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第012話 別次元の効率

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 成し遂げてしまった。命懸けで。
 最強の守護神を獲得してしまったのだ。
 出来れば成功の余韻に浸り、名前を付けたいところ。
 しかし、他のゴーレムが居るのでまずは安全圏に撤退だ。

「悪いが少しインベントリの中でお休みしてもらうぜ」
「かしこまったでござる!」

 変な話し方だ。
 安土桃山時代かよ、と思うも気にしない。
 俺はツッコミを省き、インベントリにゴーレムを戻した。
 それから全力でその場から離脱する。

 カルクナールのおかげで、スイスイのスイーの撤退だ。

 ◇

 前に【魔物配合】で利用した草原まで駆け抜けた。
 そこまでくれば敵の恐れがないので、落ち着いて作業出来る。
 インベントリからゴブオとスラ吉、それにプラチナゴーレムを召喚。

「わぁー、おおきい!」
「オラの何倍だコレー」
「よろしくでござる」

 顔合わせをサクッと済ませ、名前を考える。

「なぁ、何か希望の名前はあるか?」

 ゴーレムは「ないでござる」と即答する。
 それから、「殿の命名に従うでござる」と続けた。

「俺が決めるのか。なら……」

 少し悩んで、俺は名前を決める。

「ロックにしよう。お前の名前はロックだ」
「ロックでござるか」
「おう、異議があるなら変更するが」
「とんでもないでござる! 良い名前でござる!」
「ならばロックで決定だな」

 名前が決定したところで、今度はステータスの確認だ。

―――――――――――――――――
・名 前:ロック
・種族名:プラチナゴーレム
・ベース:プラチナゴーレム
・性 別:オス
・ランク:A
・レベル:1
・H P:4,800
・筋 力:36
・敏 捷:60
・知 識:12
・魔 力:12
・耐久力:600
―――――――――――――――――

 流石はAランク。
 最初から脅威のステータスをしている。
 特に目立つのが耐久度とHPの高さだ。

「情報通りのステータスだな、ロック。性別も含めて希望通りだ」
「そう言われると拙者、すこぶる嬉しいでござる!」

 ロックは配合予定がない。
 だから、性別補正の付くオスで良かった。

「質問だけど、【ヘイトアップ】は使えるか?」
「それは何でござる?」
「敵の注意を引き付けるスキルだ。覚えているだろ?」

 ロックが「あぁ」と理解する。

「使えるでござる! 拙者の取り柄は守ることでござる!」

 そう、こいつは戦闘の防御を一手に引き受ける存在なのだ。
 ネットゲームなら『タンク』などと呼ばれるタイプ。
 俗に【ヘイトアップ】と呼ばれるスキルで敵の気を自分に向け、防御に特化した強靱な肉体であらゆる攻撃を受けきる。こいつが生きている限り、残りのメンバーは攻撃に専念できるのだ。

「これで全ての駒が揃った」

 もはや奴隷の購入費を稼ぐのは容易だ。
 ロックを軽く育てた後は、Cランクの敵を乱獲してやる。
 敵の攻撃をロックが受けるから、ゴブオとスラ吉も安全だ。

「エルフ美女とのウハウハは目前だ。行くぞ!」

 右手を突き上げ、大興奮で草原を歩き出す。
 仲間達は「「「おおー!」」」と元気に続いた。

 ◇

 有言実行。
 翌日はロックのレベル上げに励んだ。
 早朝から休みなく狩りに明け暮れ、ロックのレベルが8になる。
 Aランクのモンスターというだけあり、レベルの上昇速度が遅い。
 しかし、何の問題もなかった。

―――――――――――――――――
・名 前:ロック
・種族名:プラチナゴーレム
・ベース:プラチナゴーレム
・性 別:オス
・ランク:A
・レベル:8
・H P:9,354
・筋 力:70
・敏 捷:117
・知 識:23
・魔 力:23
・耐久力:1,169
―――――――――――――――――

 高ランクだから成長率が凄まじいのだ。
 レベル1の時と比較して、防御性能が約2倍である。
 更に敏捷もかなりのものだ。もはや我が軍一の俊足である。

 文句なしにトップレベルの守護神だ。

 ◇

 さらに翌日。
 俺はCランクの敵を討伐するクエストを受注することにした。

「あれ、クエストカードの情報がいつもと違うぞ」

 カードを受け取った瞬間に気づく。

―――――――――――――――――
【依頼名】討伐:アリウラネの宿
【内 容】アリウラネの宿に棲息しているモンスターの討伐
【達成率】討伐数:0体
【報 酬】1体につき金貨10枚
【期 限】3日
―――――――――――――――――

 まず、いつもと違って【報酬】という項目が増えているのだ。
 それだけではなく、【達成率】の表記方法もいつもと違っている。
 これまでならば『0/5体』みたいな表記だった。

「Cランク以降のモンスターを対象とする討伐クエストでは、討伐数に制限はございません。大抵の狩場が遠いから往復が困難である上に、C級以上の敵を乱獲出来る冒険者が少ないからです」

 困惑する俺に、受付嬢が説明してくれた。

「倒せるだけ倒してから報告すればいいということか」
「その通りです。また、報酬はインベントリに直接振り込みとなります」
「これまでは手渡しだったのに、そこも変わるということか」
「最初は変化に戸惑うかもしれませんが、ご了承下さいませ」
「問題ない。利便性が高まってありがたいだけさ」

 狩場と街の往復が最も時間の無駄であった。
 それがなくなるというのは、この上なく素晴らしい。
 しかも報酬が桁違いだ。1体倒すだけで金貨10枚とはな。
 たった100体倒すだけで奴隷のエルフを買うことが出来る。

「テンションが上がって来たぜ!」

 リズミカルにスキップしながら、俺は冒険者ギルドを発った。

 ◇

 今回の狩場<アリウラネの宿>は、Cランクの中では割と近い。
 徒歩で片道2時間程度の距離である。馬車を使えば20分くらいだ。
 当然ながら、俺は馬車を使用した。残っている金を全プッシュだ。
 これから大金を稼ぐというのに、端金など気にするものか。

「6時間後にまた戻ってきます。到着してから20分は待機していますが、その間に戻られなかった場合には引き返しますのでご了承下さい」

 目的地で俺を下ろした御者が説明する。
 説明を終えると、御者は街に戻っていった。
 馬車を見送った後、俺はペット達を召喚する。
 ゴブオ、スラ吉、ロック。我が三銃士が勢揃いだ。

「さぁ、目の前にある森で暴れるぞ」
「頑張るどー」
「がんばりますぅ!」
「守りは拙者にお任せでござる」

 <アリウラネの宿>は<ラウドの森>を彷彿させる大樹の多い森だ。
 棲息しているモンスターは様々だが、例外なくCランクである。
 ロックが居る以上、もはや怖くない。

「しゅっぱーつ!」

 俺達は<アリウラネの宿>に足を踏み入れた。

 ◇

 森の中は薄暗くて気味が悪かった。
 視界も悪く、今までであれば奇襲を警戒する。
 しかし、今はロックが同行している限り問題ない。

 背後から、「キェェェェェック!」とモンスターに襲われても、
 攻撃を受けるのは鉄壁の守護神のプラチナゴーレム“ロック”だ。

「む? 何かが拙者を攻撃してきたでござる?」

 ロックは圧倒的な余裕をかましていた。
 その余裕は虚勢ではない。
 耐久度が高すぎて、HPが1しか減っていないのだ。

「敵ですぅ!」
「オラ達の敵だー!」

 ロックが攻撃を受けた後、ゴブオとスラ吉が反撃する。
 ロックに夢中の敵を、背後から確実に攻め込んで仕留めた。

「これならぼくたちも安全だぁ!」
「ロックはすごいぜー。オラ憧れるダー」
「お二人もお見事でござったよ」

 何の苦労をすることもなく、あっさりと勝利する。

「これで金貨10枚か」

 今までの苦労が馬鹿らしい稼ぎだ。
 この調子なら、数日中にゲットできるぞ。
 美女エルフの奴隷を!

「ひゃっほおおおおおおおおおおう!」

 今後を妄想し、俺は叫んでしまった。
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