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みほこの初恋

カンタ

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しょうがない、渡すのを諦めるか・・・

そう思って、帰ろうとしたら後ろからMくんが

「みほこー、帰るのー???」

と、呼び止めた

「帰るよー、なんで?ゲームでもやるの?」

そう聞くと

「Tの家でリベンジ勝負しねぇ?」

と、言ってきた

Tくんが

「みほこを倒す!そのために、2人で訓練したんだ」

と、言った

前に一緒にゲームしてから、何回かTくんの家でゲームをした

・ストリートファイター2
・マリオカート
・ぷよぷよ

当時のゲームは、スーパーファミコンが主流だったので対戦できるソフトのラインナップはそれぐらいだった

これは、渡すチャンスかもしれない・・・
そう思い

「いいよ、受けて立つよ!」

と、強気に返事した

小6の頃は、部活がない日は友達の家に寄って帰っても父は何も言わなかった
むしろ

「友達は一生もんだから、大事にしろよ」

と言ってくれていた

そして、Tくんの家まで3人で歩いた

「先に、お母さんに2人が来たこと言ってくる」

と、Tくんが家に入りMくんと2人になるチャンスがきた

私は、2年分の勇気を込めて一言

「ん!」

と、言いながらチョコを渡した

まるでトトロに出てくるカンタがサツキに傘を貸すシーンのように・・・

「え?なにこれ?まさかチョコ?????」

Mくんが驚いた顔して聞いてきた

私は何も言えずに、出した手を引っ込めずにいた

「くれるのか?」

という問いに対して、うなずくと

「ありがとう」

と、一言

「Mの事、好きなんだ」

考えるより先に言葉が出ていた
なぜ、このタイミングで言ったのか自分でもよくわからない
ただ、気づいたら告白していた

Mくんは、即答だった

「みほこの事好きだよ。でも男女の仲じゃなくて、友達として。だって嫌じゃん。もし彼氏彼女になって別れて気まずくなるの。だからお前は俺の1番の親友!女なのにこんなに気の合うやついない。一生俺の親友でいてくれ!」

そう言われた

みほこの初恋は、玉砕に終わった

今でもMはその時の言葉を有言実行してくれている
結婚するとき、子供が産まれるとき、連絡があった

「俺、結婚するんだ」
「俺、子供産まれるんだ」
「俺、地元出るんだ」
「俺、今度の休み帰るから一緒に飲みに行こう」

些細なことでも連絡をくれる
Mくんの奥さんに気を遣って
「奥さんを1番に考えてあげて!」
と、言うと
「奥さんも、みほこの事はきちんと話してあるし、理解してくれてる」
と言い、奥さんを紹介されたこともある

私の初恋がMで本当によかった

私に恋を教えてくれて、ありがとう

今でも、これからも大事な男友達、親友の1人だよ
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