!』?! そんなに気に掛けてくれていたのか。うぬぅ。
「わかった。ありがとう。嬉しいです。でも生活費は入れるよ?食費や燃料費、部屋の賃料も」
「えーと、正直そう多くは出せないので、それじゃ殆どなくなります。部屋は元々空き部屋だから賃料はいりません」
「私が居なければ人に貸して家賃収入が入るんだから」
実際、肉体労働者あたりの収入だと、食費とアパート代で大半がなくなるのは普通だ。この時代の労働報酬は低い。異世界へ来て半年の新米の私への待遇にしては上等だと思う。
アレクも私も互いの言い分があり、中々話がまとらなかったが、何杯のお茶を干したか分からなくなった頃、大体固まった。
二人とも、普段帳簿を見て店の収入も生活費も認識を共有しているから、妙な遠慮は見抜かれてしまうので、結局筋の通った合理的なところに落ち着いたかもしれない。
報酬は、この仕事の相場より安め。まだ経験値半年だもんね。ちなみに、この国で一般的なように週給制。
食費は折半。アレクの方がずっと食べる量は多いけど、炊事の主な担い手で家事が全般にアレクの方が多いことの調節もある。
薪や石炭その他生活費は折半。
家賃はアパート一室の相場の安い側辺り。すきま風も殆どなく良い部屋なので、もっと高くていいと言ったが、空いたままでも多分貸出ししなかったし、共用部分の掃除を主に私が担っているからという調節。
差し引きで、私にほんのちょっとお小遣いが残る位。うん、こんなもんだろう。
但し、この先ガイドブック関係で店の収入は伸びる見込みだからそれに合わせて随時昇給するし、雑誌コラム等店以外の仕事を私個人で受けたら全額私の収入、ということになったので、この先余裕資金は増えていく見込み。
「アレク、私に甘くない?」
「ハナこそ。俺はハナが来る前に比べると、家賃収入ができた上家事が減ったんですよ。開店休業だった出版部門もまた動き出せたし、ボロ儲けです」
お互い、わざと拗ねた顔で睨み合う。そして同時に吹き出す。
「これからもよろしく、アレク」
「こちらこそお願いします、ハナ」
そしてアレクは俊巡した後、固く緊張したような声音で言う。
「当面これで行くとしても……ハナがうちを辞めて他で働きたくなったら、いつでも紹介状を書きますので言って下さい。でもハナが居なくなったら体制を立て直す必要があるので、辞める前、早めに教え下さい」
思わず瞠目する。
そうだ。私が突然店と家に居候することになって、アレクも他の従業員を採用したり、誰か一緒に住みたい人と住むことも出来なくなってしまったのだ。
「あー…えっと、アレクも、予算とか他の優秀な人入れたいとかで、私に辞めて欲しくなるかもしれないよね。他にアパート見つけて出ていって欲しいとかも。でも次の職や宿が決まるまでは置いてくれると」
「出て行って欲しい訳ないでしょう」
喰い気味でアレクが言う。目が真剣だ。
「出て行って欲しい訳ない。でも、俺はハナに自由になって貰いたい。
報酬や家賃や、仕事の内容や居心地とか……より自分の望むものがあったら、いつでも自分で選択して、仕事先やアパートを替えてください。それで恨む真似はしません。
ハナが元々持っていたその自由を、俺達が奪ってしまった。ここまで半年かかってしまったし、まだまだ最低限ですが、やっとその自由をハナに返すことができた」
苦しげに、絞り出すようにアレクが言う。
そうだ。差し引きで私の手元に残るお金が大差なかったとしても、アレクが報酬や家賃をきちんと整理してくれたのは、そして私自身そう望んだのは、『私がアレクの元から独立できる』重要な環境作りなのだ。
アレクは私に、出て行って欲しくないと言った。気遣いでなく本当にそう思ってくれているように思う。
そうでなくても、ガイドブックや何やらで店を掻き回すだけ掻き回して私が出ていったら痛手だろう。
それでも、アレクは私に『私の自由』を取り戻してくれた。
その無私の誠実さが、心に沁みた。あぁ、これがアレクだ。
ーー私が、好きになった。
「ありがとうアレク。私はここでの仕事もここでの暮らしも好きだから、ここに居たい」
アレクの眉がへにゃりと下がり、くしゃりと笑った。
「ありがとう。でも気持ちや状況は変わるものてす。今そうだったとしても、これから変えてもいいんだと覚えておいて下さい」
「ーー分かった」
それは真理だ。だからそれは首肯する。
「だからアレクも、出ていって欲しくなったら必ずちゃんと言ってね。それは約束して」
「ーーはい」
アレクは少し寂しげな笑みを浮かべて頷く。
きっと私も同じ表情をしているだろう。
学校や職場や旅。素晴らしい人と出会い、共に楽しい一時を過ごしても、別れもある。
いつかアレクとも、そんな別れが来るかもしれない。
そうだとしてもそれは、新しい旅立ちでもあるのだ。
その時きっと思うだろう。
大切な一時をありがとう、と。
洗濯物を干して、キンと冷える外気を吸い込む。
「The air is crisp」
声に出して言ってみる。
昔英語学習番組で、カナダの登山家の方が言っていた台詞。『空気が冷たくパリッとしていて気持ちいい』というような意味だった。当時はクリスプって言葉は、クリスピーチキンやさくさくしたチョコに使うと思ってたよ。
「冬はつとめて」
枕草子の一節も唱えてみる。冬の早朝の冷たい空気の中の光景を称えている。
カナダでも日本でもヨーロッパでも、人はこの冷たくも透明感のある空気の美しさを感じてきたのだろうか。
いや、実は今は結構陽が昇って早朝でもないんだけど、十分その気分を堪能できる寒さだ。暖を求めてショールの前を掻き合わせる。
この時代、家の中と外の気温はあまり変わらない。石造りで密閉性や断熱性がいいのが救いだが、全室暖房などはできない。うちはそもそも、各寝室に暖炉はないし、毎日それだけの燃料を焚く財力もない。
ヴィクトリア朝には、裕福なお屋敷でも病気の人がいるとか特別な時以外では各寝室の暖炉に火を入れることはあまりなかった、と資料で読んだことがある。貧富というより、みんなそんなもんだと思えば諦めもつく。
朝、仕事部屋のインク壷のインクが凍ってるんだよ?! すみません、この時代の冬を舐めてました。
今まで洗濯室の湯沸かし釜の隣で洗濯していたため、蒸気と汗ですっかり熱く湿った体と服が、洗濯物を干しに外に出たら一気に冷やされた。
……自分がパリッとした氷像になる前に、家に駆け込んだ。
「ハナ。お茶にしませんか」
勝手口を入ると、キッチンで熱いお茶を用意してくれていたアレクが言い、真上に当たる2階のリビング兼ダイニングを差す。今日は休日なので2人共店を空けても大丈夫だ。
ダイニングに上がり、いつものテーブルでお茶を飲む。体を温めるジンジャーティーにしてくれたようだ。流石だアレク!冷えきった体に染み入るような温かさに、ほっと息を吐く。
「実はハナに話があります」
「え?何?」
「来週からハナに給料を出す体制にしようと思うんですが、どうでしょう」
「え?!」
……いつかそうなるのかな、とは思っていたけど、今日来たか。
「先月出した3冊目のガイドブックも好調で、ハナのお陰で店の収入も増えました。年末に一年分の掛け売りなども整理して、突発的なアクシデントもなく年を越せました。そろそろきちんとしようかと」
「うーん……でも、私の生活費が増えた分の差し引きだと赤字な訳だし」
「前はそう言われて引き下がりましたが、数日前無事に黒字に転じたんで、今だ!と」
拳を軽く振りそう言って、ニヤリとするアレク。
『今だ!』?! そんなに気に掛けてくれていたのか。うぬぅ。
「わかった。ありがとう。嬉しいです。でも生活費は入れるよ?食費や燃料費、部屋の賃料も」
「えーと、正直そう多くは出せないので、それじゃ殆どなくなります。部屋は元々空き部屋だから賃料はいりません」
「私が居なければ人に貸して家賃収入が入るんだから」
実際、肉体労働者あたりの収入だと、食費とアパート代で大半がなくなるのは普通だ。この時代の労働報酬は低い。異世界へ来て半年の新米の私への待遇にしては上等だと思う。
アレクも私も互いの言い分があり、中々話がまとらなかったが、何杯のお茶を干したか分からなくなった頃、大体固まった。
二人とも、普段帳簿を見て店の収入も生活費も認識を共有しているから、妙な遠慮は見抜かれてしまうので、結局筋の通った合理的なところに落ち着いたかもしれない。
報酬は、この仕事の相場より安め。まだ経験値半年だもんね。ちなみに、この国で一般的なように週給制。
食費は折半。アレクの方がずっと食べる量は多いけど、炊事の主な担い手で家事が全般にアレクの方が多いことの調節もある。
薪や石炭その他生活費は折半。
家賃はアパート一室の相場の安い側辺り。すきま風も殆どなく良い部屋なので、もっと高くていいと言ったが、空いたままでも多分貸出ししなかったし、共用部分の掃除を主に私が担っているからという調節。
差し引きで、私にほんのちょっとお小遣いが残る位。うん、こんなもんだろう。
但し、この先ガイドブック関係で店の収入は伸びる見込みだからそれに合わせて随時昇給するし、雑誌コラム等店以外の仕事を私個人で受けたら全額私の収入、ということになったので、この先余裕資金は増えていく見込み。
「アレク、私に甘くない?」
「ハナこそ。俺はハナが来る前に比べると、家賃収入ができた上家事が減ったんですよ。開店休業だった出版部門もまた動き出せたし、ボロ儲けです」
お互い、わざと拗ねた顔で睨み合う。そして同時に吹き出す。
「これからもよろしく、アレク」
「こちらこそお願いします、ハナ」
そしてアレクは俊巡した後、固く緊張したような声音で言う。
「当面これで行くとしても……ハナがうちを辞めて他で働きたくなったら、いつでも紹介状を書きますので言って下さい。でもハナが居なくなったら体制を立て直す必要があるので、辞める前、早めに教え下さい」
思わず瞠目する。
そうだ。私が突然店と家に居候することになって、アレクも他の従業員を採用したり、誰か一緒に住みたい人と住むことも出来なくなってしまったのだ。
「あー…えっと、アレクも、予算とか他の優秀な人入れたいとかで、私に辞めて欲しくなるかもしれないよね。他にアパート見つけて出ていって欲しいとかも。でも次の職や宿が決まるまでは置いてくれると」
「出て行って欲しい訳ないでしょう」
喰い気味でアレクが言う。目が真剣だ。
「出て行って欲しい訳ない。でも、俺はハナに自由になって貰いたい。
報酬や家賃や、仕事の内容や居心地とか……より自分の望むものがあったら、いつでも自分で選択して、仕事先やアパートを替えてください。それで恨む真似はしません。
ハナが元々持っていたその自由を、俺達が奪ってしまった。ここまで半年かかってしまったし、まだまだ最低限ですが、やっとその自由をハナに返すことができた」
苦しげに、絞り出すようにアレクが言う。
そうだ。差し引きで私の手元に残るお金が大差なかったとしても、アレクが報酬や家賃をきちんと整理してくれたのは、そして私自身そう望んだのは、『私がアレクの元から独立できる』重要な環境作りなのだ。
アレクは私に、出て行って欲しくないと言った。気遣いでなく本当にそう思ってくれているように思う。
そうでなくても、ガイドブックや何やらで店を掻き回すだけ掻き回して私が出ていったら痛手だろう。
それでも、アレクは私に『私の自由』を取り戻してくれた。
その無私の誠実さが、心に沁みた。あぁ、これがアレクだ。
ーー私が、好きになった。
「ありがとうアレク。私はここでの仕事もここでの暮らしも好きだから、ここに居たい」
アレクの眉がへにゃりと下がり、くしゃりと笑った。
「ありがとう。でも気持ちや状況は変わるものてす。今そうだったとしても、これから変えてもいいんだと覚えておいて下さい」
「ーー分かった」
それは真理だ。だからそれは首肯する。
「だからアレクも、出ていって欲しくなったら必ずちゃんと言ってね。それは約束して」
「ーーはい」
アレクは少し寂しげな笑みを浮かべて頷く。
きっと私も同じ表情をしているだろう。
学校や職場や旅。素晴らしい人と出会い、共に楽しい一時を過ごしても、別れもある。
いつかアレクとも、そんな別れが来るかもしれない。
そうだとしてもそれは、新しい旅立ちでもあるのだ。
その時きっと思うだろう。
大切な一時をありがとう、と。
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