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第008話 緊急事態
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ビローチェがマヨを1本10万で100本買うと言った時は心の底から驚いたものだけれど、その3日後に追加で200本を前回と同じ単価――つまり1本10万で買うと言い出したので尚更に驚いた。
しかし衝撃の極めつけは彼の富豪ぶりよりも、購入後の対応であった。
「諸君! 我が輩が生み出したマヨネーズの料理をご堪能あれ! マヨケーキにマヨスープ、マヨコーヒーもあるぞい!」
ボッタ値で購入したマヨネーズを惜しみなく使ったマヨネーズ料理を、貧困層のホームレスに無料でばら撒きだしたことだ。
そういう行為によって爵位を得られているとはいえ、易々と出来ることではない。俺は素直にビローチェを見直して、1本10万から1本7万5000に値引きしてあげることにした。
「金は使い切れないほど貯まるし、マヨネーズで皆が笑顔になるし、良いこと尽くめでハッピーハッピーだな」
「グァァー♪」
<アンブロワーズ>にて、俺は優雅に朝食を楽しんでいた。
周囲のマヨ熱はいまだ冷めることなく続いている。それどころか日に日に熱くなっているくらいだ。俺のもとには他の酒場からも「マヨを売ってくれ!」との懇願が相次いでいるけれど、<アンブロワーズ>の客足に水を差したくないので断っていた。
「出来た! マヨネーズ丼! ご飯の上にこんがり焼いたマヨネーズをかけてみたよ! 絶対に美味しい私の自信作!」
マリーが試作料理を運んでくる。
それを俺のテーブルに置き「召し上がれ!」とドヤ顔で言う。
「あいにくだけど俺は白飯にマヨネーズはかけない主義なんだよ」
「じゃあ私が食べる!」
有言実行。マリーは本当にマヨ丼を食べ出した。俺が先ほどまで使っていた箸を手に取り、ガツガツとマヨ丼を掻き込んでいく。それから「んまー!」と嬉々に満ちた声をあげた。
マヨ臭い息がこっちにプンプンきやがる。しかし気にはならない。店内がマヨの匂いで充満しているからだ。マリーの息が少々マヨ臭かったからって誤差の範囲である。
「いやぁ、絶対に白飯のほうが美味いわ」
「マヨを生み出す人がマヨの魅力を分かっていないってどうよ!?」
「分かっているからこその白飯なんだよなぁ」
この世界の白飯は問題なく美味い。
日本の有名米と大差ない味であり、米だけでも満足出来る。
それをわざわざマヨで穢すなど、それこそまさに言語道断だ。
「お前も俺の意見に賛成だろ? エリオ」
「…………」グビグビ。
エリオはマヨをチュッチュするのに忙しくて無反応だった。
◇
朝食を終えると、俺達は今日も元気に活動を行おうとした。
===============
【名 前】エリオ
【種 族】ミナミコアリクイ
【H P】1,021
【攻撃力】256
【防御力】230
【敏 捷】128
===============
ペテンキーの乱獲によりエリオは順調に成長している。
そろそろ敵のランクをDに引き上げても良いのかもしれない。
そんなことを思っていると、知らない男に声を掛けられた。
「その身なり、それに謎のペット。貴方はヨウスケ様ですね?」
男は俺より年上にもかかわらず丁寧な言葉遣いだ。
だから俺も「そうですが」とかしこまった口調になる。
「貴方を探しておりました」
男が言う。
俺は「(またマヨの販売依頼か)」と予想する。
一介の冒険者である俺への用件など他にはないだろう。
しかし、そんな予想を男が打ち砕いた。
「皇帝陛下が貴方にお会いしたいと」
思わず「ハッ?」と固まる。
「直ちに城までお越し頂くことは可能でしょうか?」
「えっ、いや、えっ!? あ、はい、可能です」
皇帝陛下からの呼び出し。
どこからどう考えてもマヨネーズのせいだ。
「それではこちらの馬車に……」
なんだかよく分からないが大事になってしまったぞ。
しかし衝撃の極めつけは彼の富豪ぶりよりも、購入後の対応であった。
「諸君! 我が輩が生み出したマヨネーズの料理をご堪能あれ! マヨケーキにマヨスープ、マヨコーヒーもあるぞい!」
ボッタ値で購入したマヨネーズを惜しみなく使ったマヨネーズ料理を、貧困層のホームレスに無料でばら撒きだしたことだ。
そういう行為によって爵位を得られているとはいえ、易々と出来ることではない。俺は素直にビローチェを見直して、1本10万から1本7万5000に値引きしてあげることにした。
「金は使い切れないほど貯まるし、マヨネーズで皆が笑顔になるし、良いこと尽くめでハッピーハッピーだな」
「グァァー♪」
<アンブロワーズ>にて、俺は優雅に朝食を楽しんでいた。
周囲のマヨ熱はいまだ冷めることなく続いている。それどころか日に日に熱くなっているくらいだ。俺のもとには他の酒場からも「マヨを売ってくれ!」との懇願が相次いでいるけれど、<アンブロワーズ>の客足に水を差したくないので断っていた。
「出来た! マヨネーズ丼! ご飯の上にこんがり焼いたマヨネーズをかけてみたよ! 絶対に美味しい私の自信作!」
マリーが試作料理を運んでくる。
それを俺のテーブルに置き「召し上がれ!」とドヤ顔で言う。
「あいにくだけど俺は白飯にマヨネーズはかけない主義なんだよ」
「じゃあ私が食べる!」
有言実行。マリーは本当にマヨ丼を食べ出した。俺が先ほどまで使っていた箸を手に取り、ガツガツとマヨ丼を掻き込んでいく。それから「んまー!」と嬉々に満ちた声をあげた。
マヨ臭い息がこっちにプンプンきやがる。しかし気にはならない。店内がマヨの匂いで充満しているからだ。マリーの息が少々マヨ臭かったからって誤差の範囲である。
「いやぁ、絶対に白飯のほうが美味いわ」
「マヨを生み出す人がマヨの魅力を分かっていないってどうよ!?」
「分かっているからこその白飯なんだよなぁ」
この世界の白飯は問題なく美味い。
日本の有名米と大差ない味であり、米だけでも満足出来る。
それをわざわざマヨで穢すなど、それこそまさに言語道断だ。
「お前も俺の意見に賛成だろ? エリオ」
「…………」グビグビ。
エリオはマヨをチュッチュするのに忙しくて無反応だった。
◇
朝食を終えると、俺達は今日も元気に活動を行おうとした。
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【名 前】エリオ
【種 族】ミナミコアリクイ
【H P】1,021
【攻撃力】256
【防御力】230
【敏 捷】128
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ペテンキーの乱獲によりエリオは順調に成長している。
そろそろ敵のランクをDに引き上げても良いのかもしれない。
そんなことを思っていると、知らない男に声を掛けられた。
「その身なり、それに謎のペット。貴方はヨウスケ様ですね?」
男は俺より年上にもかかわらず丁寧な言葉遣いだ。
だから俺も「そうですが」とかしこまった口調になる。
「貴方を探しておりました」
男が言う。
俺は「(またマヨの販売依頼か)」と予想する。
一介の冒険者である俺への用件など他にはないだろう。
しかし、そんな予想を男が打ち砕いた。
「皇帝陛下が貴方にお会いしたいと」
思わず「ハッ?」と固まる。
「直ちに城までお越し頂くことは可能でしょうか?」
「えっ、いや、えっ!? あ、はい、可能です」
皇帝陛下からの呼び出し。
どこからどう考えてもマヨネーズのせいだ。
「それではこちらの馬車に……」
なんだかよく分からないが大事になってしまったぞ。
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