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第003話 エール酒

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 俺はギルドにやってきた。
 女神の説明によれば、モンスターを倒したらギルドで報告すると良いらしい。そうすると、倒したモンスターに応じて報酬のお金が得られるとのことだ。俺はゴブリンを6体倒しているのだから、報酬を得る為の条件を満たしていた。

「どこもかしこも冒険者ばかりだな」
「グァァー」

 ギルドの中はまるで酒場のようだ。
 木のテーブル席が無数にあり、奥に受付カウンターがある。違いといえば飲食物を提供していないことだけれど、どいつもこいつも他所から酒やツマミを持ち込んでいるせいで、酒場との違いがまるでない。

「ゴブリンを倒した。その報酬を貰いたい」

 受付にて、俺は受付嬢に言った。
 受付嬢は長い黒髪の美人だが、それ以上に服装が気になる。どういうわけかメイド服を着ているのだ。カウンターには他の受付嬢も居るが、それらもメイド服である。どうやら受付嬢の制服がメイド服のようだ。

「かしこまりました。ヨウスケ様はゴブリンを6体倒しましたので、報酬は1,800ゴールドとなります」

 そう言うと、受付嬢は「ありがとうございました」と頭を下げた。
 お金を貰えると思っていた俺は、一連の流れに困惑する。
 しかし、疑問を口にする前にインベントリを確認してみた。

「(やっぱり!)」

 所持金に1,800ゴールドが上乗せされていた。
 お金はインベントリに振り込まれていたのだ。

「どうも」

 俺は受付嬢に会釈し、その場を後にした。

 ◇

 ギルドを出て通りを歩く。
 異世界の街並みにも慣れてきた。

「とりあえずメシを食うか」

 俺が呟くと、エリオが「グァァー」と反応する。

「エリオ、お前もお腹が空いたか?」

 エリオは二足立ちして「グァァ♪」と鳴いた。
 どうやらお腹が空いているようだ。
 6体のゴブリンとマヨを平らげたのに食いしん坊な奴である。

「なら適当な酒場に行くか」
「グァァー♪」

 そんなわけで、一番近くにあった酒場へやってきた。
 空いていたテーブルに腰を下ろし、給仕のお姉さんに注文する。

「適当な肉料理と酒を頼む」
「お酒の種類はいかがいたしますか?」
「エール酒があるならそれで。ないならワインを」
「エール酒ですね、かしこまりました」

 この世界では16歳でも飲酒が可能だ。
 人生で初めて飲む酒の味を想像し、俺はウキウキした。
 ちなみに、エール酒がどんな味をするのかは分からない。
 これまでの人生で酒に関心なんぞなかったからだ。

「グァー! グァー!」

 注文を待っているとエリオが呼んできた。
 二足立ちし、俺の膝に前足を乗せて引っ張ってくる。
 食いしん坊さんはもう待てないようだ。

「仕方ないやつだなぁ」

 俺は先に食べることを許可した。
 ユニークスキルでマヨネーズを作り出す。
 赤いキャップを外し、口先をエリオに向ける。

「グァァー♪」

 待っていましたとばかりにエリオが食いついた。
 マヨを自分で持ち、チュパチュパと幸せそうに頬張っている。

「なんだあの動物」「見たことないな」
「可愛いじゃねぇか」「癒やされるー♪」
「あの変な容器を器用に持ってすごい!」

 エリオを見て周囲の客が声を弾ませた。
 この世界ではアリクイが存在していないのだろうか。もっとも、存在していたとして滅多に見られるものではない。日本で過ごした16年間でさえ、野生のアリクイは1度も見ていないからね。

「お待たせいたしましたー!」

 俺の注文が届いた。
 ビーフステーキとエール酒だ。
 酒は樽を模したジョッキに入っている。
 なかなかファンタジーチックでよろしいではないか。

「いただきますっと」

 丁寧に手を合わせてから食事を始める。
 肉は少し固いが、しっかりした味で良い感じだ。
 一方、エール酒は――。

「(大人はこいつの何がいいんだ……)」

 俺は即座に水を追加注文した。

 ◇

 食事を終えた後、俺はどうしようか悩んでいた。
 あと1~2時間で夕暮れという微妙な時間帯だったからだ。
 休むにしては早すぎるし、活動するには遅すぎる。

===============
【名 前】ヨウスケ
【年 齢】16
【種 族】人間
【ランク】F
===============

 通りを歩きながらステータスを確認してみた。
 エリオと違い、俺には攻撃力やら防御力やらは存在しない。まぁ、存在していないほうがありがたいと言える。数値化されていたらきっと非常に残念な弱さだろうからね。

「冒険者として名を馳せるならやっぱりランクアップか」

 冒険者ランクはモンスターをたくさん倒すと上がる。
 女神曰く、数だけではなく質も大事とのことだ。
 高ランクほど敬われるものらしいが……。

「やや、これは冒険者様!」
「いつも平和の為に戦っていただきありがとうございます!」
「これからも頑張って下さい!」

 既に冒険者以外からは敬われまくりだ。
 だからランクアップの魅力がやや乏しい。
 しかし、他に目標もないし頑張ってみようと思う。

「夕暮れまで時間があるし、もう少しゴブリンをしばくか」
「グァァー!」

 初日ということもあり、俺は張り切った。
 早足で<アーガマ>を飛び出し、外で敵を狩る。
 結果、この日は追加で4体のゴブリンを倒した。

===============
【名 前】エリオ
【種 族】ミナミコアリクイ
【H P】141
【攻撃力】31
【防御力】28
【敏 捷】18
===============

 エリオも最初に比べてかなり成長している。
 いつの間にか、ゴブリンをワンパンで仕留められるようになっていた。
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