心中雪-my heart is always in the snow-

受験生

ディズニー

「なんなの！？これ！？？？？？」

音楽を聴いていたので、襖をあける音がわからなかった

私の部屋は、母たちの部屋と襖で仕切られているだけの六畳一間

布団を毎日引いて寝る

寝る足元には、洗濯物を干すためのロープが張られて、頭上には三角コーナーの下着などを干すハンガーがかかっていた

昼間は店で勉強し、夜は部屋で折り畳みのテーブルを出してきて部屋の明かりはデスクライトのみで勉強していたのだ

母が怒鳴った日は、父がいなかったとき

父がいる前では絶対に発狂をしない母だった

・・・が、この日は完全に油断していた

怒鳴る母の手には、私のカバンに入れておいたプリントやDくんからの手紙があった

「勝手にみたの！？？」

この頃の私は言われっぱなしの私ではなくなってきていた

父にも

「お母さんに理不尽に怒られたら、言い返してみるといいよ」

と言われていたので、自分が悪いことをしたとき以外は言い返すようになった

「なんなのこれ！？Dって誰！？？？このボランティアの申込用紙って何！？どっちも知らないんだけど！！！！！！」

夏場だったので、窓を開けていたにも関わらず、近所迷惑など考えずに怒鳴り散らす

「ボランティアは内申にいいって学年主任に勧められて、お父さんには話したよ。許可もらったから、申込用紙をもらってきたんだけど」

Dくんの事については話さなかった

母なら、時間を考えずDくんの家に電話しそうだなと思ったから

面と向かっては家族にしか言えないくせに、電話だと強気になる母

どこまで情けないのだろうと思っていた

「お父さんがいいって言っても、私は許してない！許可してない！ボランティアなんて許可しない！！！」

はい？受験の内申が少しでもよくなるようにボランティア申し込もうとしている娘を邪魔するの？

内申のためと言ったら、聞こえが悪いかもしれないが、私が行きたい高校は内申重視だったので、進路指導の先生に相談したら、ボランティアの事を教えてもらったのだ

「なんで許さないの？受験のためだよ？」

そういうと母は

「私がせっかくディズニーに行く予定を立ててた日にボランティアに行くなんて許さない！」

と言ってきた

私はディズニーに行く予定があったことなんて知りません

「ディズニー？私受験生だよ？ディズニー行ったら泊まりだよね？お父さん知ってるの？」

母に尋ねると

「お父さんは関係ない！私がディズニーに行きたいってお兄ちゃん(キムタクに似ていると言われていた叔父)に言ったら、あっちの家族と私とみほこで旅行しようって言ってくれたんだ！その日がボランティアの日と被ってんだよ！！！！！！」

そんなこと言われても、初耳だし、そんな計画があったなら事前に言うものではないですか？
まがりなりにも受験生なのに、一言の相談もなく、母は勝手に決めてしまいチケットまで取っていた後だったのだ

「そんなこと言われても、困る。ボランティアは口頭で先に参加って先生に伝えてあるし、叔父さんに電話して今からでも私だけキャンセルできないか聞いてみる」

と言うと母は私を殴った

何を言ってるのか、わからないぐらい発狂して殴り続けた

顔が腫れ、耳鳴りまでしているのに殴る手をやめない

結局、私が

「ごめんなさい。ボランティアには行きません。勝手に決めてごめんなさい。叔父さんとの旅行を優先します」

というまで殴り続けた

外に出るのを嫌がってたくせに、ディズニーにだけは行きたかったようで、私をだしに叔父に一緒に旅行行きたいと言っていたと後から知った

叔父は「みほこ受験生だから、せめて受験終わってからにしよう」と言ってくれたらしいが母が「みほこが行きたがってる！ディズニーに行けば受験勉強がんばるって言ったから連れて行ってあげたいんだ！」と言ったらしい

そんなこと、一言も言ってないのに…

『言い返してもダメだったよ』

と心の中で父に言った

ちなみに旅行の事で頭がいっぱいだった母は、私がボランティアに行くのをやめて叔父と一緒に旅行に行くと言ったのにも関わらず怒鳴り続けた

「叔父の好意を無駄にする気か！！」
「私は行きたくないけど、あんたの引率としていくんだ！あんたが喜ぶと思ったからお願いしたのに！！！」
「ボランティアなんて行っても、結果が全てなんだからテストでいい点とればいいだけ！内申なんか関係ない！」

ボランティアには行かないと言ってるのになんで怒り続けてるのか、わからなかったが私はひたすら謝るしかできなかった

土下座をし、「ごめんなさい」をひたすらに連呼する

結局、叔父が仕事入ってしまい、運転手がいなくなってしまったのでディズニーに行くことはなかった

ボランティアにも参加できず、ディズニーにも行けず、ただ殴られ損だった