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第007話 魔物配合

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 <炎の洞窟>を撤退した俺は、街の付近にある草原へやってきた。
 モンスターの棲息していない平和な草原だ。【魔物配合】に最適である。

「いくぜ……【魔物配合】発動!」

 草原にポツンと座り、スキルを発動する。
 周囲をウサギやらの小動物が囲んでいるが気にしない。

『1.ベースとなるモンスターを選択してください』

 脳内で所有モンスターの一覧が表示される。

―――――――――――――――――
→スラ吉 (レベル:10 種族:スライム)
ゴブオ (レベル:10 種族:ゴブリン)
名称未設定 (レベル:1 種族:サラマンダー)
名称未設定 (レベル:1 種族:烈火の騎士)
―――――――――――――――――

 サクッとスラ吉を選択。
 ピュッピュッで頑張る相棒の1人だ。

『2.素材となるモンスターを選択してください』

 次に素材モンスターの選択だ。
 スライムのメイン攻撃は身体から放たれるの弾丸。
 これはスキル攻撃なので、威力が“知識”に依存する。
 配合するならば、スキル攻撃力の高い素材がいい。
 ということで、サラマンダーを選択することにした。

『3.配合を行ってもよろしいですか?』

 最終確認と共に、配合で誕生するモンスターの情報が表示される。

―――――――――――――――――
【名 前】スラ吉
【種族名】サラマンダースライム
【ベース】スライム
【配合ボーナス】1
―――――――――――――――――

 出来ればランクと能力も知りたいところ。
 特にランクは大事だ。最低でもDランクは欲しいぞ。
 E以下ならサラマンダーの方が強くなってしまうからな。

 情報不足は否めないが、問題はない。
 配合ボーナスはスラ吉のレベルが反映されている。
 学んだ通り、レベルの高い方が反映される仕組みのようだ。

「サラマンダーの特性を継いで戻ってこい、スラ吉ィ!」

 俺は『はい』を選択し、配合を行った。

「なんだこれ! うるさっ!」

 突然、脳内にファンファーレが響きだした。
 俺の声に驚き、周囲の小動物が逃げていく。
 音はすぐに鳴り止んだ。

「配合の終了を表す音楽だったのか。驚かせやがって」

 ホッと一息ついてからインベントリを確認する。

―――――――――――――――――
・スラ吉(レベル:1 種族名:サラマンダースライム)
―――――――――――――――――

 スラ吉、発見!
 俺はすぐさまスラ吉を召喚した。

「ご主人様ー。オラ、パワーアップして帰ってきたダー!」
「おお! その話し方! 本当に中身が変わっていないな!」

 スラ吉の個性が失われていないことに嬉しくなる。
 それから「いかんいかん」と我に返り、ステータスを確認した。

―――――――――――――――――
・名 前:スラ吉
・性 別:オス
・種族名:サラマンダースライム
・ベース:スライム
・ランク:D
・レベル:1
・H P:456
・筋 力:10
・敏 捷:26
・知 識:62
・魔 力:53
・耐久力:58
―――――――――――――――――

 最も不安だったランクが『D』だ!
 ステータスもおおよそ思った通りの内容で安心する。
 物理攻撃力に影響する“筋力”が低く、スキル攻撃力に影響する“知識”やスキルの使用回数に影響する“魔力”が高い。動きの素早さを表す“敏捷”はランクの割に低いが、これまでと比較すると大した成長ぶりだ。

「ご主人様ー、見て見てー、オラの新しい攻撃ー!」

 スラ吉が頭上に火の玉をポンポンと飛ばす。
 サラマンダーの火球をミニサイズにしたような攻撃だ。

「それにしてもスラ吉……マジでサラマンダーと混ざってるな」
「へっへーん! 強くなったー!」

 スラ吉の見た目は大きく変わっていた。
 後頭部にニワトリのトサカみたいなものが生えているのだ。更に本体の色は青色から橙色に変わっていた。基本的な形状に変わりないが、変貌のインパクトはそれなりに大きい。

「これはゴブオも期待が持てるな」
「ゴブオも配合してあげよー!」
「もちろんだ」

 俺は【魔物配合】を発動した。
 先ほどと同じ要領で選択していく。
 ベースはゴブオで、素材は烈火の騎士。

―――――――――――――――――
【名 前】ゴブオ
【種族名】烈火のゴブリンナイト
【ベース】ゴブリン
【配合ボーナス】1
―――――――――――――――――

「種族名は烈火のゴブリンじゃなくて、烈火のゴブリンナイトか」

 贅沢にも騎士要素が残っている。
 これは頼もしい相棒が生まれそうだ。

「来い……! 烈火のゴブリンナイト! ゴブオ!」

 配合開始!
 脳内に鳴り響くファンファーレ。
 心構えバッチリで問題なく乗り越える。

「ゴブオ、召喚!」
「おそいですよぅ、ご主人様ぁー!」

 出てくるなりゴブオが抱きつこうとしてくる。
 突っ込んでくるゴブオを、俺は思わず回避してしまった。
 スラ吉以上に炎属性が激しいからだ。
 肌の色は緑色だが、炎の鎧を身に纏っている。
 剣と盾も炎だし、触れると火傷しそうで怖い。

「ご、ご主人さまぁ……」

 ゴブオが「ゴブゴブ」と鳴き始める。
 つぶらな瞳から、ワンワンと涙の洪水を巻き起こす。
 泣かれたらお手上げだ。

「あーあ! ご主人様がゴブオを泣かせたー!」
「いやいやいや、これ待てって、だってこれは、いやいや」

 スラ吉に煽られて尚更に焦る俺。

「ゴ、ゴゴ、ゴブオ、そろそろ泣き止もう、な?」
「ゴブゥゥゥゥ! ゴブッ! ゴブブゥン! ゴブゥゥン!」

 泣き止む気配、なし!
 俺は腹を括り、恐る恐るとゴブオに手を伸ばす。
 そして、炎の鎧にゆっくりと触れる。

「熱くない……!」

 耐熱ドリンクの効果は既に切れているのに熱くない。
 見せかけの炎なのか、それとも敵モンスターにだけ効くのか。
 これなら問題ないぞ。

「ゴブオ、避けて悪かったぁー!」

 俺は何食わぬ顔でゴブオに抱きついた。
 その瞬間、ゴブオがピタッと止まる。

「ご主人様ぁー!」
「ゴブオォー!」

 思いっきり抱き合う。
 ゴブオは泣き止み、嬉しそうだ。
 これでよし、ではステータスの確認……を……?

「ゴブオ? は、離してくれないかな?」
「いやですぅ! このままがいいですぅ!」

 俺はしばらく沈黙した後に言った。

「調子に乗ってるとインベントリに押し込むぞ?」
「はなしますぅ! はなしますよぉ! ご主人様のいじわるぅ!」

 ゴブオが離れたところで、俺はステータスを確認した。

―――――――――――――――――
・名 前:ゴブオ
・種族名:烈火のゴブリンナイト
・ベース:ゴブリン
・性 別:メス
・ランク:D
・レベル:1
・H P:420
・筋 力:74
・敏 捷:32
・知 識:14
・魔 力:16
・耐久力:34
―――――――――――――――――

 想像以上に筋力特化だ。
 メスなので性別補正がない分、全体的にはスラ吉と比べて見劣りする。
 それでもこの突出した筋力は頼もしい。

「強くなったお前達の力で、今までよりも遙かに効率良く金を稼がせてもらうぜ?」
「任せてー!」
「がんばりますぅ!」

 こいつらの強さなら、Eランクの敵は楽勝だろう。
 俺の目標である奴隷の購入と、その為の金策に必要不可欠な3体目の相棒を【テイミング】するのに、こいつらは多大な貢献をもたらすはず。

「お前達のことはこれでいいとして、後は……」

 俺は視線を下に向ける。
 そこに映っていたのは己の裸体。
 <炎の洞窟>で衣類を失い、そのままだ。

「どうにか服を調達するだけだな!」

 こうして、俺達の物語は次の次元に進むのであった。





 ※追伸:門番に全裸で土下座して逮捕を逃れました。
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