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もちだ すしの

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「あれ?さくらちゃん草抜き行かないの?」

「あっ!星くんだ!」

教室に戻り自分の席でボーっと光生のことを考えているとドアの方から星くんが現れた。

「星くんのほうこそ行かないの?」

「ふふっ、俺はサボり!」

ニッと笑う星くんは俺の前の席に座る。

「今日のさくらちゃんは元気ないね!」

「え?そうかな?元気だよ!」

朝までは元気だったんだけどと思いながらも星くんに心配してほしくなくて嘘をつく。

「あははっ、さくらちゃんって嘘つくの下手でしょ?」

どうやらばれているらしく星くんはいつもと同じように笑っている。

「そんなに椎名くんのことが好き?」

「……え?」

突然の発言に驚いて頭が追いつかない。ていうかなんで俺が光生のことを好きなことを知っているんだ。

「2人が付き合ってるの知ってる!ていうか見てたらわかるから!」

「ぇえ!?知ってたの?」

驚きのあまり頭がパニックになりガタッと勢いよく席を立つと目の前に来た星くんは俺のことをグイッと引っ張り抱き寄せた。

「っ!?星くん!?」

「俺、さくらちゃんのことが好き。」

「……え!?お、俺!?」

一体何を言っているのかわからず体を離そうとしても星くんの力が強すぎて動くことすらできない。

「まって、、星くんちょっと離して、、」

「なんで?椎名くんに見られたら困るから?」

「そうだよ、、光生に勘違いされたらもっと喧嘩になっちゃうから、、」

光生と付き合ってるのに星くんに抱き締められている状況は絶対に良くないしこれ以上喧嘩するわけにもいかない。それに早く仲直りをしないと光生の誕生日が終わってしまう。

「ねぇ、さくらちゃんは俺のこと好き?」

一向に離してくれないどころかさっきよりも強く抱きしめてくる星くんは友達としてなのか恋愛としてなのかどっちの意味で聞いているのだろう。もちろん友達としては好きだけど恋愛対象として見たことはない。

「んっ、、星くんのことは好きだけど、、」

「ふっ、椎名くん聞いた?俺のこと好きだって!」

突然大きな声でドアの方に話しかける星くんと同じ方向を見れば光生が立っていた。

「こ、光生!?」

「涼なにしてんの?」

「あ、いやこれは、、」

いつからいたのかわからない無表情の光生は冷たくてこんな顔を見るのは初めてで何も言葉が出てこない。

「星くんのこと好きなの?」

いつもの光生じゃない。感情が入っていない声も表情も全部が怖くて泣きそうになるのを必死に我慢する。

「えっと、、好きだけど、、その、、」

違う。好きだけど好きじゃない。光生とは全く違う好きなのに上手く伝えられない。それに星くんの前で好きじゃないとも言えない。

「椎名くんはさくらちゃんのことどれだけ束縛すれば気が済むの?今日の朝だって練習見ることすら嫌で無理矢理に教室に連れて行って。」

「あっ、星くんそれは違うよ、、俺が練習の邪魔しちゃってたから、、」

「俺がいつさくらちゃんに邪魔なんて言った?」

「………言ってないけど、、」

いつもの明るくてよく笑う星くんはどこにもいない。やっと離してくれたかと思えば星くんは光生の方を向く。

「香水も俺に近づかせないためにわざと、さくらちゃんにかけたんでしょ?」

「だったら何か問題ある?」

見たことないくらい怒っている光生はさっきから表情をひとつも変えることなく淡々と話す。

「ふっ、なにもないよね。だってそんなことしても俺に簡単に触られてるんだから。」

また俺のことをグイッと引き寄せる星くんは顔を近づけてきて気づいた時には唇が触れていた。

「っっ!!!ちょっと!!」

光生の目の前でキスをされ慌てて押し返せば光生はそんな俺を見て教室から出て行ってしまった。

「光生!ちょっとまって!!」

すぐに追いかけようとすれば星くんに腕を掴まれる。

「…………星くん離して。」

「嫌だ。なんでそんなに椎名くんのことばっかりかばうの?」

そんなの答えなんて一つしかない。

「……大好きだからだよ。光生のことが大好きで大切にしたいからだよ。」

ずっとこらえていた涙がポタッと落ちた瞬間に星くんはそっと手を離した。

「なにそれ、さくらちゃんいっつも椎名くんのことで悩んでるじゃん。今日の昼休みだって、それにこの前家に来たときも喧嘩してたんでしょ?」

「してたけど、、嫌いだから喧嘩してるんじゃないよ、、」

「ねぇ、俺だったらそんなに悩ませるようなことさせないし泣かせたりしないよ。」

違う。悩むことも泣くことも光生とだから全部してもいいって思えるんだ。

「………ごめんね。星くんの気持ちには応えられない。」

俺はどうやったって光生のことしか考えられない。
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