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014 激闘のサンドワーム戦

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 数十メートル級の特大ミミズ“サンドワーム”。
 巨大な口を開きっぱなしにして、縦横無尽に縄張りを這う。
 地中に飛び込んでは、豪快に飛び出し、また地中へ消えていく。

 サンドワームは縄張り意識が非常に強い。
 自身の縄張りに他者が踏み込むと、即座に襲い掛かる。
 その一方で、縄張りの外までは追いかけない。
 要するに近づかなければ安全なモンスターだ。

「コイツが迂回を推奨する理由だったのか」

 地図の迂回ルートに納得した。
 直線ルートを進めば、コイツに行き当たる。
 雑魚ではあるが他にも魔物がいるし、迂回が妥当だ。

「あの敵なら腕試しにもってこいだな」

 サンドワームのことは熟知している。
 奴が相手なら、万が一の場合も安心だろう。

「ルーナ、リュウ、あの巨大ミミズを倒してこい」

「だぁー!」

「ギャオー!」

 良い返事が返ってくる。
 自身に百倍以上の大きさをした巨大な敵にも動じていない。

「よし、行け!」

 合図と共に二人が突っ込む。
 どちらも必死に走っているが、速度は遅い。
 そのおかげで、保険用の魔法を掛ける時間が十分にあった。

「これでよし」

 俺の魔法によって、二人の背中に光の球体が入っていく。
 二人はそのことに気づいていなかった。

「やー!」

 今回は多角的に攻めるようだ。
 ルーナが真っ直ぐ突っ込み、リュウが斜め上に展開していく。
 ほどなくして――。

「グォ?」

 ――サンドワームの縄張りに入った。

「グォオオオオオオオオ!」

 サンドワームの迎撃スイッチがオンになる。
 大音量の咆哮を撒き散らしながら、ルーナに一直線。
 これに対してルーナは――。

「わわわーっ!」

 くるりと翻って逃げた!
 腕をぶんぶん振って全力疾走だ。

 ズコーッ!

 そして転ぶ。
 この局面で転んでしまう。
 あろうことか絶体絶命の局面でコロリン。

「ギャオー!」

 リュウが暗黒の炎で死角を突く。
 炎はサンドワームの胴体にまとわりついた。
 ――が、ダメージは入っていない。

「グォオオオオ!」

 サンドワームは元気ピンピンだ。

「やはりあのレベルになると通用しないか」

 サンドワームの皮膚は頑強だ。
 弱点である顔面以外、つまり胴体以下の皮膚は硬すぎる。
 弱点を突かずに殺す場合、S級に匹敵する強さが必要だ。
 その反面、弱点さえ突ければあっさり仕留めることが出来る。
 ルーナやリュウの火力なら、まず間違いなく楽勝だ。

「ここからどうなるか」

 サンドワームは慣れたら怖くない敵だ。
 攻撃は飲み込みの一点張りと単調である。
 しかも動きはそれほど速くない。
 いざとなれば縄張りの外に逃げれば済む。

 それでもA級なのは、倒すのが難しいからだ。
 弱点が分かっていても、そこを突くのは難しい。
 波のように高低差をつけて顔が揺れているから。

「だぁー!」

「ギャオー!」

 ルーナとリュウは果敢に攻め立てる。
 ――が、それらは全て胴体に対する攻撃だ。
 サンドワームには通用しない。

「顔面を狙わないと駄目だぞ」

 縄張りの外に腰を下ろして助言する。

「わぁ、った!」

 分かったらしい。

「りゅー! りゅー!」

 ルーナが合図を送る。
 リュウは頷き、戦法を変えた。
 今度はリュウが囮になるようだ。
 サンドワームの周囲を、ハエのように飛び回る。

「グォオオオオオオオ!」

 これにサンドワームが食いつく。
 空を飛び回るリュウを食らおうと追い回す。

「ギャオッ!」

 リュウが急降下し、地面すれすれを飛ぶ。
 追いかけるサンドワームの顔面――開いた口も同じ高さに。

「釣りの戦術か」

 リュウの逃げる方向には、ルーナが構えていた。
 爪を立てて、いつでも引っかける状態を整えている。

 ルーナの横を通過したところで、リュウがクルリと反転。
 ルーナと並んでサンドワームに対峙する。

「ギャオー!」「やぁー!」

 リュウとルーナによる同時攻撃。

「グォオオオオオオオオオ!」

 サンドワームはそれを迎え撃つ。
 大きく開いた口で、二人を飲み込むつもりだ。

「さぁ、どうなる!」

 結果は俺にも想像がつかない。
 条件は五分五分――どちらに転んでもおかしくない状況だ。
 技量の勝る方に軍配が上がる。

 両者の距離が近づいていく。
 そして、ついに激突の時を迎える。

「グォオオオオオオオオオオオオ!」

 結果、サンドワームが勝利した。
 ルーナとリュウは、大量の砂と一緒に飲み込まれたのだ。
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