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2章

お祭りの準備 詰め所

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前回までの簡単なあらすじ

新しい商店通りヒール通りでセールを開こうと考えたヒデさんが、色んな所に話を持て行って何とか成功するように頑張っています。

++++++++++++

 あの後、ポールさんにいくつか改良をお願いしてからポールさんの店を出た。

 「さてと、後は何かなー?ポスターや広告は何処で頼むのかな?ヒューイさんにでも聞けばわかるかな?」

 独り言を言いながら小腹が空いたので屋台広場までやって来た。

 お昼時を過ぎて客足も少なく席も結構空いていた。ガッツリ食べたいわけではないのでハムが挟んであるパンとスープを買って適当な席に座って食べ始める。その時後ろから声をかけられた。

「おお、ヒデさんかい?良いとこで合ったぜ」
その声に聞き覚えもあった。パンを飲み込んでから振り返る。
「やっぱりゲイルさんだ。目の調子どお?今日は衛兵の仕事は休みなの?」
「目は全然平気だよ。治してもらってから痛みもないしな。後、今は本部の帰りだよ」

「良かった。何かあったら診療所にすぐ来てね。それと、本部ってどこにあるの?」
「本部は役所の中にあるんだよ。チョット呼ばれてな、お偉いさんが来てるから正装で来いってお達し付きでな」
いつもの鎧じゃないのはそういう訳か。
「それで丁度いいって何?」

「おお、それそれ、本部に呼ばれて行ってみたら新しい領主様がいてよ、西区の開発の為に衛兵隊の詰め所を設置するって話しでな」

「本当?それは嬉しいな。そういうのってどこに頼めばいいか分からなかったから助かる」
「やっぱりそうなのかい?」
「ん?何がそうなのかい?なの?」
「いや、設置の場所はヒデさんに聞いてくれって言われたからさ」

「えっと、領主様に?」
「ああ、そうだ。やっぱり顔見知りだったのかい?」
ゲイルさんが少し驚き顔で聞いてきた。

「い、いや、昨日ギルドの酒場で一緒に飲んだってくらいの仲だよ」
目線を反らせて答える。

「‥‥‥まあいいや。本部の連中はヒデさんの事知らなかったから、俺が代わりにヒデさんの所に聞きに行くとこだったんだよ」

「そしたら丁度良く俺がいたって事か。でも俺に聞かれてもなー。そういうのはヒューイさんとブルースさんに聞いてみないと」

「そうなのかい?まあ、いいや、場所が決まったら教えてくれよ。本部に話しに行くから」
「わかった。実際、衛兵隊の詰め所設置はこちらからお願いしたかったくらいだから、急いで場所を決めるからね」

「おう、頼んだぜ。じゃあ帰らせてもらうぜ。サッサと帰ってこの窮屈な正装を脱いでいつもの鎧に変えたいからな」
「ハハ、じゃあ、決まったら門のとこの詰め所に行けばいい?」
「そうだな、大体そこにいるから」
「わかった」
 その答えを聞くと襟首を気にしながら挨拶もそこそこに帰って行った。
本当に着慣れてないんだな。

どうするかなー?もう一回ブルースさんのとこに行ってから工場に行くか。最後のパンのかけらをスープで流し込んでからブルースさんの店に足を向ける。

 まあ、衛兵隊の詰め所の場所は孤児院の近くって思ってるからそれを言いに行くだけなんだけどね。

店にはもうブルースさんはいなかったので、要件だけ伝えて工場に向かった。

 ヒール通りは昨日と同じ様ににぎわっている。そんな賑わいをニコニコ、キョロキョロしながら歩いていたら前から声をかけられた。

「何ニヤニヤしながら歩いてるんですか?」
若干呆れかえっているよな声でエド君が声をかけてきた。

「ん?エド君かニヤニヤじゃないよニコニコしてたの。それよりどこか行くの?」

「僕はお茶菓子を買いに来たんです」
そう言って手に持っている紙袋を見せる。

「そうなんだ、ヒューイさんはいる?」
「いますよ。今日中に商工会の資料を作るって言ってましたから、今日は机にかじりついてると思いますよ」
そんな話をしながら工場に向かって歩く。

門のところのエディさんに声をかけてから中に入る。

 事務所に入る。ローさんとアルミンさんに机に向かって書類を書いているヒューイさんがいた。ウィルさんは工場の方かな?

 みんなに挨拶しながらヒューイさんの席に向かう。
「あー、ヒデさん良い時に来た。セールの事で少し聞きたい事があるんだよ」
「ん?良いよー何?こっちも色々あったから話があるんだ」

「んー、わかった先にヒデさんの話を聞こうか」
ヒューイさんが少し考えてからそう言った。

「そお?後でもいいけど?」
 そう言いながら昨日の夜領主様と話した事とか新たに思いついた企画、最後に衛兵隊の詰め所の話をする。

そして目の前にはいつもの頭痛を堪える様なポーズをするヒューイさんがいた。
「えっと、新しい企画は面白そうだね。未婚の男女を集めてお茶会みたいなのをするのかな?ハハ‥‥‥後、領主様と会ったって話してなかった?どうやって知り合うのさそんな人と?」

「あー、今回は向こうがギルドにきた時にたまたま合っただけだから」
ヒューイさんから目線を反らして答える。

「ふー、じゃあもしかして詰め所の話は領主様が手を回してくれたのかな?」
「お、流石ヒューイさん読みが良いね。あ、そうだ、領主様に聞いたら西区の名前変えていいみたいだからお祭りの時に募集しようと思うんだけどどうかな?」

「‥‥‥何だって?名前を変えるだって?そんな事出来るのかい?」
「うん、役所に申請して通れば問題ないんだって。地主であるブルースさんにはもう許可もらったからさ」

「名前が変えられるっていうのは知らなかったよ。でも、応募で決めるって何?そんな決め方でいいの?」

「え?何か問題あるの?もちろん選考はするよ?何なら商工会で決めてもらってもいいし」
「えっと、そういう事じゃないんだけど‥‥‥いや、いいやもうその事はヒデさんに任せるね。きっと商工会で話しても俺と同じ反応だと思うし」
「どういう事?」

「街や区の名前なんて領主様や貴族達が名付けるもんだからね。下手に名付けたのが自分なんて事を貴族達にわかって反感を買うかもしれないからさ」

「え?そんな事で怒るの貴族の人って?」
「かもしれないってだけで充分さ。わざわざモンスターの住み家に手を突っ込む商人はいないよ」

「ふーん、わかったけどうちは良いの?」
「まあ、うちは取引先がデカいからもう目を付けられてるし。逆にそれがあるから横やりが入らないってのもあるんだけどね。そんな事よりヒデさんが決めたって言えば反感は出ないよ」

「なにそれ?何で?」
「ヒデさんの情報を少しでも集めればみんな手を引くさ。ブルースさんのお友達ってだけでもやばいのに、なんか権力のニオイまでするしー」

「わかった、わかったから。勘弁してよ。つまり俺じゃなくて周りが怖いからって事だよね?ね?」
ヒューイさんに顔を近づけて答えを求めていると、横からエド君がボソッと言った。

「その交友関係を持っているヒデさんが一番怖いっス」
その言葉にその場にいたみんなが頷いていた。
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